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内科医のための睡眠薬の使い方診断と治療社 | 書籍詳細:内科医のための睡眠薬の使い方

田崎病院副院長・東京医科歯科大学名誉教授

松浦 雅人 (まつうら まさと) 編著

田崎病院薬剤室 編集協力

初版 B5判 並製 160頁 2015年10月30日発行

ISBN9784787822147

定価:4,180円(本体価格3,800円+税)
  

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高齢化,夜型化,ストレス社会,シフトワークの常態化などで,不眠症のリスクがますます高くなる今,内科医待望の1冊.
第I章で睡眠薬・不眠症治療の基礎知識をわかりやすく基本見開きでコンパクトに解説,
第Ⅱ章では各薬剤の重要点が一目でわかるように工夫した.
患者説明にすぐに使えるQ&A,睡眠にまつわるコラム,主な薬剤写真も充実.診察室の書架に必須の1冊!

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目次

はじめに
本書の参考文献
執筆者一覧

第Ⅰ章 睡眠薬治療の基本
1 不眠を訴える患者を診たとき,まずは非薬物的アプローチを行う
2 睡眠薬治療を始めるときに,知っておくべきこと
3 睡眠薬治療をやめるときに,知っておくべきこと
4 小児・思春期,女性例に対する睡眠薬の使い方
5 高齢者に対する睡眠薬の使い方
6 認知症のある人の不眠症への対処法
7 うつ病に伴う不眠症への対処法
8 その他の精神障害に伴う不眠症への対処法
9 高血圧・心疾患をもつ人への睡眠薬投与
10 腎疾患・泌尿器疾患をもつ人への睡眠薬投与
11 呼吸器疾患をもつ人への睡眠薬投与
12 その他の身体疾患をもつ人への睡眠薬投与
13 薬剤が原因となる不眠症に注意
14 睡眠薬の代謝と相互作用
15 睡眠薬を過量服用してしまったら
16 睡眠薬を服用している人の自動車運転

第Ⅱ章 睡眠薬各論
A 不眠症臨床で用いられる薬剤
1 オレキシン受容体拮抗性睡眠薬
スボレキサント
2 メラトニン受容体作動性睡眠薬
ラメルテオン
3 GABA系睡眠薬
3-1  非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
3-1-1 ゾルピデム
3-1-2 ゾピクロン
3-1-3 エスゾピクロン
3-2  ベンゾジアゼピン系睡眠薬
3-2-1 トリアゾラム
3-2-2 エチゾラム
3-2-3 ブロチゾラム
3-2-4 リルマザホン
3-2-5 ロルメタゼパム
3-2-6 ニメタゼパム
3-2-7 フルニトラゼパム
3-2-8 エスタゾラム
3-2-9 ニトラゼパム
3-2-10 クアゼパム
3-2-11 フルラゼパム
3-2-12 ハロキサゾラム
B 不眠症への適応があるが不眠症臨床で用いられない薬剤
3-3  バルビツール酸系睡眠薬
3-3-1 ペントバルビタール
3-3-2 アモバルビタール
3-3-3 バルビタール
3-3-4 フェノバルビタール
3-3-5 ベゲタミンRA,B
3-4  非バルビツール酸系睡眠薬
3-4-1 臭化カリウム
3-4-2 ブロモバレリル尿素
C 不眠症への適応はないが睡眠改善薬として用いられる薬剤
4 鎮静系抗精神病薬
4-1 レボメプロマジン
4-2 クエチアピン
5 鎮静系抗うつ薬
5-1 トラゾドン
5-2 ミアンセリン
5-3 ミルタザピン
6 生理検査で用いられる催眠薬
6-1 トリクロホスナトリウム
6-2 抱水クロラール
7 抗ヒスタミン薬
7-1 ジフェンヒドラミン
7-2 d-クロルフェニラミンマレイン酸塩
7-3 プロメタジン
7-4 シプロヘプタジン
7-5 ヒドロキシジン
8 漢方薬

第Ⅲ章 睡眠薬使用上のQ&A
付 録
1 各種睡眠薬・睡眠改善薬の発売年,商品名,剤型,薬価,後発医薬品の有無
2 各種睡眠薬・睡眠改善薬の用量,最高血中濃度到達時間(Tmax),消失半減期(T1/2)
3 各種睡眠薬・睡眠改善薬の規制区分,処方日数制限
4 各種睡眠薬・睡眠改善薬の胎児危険度と授乳の可否
5 各種睡眠薬・睡眠改善薬の等価換算表
6 薬剤一覧


