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書籍詳細

診断と治療社 内分泌シリーズ

内分泌代謝臨床研究マニュアル診断と治療社 | 書籍詳細:内分泌代謝臨床研究マニュアル

太田西ノ内病院 病院長

新保 卓郎(しんぼ たくろう) 編集

京都大学環境安全保健機構健康科学センター センター長

川村 孝(かわむら たかし) 編集

国立病院機構京都医療センター臨床研究センター副センター長

成瀬 光栄(なるせ みつひで) 編集

初版 B5判  216頁 2015年09月20日発行

ISBN9784787818492

定価:本体5,200円+税
  

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臨床研究を行おうとする医師,とくに臨床研究の専門家ではない臨床医にむけた,内分泌代謝の分野においての具体的かつ実践的な書籍である.研究デザイン,研究計画書,倫理的措置,統計の解析など臨床研究に関する基本事項をわかりやすく解説.実践編では,内分泌代謝分野の具体的な研究テーマを取り上げ,結果解析の流れを解説した.

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目次

推薦の言葉…平田結喜緒
「診断と治療社 内分泌シリーズ」について…成瀬光栄
序文…新保卓郎
第1章 臨床研究総論
 1 臨床研究総論…川村 孝
第2章 臨床研究の研究デザインの種類
A 研究デザイン総論
 1 研究デザイン総論…林野泰明
 2 バイアス…林野泰明
 3 交絡因子…林野泰明
 4 測定指標…川村 孝
B 観察研究
 1 症例報告…水谷友紀
 2 ケースシリーズ研究…水谷友紀
 3 横断研究…鈴木知子
 4 診断研究…新保卓郎
 5 臨床予測ルール…林野泰明
 6 症例対照研究(ケースコントロール研究)…若井建志
 7 コホート研究…若井建志
C 介入研究
 1 非ランダム化比較試験(前後比較試験,ヒストリカルコントロールを含む)…新倉量太
 2 ランダム化比較試験(クラスター分析を含む)…新倉量太
 3 クロスオーバー試験…新倉量太
D 二次研究
 1 費用効果分析…新保卓郎
 2 系統的レビュー・メタアナリシス…小川雄右,古川壽亮
 3 診療ガイドライン…中山健夫
第3章 研究計画書の構成と作成
 1 総論…新保卓郎
 2 研究背景および目的…新保卓郎
 3 研究デザイン
   a)観察研究の記載方法…新保卓郎
   b)介入研究の記載方法…新保卓郎
 4 研究対象者の選択…新保卓郎
 5 観察や測定…新保卓郎,鈴木知子
 6 アウトカムの設定…新保卓郎
 7 データ取集方法
   a)調査票の作成…佐々木泰治
   b)WEB登録の実際…佐々木泰治
 8 結果の解析…佐々木泰治
 9 サンプルサイズの決定…新保卓郎
10 有害事象・中止基準…佐々木泰治
11 研究組織・体制の表示…佐々木泰治
12 参考文献・資料の準備…水谷友紀
第4章 倫理的措置
 1 倫理指針の種類
   a)疫学研究に関する倫理指針…武藤香織
   b)臨床研究に関する倫理指針…武藤香織
   c)ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針…武藤香織
 2 倫理審査委員会…武藤香織
 3 新しい統合倫理指針…川村 孝
 4 個人情報の保護…玉腰暁子
 5 同意取得
   a)同意取得の方法…玉腰暁子
   b)説明文書…玉腰暁子
   c)同意書・同意撤回書…玉腰暁子
 6 試料・情報の保存・保管…玉腰暁子
 7 利益相反…玉腰暁子
第5章 統計の解析
A 総論
 1 解析用データセットの作成法…北村哲久
 2 尺度(scale)…北村哲久
 3 データクリーニング…北村哲久
 4 欠損値の取り扱い…北村哲久
 5 ヒストグラム…北村哲久
 6 統計手法の選択…後藤雅史
 7 有意性の評価…後藤雅史
B 検定方法
 1 単変量解析
   a)t検定…佐藤泉美
   b)分散分析…佐藤泉美
   c)分割表ならびにχ2検定とFisherの直接確率法…佐藤泉美
   d)相関・回帰分析…佐藤泉美
   e)生存曲線とlog—rank検定…川﨑洋平
   f)ノンパラメトリック検定…川﨑洋平
 2 多変量解析
   a)重回帰分析…川﨑洋平
   b)ロジスティック回帰…川﨑洋平
   c)Cox比例ハザード回帰…川﨑洋平
   d)混合モデル…川﨑洋平
   e)一般化推定方程式…川﨑洋平
C 統計ソフトの種類と特徴
 1 Excelの活用方法…鈴木知子
 2 JMP®,SPSS,STata®…鈴木知子
第6章 臨床研究実施のマネジメント
 1 臨床研究登録…村山敏典
 2 臨床研究保険…村山敏典
 3 モニタリング・監査…村山敏典
 4 臨床研究支援機関(CRO,SMO,ARO)…村山敏典
 5 研究資金…村山敏典
第7章 成果の公表
 1 学会発表…水谷友紀
 2 論文化…水谷友紀
第8章 結果解析の実践 実際のソフトを使って
 1 相関・回帰分析…鈴木知子,新保卓郎
 2 t検定(分散分析)…鈴木知子,新保卓郎
 3 ロジスティック回帰分析…鈴木知子,新保卓郎
 4 分割表(χ2検定,Fisherの直接確率法も含む)…鈴木知子,新保卓郎
 5 ノンパラメトリック(Wilcoxon順位和検定)…鈴木知子,新保卓郎
 6 対応のある検定(t検定,Wilcoxon符号付順位検定,McNemar検定)…鈴木知子,新保卓郎
 7 Kaplan—Meierの生存曲線…鈴木知子,新保卓郎
 8 Cox比例ハザードモデル…鈴木知子,新保卓郎
 9 重回帰分析…鈴木知子,新保卓郎

