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書籍詳細

カラーアトラス 図解 広汎性腹式子宮全摘出術
新版 産婦人科手術シリーズ Ⅱ診断と治療社 | 書籍詳細:新版 産婦人科手術シリーズ Ⅱ DVD

田附興風会医学研究所北野病院病院長

藤井 信吾(ふじい しんご) 総監修/責任著者

京都医療センター婦人科

関山 健太郎(せきやま けんたろう) 共著者

初版 B5判  196頁 2013年12月25日発行

ISBN9784787819819

定価:本体19,000円+税

好評を得た前シリーズより,若干の項目を加え,全3巻として発売が決定.本書はその第二弾である,シリーズ第2巻である.産婦人科のさまざまな手術において,正確な解剖学的知識に裏打ちされた確実な手術操作をイラストでわかりやすく解説.今回は,「広汎性腹式子宮全摘出術」について,その歴史についても詳細に記載.貴重な岡林自身による手術映像,藤井信吾による手術テクニックをおさめた4時間にもおよぶ大ボリュームのDVDが付録.

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目次

はじめに
著者略歴

子宮頸癌手術術式 歴史と基本理念
1 子宮頸癌手術術式の歴史と問題点
2 広汎性子宮全摘出術の術式分類の問題点
3 岡林術式が考案されるまでの過程と,その術式の特徴
4 岡林式腹式系統的広汎性子宮全摘出術の基本的な理念

岡林式腹式系統的広汎性子宮全摘出術
1 岡林式腹式系統的広汎性子宮全摘出術の手順
2 岡林術式の優れている点
3 岡林式広汎性子宮全摘出術の改良と工夫

Step by step操作による岡林式腹式広汎性子宮全摘出術(神経温存しない場合)
1 手術手順のまとめ
2 手術操作の実際

広汎性子宮全摘出術における神経温存の基本的理念
1 女性骨盤臓器(子宮・膀胱・直腸)の神経支配
2 広汎性子宮全摘出術の手術操作と神経損傷部位
3 
疑問点:Wertheim術式では深部子宮静脈を切断しないのに,膀胱機能障害が高頻度に発生するのはなぜか?


Step by step操作による岡林式腹式広汎性子宮全摘出術
における神経温存の方法
1 手術手順のまとめ
2 神経温存手術に必要な手術操作手順の実際
3 手術写真における像(参考)
4 神経温存の最終目標


