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書籍詳細

メタボリックシンドロームシリーズ

レプチンのトランスレーショナルサイエンス診断と治療社 | 書籍詳細:レプチンのトランスレーショナルサイエンス
―メタボリックシンドロームの治療戦略―

財団法人住友病院院長

松澤 佑次(まつざわ ゆうじ) 監修

京都大学大学院医学研究科内科学講座内分泌代謝内科教授

中尾 一和(なかお かずわ) 編集

初版 B5判 並製 194頁 2012年03月14日発行

ISBN9784787818751

定価:本体5,000円+税
  

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脂肪組織は,エネルギー貯蔵器官であると同時に,多彩なアディポサイトカインを分泌する生体内最大の内分泌器官である.本書ではアディポサイトカインの1つであるレプチンに注目し,メタボリックシンドローム・肥満症におけるレプチンの臨床的意義の解明と臨床応用を目的とした医学研究をまとめた.脂肪萎縮症の診療・研究より得られた知見と考察,腹腔内脂肪測定装置の開発・実用化に関する研究も記載.

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目次

監修の序  /松澤佑次
編集の序  /中尾一和
カラー口絵 

第1章 生体内最大の内分泌器官“脂肪組織”
1)脂肪細胞と脂肪細胞機能
 a 脂肪細胞の発生分化と種類  /野口倫生 
 b 白色脂肪組織と褐色脂肪組織  /山本祐二 
 c 脂肪細胞と脂肪貯蔵機能  /森 栄作,藤倉純二
 d アディポサイトカイン―産生,分泌,機能  /宮澤 崇 
 e レプチンの意義とその特徴  /宮澤 崇 
 f 注目される脂肪組織の“expandability”仮説  /山本祐二 
2)脂肪組織と体内分布―部位で脂肪組織の機能は異なる?
 a 脂肪組織の構成細胞  /泰江慎太郎
 b 腹腔内脂肪(内臓脂肪),皮下脂肪,その他の脂肪組織  /内藤雅喜,藤倉純二 
 c 脂肪組織と脂肪細胞機能  /内藤雅喜,藤倉純二

第2章 メタボリックシンドロームの発見・概念・診断・治療
1)メタボリックシンドロームの概念と歴史  /孫  徹
2)メタボリックシンドロームの診断基準―世界とわが国の現状  /宮脇尚志
3)わが国の診断基準と国際基準の相違点とその意味  /宮脇尚志
4)世界のメタボリックシンドロームの頻度  /岩倉 浩
5)日本はメタボリックシンドロームの発展途上国  /宮脇尚志
6)メタボリックシンドロームと代謝異常  /岩倉 浩 
7)メタボリックシンドロームと高血圧  /阿部 恵
8)メタボリックシンドロームと心血管疾患の発症  /中尾一泰,桑原宏一郎

第3章 メタボリックシンドロームの成因と病態
1)肥満症とメタボリックシンドローム  /有安宏之,細田公則
2)インスリン抵抗性  /阿部 恵,海老原健
3)腹腔内脂肪(内臓脂肪)蓄積  /片岡祥子,海老原健 
4)レプチン抵抗性  /後藤伸子,海老原健
5)異所性脂肪蓄積と脂肪毒性(lipotoxicity)  /冨田 努,細田公則 
6)肥満毒性(adipotoxicity)  /冨田 努,細田公則 
7)病態と脂肪細胞・脂肪組織の機能的意義  /野口倫生,森 栄作,細田公則
8)糖脂質代謝における種差とレプチン欠損ラット開発  /海老原健 
9)印象に残ったメタボリックシンドローム関連疾患症例
 /海老原健,日下部徹,金本巨哲,城 孝尚,小山博之,中尾一和 