索引
Column
検定の考え方…川村 孝

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序文

推薦の言葉

 1990年以降,わが国でも客観的な証拠(エビデンス)に基づく医療,evidence—based medicine(EBM),が臨床医学に導入され,現在では臨床医にとってEBMは日常診療の基本となってきている.このようなEBMは最良の臨床研究の研究成果によって裏打ちされたものであり,その基盤となる臨床研究の大部分は欧米で行われたものである.例えば,世界の有名医学雑誌への寄与率を見てみると,N Engl J Med, Lancet, JAMAといった臨床研究のコアジャーナルでのわが国の発表論文数は世界25位(2008—2011年)である.一方Nature Med, Cell, J Exp Medといった基礎研究のコアジャーナルでの発表論文数は米,英,独に次いで日本は第4位であり,1998年以降常に上位ランクを維持している.わが国の基礎研究が世界をリードする研究成果を挙げているのに対して,いかに日本の臨床研究が国際的に遅れているかがわかる.
 臨床医学における研究のほとんどは疾患指向型研究といわれ,病気の成因や病態のメカニズムの解明,診断・治療・予防につながる基礎研究である.一方,患者指向型研究である臨床研究は症例報告,シリーズ研究といった記述的なものから分析的なものまで幅広い.これまで臨床医は臨床的な観察力から記述的研究を通して新たな疾患を見出し,さらにその原因や病態生理を明らかにするために基礎研究を通して科学的な洞察力を養い,physician・scientistとして新規の診断法や治療法を開発してきた―いわゆる「ベッドサイドからベンチへ」といわれる研究の流れである.一方,分析的研究は一定数の症例からなる集団を対象として統計学的手法を用いて,病因,病態,診断,治療効果などを解析する臨床研究で,観察研究(症例対照,コホート)や介入研究(治験,臨床試験)がこれにあたる.このような分析的研究には臨床医以外に生物統計学,臨床疫学,データ管理など様々な分野の専門家やそれを支援するコーディネーターなどの人材,データ収集と解析のために長期にわたる時間と労力,そしてそれを支える資金が必要である.残念ながらこれまでわが国の医学教育や卒後教育の中で分析的研究のことはほとんど教えられておらず,そのため臨床医の臨床研究への関心が低く,また論文の評価もややもすれば低く扱われてきた.
 内分泌疾患は一般に比較的稀な疾患であるために,これまでわが国での大規模な臨床研究はほとんど行われてこなかった.また内分泌疾患の診療に従事する臨床医や専門医もこのような臨床研究を系統的に学習や研修する機会も極めて少なかった.最近欧米(特にEU圏)では難治性(希少)内分泌疾患の疾患レジストリーを設けて国ごとに専門施設にデータを集約させたEU圏疾患ネットワークが構築され,オールヨーロッパで内分泌疾患の大規模臨床研究の成果や診療ガイドラインが次々と発表されている.このような現状の中,わが国でもオールジャパンで疾患登録制の確立,大規模臨床研究の実施,診療ガイドラインの策定などグローバルな取り組みの必要性が叫ばれている.
 今回診断と治療社から内分泌シリーズの一環として『内分泌代謝臨床研究マニュアル』が刊行されることは真に時宜をえたものといえよう.本書は内分泌代謝疾患の臨床研究に必要な研究デザインの設定,プロトコルの策定,研究倫理の措置,生物統計による解析など,臨床研究に関するあらゆる基本事項を網羅し,各分野の専門家によりわかりやすく解説した良書である.具体的で実際的な解説内容であることから内分泌代謝分野の臨床研究をこれから実践する,あるいは今後計画している臨床医にとっては指南書ともいえるものである.また将来わが国の医療を担う医学部学生,卒後臨床研修医,専攻など若手医師にとっても本書が臨床研究を正しく理解するための参考書として活用することを推薦したい.

