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味覚障害の全貌診断と治療社 | 書籍詳細:味覚障害の全貌

日本大学名誉教授,冨田耳鼻咽喉科医院院長

冨田 寛(とみた ひろし) 著

初版 B5判 並製 436頁 2011年05月10日発行

ISBN9784787818324

定価:本体9,500円+税
  

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味覚障害患者は年間24万人いる(日本口腔・咽頭科学会アンケート調査,2003年)と言われている.もっとも多い原因は,食事中の亜鉛不足による食事性亜鉛欠乏症であるが,亜鉛キレート作用のある薬剤を複数服用しているための薬剤性味覚障害を合併している場合もあるため,医師は処方に際して副作用にも十分留意する必要がある.本書は,一貫して味覚障害の基礎と臨床にかかわってきた著者が,その研究のすべてをまとめたものである.

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目次

はじめに


1 味覚序論
1. 化学感覚
2. 味覚の原型
3. 食物の味
4. 味覚の発達
 1)味蕾及び味覚乳頭の発達
 2)味覚閾値の発達
5. 原始時代の味覚
6. 味の質(基本味)
 1)栄養素のシグナルとしての味質
 2)脂肪の味
7. 味の嗜好
 1)味の嗜好に対する初期経験の影響
8. 味の強さ
 1)味の強さと神経インパルス
9. 味の慣れ(順応)
10. 味と温度
11. 味の持続性―後味
12. 咽頭・喉頭の味覚―のど越しの味
13. 味の相互作用と相乗作用―隠し味
14. 味覚反射
 1)唾液分泌反射
 2)内臓反射
 3)顔面神経反射
 4)味覚性発汗
15. 味覚の遺伝
16. 年齢・性・民族による味の感受性の差
 1)味覚の年齢変動
 2)味覚の性差
 3)人種による味覚閾値の差

2 舌の形態と機能
1. 舌筋
 1)舌個有筋
 2)舌外の舌筋
2. 舌と味覚神経の発生学
3. 舌表面の味覚神経支配
4. 舌診断学に必要なヒト舌茸状乳頭の生体顕微鏡観察
 1)茸状乳頭の数の年齢変動
 2)茸状乳頭の形態にみられる年齢変化と性差
 3)茸状乳頭の終末血管像にみられる年齢変動と性差
 4)鼓索神経切断例における茸状乳頭の変化
 5)糖尿病における茸状乳頭の終末血管の変化
5. ヒトの味覚乳頭及びその他の部位における味蕾数
 1)有郭乳頭の数と味蕾数
 2)葉状乳頭の数と味蕾数
 3)茸状乳頭の数と味蕾数
 4)軟口蓋乳頭の形態と味蕾数
 5)咽頭・喉頭の味蕾数

3 味覚受容器―味蕾―
1. 動物の味蕾細胞の形態と機能
 1)家兎の味蕾細胞におけるMurrayらの研究(1969)
 2)マウスの味蕾細胞におけるKinnamonらの研究(1985)
 3)味覚刺激後の味蕾細胞の変化(吉江ら, 1990)
 4)小括
2. ヒトの味蕾の形態及び大きさ
 1)ヒト有郭乳頭味蕾の電顕像
 2)ヒト茸状乳頭味蕾の電顕像
 3)ヒト味孔の微細構造
3. パラニューロンとしての味細胞(藤田)
4. Ⅱ型細胞の機能の新しい展開

4 科学的迷信―舌の味覚地図p.46〜55
1. 両側鼓索神経障害例における味覚認知(全口腔法)
2.濾紙ディスク法による舌の部位別認知閾値
3. 味蕾が多く,かつ神経支配が重複する部位における味質別感度の測定
4.受容器型味覚障害の回復過程で,部位により特有な味質が先に回復することがあるのか?
5. 舌における味質の部位別感受性の差に関する研究の歴史

5 味蕾の新生と寿命
1. ラット味蕾の新生・交代時間
2. 亜鉛欠乏ラットにおける味蕾細胞新生・交代時間の延長と回復
3. ヒトの味蕾の新生・交代時間

6 味覚の受容機構
1.味覚受容部位
2.味細胞微絨毛膜の構造
3.甘味
4.旨味
5.苦味
6.酸味
7.塩味
8.辛味(hot taste)受容体
9.刺激味(irritation)の受容
10. 渋味

