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アスペルガー障害とライフステージ診断と治療社 | 書籍詳細:アスペルガー障害とライフステージ
発達障害臨床からみた理解と支援

青山学院大学文学部教育学科教授

古荘 純一(ふるしょう じゅんいち) 編著

京都大学医学部精神医学教室院内講師

岡田 俊(おかだ たかし) 著

初版 A5判 並製 248頁 2007年12月25日発行

ISBN9784787815781

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定価:本体4,200円+税
  

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発達障害と診断された子どもは,その中核症状とそれに関連し た症状を抱えながら大人になっていく.家庭・学校・社会で周囲 とよりよい関係を築くためには,ライフステージの変化にあわせ た支援が必要とされる. “まれではない”アスペルガー障害について,著者らの豊富な臨 床経験と学説に基づき,各ライフステージに合わせた具体的な理 解と支援の実際について,解説する.事例やコラム,トピックス も充実した待望の一冊.

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目次

第1章 アスペルガー障害とは古荘純一・岡田 俊

 I ハンス・アスペルガーとアスペルガー障害
 II 発達障害としてのアスペルガー障害の位置付け
 III 疫学調査
 IV 基本症状の理解
 V 診断的特徴
 VI 医療的問題の分類
 VII 薬物治療総論〔4)岡田 俊〕
 VIII 不十分な現在の支援体制

 ■トピックス 脳科学研究

第2章 アスペルガー障害と乳幼児期古荘純一

 I 中核症状
 II 二次合併症
 III 早期発見と留意点
 IV 乳幼児期からの支援
 V 家族の支援

 ■トピックス 発達障害と虐待
 □事例I A男(男児) 初診時6歳
 □事例II B子(女児) 初診時5歳

第3章 アスペルガー障害と学童期古荘純一・岡田 俊

 I 中核症状
 II 二次合併症――関連症状
 III 二次合併症――併存障害
 IV AD/HDとアスペルガー障害の診断上の相違
 V 薬物治療各論(岡田 俊)
 VI 病名の告知(岡田 俊)
 VII 学童期の支援――学校生活を中心として
 □事例III C男(男児) 初診時9歳(小学3年生)
 □事例IV D男(男児) 初診時10歳(小学4年生)

第4章 アスペルガー障害と思春期古荘純一・岡田 俊

 I 中核症状
 II 二次合併症
 III 思春期の支援〔3)岡田 俊〕

 ■トピックス アスペルガー障害の子とQOL,特に自尊感情
 □事例V E男(男児) 初診時12歳(小学6年生)
 □事例VI F男(男性) 初診時14歳(中学2年生)

第5章 アスペルガー障害と青年期古荘純一・岡田 俊

 I 中核症状
 II 二次合併症(岡田 俊)
 III 大学生活の問題(岡田 俊)
 IV 就労支援(岡田 俊)
 V アスペルガー障害と引きこもり(岡田 俊)

 ■トピックス 司法事例からみたアスペルガー障害
 □事例VII G男(男性) 初診時22歳(大学生)
 □事例VIII H男(男性) 初診時21歳(大学生)

第6章 アスペルガー障害と成人期・成育医療古荘純一・岡田 俊

 I 成人期の症状
 II アスペルガー障害の人の結婚と子育て(岡田 俊)
 III 成人期にはじめて診断されるアスペルガー障害(岡田 俊)
 IV アスペルガー障害と成育医療

 ■トピックス アスペルガー障害と天才
 □事例IX I男(男性) 初診時26歳(岡田 俊)


第7章 医療・教育・行政の連携古荘純一・岡田 俊

 I 特別支援教育
 II 発達障害者支援法(岡田 俊)
 III 社会福祉的支援(岡田 俊)
 IV 医療と教育との連携
 V 医師ができること――医師の役割

参考文献

付 録 岡田 俊
  児童精神科領域で使用される代表的な薬剤
  発達障害者支援法

索 引

 コラム 古荘純一
 自閉症スペクトラムは増えているのか
 疑問形の習得
 実行機能と注意欠陥/多動性障害(AD/HD)
 アスペルガー障害の子の漢字の習得と文脈理解
 子どものPTSD
 回避されがちな小児精神障害の薬物治療
 性,プライバシーの問題
 うつ病を考える状況とは
 統合失調症を考える状況とは
 フルボキサミンの適切な投与方法
 簡単な社会常識テストを用いた社会性の障害の把握
 自叙伝にみるアスペルガー障害研究
 通級と特別支援教室
 特別支援連携協議会
 個別の教育支援計画

