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産業メンタルヘルスの実際診断と治療社 | 書籍詳細:産業メンタルヘルスの実際

東海大学医学部教授・精神医学

保坂 隆(ほさか たかし) 著

1版 A5判 並製 126頁 2006年04月15日発行

ISBN9784787815019

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定価:本体2,800円+税
  

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企業内における自殺者急増の悪しき状況を打開すべく, 専門医の立場から,産業医,産業カウンセラー,産業保健師,産業 看護師の方々だけでなく,広く,企業経営者,管理職,人事担当者 の方々に向けて,現実的なアドヴァイスを与え,著者は,特に,平 成16年度より,自殺に関する厚生労働省科学研究の主任研究者とし て,自殺者を減少させるための研究に従事しており,研究内容とし ては,在宅介護者の4人に1人はうつ状態にあり自殺のハイリスク ブループとして喚起を促し,「こころの安全週間」の制定を提言す るなどNHKニュースにも取り上げられてきています. 具体的には,うつ病やストレスについての概説に始まり,管理職や 上司としてのあるべきベストな対応の仕方,診断書に記載された病 名についての考え方,早期発見のテクニック,予防的介入のこつな どを,現場の立場に立って記載・説明したものである. さらには,時期的には,超過勤務時間が一定以上の従業員に対する 産業医の面接が法制化された2006年4月を射程に入れて発刊されたも のである.

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目次

Contents

はじめに
著者プロフィール
第I章 最近の産業メンタルヘルスの動向
 A 自殺者の急増
 B 厚生労働省のケアプラン
 C 過労自殺
 D 超過勤務時間
第II章 ストレス段階の指標
 A セリエの“一般適応症候群”
  1 警告反応期
  2 抵抗期
  3 疲弊期(または疲憊期)
 B ストレス関連障害の分類
 C ストレス状態の段階
  1 “過剰適応”段階
  2 “神経過敏”段階
  3 “無関心”段階
  4 “引きこもり”段階
  5 “抑うつ”段階
  6 “行動化”段階
 D 介入の時期によって予後は変わる
第III章 診断書に出てくるおもなメンタル疾患
 A 統合失調症
  1 破瓜型,緊張病型,妄想型
   a 破瓜型(hebephrenia type)
   b 緊張病型(catatonic type)
   c 妄想型(paranoid type)
  2 診断書を書くとき,読むときの留意点
 B うつ病,抑うつ状態,うつ状態,反応性抑うつ
  1 状態像と疾患名
  2 診断書を書くとき,読むときの留意点
   a 外因性
   b 心因性
   c 内因性
 C 心因反応
  1 診断書を書くとき,読むときの留意点
 D 適応障害
  1 診断書を書くとき,読むときの留意点
 E 自律神経失調症
  1 診断書を書くとき,読むときの留意点
 F 不眠症
  1 原発性,続発性
   a 原発性不眠症
   b 続発性不眠症
  2 診断書を書くとき,読むときの留意点
 G 神経衰弱
  1 診断書を書くとき,読むときの留意点
 H 慢性疲労症候群
  1 診断書を書くとき,読むときの留意点
第IV章 メンタル疾患の診断の仕方
 A 段階的な評価
 B 精神症状の理解
  1 幻覚
   a 幻聴
   b 幻視
  2 妄想
  3 不安,恐怖,焦燥
  4 心気
  5 強迫
  6 ヒステリー
  7 失見当識あるいは見当識障害
  8 健忘
  9 抑うつ気分
  10 精神運動性抑制
  11 不眠または睡眠障害
  12 観念奔逸,誇大妄想
  13 記銘障害または記銘力障害
 C 精神症状から状態像,状態像から
メンタル疾患の診断
  1 幻覚妄想状態
   a 原因疾患
  2 抑うつ状態
   a 原因疾患
  3 躁状態
   a 原因疾患
  4 不安状態
   a 原因疾患
第V章 うつ病の診断
 A うつ病の診断
  1 抑うつ気分
  2 精神運動抑制
  3 身体症状
  4 日内変動
 B うつ病になりやすい性格
  1 メランコリー親和型性格
  2 執着気質
  3 その他
 C うつ病になるきっかけ
  1 メランコリー親和型性格の場合
   a 対象喪失
   b 悲哀の仕事
  2 執着気質の場合
 D 10年間の企業うつ病の変遷
  1 1990年代後半と2000年以後の二つのタイプ
   a 1990年代後半のタイプ
   b 2000年以後のタイプ
 E うつ病治療薬の基本
  1 様々なうつ病治療薬の位置づけ
   a 種類と用量
 F 抗うつ薬の処方のバリエーション
  1 軽症の場合
  2 不安が強い場合
  3 不眠を伴う場合
  4 SSRIを使用したい場合
  5 SNRIを使用したい場合
 G 仮面うつ病
  1 Aさんの場合
 H うつ病の治り方
第VI章 上司のためのメンタルセミナー
 A 上司によくある誤解
  1 誤――部下のことは何でも知っておかなければいけない
  2 誤――うつ病は気合いが入っていないだけだ
  3 誤――うつ病は気の弱い性格のやつが罹る病気だ
  4 誤――うつ病はやる気で治せ
  5 誤――うつ病は心の風邪のようなものだ
  6 誤――自殺の話をするとかえって自殺されてしまう
 B 部下がうつ病になったら
  1 部下の症状に気づく
  2 声をかける
  3 二人だけで話せる場を設定する
  4 “うつ病”よりも“スランプ”のほうが柔らかい響きがある
  5 まずは産業医への相談を勧める
  6 診察後も本人と直接話をする
  7 うつ病をつくる環境かどうかチェックする
  8 産業医と話をする
  9 部課内の協力体制をつくる
  10 復帰後も再燃に注意する
第VII章 休職から復職へ
 A 休職期間のアプローチ
 B 復職判定
 C 復職プログラム
 D 復職後のサポート
第VIII章 企業におけるメンタルヘルスプログラムの経済的効果
 A 諸外国での研究
 B わが国での研究
第IX章 コンサルテーションからリエゾンへ――予防産業メンタルヘルスの勧め
 A コンサルテーション・リエゾン精神医学の歴史と定義
  a コンサルテーション・リエゾン精神医学と同義語として使われる場合
  b 患者-医療者関係,患者-家族関係などの関係性を扱う機能を意味する場合
  c 他科入院中の患者を精神科が併診する場合
  d リエゾンを構造として把えている場合
 B 産業場面でのコンサルテーション・リエゾン精神医学
  1 リエゾン・チームの結成
   a 常勤の看護師か保健師を
   b 週半日ないし1日の産業カウンセラーを
   c 月1回の産業精神科医を
  2 従業員全体への啓蒙活動
  3 上司を対象にしたセミナーの開催
  4 従業員のメンタルヘルスのチェック
   a 有料なのか無料で使用できるかを事前に確認すべきである
   b メンタルチェックの情報を会社側が得てもよいのかを事前に確認すべきである
   c それをどのように役立てるかを事前に検討すべきである
  5 組織診断