7 味覚情報伝達機構p.68〜69
1.Across-neuron pattern theory
2.Labeled-line theory
3. Across-region pattern theory


8 末梢味覚伝導路
A 口腔内の主要味覚神経の支配領域
1. 一側鼓索神経切断例における味覚消失の範囲
2. 舌咽神経舌枝麻酔による舌後方の味覚消失の範囲
3. 大錐体神経(軟口蓋)の支配領域
4. 各味覚神経領域の測定部位
B 舌前半の味覚伝導路
1. 舌先における舌神経(味覚枝)の左右交叉(解剖体による研究)
2. 舌神経内における鼓索神経成分の位置
 1)神経線維の局在性
 2)鼓索神経の神経線維の数と有髄率
 3)舌神経の有髄線維との比較
3.口腔底(舌下部)の舌神経・鼓索神経
 1)ワルトン管と舌神経(鼓索神経成分)の交叉関係
4. 舌神経と下歯槽神経との関係
5. 側頭下窩における舌神経・鼓索神経の走行
 1)舌神経の頬粘膜枝について
 2)鼓索神経と舌神経の分岐(合流)形態
6. 側頭骨内、とくに錐体鼓室裂内の鼓索神経
7.鼓索神経と耳神経節領域との交通枝
8. 鼓室内の鼓索神経
9.膝神経節より内耳道を通り脳幹に至る中間神経81
 1)膝神経節
10. 顔面神経管迷路部
11. 内耳道部の中間神経
12. 小脳橋角部の中間神経
C 軟口蓋の味覚伝導路
1. 大錐体神経
D 舌後半の味覚伝導路
1. 舌根部の神経支配
2. 舌咽神経の走行経路
3. 迷走神経枝(上喉頭神経)の舌根への進入
E 下咽頭,喉頭の味覚伝導路


9 中枢味覚伝導路
1. 一次味覚中継核
2. 二次味覚伝導路
3. 味覚二次中継核
 1)中脳及びその上部病変による味覚障害
 2)ヒトの二次味覚路はどこで交叉するのか
4. 大脳皮質味覚野
5. 現在考えられるヒトの味覚伝導路の総括

