HOME > 書籍詳細

書籍詳細

多発性硬化症(MS)診療のすべて診断と治療社 | 書籍詳細:多発性硬化症(MS)診療のすべて

国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部 部長 同 多発性硬化症センター センター長

山村 隆(やまむら たかし) 編集

初版 B5判 並製ソフトカバー,2色刷(一部4色) 268頁 2012年05月20日発行

ISBN9784787818188

正誤表はPDFファイルです.PDFファイルをご覧になるためにはAdobe Reader® が必要です  
定価:本体5,500円+税
  

ご覧になるためにはAdobe Flash Player® が必要です  


本書は,自己免疫疾患である多発性硬化症の病態や合理的治療の実践に力点を入れた教科書であり,グローバルな視点も備えている.多発性硬化症の臨床における数々の疑問や問題について可能なかぎり免疫生物学的な視点から考察するよう努め,また欧米の教科書を丸写しにせず,実際の診療経験を後輩に伝えるという姿勢を維持し,これらが他にはみられない特徴となっている.臨床医,研究者,医療現場の先生方に活用していただきたい書

ページの先頭へ戻る

目次

編集・執筆者一覧 
序  文 /山村 隆 
目  次

第1章 多発性硬化症(MS)の診断と重症度評価
 1 多発性硬化症(MS)の診断―総論 /山村 隆 
 2 多発性硬化症(MS)の診断―各論
 a 診断の道筋と鑑別診断 /宮本勝一 
 b 画像検査 /木村有喜男,佐藤典子 
 c 機能評価 /荒木 学 

第2章 多発性硬化症(MS)の外来診療
 1 外来診療の考えかた /山村 隆 
 2 外来治療,入院治療の判断,退院のタイミング /山村 隆 
 3 治療効果の評価,判定 /山村 隆 
 4 外来ステロイドパルス療法 /林 幼偉 
 5 経口ステロイドの使いかた /山村 隆 
 6 インターフェロン(IFN)療法 /荒木 学 
 7 免疫抑制薬の使いかた /林 幼偉 
 8 フィンゴリモド(FTY720) /横山和正 
 9 精神症状への対応 /野田隆政,安藤久美子,清水 悠 
10 対症療法 岡本智子 
11 多発性硬化症(MS)と妊娠・出産 /清水優子 
12 小児の多発性硬化症(MS)診療 /佐久間 啓
13 多発性硬化症(MS)のリハビリテーション /前野 崇,小林康子
14 視神経炎の診断と治療 /山上明子,若倉雅登 

第3章 多発性硬化症(MS)の入院治療
 1 多発性硬化症(MS)の入院治療 /山村 隆
 2 難治性多発性硬化症(MS)/進行型MSに対する治療
 a 血液浄化療法 /林 幼偉 
 b 免疫抑制療法 /林 幼偉

第4章 視神経脊髄炎(NMO)の臨床
 1 視神経脊髄炎(NMO)の病態 /宮本勝一 
 2 視神経脊髄炎(NMO)の診断 /岡本智子 
 3 視神経脊髄炎(NMO)の治療 /千原典夫,山村 隆 

第5章 海外における治療の現状
 1 海外における治療の現状 /山村 隆 
 2 グラチラマー酢酸塩(GA) /宮本勝一 
 3 ナタリズマブ 近藤誉之 
 4 免疫グロブリン静注療法(IVIG) /岡本智子 

第6章 多発性硬化症(MS)の理解を深めるために
 1 多発性硬化症(MS)の免疫病態 /荒浪利昌
 2 自己免疫反応の誘導と制御 /三宅幸子
 3 多発性硬化症(MS)と神経変性 /髙橋和也 
 4 多発性硬化症(MS)の血液診断 /佐藤準一 
 5 ステロイドの作用機序 /荒木 学 

付 録 多発性硬化症(MS)の公的支援と情報ソース
 1 多発性硬化症(MS)の公的支援と情報ソース /中田郷子

MiniLecture
 1 clinically isolated syndrome(CIS) /小川雅文 
 2 tumefactive MS /千原典夫 
 3 代替療法とMS /髙橋和也 
 4 アクアポリン-4(AQP4) /佐藤準一 
 5 進行性多巣性白質脳症(PML) /近藤誉之 
 6 Th17細胞 /佐藤和貴郎
 7 ミクログリア /能登大介 
 8 DNAマイクロアレイ /佐藤準一 

Topics
 1 MSの軸索障害 /吉村 元 
 2 なぜMSは高緯度地域に多いのか? /横手裕明 
 3 MSと自己抗体 /尾上祐行

Debate
 1 MSとワクチン /千原典夫 
 2 膠原病合併例の治療 /髙橋和也 
 3 MSは自己免疫疾患か? /冨田敦子
 4 腸内細菌とMS /横手裕明 

