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書籍詳細

小児・思春期のIBD診療マニュアル診断と治療社 | 書籍詳細:小児・思春期のIBD診療マニュアル

パルこどもクリニック

友政 剛(ともまさ たけし) 監修

久留米大学医療センター小児科

牛島 高介(うしじま こうすけ) 編集

順天堂大学医学部小児科

大塚 宜一(おおつか よしかず) 編集

三重大学医学部消化管・小児外科

内田 恵一(うちだ けいいち) 編集

初版 B5判 並製 216頁 2013年04月10日発行

ISBN9784787819710

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定価:本体5,500円+税
  

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近年,成人と同様に増加が著しい潰瘍性大腸炎およびクローン病―小児炎症性腸疾患(IBD)について,各分野のエキスパートたちにより最近の知見がまとめられた,臨床現場ですぐに役立つ診療マニュアル.成人と異なり成長の過程にある小児にとって,より重要となる疾患のコントロール,思春期への移行など,専門医のみならず,一般小児科医をはじめ小児・思春期炎症性腸疾患患者を診る内科・外科医必読の書.

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目次

序文  /友政 剛     
執筆者一覧

Ⅰ 疫学  /友政 剛/石毛 崇    
Ⅱ 病因・病態  /大塚宜一    
Ⅲ 小児炎症性腸疾患の診療のポイント
 1.小児の特徴  /清水俊明/神保圭佑    
 2.成長  /田原卓浩   
 3.QOLとその評価  /藤澤卓爾   
 4.学校生活  /位田 忍   
 5.乳児の炎症性腸疾患(infantile IBD)  /佐々木美香   
 6.予防接種  /新井勝大   
Ⅳ 小児炎症性腸疾患の診断
 1.潰瘍性大腸炎  /牛島高介/関 祥孝   
 2.クローン病  /大塚宜一/藤井 徹    
 3.内視鏡検査  /中山佳子   
 4.病理診断  /田中正則   
 5.画像診断  /河野達夫   
 6.便・血液検査  /青松友槻   
 7.成長障害(思春期として)とその評価   /惠谷ゆり   
 8.鑑別すべき疾患① 腸管Behçet病,特発性小腸潰瘍,IBD unclassified
    /鍵本聖一    
 9.鑑別すべき疾患② 腸管感染症,アレルギー  /工藤孝広  
10.鑑別すべき疾患③ 免疫不全症  /窪田 満  
Ⅴ 小児炎症性腸疾患の治療
 1.潰瘍性大腸炎
  1)治療原則・治療指針  /余田 篤   
  2)薬物治療
   a.5-ASA,SASP  /豊田 茂 
   b.ステロイド  /永田 智/松村成一 
   c.免疫調節薬①(アザチオプリン,6-MP)  /岩田直美  
   d.免疫調節薬②(タクロリムス,シクロスポリン)
      /牛島高介/栁 忠宏  
   e.CAP  /虻川大樹/角田文彦  
   f.生物学的製剤  /新井勝大   
  3)外科治療  /内田恵一  
 2.クローン病
  1)治療原則・治療指針  /田尻 仁   
  2)栄養療法  /今野武津子   
  3)小児クローン病食の実際  /出村富美恵   
  4)薬物治療
   a.5-ASA,SASP  /豊田 茂  
   b.ステロイド  /永田 智/松村成一  
   c.免疫調節薬①(アザチオプリン,6-MP,メトトレキサート)
      /岩田直美  
   d.免疫調節薬②(タクロリムス,シクロスポリン)
      /牛島高介/栁 忠宏  
   e.CAP   /虻川大樹/角田文彦   
   f.生物学的製剤  /新井勝大   
  5)外科治療  /根津理一郎  
Ⅵ 腸管外合併症  /十河 剛/近藤健夫  
Ⅶ 予後および発がんとサーベイランス  /岩間 達   
Ⅷ 思春期炎症性腸疾患
 1.思春期炎症性腸疾患の特徴と問題点  /国崎玲子   
 2.思春期炎症性腸疾患のトランジション  /虻川大樹  
 3.内科医がみる思春期炎症性腸疾患  /鈴木康夫 