10 臨床的味覚検査法
はじめに
A 電気味覚検査法
1. 電気味覚計
 1)電気性味覚(電気味覚)
 2)電気味覚計の構造
 3)電気味覚計のレベル設定
 4)電気味覚の0dB
 5)市販の電気味覚計
 6)TR-06による測定法
  a.鼓索神経領域(舌前方)の測定法
  b.大錐体神経領域(軟口蓋)の測定法
  c.舌咽神経領域(舌後半)の測定法
 7)結果の解釈
2. 電気味覚検査測定の基礎
 1)刺激時間
 2)刺激間隔
 3)刺激時間差
 4)大いさ平衡試験
  a.閾値上刺激の強さについて
  b.検査中の順応について
  c.大きさ平衡試験の正常型について
   まとめ
3. 電気味覚(鼓索神経領域)の正常値(μA単位での測定値)
 1)電気味覚の標準閾値(鼓索神経領域)
 2)電気味覚の性差及び左右差(鼓索神経領域)
 3)最高味覚閾値(鼓索神経領域)
 4)病的左右差(鼓索神経領域)
 5)電気味覚の味質(鼓索神経領域)
 6)喫煙,義歯または金属冠の電気味覚閾値に及ぼす影響
4. 電気味覚の部位別年齢変動(dB単位での測定値)
 1)測定不能例
 2)有意差検定
 3)3神経領域の電気味覚閾値の分布
 4)3神経領域の閾値の加齢変化
 5)性差
 6)左右差
 7)部位差
 8)閾値の再現性
5. 電気味覚検査の臨床応用
 1)顔面神経障害と味覚機能
 2)顔面神経麻痺における味覚検査の意義
 3)中耳手術前の電気味覚閾値
 4)鼓索神経切断後の味覚症状と電気味覚閾値
 5)片側鼓索神経切断による味覚障害の範囲
 6)術後味覚障害の出現率
B 濾紙ディスク法
1.味の定性試験の種類
2.定量性,定性性の両面を持つ検査法としての濾紙ディスク法の意義
3. 濾紙ディスクによる味覚定性定量検査
 1)濾紙ディスクの種類と大きさ
 2)検査味覚
 3)呈味物質
 4)味溶液の測定温度
 5)閾値測定法
 6)味質の測定順序
 7)刺激時間
 8)刺激間隔と口内洗浄
 9)測定部位
    10)測定中の注意事項
    11)味覚検査表
    12)正常値
4. 各味質による測定結果
 1)甘味(蔗糖)の閾値(A)
 2)塩味(食塩)の閾値(B)
 3)酸味(酒石酸)の閾値(C)
 4)苦味(塩酸キニーネ)の閾値(D)
 5)閾値測定不能例
 6)濾紙ディスク法による四基本味の正常値
5. 味覚溶液による検査の基本的事項についての問題点
 1)味質の選定
 2)呈味物質
 3)温度
 4)閾値の測定法
 5)味質の測定順序
 6)刺激時間
 7)測定間隔
 8)口腔洗浄
6. 臨床検査用濃度系列設定時の問題点
7. 味覚測定キット「テースト・ディスクⒷ」の市販
8.閾値の再現性
9.測定結果の判定
10. 濾紙ディスク法閾値の年齢変動
 1)鼓索神経領域
 2)舌咽神経領域
 3)大錐体神経領域
11. 電気味覚検査と濾紙ディスク法の相関性
