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書籍詳細

乳幼児健診における境界児診断と治療社 | 書籍詳細:乳幼児健診における境界児
―どう診てどう対応するか

東京慈恵会医科大学名誉教授

前川 喜平(まえかわ きへい) 編集

東京都立北療育医療センター院長

落合 幸勝(おちあい ゆきかつ) 

初版 B5判 並製 154頁 2010年09月22日発行

ISBN9784787818027

定価:3,850円(本体価格3,500円+税)
  

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好評の旧版を改訂.新たに5歳児健診を加え,発達障害を含めた境界児への具体的な対応とフォローについて,医師,健診にかかわるスタッフ向けに解説.写真・イラスト多数.

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目次

第Ⅰ章 乳幼児の発育と発達 
A 乳幼児健診の現代的意義   前川喜平
1 なぜ育児支援なのか  
2 育児支援の実際  
3 健診の基本  
4 実施者に必要な態度  
5 地域における支援システムの構築  

B 正常な発達のいろいろ   前川喜平
1 発達道標 
2 発達の順序 

C 身体発育の正常と異常   宮田市郎
1 乳幼児の正常発育 
2 身体発育の指標 
3 身体発育の異常 
4 原因疾患  

D 心理発達の評定   吉田弘道
1 発達の評定方法  
2 発達検査・知能検査  
3 評定における留意点  

E 障害児を見つけるのではなく,来てよかった・受けてよかった乳幼児健診を目指す
                        横井茂夫
1 健診をする前に  
2 実際の健診では  
3 乳児健診(3〜4か月児,6〜7か月児,9〜10か月児健診)における
                        正常児・境界児・発達遅滞児 
4 総合判断 
 第Ⅱ章 どう診てどう対応する 
A 3〜4か月児健診における境界児   横井茂夫
1 3〜4か月児健診の実際  
2 この時期に経過観察になる事例 

B 6〜7か月児健診における境界児   横井茂夫  
1 6〜7か月児健診の実際  
2 この時期に経過観察になる事例  

C 9〜10か月児健診における境界児   横井茂夫  
1 9〜10か月児健診の実際  
2 この時期に経過観察になる事例  

D 1歳6か月児健診における境界児   田原卓浩  
1 1歳6か月児健診の実際  
2 この時期に経過観察になる事例  

E 3歳児健診における境界児   関あゆみ  
1 正常発達のめやす  
2 健診内容  
3 見逃したくないこんな状態と保護者の心配  
4 境界児の観察のポイントと経過観察  
5 誰がどうフォローするか  

F 5歳児健診における境界児   関あゆみ  
1 5歳児健診の目的  
2 正常発達のめやす  
3 健診内容  
4 見逃したくないこんな状態と保護者の心配 
5 境界児の観察のポイントと経過観察  
6 誰がどうフォローするか  

G 低出生体重児の発達チェックと早期介入   川上 義  
1 低出生体重児の評価  
2 低出生体重児の発育と身体的特徴・合併症  
3 低出生体重児にみられる神経学的合併症  
4 低出生体重児の発達の特徴と注意点  
5 早期介入  
6 フォローアップ体制  

H 乳幼児健診と脳性麻痺   今井祐之  
1 脳障害の因子  
2 症候・症状  
3 養育・フォロー体制など  
I 養育環境のチェック─子どもを全体としてとらえる   前川喜平
1 親準備性の評価  
2 要支援家庭  
3 親になれない親  
4 関係性の発達による評価─関係性からみた子育ての問題  
5 親子の組み合わせ  
6 地域資源とキーパーソン  

 第Ⅲ章 具体的な発達支援 
A 境界児の運動発達の促し方   小﨑慶介
1 姿勢と運動の3要素からみた,ひとり歩き獲得までの運動発達過程とその促し方  
 106
2 ひとり歩き獲得後の運動上の課題とその促し方  
3 身体巧緻性向上のための取り組み  
4 疾患別,とくに発達障害児の運動発達の促し方  

B 境界児の知的発達の促し方   邑口紀子
1 境界知能の意味するもの 
2 脳性麻痺の知的発達の特徴  
3 広汎性発達障害の知的発達の特徴  
4 知的発達は遊びを通して育まれる  
5 発達支援に必要な視点  

C 境界児の言葉の発達の促し方   森永京子
1 境界児のとらえ方  
2 言語障害の分類  
3 言語検査  
4 支援のポイント  

D ふれあい子育ての勧め   吉永陽一郎
1 健診とふれあい子育ての勧め  
2 健診の場で勧めたい,さまざまなふれあいの方法  

 COLUMN   落合幸勝,宍戸 淳  
乳幼児健診と境界児① 乳幼児健康診査において 
乳幼児健診と境界児② 専門医療機関への紹介の実際 
乳幼児健診と境界児③ 発達障害児の療育の実際  
就学相談への支援について  

索 引 

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序文

序文

 乳幼児健診(以下健診と略す)に長年携わってきてもっとも難しいのは,正常とも異常ともいえない境界児の解釈と扱い方である.健診はスクリーニング,選り分けであるので異常の判定を甘くすれば疑いのあるものが増加し,反対に厳しくすれば減少する.子どもの将来と親の気持ちを考えるとどちらを採るべきか絶えず悩みの種である.新生児マススクリーニングは科学的に正常,疑い,異常の基準があり判定に困ることはない.ところが健診は生物学的,家庭的,社会的要因が複雑に絡み合っており,判定には経験や,知識を知恵に変えるコツが必要である.そんな理由から今から20年前,1990年にそれぞれのベテランの知恵を結集して作成したのが本書の前身「乳幼児健診における境界児の診かたと扱いかた」である.幸いなことに読者の好評を得て,「新版 乳幼児健診における境界児の診かたと扱いかた」(1994年),「乳幼児健診における境界児の診かたとケアのしかた」(1997年)と版を重ねてきた.
 21世紀となり母子保健施策の理念も子育て支援の中心的役割,健康指向,保健医療教育などの連携と大きく変化してきている.健診制度は同じでも内容,質が変わってきたのである.時代のニーズに対応するために共同編集にて本書を改訂することにした.健診は不特定多数の人により行われる選り分け作業であるので,だれにでもわかりやすい妥当性と再現性がある方法が好ましい.健診のチェック項目は共通でもアプローチの方法は同じではない.そこで本書は各方面のベテランのコツを具体的に記載してもらうことにした.同じことを診るのにも著者により方法が異なるのは登山ルートがいくつもあるのと同じである.読者の好みにあったものを利用して独自のコツを会得していただければと願っている.
 第I章には現代的意義など健診を行うのに必要な基礎的知識や技能が,第II章には一般的な月齢別チェックポイントと低出生体重児の発育,健診と脳性麻痺が,第III章には具体的な発達促進の方法が記載されている.

 本書が健診に携わる人々に利用され,少しでも役に立つことを願ってやみません.本書についてお気づきのことがありましたらどんなことでも結構です.お知らせくだされば幸いです.

   2010年8月吉日

前川喜平 
落合幸勝