第4章 メタボリックシンドロームの診断と腹腔内脂肪(内臓脂肪)測定装置の開発
1)メタボリックシンドロームの診断  /細田公則 
2)メタボリックシンドロームの診断基準の問題点  /細田公則
3)腹腔内脂肪(内臓脂肪)蓄積の評価法とその意義  /井田みどり,平田雅一
4)腹腔内脂肪(内臓脂肪)蓄積の定量と国内外のメタボリックシンドローム診断基準  /井田みどり,平田雅一
5)DBIA法と腹腔内脂肪(内臓脂肪)測定機器の開発と臨床応用  /志賀利一,平田雅一 
6)メタボリックシンドロームの診断基準の今後の課題  /平田雅一,志賀利一

第5章 レプチンのトランスレーショナルサイエンス―レプチン実用化に向けて―
1)レプチンの発見―意義とその特徴  /田中智洋 
2)レプチンの作用とレプチン過剰発現マウス  /阿部 恵
3)レプチン抵抗性とインスリン抵抗性  /日下部徹 
4)肥満症から脂肪萎縮症へ―治療標的の転換  /海老原健 
5)脂肪萎縮症―病因と病態  /日下部徹,海老原健 
6)脂肪萎縮症におけるレプチンの意義  /海老原健 
7)脂肪萎縮症における食行動異常と脳神経活動  /青谷大介 
8)脂肪萎縮症に対するレプチン補充治療の推進  /海老原健 
9)全身性脂肪萎縮症と部分性脂肪萎縮症  /日下部徹,海老原健 
10)脂肪細胞の再生医療  /野口倫生,森 栄作,細田公則
11)脂肪萎縮症とレプチン―今後の課題  /海老原健 

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序文

メタボリックシンドロームシリーズ
監修の序


 飽食と運動不足の環境の中で暮らす現代人において,エネルギーの体内への蓄積,すなわち肥満が避けがたい状況になっており,肥満を基盤にした糖尿病,高血圧,脂質異常などのいわゆる生活習慣病が,最終的に心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の発症につながることが21世紀の大きな医学的課題になっている.しかし,すべての肥満が病気の発症要因となるのではなく,腹腔内の内臓脂肪の蓄積が多彩な生活習慣病の発症を決める要因になるという事実がわが国の肥満研究を通じて明らかになり,内臓脂肪症候群という概念が提唱された.欧米でも,高コレステロール血症とは独立した動脈硬化のハイリスク病態として,インスリン抵抗性や肥満(腹部肥満)を含むマルチプルリスクファクター症候群が近年注目され,メタボリックシンドロームという名前で2005年に発表されたが,これはわが国の動脈硬化学会,肥満学会,糖尿病学会,高血圧学会など関連8学会の合同委員会で,内臓脂肪症候群と共通の概念であることが確認され,わが国のメタボリックシンドロームの概念と診断基準が2005年4月に発表されて,その後医学会はもちろん一般社会でも多くの関心を集めている.その間,内臓脂肪蓄積がなぜ多くの病態の発症要因になるのかについて脂肪細胞研究(アディポサイエンス)がわが国で急速に発展するとともに,メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に焦点を当てた予防医学の国家的戦略の特定健診・特定保健指導の制度が2008年にスタートしたのもご存じのとおりである.このような背景をもとに財団法人代謝異常治療研究基金の特別研究助成のテーマとして,本研究基金のコンセプトに最も相応しい対象疾患としてこのメタボリックシンドロームが選ばれ,1年目は「メタボリックシンドロームの病態」,2年目は「メタボリックシンドロームの治療」,3年目は「メタボリックシンドロームの疫学」について,全国から公募し,多数の応募プロジェクトの中から厳正な審査の結果,大阪大学の船橋 徹准教授(現教授)のグループ,京都大学の中尾一和教授のグループ,札幌医科大学の島本和明教授(現学長)のグループが選ばれ,いずれも3年間の期間で,それぞれのテーマの研究を進めていただいた.
 いずれの研究グループも,これまでの業績に加えて,本研究基金をもとにした新しい研究成果を数多く出しており,それらを盛り込んで「病態」「治療」「疫学」の3部作のテキストブックを作成していただくことになった.これらはメタボリックシンドロームの全貌を理解するためのバイブル的なテキストブックになるものと思われ,これら3冊をわが国でまだまだ増加の一途をたどっている生活習慣病,心血管病の診療や予防対策に活用していただければ,財団法人代謝異常治療研究基金の意義がさらに大きくなるものと思われる.