12. 電気味覚閾値からみた濾紙ディスク法の閾値
13. 顔面神経麻痺症例におけるEGMと濾紙ディスク法の閾値
14. 濾紙ディスク法閾値と電気味覚閾値に相違(隔たり)を認める症例の検討
15. 受容器型味覚障害の治癒過程における濾紙ディスク法とEGM値
 1)舌面における味覚回復経過の型分類
 2)味覚障害の重症度と改善型の比較
 3)治療効果発現と改善型の比較
 4)治癒症例数と改善型の比較
 5)電気味覚検査法による味覚障害治癒過程の評価
C 全口腔法
1. 全口腔法の方法論
2. 全口腔法における検査液の量
3. 検査間の口すすぎ
4. 全口腔法味覚検査(日大方式)
5. 全口腔法の正常値(日大方式)
6. 従来の全口腔法味覚検査の閾値との比較
7. 四基本味の閾値間の関係について
 1)主成分分析の結果の解釈
8. 全口腔法による加齢変化と性差ならびに喫煙が閾値に与える影響
 1)得られた閾値についての検討
 2)非喫煙群における加齢変化及び性差について
 3)喫煙の影響についての検討
 4)性差について
  まとめ
9. 全口腔法の臨床応用
 1)全口腔法による初診時の味覚障害群と正常群(50〜70代)との検査値の比較検討
 2)全口腔法による治療前後の検査値の比較検討
 まとめ
D 味覚障害治療前後の3検査法測定値の比較
1. 味覚異常の自覚尺度
2. 各検査における改善度の判定基準
3. 自覚尺度と3検査法の改善度の相関
4. 実地臨床における3検査法の選択順位
E 実地臨床における味覚検査の簡略化
1. 電気味覚検査の簡略化
2. 濾紙ディスク法の簡略化
F 第5の基本味・旨味の臨床的評価
1. 検査方法
 1)測定法
 2)閾値
 3)呈味物質の濃度
 4)被験者
2. 研究成績
 1)正常者におけるハイミーⒷの味質表現
 2)正常者におけるハイミーⒷの認知閾値
 3)味覚患者におけるハイミーⒷの認知閾値
 4)濾紙ディスク法による味覚異常患者の治療経過
 5)旨味検査からみた味覚異常患者の治療経過
 まとめ
G 静脈性味覚検査法
1. 方法論
2. 研究結果
 1)正常者へのデコリン法
 2)味覚障害者へのデコリン法
 3)デコリン法による味覚障害の予後の検討
 4)顔面神経麻痺及び鼓索神経切断例へのデコリン法
 5)舌乳頭の蛍光撮影
3. 総括
4. 静脈性味覚の発生機序
 まとめ
H 他覚的味覚検査法
1. ヒト舌の電気性味覚刺激による誘発脳波の測定
2. 動物の電気性味覚による誘発脳波とヒトとの比較
 1)誘発脳波に対する背景脳波の影響
 2)両側鼓索神経,三叉神経を切断したときの誘発脳波の変化
 3)N50をより明瞭に得る条件
 4)ヒトの電気味覚の刺激の大きさによる変化
  まとめ
3.随伴陰性変動(CNV)を用いた他覚的電気味覚検査
4.味覚溶液による誘発脳波測定
5.誘発磁場計測による他覚的味覚検査