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序文

はじめに

 アスペルガー障害は,近年の疫学調査の結果から,決してまれな
障害ではないことがわかっています.それゆえ医師,教師,心理士
,保育士などの職種の人は日常的にかかわる可能性が高く,関心が
高まっていると思われます.
 教育関係者の方々中心の講演会でお話しする機会がありますが,
虐待や不登校など,発達障害以外のテーマであるにもかかわらず,
発達障害,特にアスペルガー障害についての質問を受けることが少
なくありません.どのように医師に相談すればよいのか,また医師
に相談したが適切な助言が得られなかったという指摘も受けること
があります.重要なことは,現場の方々から医療関係者に求められ
ているのは,診断をつけることではなく,具体的な助言であるとい
うことです.しかもその場限りの助言ではなく,継続的な助言が求
められていると強く感じています.
 また,アスペルガー障害の子どもたちは,さまざまな社会生活上
の困難を抱えながら大人になっていきます.私たち臨床家は,診察
をする患者さんひとりひとりの言葉からその当事者としての困難さ
を教えられることがあります.そして,何とかよい助言や支援がで
きないかと,いろいろな論文や教科書を参考に読んでいます.ただ
,広汎性発達障害の分野ではすでに多くの論文や専門書が出版され
ていますが,それらは軽度発達障害,高機能群,自閉症スペクトラ
ムという診断名の解説や学術的記載が中心で,子どものときからの
ライフステージを考えた臨床家向けの実践的な書籍は少ないと実感
していました.
 そのような考えをもちながら,私は臨床で経験したアスペルガー
障害の子どもの困難さを,2006年6月,第48回日本小児神経学会総会
で「思春期Asperger障害児の羞恥心と性に対するわきまえの障害の
検討」という演題で発表しましたところ,その会場で,診断と治療
社編集部長の堀江康弘氏に,本の執筆の依頼をいただきました.趣
旨をうかがいますと,私と同じようなご意見をもたれていることに
共感し,また非常に光栄なことでありますので,浅学の身を顧みず
に,お受けすることにしました.
 執筆にあたり,以下の点を本書の要といたしました.(1)アスペ
ルガー障害に焦点を絞った記述にする,(2)ライフステージを考え
年代別に解説をする,(3)学説や研究という観点は加味するものの
主として臨床経験からまとめていく,を三本の軸として,具体的に
は,(4)年代それぞれの中核症状と二次合併症に分けてわかりやす
く記載する,(5)理論ではなく実際的な支援方法について触れる,
(6)図表を多く用いて読みやすくする,(7)コラムやトピックス
を加える,(8)事例を呈示する,等に努めました.
 しかしながら,年代別に書き進めていくうちに,成人期を迎えた
事例は私自身の臨床経験が少ないという事実に直面しました.小児
科医として診療にかかわってきたアスペルガー障害の人々も多くは
青年期に達していますが,ライフステージというテーマを掲げた以
上,成育医療の観点もふまえた成人期にも触れないわけにはいきま
せん.そのような折,2006年10月の第47回日本児童青年精神医学会
で京都大学の岡田 俊先生の発表を,座長の立場でおうかがいし,
感銘を受け,早速執筆をお願いしたところご快諾いただきました.
岡田 俊先生には,青年期・成人期,そして薬物治療を中心にご執
筆をお願いしました.
 
 本書は,私たちの臨床経験に学説を加味して,各ライフステージ
にあわせた具体的な理解と支援の実際について記載した独自のもの
です.本書が実際の臨床現場で参考になることがあれば光栄です.
さらに,アスペルガー障害の人々に対して,家庭・学校・社会で周
囲とよりよい関係を築くための,ライフステージの変化にあわせた
支援につながることを願っています.
 
2007年11月 街路樹の紅葉を眺めつつ
古荘純一