2015年8月
(公財)先端医療振興財団・先端医療センター病院長
東京医科歯科大学名誉教授
平田結喜緒



「診断と治療社 内分泌シリーズ」について

 内分泌代謝学は内分泌代謝疾患に関する包括的な学問であるが,時代とともに内分泌疾患を主とする内分泌学,糖尿病を主とする糖尿病学に分かれ,その流れはますます加速している.しかしながら,実際の診療現場では内分泌疾患と代謝・糖尿病疾患の両者を並行して診療する機会が圧倒的に多いことから,バランスのとれた専門知識の習得が不可欠である.編集者らは内分泌代謝疾患の診療水準の向上を目的として,本内分泌シリーズの第一号『内分泌代謝専門医ガイドブック(初版)』を2007年4月に企画,刊行した.その後現在までの8年間で『原発性アルドステロン症診療マニュアル』『褐色細胞腫診療マニュアル』『クッシング症候群診療マニュアル』『甲状腺疾患診療マニュアル』など計13企画を刊行し,内分泌代謝疾患の様々な領域をカバーしてきた.
 今回はこれらに引き続き新たに『内分泌代謝臨床研究マニュアル』を企画・刊行することとなった.近年,臨床医が取り組む研究として「臨床研究」の重要性がますます高まっているが,大学医学部での教育および卒後教育のなかでも臨床研究に関する系統的な学習,研修の機会は必ずしも十分ではない.それゆえ,初期研修,後期研修を終え,いざ臨床研究に従事しようとすると,知識と経験不足のために様々な困難に直面することが少なくない.特に,研究開始時の適切な研究デザインの選択,研究計画の策定,十分な倫理的措置が極めて重要である.このため,臨床研究に関する書籍は非常にニーズが高いが,臨床医からみて必ずしもわかりやすいとは言えず,個々の用語の理解から全体像の把握まではなかなか困難である.
 本書は,臨床研究の専門家ではない臨床医であっても,内分泌代謝の分野で少しでも円滑にかつ適切に臨床研究に取り組むことが可能となるように,具体的かつ実践的な書籍として企画された.研究デザイン,研究計画書,倫理的措置,統計の解析など臨床研究に関する基本事項を可能な限りわかりやすく解説し,さらに実践編として,内分泌代謝分野の具体的な研究テーマを取り上げ,結果解析の流れを解説している.執筆には臨床研究の分野でまさにわが国を代表する臨床研究,生物統計の専門家の先生方にお願いをした.平成27年4月にこれまでの疫学研究の倫理指針と臨床研究の倫理指針が統合・改変され,新倫理指針(人を対象とする医学系研究の倫理指針)が施行されたこともあり,執筆の先生方には記載内容の変更など多大なご負担をおかけすることとなった.編集者として改めて心よりお詫び,感謝申し上げる次第である.本書が内分泌代謝分野で臨床研究に従事する多くの臨床医に活用いただければ幸いである.