11 味覚異常の種々相
1. 味覚異常患者の愁訴
2. 自発性異常味覚
 1)味覚低下との合併率
 2)自発性異常味覚の味質
 3)自発性異常味覚の年齢別,性別出現率
 4)自発性異常味覚と原因疾患との関係
 5)自発性異常味覚(味質)の閾値
 6)自発性異常味覚の予後
 7)唾液成分と自発性異常味覚
3. 解(乖)離性味覚障害
 1)研究対象ならびに方法
 2)自覚的解(乖)離性味覚障害の濾紙ディスク法検査結果
 3)真性解(乖)離性味覚障害の症例検討
 4)文献的考察
 5)甘味のみの真性解(乖)離性味覚障害の発症理由
4. 旨味の障害


12 味覚異常の起こり方
1. 味覚障害の部位別分類
2. 初診時の電気味覚検査と濾紙ディスク法の意義
3. 神経障害でない局所的味覚障害
4. 神経障害による味覚障害


13 味覚障害の臨床統計
1. 血清亜鉛値を中心とした最初の臨床統計(1977)
2. 1976~1980年の500例の統計(1981)
3. 第2回国際微量元素医学会議(会長講演)のときの報告(1989)
4. 1981~1990年 10年間の臨床統計
5. 1996~2000年 開業後5年間の統計
6. 味覚障害患者数の年度別,年齢別,性別の推移
7. 味覚障害の原因別分類
8. 血清亜鉛値の基準値の再検討―診断基準値の設定―
 1)ヒトの血清亜鉛の正常値(基準値)
  a.文献による血清亜鉛の正常値(基準値)
  b.臨床検査施設における血清亜鉛基準値
  c.母集団が異なると「いわゆる健常者」の血清亜鉛値が変わる
  d.臨床医家が求める血清亜鉛の基準値の設定
 2)血清亜鉛濃度と67Znの体内動態との関係
 まとめ
9.新基準による臨床統計


14 味覚障害の発生率
1. 味覚障害の患者は増えているのか
2. 味覚障害が高齢者に多い理由
3. 食事性味覚障害増加の理由


15 味覚障害と亜鉛
1. ヒトの亜鉛欠乏症の発見
2. 亜鉛との出逢い
 1)1975年は日本の亜鉛治療の幕開けの年
 2)第2回国際微量元素医学会議の東京開催
3. 「亜鉛」という命名の不幸
4. 必須微量元素としての亜鉛
 1)体内における亜鉛の量
 2)亜鉛の体内分布
 3)亜鉛の吸収と輸送―亜鉛トランスポーター
 4)血漿亜鉛
 5)亜鉛の代謝,排泄


16 亜鉛の多彩な生理作用
1. 亜鉛の酵素としての働き
 1)亜鉛酵素
  a.炭酸脱水酵素
 2)構造性亜鉛含有蛋白
  b.遺伝子制御蛋白(zinc finger, twist)
  c.メタロチオネイン(MT)
2. 酸化ストレスに対する防御作用
3. 成長
 1)成長への亜鉛補給効果
 2)骨代謝への関与
 3)骨粗鬆症と亜鉛
4. 創傷治癒(細胞新生)
5. 生殖
6. 妊娠の継続,胎児の発育
 1)妊娠による味覚機能の変化―血清亜鉛値との関連
7. 免疫
8. 抗酸化作用,細胞膜の安定化
 1)スーパーオキシドジスムターゼ(SOD) 
9. 皮膚の健康維持
10. 脳機能と亜鉛
 1)中枢神経機能に対する亜鉛投与効果
11. 食欲と亜鉛
12. 糖代謝と亜鉛
13. 血管の健康と亜鉛
14. アルコール代謝と亜鉛
15. 感覚器と亜鉛
 1)視覚と亜鉛
 2)聴覚・平衡覚と亜鉛
 3)嗅覚と亜鉛
  a.亜鉛欠乏ラットの嗅上皮の亜鉛濃度
  b.亜鉛欠乏ラット嗅上皮の電顕像
  c.亜鉛正常食再投与後の電顕像