索 引

Column
・入浴と睡眠
・断眠の世界記録
・日曜不眠症とは?
・アルコールと睡眠
・睡眠不足とメタボリック症侯群との関係
・健康な人の眠りとは?
・サマータイム
・重大な産業事故は睡眠不足が原因
・線維筋痛症の不眠
・不眠症治療の経過
・長時間睡眠者
・短時間睡眠者
・アンビエン・ドライバー
・アンビエン(R)と夜間摂食症候群
・薬物の血中濃度の推移
・非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の開発物語
・終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)とは?
・ベンゾジアゼピン系睡眠薬の開発物語
・トリアゾラム・バッシング
・乳幼児の夜泣きへの対処法
・幼児の早寝・早起きが定着しつつある
・睡眠と覚醒のフリップ・フロップのシェーマ
・特発性不眠症とは?
・睡眠時間の個人差
・男性のほうが女性よりも睡眠リズムをくずしやすい
・朝型(ひばり型)と夜型(ふくろう型)の睡眠リズム
・オレキシン(ヒポクレチン)の命名
・産業革命以前には人は2回に分けて睡眠をとっていた
・不眠による経済損失
・不眠と不眠症は異なる
・原発性不眠症とは?
・運動と睡眠
・睡眠不足の影響は若い人で大きい
・睡眠負債は2週間持続する
・不眠と生活習慣病の関係
・推奨される年齢別睡眠時間
・日本人は睡眠時間が短い
・睡眠の日
・睡眠日誌

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序文

不眠症状には,入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒があり,日本人の30%以上の人がいずれかの症状を経験し,高齢者ではさらに頻度が高いといわれる.2014年3月に,厚生労働省の研究班は「健康づくりのための睡眠指針」を11年ぶりに見直し,新しい睡眠12か条を公表した.そこでは,若年世代,働く世代,高齢世代といった,ライフステージごとの睡眠指針を提案している.睡眠時間は個人差が大きく,必要とされる睡眠時間は年齢とともに減少し,25歳では平均7時間だが,65歳では6時間となる.男性では40歳代から早朝覚醒が増加し,50歳代後半からは睡眠覚醒リズムが朝方化していく.女性ではこうした変化はみられないため,50歳を超えると夫婦で睡眠覚醒リズムが解離する傾向がある.睡眠に関する正しい知識をもち,自分にあった睡眠をみつけることが重要であるとしている.
不眠症とは,睡眠をとるために適切な環境で眠ろうとしているのに寝つくことができなかったり,中途覚醒や早朝覚醒があったりして,日中の活動に支障が出ている状態である.今夜も眠れないのではないかという不安感が生じ,夜になるとかえって目がさえてしまう.ベッド(布団)に入っても眠れないまま悶々として,その苦痛がさらに眠気を奪うといった悪循環に陥っている.日本人のおよそ10%にみられるといわれ,日中のQOLが低下し,作業事故の増加,生活習慣病の悪化,長期欠勤やうつ病の発症が懸念される.日本人は睡眠薬に対する不安が強い国民で,アルコールを寝酒として飲用するなどの誤った対処法が少なくない.2013年6月には,厚生労働省の研究班と日本睡眠学会のワーキンググループが「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」を策定した.睡眠薬に対する正しい知識を提供し,適切に使用して睡眠薬の恩恵を受ける道筋を明確にすることを目的としている.
現在の日本は高齢化,夜型化,ストレス社会,シフトワークの常態化などで,不眠症のリスクはますます高くなっている.最近の疫学調査では睡眠薬の処方数も投与量も増加しつつあり,睡眠薬を開始した人の30%は6か月を超えて長期にわたって服用しているという.複数の睡眠薬を使用するとより有効であるというエビデンスはないが,多剤併用傾向も増加しているという.このような状況を踏まえ,2014年の診療報酬改定では,1回の処方において睡眠薬を3剤以上投与した場合に,精神科継続外来支援・指導料を算定できないとされた.睡眠薬は多くても2剤までにとどめるのが原則となった.
これまでの睡眠薬は抑制性神経伝達物質であるGABAの働きを増強する鎮静系睡眠薬が主体であったが,その後,睡眠覚醒リズムを整えるメラトニンの働きを強める睡眠薬や,脳の覚醒系を賦活するオレキシン受容体を阻害する非鎮静系睡眠薬が上市され,新しい睡眠薬の時代を迎えた.本書では不眠症の薬物療法を安全かつ効果的に行うために,内科医が知っておくべき睡眠薬の知識と不眠症治療の実際を解説した.第I章では睡眠薬治療の基本について述べ,II章ではグループ別あるいは個々の睡眠薬について解説した.第III章のQ&Aは患者さんへの説明の際に参考にしていただきたい.また,睡眠や不眠に関連する豆知識をコラムとして充実させたので,気分転換にお読みいただければ幸いである.
本書では最新の情報を提供するよう努めたが,医薬品情報は日々更新されており,読者におかれては折に触れて薬剤の添付文書に目を通すことを勧めたい.
2015年9月
松浦雅人