2015年8月
国立病院機構京都医療センター臨床研究センター 副センター長
内分泌代謝高血圧研究部 部長
成瀬光栄



序 文

 今や臨床医が一生を通じて修めるべきスキルの幅は広い.その一つが臨床研究に関するスキルであろう.これは臨床医にとって極めて基本的なスキルだと思う.自らエビデンスを作るために必要だが,エビデンスを利用するためにも必要である.臨床医学の基本的なリテラシーともいえる.
 「臨床研究」という言葉はいくつかの文脈で語られているように思える.一つは「研究開発」に関連するものであろう.国内の治験体制整備が漸進し臨床研究中核病院が10か所以上設置されてきた.大規模なランダム化比較試験なども行われるが,そこで語られる臨床研究は医薬品・医療機器の研究開発促進を意識している.もう一つの文脈は「身近な臨床研究」であろう.臨床医の日ごろの問題意識に立脚し,これを解決するために後ろ向き観察研究なども含め地道な努力でなされている.本書は後者に軸足を置くが,身近な臨床研究のできる臨床医の存在が,研究開発の裾野を作ると思っている.
 臨床研究のスキルに対する需要の急速な広がりを実感している.多くの医療機関や研修プログラムが臨床研究の実践を求めるようになっている.特定機能病院の承認条件としても論文数が求められたりする.医局制度が変容し,医師個人が自らキャリアやゴールを設定していく.そのような中で,自らの経験や実力を表現し記録する方法の一つが,臨床研究の実践や論文化であろう.
 このような研究は以前に比べはるかに実施しやすくなった.ICT環境の進展で,容易に先行研究の閲覧ができるようになった.机に座ったままで関連文献を効率的に収集し閲覧できる.データベースや統計解析のソフトウエアは極めて身近な道具となった.大きなデータが利用可能になり,診療データはData Warehouseなどで検索しやすくなった.DPCデータや健康保険の国レベルのデータも一般利用が近づいている.
 一方で,従来の臨床研究の不備が一気に指摘される時期でもある.ある高血圧の臨床試験では,製薬企業との利益相反の管理が大きな問題となった.同時に研究データの品質管理の在り方が問題となった.国内の臨床研究の信頼性を揺るがす事態である.新たな倫理指針ではモニタリングや監査に関する事項も盛り込まれている.臨床研究に従事するものの教育が義務付けられたのもここ数年のことであるが,大きな変化である.適切な知識や態度を早めに確立しなければ,気がつけば浦島太郎であろう.
 研究に興味をもつ若い世代が増えていることを実感している.セミナーには多くの臨床医が参加している.以前は後期研修医であったが,最近卒後2年目の研修医や医学生まで興味をもっているように思う.そして施設での指導体制の不足の声も聞かれる.臨床研究について研鑽できる体制は国内ではまだまだ未整備であろう.一般病院のみならず大学でもそうかもしれない.
 本書はこのような中で多くの先生方の協力のもと作成された.科学的なポイントから倫理的な事項,そして実務的な課題まで広い問題を概観している.臨床研究は実際取り組んでみるとコミュニケーションやチーム作り,マネージメントなども大きな問題になる.もとより一冊の書で臨床研究の広い領域を網羅し深く議論することは不可能である.編集者としては御寛恕をお願いしたいところである.読者には多数の書に触れてもらいたいが,その中の一つとして本書がよい契機になればと思う.
 若い先生方にはキャリアの中でいろいろな挑戦をしていただきたい.臨床研究の実践を通じて,臨床医としての視点を広げることを期待している.最後に,お名前は敢えてあげないがこれまでご指導や貴重な学びの機会をいただいた先生方,苦労を伴にした同僚の皆様,執筆にあたられた共著者の先生方,出版にあたられた診断と治療社に感謝したい.そしていろいろな課題を共有した患者の皆様に感謝したい.本書が臨床研究を通じて診療現場の問題に答えようとする,また自らの技量を高めようとする臨床医の一助になることを願うものである.

2015年8月
太田西ノ内病院 病院長 
新保卓郎