17 味味覚障害の原因別分類
A 亜鉛欠乏性味覚障害
1. 歴史的背景
2. 統計,頻度
3. 日本人の亜鉛摂取量
4. 亜鉛摂取量と血清亜鉛値との関連性
5. 食事性亜鉛欠乏性味覚障害の動物実験
 1)亜鉛欠乏ラットの作製
  a.体重の変化
  b.血清亜鉛値の変化
  c.皮膚及びその付属器の変化
  d.味覚障害の発現―二瓶選択法と異常味覚行動の観察の併用
 2)亜鉛欠乏ラットの臓器内亜鉛含有量の変化
 3)亜鉛欠乏ラットの各種臓器における放射性亜鉛の吸収―味覚障害の有無における吸収様式の差
 4)亜鉛欠乏ラットのマクロオートラジオグラフィ
 5)ラット有郭乳頭味蕾の亜鉛酵素染色
 6)亜鉛欠乏による味覚障害ラットの舌有郭乳頭味蕾の透過電顕像
   a.正常ラットの味孔の微細構造
   b.亜鉛欠乏による味覚障害ラットの味孔
 7)ラット軟口蓋味蕾と乳頭の加齢及び亜鉛欠乏による変化
  a.味覚障害発現率及び血清亜鉛値
  b.ラットの軟口蓋の光顕ならびに走査電顕所見
  c.軟口蓋味蕾の正常像
  d.軟口蓋味蕾の加齢による変化
  e.軟口蓋味蕾の亜鉛欠乏による変化
 8)繁用食品添加物(ポリリン酸類,フィチン酸など)による味覚障害の発現に関する動物実験
  a.品質改良剤,結着剤としてのポリリン酸類及びフィチン酸の使用現況
  b.一日摂取許容量との比較
  c.イオンクロマトグラフィによるポリリン酸類の亜鉛キレートの実態
  d.フィチン酸のキレート安定度定数
  e.食品添加物による臓器亜鉛濃度の変化
  f.食品添加物食餌による味覚障害の発現
 9)食事性亜鉛欠乏性味覚障害の動物実験の総括
6. 味覚障害のあるヒト有郭乳頭味蕾の電顕像
 1)甲状腺癌摘出・頸部照射療法の既往がある味覚障害例の電顕像
 2)特発性味覚障害の電顕像
 3)亜鉛欠乏性味覚障害の電顕像
 4)ヒト味覚障害味蕾の電顕像のまとめ
7. ヒトの亜鉛欠乏症の診断材料についての検討
 1)毛髪亜鉛値
 2)全血亜鉛値
 3)白血球亜鉛値
 4)血清亜鉛/銅比
 5)血清亜鉛と3種の亜鉛酵素との量的相関について
 6)アンギオテンシン変換酵素活性比
B 特発性味覚障害
1. 分類の歴史的背景
2. 特発性味覚障害の年齢別頻度
3. 亜鉛欠乏性味覚障害と特発性(血清亜鉛値70μg/dL以上)における亜鉛内服療法の効果の比較
4. 特発性及び亜鉛欠乏性味覚障害例に対するグルコン酸亜鉛内服療法の二重盲検法
5. ピコリン酸亜鉛による二重盲検法
6. 特発性味覚障害における亜鉛治療無効例の検討
7. 味覚障害の分類の新しい提案―食事性特発性味覚障害という分類の廃止―
8. Ⅱ型味蕾細胞のエストロゲン産生と,更年期女性の特発性味覚障害症例数
C 薬剤性味覚障害
1. 頻度
2. 種類
3. チオール基を持つ薬剤と味覚障害
4. 亜鉛キレート能のある薬剤の構造
5. 亜鉛内服治療による薬物性味覚障害例の血清亜鉛値の消長
6. 味覚障害を起こす薬剤の亜鉛キレート能
7. 味覚障害を起こす降圧剤 323
 1)ACE阻害剤カプトプリル:captopril
 2)ループ利尿剤フロセミド:furosemide
 3)中枢性α2刺激剤メチルドパ:methyldopa
 4)チアジド系降圧利尿剤トリクロルメチアジド:trichlormethazide
8. 亜鉛キレート能を実験したその他の薬剤
 1)メトクロプラミド:metochlopramide
 2)サリチル酸:salicylic acid
 3)リンコマイシン:lincomycin
 4)レボドーパ:L-dopa
9. 消化管の亜鉛吸収に及ぼす薬剤の影響
 1)採血及び消化管結紮が血清亜鉛値に与える影響
 2)消化管の亜鉛吸収に対する薬剤相互作用
 3)薬剤の腸管吸収実験のまとめ
10. 薬剤性味覚障害の症例集
 1)抗菌薬スルベニシリンによる味覚障害
 2)制癌剤5-FUによる味覚障害
 3)白内障治療のためのチオプロニン(チオラⓇ)による味覚障害
 4)繁用胃腸薬L-グルタミン(マーズレンSⓇ),ガンマーオリザノール(ハイゼットⓇ)による味覚障害
 5)チアジド系降圧剤による味覚障害
11. 薬剤性味覚障害の治療