あとがき /山村 隆
和文索引 
欧文-数字索引 

ページの先頭へ戻る

序文

 多発性硬化症(multiple sclerosis;MS)は,原因不明の炎症性脱髄疾患である.編者が大学を卒業した1980年当時のわが国の患者数は約1,000人であり,認知度も低く,治療法のない難病とされていた.しかし,患者数は徐々に増加し,最近では毎年約700人の日本人が新たにMSの認定を受けている.この間,MRI検査の普及,インターフェロン(interferon;IFN)β療法の登場,基礎研究の進歩などが相まって,MSを取り巻く医療環境は時事刻々と変化してきた.その一方で,わが国の医療機関の多くが,急速な医学の進歩に十分な対応ができていない現状がある.さらに,最新の医学に頼らなくとも,知識とやる気さえあれば解決できる問題に対しても十分な対応ができていない面も少なくない.
 21世紀に入ってからというもの,MSに関する膨大な情報が,インターネット,新聞,医学雑誌などで発信されるようになった.毎日それらの情報を丹念に拾っていけば,MSについてある程度の“物知り”になることは可能である.また,“診療ガイドラインが充実してきたので,これに従って治療を行えば,MSは誰にでも治療できる病気になった”と信じる医師や医療関係者がいても不思議ではない.“経験豊富な欧米の専門医のいうことを聞いておけば間違いない”という意見もあるかもしれない.しかし,何年か前のMSの医療現場において,このような考えに冷水を浴びせる事件が起こった.それは,視神経脊髄炎(neuromyelitis optica;NMO)という疾患単位の発見であり,“NMOはMSと同じ薬剤では治療できない”という事実の確認である.欧米では患者数の極めて少ないこの病気に対して,海外の専門家の意見はほとんど参考にならず,ガイドラインすら役に立たなかったのである.
 ブラックボックスの多い難病の診療においては,理論と現実にギャップを生じることが多い.解決の指針となるのは,洞察力,病態や薬効に関する科学的な知識と理解,そして患者の訴えに耳を傾ける丁寧な診療である.これらの能力を磨くには,基礎医学のトレーニングが有用であり,また数多くの患者を診察してきた先輩医師の助言を受け,経験談を聞くことも非常に大切である.
 最近では,そのような機会がどんどん失われつつあるように思える.MSの臨床現場では,ある程度の症例数を経験している専門医が極端に少なく,大学の医局ですら,“MSにまで手が回らない”という状態も少なくない.“この状況を何とか打開しなくてはならない”,“具体的に何ができるのか?”と自問自答をしていたときに,診断と治療社の相浦健一氏より,本書の企画について打診を受けたのである.“国立精神・神経医療研究センターの臨床や研究の現場がわかるような書籍にしてほしい”という,むずかしい注文がついたが,蛮勇をふるってお引受けすることにした.
 本書では,MSの臨床における数々の疑問や問題について,可能なかぎり免疫生物学的な原理・原則をもとに考察するよう努めている.また,欧米の教科書を丸写しにはせず,実際の診療経験を後輩に伝えるという姿勢を維持し,これらが他の書籍にはみられない特徴となっている.通読してもよいし,困ったときに参照する参考書として活用していただくこともできる.本書が,1人でも多くの医師に読まれ,MS診療の発展の糧となれば,編者として望外の喜びである.
 最後に,極めて多忙な診療や研究の時間を割いて原稿をお寄せくださった先生方に,この場を借りて感謝を申し上げる.
 2012年5月
 国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部 部長
 同 多発性硬化症センター センター長
 山村 隆



 多発性硬化症の研究と診療の進歩は,まさに日進月歩である.それほど遠くない将来には治療が格段と進歩し,多発性硬化症が難病でなくなる時代が必ずくると信じている.海外の専門医と話をすると強く感じるが,彼らは個々の症例の病態を理解することに努めており,常に薬剤の調整や新しい治療の導入を視野に入れている.その基盤には免疫学や分子医学の学識があり,Harvard大学のHoward Weiner教授のように,免疫学者としても一流の医師がリーダーシップを発揮している.一方,わが国では,神経内科医が免疫学を修練する場所や機会が限られており,免疫疾患の基礎的な理解が十分とはいえず,それが真の臨床力を身につける際の妨げとなっているのではないかと思われる.本書は,自己免疫疾患である多発性硬化症の病態や合理的治療の実践に力点を入れた教科書であり,グローバルな視点も備えている.臨床医,研究者,医療現場の先生方に活用していただければ幸いである.
 本書の執筆陣の多くは,国立精神・神経医療研究センターで多発性硬化症の研究や臨床に携わった経験をもつ.読者の中で,多発性硬化症に関する疑問をお持ちの先生や,国立精神・神経医療研究センターでの研究や臨床に関心のある先生,読後感をお寄せになりたい先生がいらっしゃれば,メール(E-mail:yamamura@ncnp.go.jp)で気軽にコンタクトを取っていただければ幸いである.
 最後に,様々な場面でご協力くださった患者さんとご家族の方々,多発性硬化症の臨床と研究を支援してくださった皆様すべてに御礼を申し上げたい.また,本書をまとめるにあたって貴重な写真を提供してくれた長年の友人である幸原伸夫先生,機会あるごとに臨床のアドバイスをくださったHarvard大学のHoward Weiner先生とBochum大学のRalf Gold先生に心より御礼を申し上げる.
 2012年5月
 国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部 部長
 同 多発性硬化症センター センター長
 山村 隆