発達障害は適切な時期に“気づき”支援していくことがとても重要である.その発達障害に気づく具体的機会として「5歳児健診」がある.本書は「5歳児健診」という新しい健診の診察方法とその後の支援,助言ノウハウを解説した初めての書籍.軽度の発達障害児の診療に関する具体的な手順やコツが満載.診察方法を収録したDVD付.
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目次
5歳児健診――発達障害の診療・指導エッセンス contents
はじめに
第1章 発達障害と適正発見
…………………………………………小枝達也
軽度の発達障害とは
気づきのシステム
第2章 5歳児健診における診察法
…………………………………………小枝達也
5歳児健診における診察の実際
診察の構造化
インタビュー
第3章 5歳児健診の実際
5歳児健診
…………………………………………前垣義弘
5歳児発達相談
…………………………………………小枝達也
訪問型健診
…………………………………………下泉秀夫
第4章 地域資源を活用した気づき
山口県における「療育相談会」の活用例
…………………………………………林 隆
久留米市における保健所を活用した健診
…………………………………………山下裕史朗
トピックス 5歳児健診における軽度の発達障害児の発見についての
費用対効果分析
…………………………………………大日康史,菅原民枝
コ ラ ム 1QALY獲得に必要な費用とは
…………………………………………大日康史,菅原民枝
第5章 就学前児の行動評価尺度
…………………………………………山下裕史朗
幼児の行動評価について
トピックス 診断名別初診時SDQとCBCLの比較山下裕史朗
第6章 事後相談と学校教育との連携
…………………………………………小枝達也
気づきの深め方とつなぎ方
事後相談体制
学校教育との連携
発達支援教室
コ ラ ム 学校の教育制度について
…………………………………………小枝達也
第7章 医師から保護者へのアドバイス
■注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
…………………………………………林 隆
AD/HDの理解
AD/HDへの対処法
■高機能広汎性発達障害(HFPDD)
…………………………………………下泉秀夫
HFPDDの理解
気づきから相談・診断へ
HFPDDの子どもたちへの支援とアドバイス
■学習障害(LD)
…………………………………………関あゆみ
学習障害の理解――学習障害とは何か
就学に向けての保護者へのアドバイス
学童期の保護者へのアドバイス
第8章 医師から保育士・教師へのアドバイス
■注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
…………………………………………林 隆
AD/HDの理解
AD/HDへの対処法
併存障害についての理解と二次障害の予防
■高機能広汎性発達障害(HFPDD)
…………………………………………下泉秀夫
HFPDDの理解と気づき
HFPDDの子どもたちへの支援とアドバイス
■学習障害(LD)
…………………………………………関あゆみ
学習障害への気づき
読み書き障害の理解と支援
算数障害の理解と支援
教室における配慮
第9章 症例から学ぶ気づきと支援のエッセンス
5歳児健診
●症例1▲ 5歳児健診が支援のきっかけとなった例/5歳6ヶ月,男児
…………………………………………前垣義弘
●症例2▲ 5歳児健診で保護者の理解が得られなかったAD/HD児/
5歳6ヶ月,男児
…………………………………………前垣義弘
5歳児発達相談
●症例3▲ 5歳児発達相談がきっかけとなったAsperger症候群/
5歳3ヶ月,男児
…………………………………………小枝達也
保育所健診
●症例4▲ 保育所の5歳児健診から医療機関へつながった多動児/
4歳10ヶ月,男児
…………………………………………下泉秀夫
地域特性を活かした健診
●症例5▲ 療育相談会を利用し,円滑な就学支援ができた例/
5歳4ヶ月,男児
…………………………………………林 隆
地域特性を活かした健診
●症例6▲ 相談を利用し,就学以降も支援を継続できたAD/HDと
PDD併存児/5歳6ヶ月,男児
…………………………………………山下裕史朗
●症例7▲ 相談を利用し,LDが疑われた例/4歳10ヶ月,男児
…………………………………………山下裕史朗
●症例8▲ 相談を利用し,HFPDDが疑われた例/4歳5ヶ月,男児
…………………………………………山下裕史朗
第10章 薬物療法
…………………………………………林 隆
発達障害の「治療」の考え方
薬物療法の実際
文 献
索 引
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序文
最近では小児科の先生のなかに「子どもの心の診療医」研修を受けられた方が増えてきました.それにともなって,落ち着きがない,指示が入りにくい,集団行動がとりにくいといった特性のある幼児に,どのように気づき,どのように診察し,どのように治療や指導をしていったらよいか,という相談を受けることが多くなりました.これは小児科の先生方が,小児科の新しい診療分野,“発達障害”に目を向けるようになっている現れなのだろうと思われます.
本書は,こうした要望にお応えすることを目指して,5歳児健診という新しい健診とその後の支援体制の提案だけでなく,軽度の発達障害のある子どもの診療に関する情報を満載しています.
軽度の発達障害のある子どもの診察方法,気づきの場としての5歳児健診・5歳児発達相談,子育て支援を重視した助言のノウハウ,学校との連携方法,薬物療法など,幼児期から学童期の発達障害医療に対応できる構成となっています.さらに,診察方法の一例をDVDに収録し,本を読むだけでは実感できない診察のコツを提供しています.
本書が軽度の発達障害のある幼児への気づきに役立ち,子どもたちが就学を笑顔で迎え,学ぶこと,楽しむこと,そして生きることへの手応えを感じながら育ってくれるきっかけになることを心から願っています.
2008年7月
鳥取大学地域学部地域教育学科教授 小枝達也