12. 薬剤性味覚障害は医原性(医師が作った)疾患である
D 全身疾患に伴う味覚障害
1. 肝不全と味覚障害
2. 血液疾患と味覚障害
 1)鉄欠乏性貧血による味覚障害
 2)スポーツ貧血と味覚障害
 3)巨赤芽球性貧血(悪性貧血)と味覚障害
3. 腎不全と味覚障害
4. 消化器疾患と味覚障害
 1)Cronkheite-Canada症候群
E 内分泌性味覚障害
1. 月経周期による味覚の変化
2. 妊娠と味覚障害
 1)症例
 2)妊婦における味覚問診の結果
 3)妊婦の味覚機能の経時的変化
 4)妊婦による味覚機能の変化の原因
3. 糖尿病と味覚障害
4. 甲状腺疾患と味覚障害
5. 副腎機能不全と味覚障害
F 心因性味覚障害
1. 定義と頻度
2. 転換ヒステリー
3. 質問紙法性格検査
 1)CMI(Cornell Medical Index 深町法・日大版)
 2)SDS(Self-rating Depression Scale (Zung法)
 3)MAS(Manifest Anxiety Scale)
 4)治療効果
G 口腔疾患性味覚障害
1. 唾液成分と味覚障害
 1)治療前の耳下腺唾液亜鉛と血清亜鉛との関係
 2)治療前の耳下腺唾液蛋白量と耳下腺唾液亜鉛との関係
 3)亜鉛内服による耳下腺唾液亜鉛と血清亜鉛の変動とその相関
 4)亜鉛内服による耳下腺唾液亜鉛の変動と味覚障害の治療効果
 5)耳下腺唾液中の炭酸脱水酵素6型の測定
2. 口内乾燥症状と味覚障害―唾液分泌に亜鉛は関与するのか?
 1)テクネシウムによる唾液腺分泌機能検査法
 2)99mTc唾液腺分泌機能検査における唾液腺分泌率の正常値の設定
 3)自覚症状としての口内乾燥と99mTc唾液腺分泌機能検査との一致性
 4)味覚障害の重症度と唾液腺分泌機能との関連性
 5)舌乳頭所見と唾液腺分泌機能との関連性
 6)亜鉛欠乏と唾液腺分泌機能との関連性
 7)口内乾燥に対する亜鉛療法の効果
 8)亜鉛療法により口内乾燥が軽快した1症例
3. 亜鉛欠乏がラットの顎下腺の機能と形態に及ぼす影響
 1)亜鉛欠乏食で味覚障害を起こしたラットへのオビソート®投与
 2)ジチゾン投与により亜鉛をキレートされたラットを用いた実験
 3)顎下腺内の亜鉛の局在
 4)結果の解説
4. 舌粘膜とくに味覚乳頭の錯角化による味覚障害
H 舌痛症と味覚障害
1.舌痛症とは
2.舌痛症と亜鉛欠乏
3.舌痛症の臨床統計
4.舌痛症の治療成績
5.3報告のまとめ
6.舌痛症の成因
I 風味障害
J 味覚・嗅覚同時障害例
1. 第14回味と匂シンポジウム(1980)における検討症例
 1)味覚嗅覚同時障害の原因
 2)味覚嗅覚同時障害の種類
 3)血清亜鉛値と原因との関係
 4)味覚障害単独例における血清亜鉛値との比較
 5)症例報告
 6)味覚嗅覚合併障害例に対する亜鉛内服療法の効果
 7)ステロイド点鼻療法併用の効果
 8)その他の治療の効果
 まとめ
2. 昭和大嗅覚外来における味覚嗅覚合併障害例
 1)発症後,来院までの経過日数との関係
 まとめ
3. 近年の味覚嗅覚同時障害例
4. 文献的考察
K 末梢伝導路障害による味覚障害
1. 口蓋扁桃摘出術後の味覚障害
 1)扁摘による舌咽神経舌枝障害例
 2)扁摘が誘因となったが食事性亜鉛欠乏性味覚障害が原因であった症例
 3)扁摘前後に服用した薬剤の副作用による症例
2. Laryngomicrosurgery による味覚障害
3. 歯科麻酔(下歯槽神経麻酔)後の味覚障害
4. 歯列矯正ワイヤーによる味覚障害
5. 耳鳴治療のための鼓室内キシロカイン注入による味覚障害
6. 中耳手術後の鼓索神経障害による味覚障害
L 中枢性味覚障害
M 放射線性味覚障害
1. 照射部位と味覚障害の強弱
2. 味覚障害が始まる時期
3. 味覚消失を来す時期
4. 味覚の回復の開始と完全回復の時期
5.障害される味質に差があるか
6.舌所見,自覚症状と照射線量との関係
7.唾液流量と味覚障害
8.照射線量と血清亜鉛値の関係
N 遺伝性味覚障害
1.Martin-Albright 症候群
2.Turner 症候群
3.Riley-Day 症候群
4.嚢胞性線維症
あとがき
索引