2012年3月
財団法人住友病院院長
松澤佑次


レプチンのトランスレーショナルサイエンス
―メタボリックシンドロームの治療戦略―
編集の序

 「メタボリックシンドローム(metabolic syndrome)」ほど,医学関係者はもとより一般市民まで短期間に関心をよび話題となった「症候群(syndrome)」はないであろう.世界における肥満の蔓延が背景にあるからである.
 動脈硬化による心血管病のリスクファクターである肥満,高血圧,耐糖能異常,脂質代謝異常が同一個体に重積(cluster)する病態は,1980年代よりSyndrome X,死の四重奏,インスリン抵抗性症候群,内臓脂肪症候群,マルチプルリスクファクター症候群などの名称でよばれてきたが,近年になりメタボリックシンドローム(metabolic syndrome)として統一されてきた.今日の肥満の世界的な蔓延は,過食,運動不足による現代のエネルギー過剰の産物である肥満を基盤病態とする,現代病としてのメタボリックシンドロームの認識と予防,治療戦略の重要性を強く示唆するものである.
 今回,松澤佑次先生(大阪大学名誉教授,財団法人住友病院院長)の監修の下に「メタボリックシンドローム」に関する3冊の本が財団法人代謝異常治療研究基金の特別研究助成の研究成果のまとめとして発刊されることになった.
 「疫学と予防対策」は札幌医科大学の島本和明先生,「病因・病態の分子生物学」は大阪大学の船橋 徹先生,「治療戦略」は京都大学の中尾が担当することになった.メタボリックシンドロームの基盤病態が肥満であることより,その基本治療戦略は抗肥満を目的とする「減量治療」であるが,抗肥満薬は開発途上にあり,有効な薬物治療はいまだ確立されていない.薬物治療以外に,食事療法,運動療法,行動療法,肥満外科治療などがあるが,それらの治療戦略の特徴と進歩はそれぞれの専門分野の研究者に委ねるべきであると考えた.
 当研究室では,1994年のFriedmanらによる「レプチンの発見」以来,生体内の最大の内分泌器官としての脂肪組織から分泌され,強力な抗肥満作用を有するレプチンに注目して,その臨床的意義の解明と臨床応用を目指してトランスレーショナルリサーチを継続してきた.そして,われわれの研究課題の「メタボリックシンドロームに対するレプチン系を標的としたトランスレーショナルリサーチ」が「メタボリックシンドロームの治療」部門の特別研究助成に選ばれ,このたび,研究成果を本書にまとめることになった.
 したがって,本書はメタボリックシンドロームの治療戦略をまとめた教科書ではなく,(1)レプチンを含む多種類のアディポサイトカインを分泌する生体内最大の内分泌器官である脂肪組織,(2)メタボリックシンドローム・肥満症におけるレプチンの臨床的意義の解明と臨床応用を目的とした医学研究(トランスレーショナルサイエンス),(3)脂肪組織に過剰な脂肪が蓄積した状態である肥満症やメタボリックシンドロームとは対照的に,脂肪組織に脂肪を蓄積できない脂肪萎縮症の診療研究活動を通して得られた,脂肪萎縮症と肥満症やメタボリックシンドロームとの対比からの学習と考察,(4)メタボリックシンドローム・肥満の診断機器としての腹腔内脂肪(内臓脂肪)測定装置の開発・実用化に参加してきた臨床医学研究者(Clinician/ScientistあるいはPhysician/ Scientist)の研究助成に対するまとめの報告書である.

2012年3月
京都大学大学院医学研究科内分泌代謝内科教授
中尾一和