索引

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序文

 近年,小児・思春期の炎症性疾患(inflammatory bowel disease:IBD)が多方面から関心を集めるようになっている.小児科関連の学会・研究会で頻繁に講演やシンポジウムのテーマとなるのみならず,消化器病を専門とする内科医・外科医の集まりでも,小児・思春期の炎症性腸疾患が取り上げられるようになってきた.
 今,小児・思春期の炎症性腸疾患が注目される理由の第一は,炎症性腸疾患,すなわち潰瘍性大腸炎とクローン病の小児患者数が,成人と同様,急速に増加しているからであろう.わが国の小児においては,質のよい疫学的データがほどんどないといってよいが,多くの専門家がその著しい増加を実感しており,日常の臨床で一般小児科医や,成人の炎症性腸疾患あるいは消化器病の専門家が,小児・思春期の本症の治療にあたる機会は決してまれなものではなくなってきている.
 第二の理由は,近年の治療法の進歩であろう.1990年頃まで炎症性腸疾患の治療はステロイドと外科治療に頼った状態が続いていた.しかし,1990年代以降,潰瘍性大腸炎に対してシクロスポリン静注療法,血球成分除去療法がとりいれられ,ステロイドに抵抗性の例も寛解に至らしめることが可能になった.また,免疫調節薬による寛解維持も積極的に試みられるようになった.クローン病に対しても1990年代後半にインフリキシマブが登場して,難治例の治療手順が大きく変更されることとなった.最近では,難治性潰瘍性大腸炎に対するタクロリムスの効果も検討され,さらなる治療オプションの広がりが期待されている.
 しかしながら,これらの新しい治療手段の登場に対して,その使用法についての検討が追いついていないというのが現状である.血球成分除去療法の効果,生物学的製剤や免疫調節薬の安全性など,真の意味で確立されているといえない点が少なくない.
 そのことは,小児においていっそう顕著である.臨床研究が困難な小児においては,国の内外ともに効果や安全性に関する情報が不足しており,新しい治療を行うにあたっては,相当に専門的な知識や経験が必要とされるのが現状である.
 第三に,小児患者には小児特有の問題点があることが強く認識されるようになったことも,特筆すべきことと思われる.疾患の重症度や罹患部位,予後などに成人例と異なる傾向がみられることが指摘されてきたが,それとともに,成人以上に慎重な鑑別診断が必要とされることも明らかになりつつある.とくにいくつかの免疫不全症の除外診断は乳幼児の炎症性腸疾患を診断するうえで非常に大切なポイントである.
 小児炎症性腸疾患を診療するうえでさらに重要なポイントは,小児が心身ともに成長の過程にあることである.疾患のコントロールが不十分であったり,長期にステロイドを使用することにより身長の伸びが抑制されることは,小児炎症性腸疾患でしばしば経験される.その状態で骨端線が閉じた場合,低身長が患児の一生の負担になる可能性がある.したがって,つねに成長曲線をチェックしながら治療方針を考えていくことは,小児患者を診療する際には絶対に必要な配慮である.また,炎症性腸疾患は長期にわたり闘病生活が続き,症例によっては相当なQOLの低下をきたしている場合もあるため,精神的なケアも忘れてはならない.ことに学校生活や家族関係についての配慮は大切である.また,予防接種に対する配慮,トランジションの問題なども小児例に特有な課題としてとらえられるようになった.
 以上のようなことを背景に,最近の十余年にわたり,わが国でも小児炎症性腸疾患に対してさまざまな取り組みがなされてきた.日本小児IBD研究会(2000年に発足)が組織した「小児潰瘍性大腸炎治療指針案作成ワーキンググループ(WG)」は2004年に「小児潰瘍性大腸炎治療指針案」,2008年には「小児潰瘍性大腸炎治療指針改訂案」を発表,「小児クローン病治療指針案作成WG」は2005年に「小児クローン病治療指針案」を発表している(いずれも小児科学会雑誌).2012年には,「潰瘍性大腸炎ガイドライン作成委員会」「小児クローン病ガイドライン作成委員会」と呼称を変更,それぞれ「診療ガイドライン」として,前述の治療指針案の改訂を行っていく予定である.
 また,2002年から厚生労働省の「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(日比班)」に小児科医も参加することとなり,それ以降,同研究班の「潰瘍性大腸炎治療指針改訂案」および「クローン病治療指針案」に,前述の小児治療指針の抜粋が組み入れられるようになっている.さらに,潰瘍性大腸炎については,2009年,エビデンスに基づいた小児治療ガイドラインを作成し,医療情報サービス「Minds」(日本医療機能評価機構運営)に掲載されている「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班プロジェクト研究グループ作成:エビデンスとコンセンサスを統合した潰瘍性大腸炎の診療ガイドライン」の一部に「小児期潰瘍性大腸炎の特徴」として掲載されている(http://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0029/G0000071/0076).
 それぞれのWGや日本小児IBD研究会の学術委員会では,以上のようなガイドライン(指針)の作成のほかにもさまざまな活動を行ってきた.わが国における各種治療法の実態調査は潰瘍性大腸炎につき2001~2004年に行われたが,その後の治療法の進歩をふまえ,現在,両疾患について再度の調査が計画されている.そのほか,乳幼児の炎症性腸疾患に関する疫学調査や,小児の成長に関する調査も行われているところである.また,日本小児IBD研究会小児IBD-QOLWGによるQOL調査用紙(日本語版IMPACT-III)の作成(2011年,小児科学会雑誌),日本小児栄養消化器肝臓学会生物学的製剤使用法検討WGによる「小児クローン病に対するインフリキシマブ使用に関する見解」(2009年,小児科学会雑誌)の発表などが行われてきた.
 以上のように,近年,比較的短時間のうちにさまざまな進歩がみられたため,専門家でさえも最近の進歩の全体を把握するのが困難といってよい状況である.まして,症例数が増え,一般小児科医や内科・外科の医師が小児の炎症性腸疾患を診療する機会が増えつつある現在,小児炎症性腸疾患に関する最近の知見をまとめた書が出版されることには大変大きな意義があり,小児・思春期炎症性腸疾患の診療に多大な貢献がなされることが期待される.
 幸い,前述のような最近のさまざまな取り組みにおいて,リーダー的役割をはたされた小児炎症性腸疾患のエキスパートが,それぞれの分野のご執筆をくださることになり,現時点で考えうる最高の執筆陣による素晴らしい書籍が完成したと思う.このような書籍が出版可能となったことは,編集委員諸氏のご慧眼,ご努力はもちろんのこと,編集者の意図に極力応えてくださった診断と治療社の編集部各位のご厚意によるところが大であり,感謝申し上げる次第である.
 本書は,学術的・百科事典的なものであるよりも,日々進歩する小児・思春期炎症性腸疾患の臨床現場でただちに役立つ本である「マニュアル」として企画・編集された.この分野を専門とされる先生方はもちろんのこと,実際に診療される各診療科の先生方に広く利用していただきたい.それにより,一人でも多くの患児がよりよい人生を送ることができ,さらに,この病気に苦しむ子どもが将来皆無となることを祈って序としたい.
平成25年2月
パルこどもクリニック院長 友政 剛