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書籍詳細

シリーズ ボツリヌス治療の実際

眼科疾患のボツリヌス治療診断と治療社 | 書籍詳細:眼科疾患のボツリヌス治療

徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部感覚情報医学講座臨床神経科学分野(神経内科)

梶 龍兒(かじ りゅうじ) 総監修

寺本神経内科クリニック

寺本 純(てらもと じゅん) 監修

榊原白鳳病院

目崎 高広(めざき たかひろ) 監修

兵庫医科大学医学部眼科学教室

三村 治(みむら おさむ) 編集

初版 B5判 並製 104頁 2009年12月25日発行

ISBN9784787817518

定価:本体4,200円+税
  

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多様な有用性をもつボツリヌス治療を解説したシリーズ第三弾,眼科疾患編.眼瞼痙攣,片側顔面痙攣の診断とボツリヌス治療の実際,さらに長期管理のコツや手術治療まで網羅した1冊.

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目次

目  次

総監修の言葉 梶 龍兒 
編集にあたって 三村 治 
執筆者一覧

第1章 眼科からみた眼瞼痙攣,片側顔面痙攣
三村 治
1.眼科からみた眼瞼痙攣
2.眼科からみた片側顔面痙攣
3.おわりに

第2章 眼瞼痙攣の診断法(ドライアイとの関連も含めて)
若倉雅登
1.眼瞼痙攣の主訴と愁訴
2.ドライアイとの関連
3.眼瞼痙攣の診断法

第3章 薬剤と眼瞼痙攣
山本纊子
1.薬剤性眼瞼痙攣
2.眼瞼痙攣に対する薬物療法

第4章 BTX治療の実際
江本博文,清澤源弘,江本有子
1.BTX治療と他の治療法(治療手技)
2.BTX治療の副作用

第5章 眼瞼痙攣患者への指導法
中馬秀樹
1.眼瞼痙攣患者のQuality of Vision
2.生活指導
3.BTX投与に関する注意

第6章 眼瞼痙攣の手術治療
根本裕次
1.眼瞼痙攣手術に関する外科解剖
2.手術適応の決め方
3.手術手技

第7章 BTX治療の長期予後
木村亜紀子,三村 治
1.眼瞼痙攣の長期予後
2.片側顔面痙攣の長期予後

索 引

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序文

総監修の言葉

 わが国でのボツリヌス毒素療法は,1980年代後半から臨床試験が始まり,1996年に眼瞼痙攣に対しての治療が認可されて以来,2000年に片側顔面痙攣,2001年に痙性斜頸,2009年に小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足に対して適応が拡大されてきた.使用に関してはいまだ厳しい制限が課せられているものの,海外では本治療法に関する研究は進歩を続けて治療効果をあげている.
 こういった時代背景を鑑み,近年,わが国でもボツリヌス毒素療法に対する保険適用疾患が拡大されつつあり,著効例も多く報告されるようになってきた.
 しかし,治療を受ける患者側のニーズも高まっているなかで,事故事例なども報告されており,治療を施す医師は,正しい知識と手技を身に付け,安全かつ適正に実施しなければならない.さらに,ボツリヌス毒素療法は様々な診療科において実施されているため,それぞれの領域での専門知識の習得も必要不可欠である.
 そこで,ボツリヌス毒素療法を診療科ごとに取り上げ,手技・コツ・禁忌事項などを盛り込むとともに,写真・イラストを用いて多数の症例をわかりやすく解説したシリーズを企画するに
至った.総監修者としては,まずシリーズ構成を決定し,各巻診療科別にその領域の第一人者の先生方に編集をお願いした.
 今回発刊された『眼科疾患のボツリヌス治療』はその第三弾である.
 本書が有効に活用され,ボツリヌス毒素療法の発展に寄与することを心より祈願している.