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序文

はじめに

筆者が味覚について研究したいと考え始めたのは,1960年,ドイツ留学が決まった頃である.
当時,鼓膜に孔があいて難聴になった患者の鼓膜を貼り替えて,聴力を取り戻す手術(鼓室形成術)がドイツで開発され,世界の耳鼻科医の注目が集まっていた.
私の恩師,齋藤英雄教授(当時助教授)は,いち早くその技術を本場ドイツで学び,駿河台日大病院は,東京におけるこの手術のメッカとなりつつあった.
筆者はその手術中,必ず鼓膜の内側に出てくる鼓索という奇妙な神経の存在に注目していた.
この神経は,粘膜のひだに被われてはいたが,文字通り中耳腔(鼓室)にロープのように張り出している神経で,解剖の成書では,舌の前の方の味覚を伝えることになっている.この神経は,鼓室形成術のポイントである鼓膜と耳小骨周囲の操作のときに,どうしても触ってしまう神経で,また手術中,顕微鏡の強い光と熱にさらされて,干涸びてしまうこともある.
しかし奇妙にも患者から舌の先の味覚がおかしい,と訴えられたことがない.
解剖書をみると,この神経は媚を売る女性のように,実にあちこちで,ほかの神経と寄り添って脳に向かっており,舌の前方の味覚情報も,脇道があるように書いてある.
十二対ある脳神経は,脳に入る前方から,たとえば一番が嗅神経で,始まりが嗅覚を感覚する嗅粘膜から,脳の前下方にある嗅球に入る経路は一目瞭然であるが,舌の前方にある,味を感覚する味蕾から求心性(脳に向う)の神経は,まず舌神経(五番脳神経の枝)の中を通り,途中で分かれて鼓索神経となり,中耳腔で先程のようにロープ状に姿を現すと,今度は顔の表情を作る顔面神経と一緒になり,膝神経節を作る.
膝神経節には,このタコ足神経の身体(神経細胞)があって,上あご(軟口蓋)にある味蕾からの味覚情報(大錐体神経経由)も入る.ここから顔面神経と,聴覚を司る内耳神経の間を,両神経と密に接しながら,内耳道という頭蓋骨のトンネルを通って頭蓋の中に入り,そこで初めて内耳神経,顔面神経と分かれて延髄の孤束核に入るのである.
この神経は,本来,舌の前半の味覚と唾液分泌を司るれっきとした役割のある脳神経であるから,七番(顔面神経)と八番(内耳神経)の間に位置する脳神経として,すなわち八番となり,それ以下 の脳神経は1つずつ番号がずれてしかるべきであったのだが,あまりにも複雑な経路が災いして,背番号をもらいそこねていたのである.おかげで医学生は,今なお,この中間神経の経路で悩まされている.
これは,一から調べ直す必要がある,と当時の筆者は心に決めていた.
さて,縁あって筆者は1960年春,ベルリン自由大学の耳鼻咽喉科学教室リンク教授のもとに留学した.
翌1961年,リンク教授がハンブルグ大学に招聘され,筆者も一緒に耳鼻咽喉科教室助手として転職した.移って間もなくのことであった.Pirsigという,よく勉強する研修生(のちのウルム大学教授)が持っていたReinとSchneiderが書いた生理学を借りて読んだところ,「舌の味覚地図」が目に入った.日本では最近まで高校の教科書に載っていた,甘味は舌の前,酸味は舌の縁,苦味は舌の奥でよく感じる,という地図である.
その注釈には「鼓索神経が両側切断されると,苦味以外のすべて の味覚がなくなり,苦味が強調された解(乖)離性味覚障害が起る」と書いてある.
しかし,筆者はすでに鼓室形成術で,鼓索神経を両側とも確かに切断した患者を知っていたが,苦味しかわからなくなった,どころか,味がおかしいとすら訴えられたことはなかった.
一体これはどうしたことか!?
この疑問を解くことから,筆者の味覚研究は始まったのである.
*     *     *
そして,舌の味覚神経の発生は本著の第2章,舌表面の神経支配は第8章,さらに「舌の味覚地図の嘘」については第4章で解決をつけたと思っている.
教授就任(1976年)と同時に,日本大学医学部の両付属病院に,味覚異常の患者を専門に診る味覚外来を開設.退職まで4,000例を超える症例の診断と治療に携わった(第13章).
味覚障害の原因は15に及ぶが,必須微量元素「亜鉛」が実に深く味覚機能に関わっていることを動物実験(第17章)などで確かめ,さらに亜鉛内服治療が卓効を示すことを二重盲検法で実証した(第16章).
日本人の亜鉛栄養の実態は,厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2010年版」によれば,その摂取量はますます減少傾向にあり,それを裏づけるように,味覚異常を訴えて耳鼻咽喉科医を訪れる患者数は,1992年に14万人であったものが,2003年の調査では年間24万人と1.8倍増加している(第14章).
味覚障害のもっとも多い原因は,食事中の亜鉛不足による食事性亜鉛欠乏症であり,全症例の30%を占めているが,受診率の高い高齢者では,孤食による食事性亜鉛欠乏に加えて,高血圧,脂質異常症,糖尿病,骨粗鬆症,前立腺肥大,慢性胃腸疾患などの成人病罹患により,亜鉛キレート作用のある薬剤を複数服用しているための薬剤性味覚障害を合併していることが多い(第17章).
これは明白な医原性疾患であるから,医師は処方に際して副作用にも十分留意する必要がある.筆者の調査では,味覚障害を起こす薬剤は240種類に達している.
筆者は亜鉛欠乏症の蔓延についての啓蒙書としては「亜鉛パワーの秘密」(宙出版,1998年),「味覚障害とダイエット―知られざる国民病の処方箋」(講談社+α新書,2003年)を上梓しているが,本著は是非かかりつけ内科医に読んでもらいたい.なぜなら,味覚異常の患者は,まず,かかりつけの医師か歯科医に症状を訴えることが多いからである.
医師を納得させる著作であるから,かなり硬Rい内容になって読みづらい点はご容赦願いたい.
そして,もし治療を試みたいとお考えなら,少なくとも血清亜鉛値の測定と簡易濾紙ディスク法を治療開始前に是非行っていただきたい.ただ単にプロマックを投与して患者に効果を問うても,「変わりない」との返事が返ってくることが多い.しかし2~3週間ごとに検査を繰り返すことによって,数値の改善とともに効果が顕れてくることを医師も患者も実感できるであろう.

2011年4月

冨田 寛