索  引
  和文索引
  欧文索引

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序文

 いま自殺への対策が急務である.1998年にそれまでの2万人
台前半だった自殺による死亡者数が,3万人台に急増したた
め,2000年には“健康日本21”の一つとして厚生労働省が自
殺者数を減らす数値目標を設定したが,2005年の中間評価の
際に,自殺者数が全く減少していないことがわかったからで
ある.これについては新たに戦略研究が開始されたので,そ
の効果を期待したいところである.
 さて,その自殺者数急増の背景の一つがバブル崩壊に続く
経済的不況・リストラなどであるが,経済的不況と自殺の間
に介在するブラックボックスこそ“うつ病”であり,最近で
は,この用語が日常的にも使われるようになってきた.
一方,それと並行して,過労が原因で自殺した,いわゆる過
労自殺の案件に対して,2000年に会社側の“安全配慮義務”
違反を認定した損害賠償命令の判決が出たのを契機として,
企業は従業員のメンタルヘルスに注目するようになってきた.
 本書は,このような状況のすべてを背景にして,企業や職
場でのメンタルヘルスに関して,うつ病を軸として,産業医
・産業カウンセラー・産業保健師や看護師などの医療者だけ
でなく,企業の経営者・上司・人事担当者の方々にも読んで
いただくために書かれたものである.そのため,うつ病やス
トレスについての概説,上司としての対応の仕方,診断書に
出てくる病名についての考え方,早期発見や予防的介入など,
企業に関係するすべての人々に読んでいただくために目次立
てを工夫した.また,本書は時期的には,超過勤務時間が一
定以上の従業員に対する産業医の面接が法制化される2006年
4月1日を意識しながら準備したものである.さらに専門的に
は,予防的なシステムや介入を目指した“リエゾン産業精神
医学”の概念の導入を提唱したものである.
 本書が,結果的に,特に企業や職場でのうつ病発生率の低
下や,過労自殺の低減化に対して,何らかの寄与・貢献がで
きるものになればと期待してやまない.
2006年4月1日
東海大学医学部教授・精神医学 保坂 隆