2009年11月

徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部感覚情報医学講座
臨床神経科学分野(神経内科)
教授 梶 龍兒


編集にあたって
 私は本態性眼瞼痙攣(眼瞼痙攣)に対するボツリヌスA型毒素治療(BTX治療)に治験段階から参加させていただいて,非常に幸せだったと感じている.もともとは当時帝京大学眼科学教室の助教授であった故岩重博康先生にボツリヌスA型毒素の斜視治療について教えていただいたのが最初であったが,治験では当初は斜視に対しても開始したものの最終的には認可の見込みの高い眼瞼痙攣のみに集中することになった.その治験開始当初の対象患者は,それまで海外の診療施設あるいは国内の他大学病院でBTX治療を継続して受けていた患者が多数を占めた.そのような患者は確かに機能的失明状態で,家族に手を引いてもらい診察室に入室するような重症者が多くみられた.しかし,このようないわば典型的な眼瞼痙攣患者が受診される一方で,次第に周囲の眼科開業医や病院眼科勤務医から,眼瞼の強い痙縮を伴わず,「何となく目が開けにくい」,「まぶしくて仕方がない」,「目を開けているのがつらい」などの訴えで紹介される患者が受診するようになった.教科書的な知識しかない私にとって,このような患者に対してBTX治療を行うことには正直ためらいがあった.しかし,紹介されわざわざ受診してくださる患者に対しては,明らかに心因性と思われるものを除いて,できるだけBTX治療を行うことにした.しかし,このような軽症者ではむしろ典型的な患者以上に劇的な改善がみられ,患者やその家族から大変感謝されることも多く,眼瞼痙攣の初発あるいは軽症者の診断と治療に自信を与えてくれることになった.
 その後,患者数が増加するにつれこのような軽症者も増加したが,そのうちのかなりの数は他の診療科の先生方からBTX治療の適応がないとして抗うつ薬や睡眠導入薬などの内服薬を処方されている患者であった.また,これまで全国各地をまわりそれぞれの地域のBTX治療をしておられる眼科以外の診療科の先生方とお話させていただく機会を得たが,やはり他の診療科でのBTX治療の適応に違和感を覚えた.このような経験から私は日本国内で行われている眼瞼痙攣のBTX治療で,眼科医と他の診療科医師との間に「眼瞼痙攣」の疾患の範囲とBTX治療の適応について大きな乖離があると感じるに至った.当然,眼瞼痙攣も他のジストニアと同じく,放置すればその多くが進行する.したがって,初発例や軽症例のうちに眼瞼痙攣を正しく診断し,十分なインフォームド・コンセントを得たうえでBTX治療を行えば,患者のquality of vision,quality of lifeに大きく貢献できるものと考える.
 しかし,BTX治療を延べ10,000回以上行った今でも,私は眼瞼痙攣の診断やBTX治療の適応に迷うことがある.実際,2008年日本神経眼科学会の会員に対して行われたアンケート調査でも,神経眼科を標榜する医師の33%が眼瞼痙攣の診断は難しいと回答している.本文のなかで詳述するが,「瞬目負荷試験」によって診断が容易になったとはいえ,この負荷試験でも偽陽性を示す眼瞼チックの患者や,負荷試験陰性の重症患者も少なからず存在する.そこで,本書においては眼科を受診する眼瞼痙攣患者の特徴とその治療について,それぞれ臨床例を数多く治療しておられる先生方に詳しく解説していただいた.本書をご一読いただくことによって,これまで見逃されることの多かった眼瞼痙攣の軽症患者の早期診断につながり,これまでBTX治療を躊躇されていた患者の早期BTX治療につながれば,編者として望外の喜びである.また,本書には単なる眼瞼痙攣および片側顔面痙攣の診断とBTX治療というだけでなく,その長期にわたる患者管理のコツや,効果減弱例対策としての眼瞼手術についての解説も含めたので,あわせてお読みいただければ幸いである.
 最後に,本書を編集する機会を与えてくださった梶 龍兒先生に心より御礼を申し上げます.また数々のご支援・ご助力をいただいた旧アラガン,グラクソスミスクラインのスタッフの方々,診断と治療社のスタッフの方々に厚く御礼申し上げます.

2009年11月

兵庫医科大学眼科学教室
主任教授 三村 治