付録
付録1 超広汎性子宮全摘出術について
付録2 三林術式について
付録3 手術に対する心構え

コラム 広汎性子宮全摘出術v.s. HPVワクチン

索引
付録DVDについて

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序文

はじめに
 新版 産婦人科手術シリーズIIは,広汎性腹式子宮全摘出術を図解し集約した形の本として仕上げた.
 広汎性腹式子宮全摘出術の手術方法として,欧米では,Wertheim術式(1911年)が一般的であるが,日本では,京都大学の岡林教授がその師匠である高山教授とともに1921年に開発した岡林術式を基本とした術式が一般的である.
 しかし,この岡林術式は世界の中で名前はある程度知られていても実際の手術がいかなるものであるか,殆ど知られていなかったと言っても過言ではない.台湾,韓国,中国,タイなどの医師の中で岡林術式を日本で学んだ人たちは,岡林術式を行いそれが伝承されている施設もある.また,米国やヨーロッパの少数の大学では知られていて,岡林術式に近い手術を行っている施設もあるにはあるが,岡林術式は,世界に知られる機会を逃した日本が生んだ偉大な手術術式であると私は考えている.その理由は,岡林教授が,手術の撮影を京都の映画会社に依頼し,立派な手術映画を完成し,いざ世界中にこの映画をもって普及活動をしようとした矢先に,京大事件が起きて,岡林教授はこれに巻き込まれて教授を辞任することになってしまった.私は,この時,岡林教授が手術映画を持って世界行脚を行っていれば,世界各国での子宮頸癌手術はもっと,ましなものになったに違いないと思っている.
 その後,岡林教授の後任の三林教授は,基靱帯を十二分に切除する手術として超広汎子宮全摘出術と称する手術映画を作成し,これを名古屋の産婦人科学会で発表したが,これに対して岡林前教授はじめ岡林教授の弟子たちが,過激すぎる等々多くの反論を行い,また医事新報上でも論文による現教授と前教授の壮絶な戦いが残っている.このことで三林教授は,以後は,この手術について余り外部に発表することを控えていた.これも革新的な手術術式であったのに,世界への発信が出来ないままになってしまい,最近はLaterally extended parametrectomyなどと称されて主としてハンガリーで同じ内容の手術が行われている.
 様々な要因が絡まって,日本で開発された偉大な広汎性腹式子宮全摘出術に関する手技が,世界に普及しなかったのは大変残念なことである.しかし,その後多くの京都大学学派の人たちは,岡林はこうしていた,三林はこうしていたという手技にのみに重点を置いた手術の伝承をしていたように思われる.しかし,東京大学の荻野久作は,岡林の手術を見学に来て,これこそが広汎性子宮全摘出術だと言って,これに荻野の改良を加えて東京大学にこの術式を紹介した.そして小林隆教授は,極めて熱心に岡林術式を研究して,詳細な解説を加えた教科書を発刊された.そして,神経温存に先鞭をつけられて,岡林術式は日本の中に広く伝わっていくのである.
 超広汎性手術を三林が発表したとき,岡林は超広汎という言葉が,自分の手術を無視していると感じて,同じ大学出身者同士が論争を重ねて,三林術式の長所が世界に普及しなかったことは大変残念なことである.また,東京大学が岡林を乗り越え東京大学の色を出す努力をされたことには敬意を表したい.しかし,日本の各施設の中で行われている様々に改良や,改変している手術術式は,多くの優れた点を含んでいるものと思われるが,自己主張を強く出すことで,それぞれの学派のように,無数の少しずつ異なった手術がなされているのが実情であると感じている.したがって,いつまでたっても日本の中でも広汎性腹式子宮全摘出術の仕方はバラバラであり,いつまでたっても手術の持つ長所を正確なデータとして発表できないで,放射線治療やこれに化学療法を加える治療法の方が手術より優れているなどという論文に圧倒されて,人々は難しい手術から遠ざかり,徐々に婦人科医が広汎性子宮全摘出術のもつ解剖学的知識の持つ臨床における重要な視点を失いかけてきていることは,極めて残念なことである.
 しかし,腹腔鏡手術の発達と,ロボット手術の急速な導入によって,広汎性子宮全摘出術に必要な詳細な骨盤構造が見やすくなった.そして,開腹で難解に思える手術が,むしろやりやすい傾向になっている.しかし,ロボットで婦人科の難解な手術をするときに最も大切なことは,詳細な骨盤の解剖学的な知識である.欧米のようにロボットで準広汎全摘出術のような手術を行って満足している世界と日本は基本的に異なっているものと私は信じたい.
 岡林術式の解剖を詳細に解明していくと,いかに岡林術式の骨格そのものが理にかない,また臨床解剖学的にも正しい手術術式であることかを,私は心の底から再認識することになった.特に膀胱子宮靱帯の解剖学的解明を通して岡林術式の原理を理解し,その偉大さをより強く認識することになった.
 本書は,その岡林術式を行うのに必要な,骨盤の解剖を血管系・神経系を中心にして詳細に図解して解説することによって,岡林術式に必要な解剖の基本型を示したつもりである.そして,必然として神経温存手術が可能となったので,それを記載している.
 詳細な解剖学的な知識をもっている人が手術操作を簡略にすることは許されるが,不十分な知識のもとでまあまあ良いだろうという簡略操作で行う手術は,たまにはうまくいくことがあるが,必ずなんらかの重大な出血や臓器損傷につながる可能性があることを知るべきである.
 解剖の基本に忠実な手術であれば,出血もなく,患者の予後も良い.本書からそのことを学んでいただければ幸いである.

 本書の付録に三林の超広汎子宮全摘出術の岡林・三林論争も少し書き加えておいた.

 付録DVDの手術動画は5本あり,ライブ手術2本を入れているので総時間4時間である.
 内容は以下の通りである.Introduction からVideo 1, 2, 3までは英語でナレーションを音声で入れ,それと共にビデオの中に英文の字幕もつけた.Video 4, 5は長時間の手術ビデオであるので,音声のナレーションは入れないで英文字幕での説明としている.そして,両方共に手術をチャプターに分けることが出来るようにしてあるので,見たいと思うチャプターに飛んでビデオを見ていただければ幸いである.この二本の長時間ビデオは,実際に手術を見学に来ている人達のまえで行った手術を,ヘッドライトに付けたカメラを通して,術者の目で記録した手術の中で,無駄なカメラ(術者の頭)の動きと,結紮する動作を一回だけにすることで,短くすることが出来た手術ビデオである.二本のビデオの中には,まだまだ未熟な部分が多く含まれていることを痛感しているが,誰もこのように全手術行程を記録して,詳細に見せるビデオを作成していないので,敢えて付録とした.
 他人の手術を見ることで何かを感じ,問題点を見つけることも大切であると考えている.ご笑覧いただければ幸いである.

Introduction
Video 1: Original Okabayashi’s Radical Hysterectomy performed by Okabayashi himself in 1932
Video 2: 
Concept and Precise anatomy for Nerve-sparing Okabayashi’s Radical Hysterectomy by Shingo Fujii
Video 3: 
Mibayashi’s Super-radical hysterectomy performed by Mibayashi himself and Total Extirpation of the Internal Iliac Blood Vessel System with the cardinal ligament by Shingo Fujii
Video 4 and 5: 
Live Surgical Video on Nerve-sparing Okabayashi’s Radical Hysterectomy performed by Shingo Fujii.
Video 4 is 85 minutes video on bulky cervical squamous cell carcinoma.
Video 5 is 95 minutes video on bulky cervical adenoma malignum.


平成25年11月        藤井信吾