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核・放射線,生物剤,化学剤,爆弾
NBCテロ・災害対処ポケットブック診断と治療社 | 書籍詳細:NBCテロ・災害対処ポケットブック

警視庁警務部 警察共済組合警視庁支部 警視庁警察学校

奥村 徹 (おくむら てつ) 

国立病院機構災害医療センター臨床研究部 厚生労働省DMAT事務局

小井土 雄一 (こいど ゆういち) 

自衛隊中央病院

作田 英成 (さくた ひでなり) 

元東京消防庁

鈴木 澄男 (すずき すみお) 

陸上自衛隊研究本部総合研究部第2研究課特殊武器研究室

中村 勝美 (なかむら かつみ) 

自衛隊中央病院内科

箱崎 幸也(はこざき ゆきや) 

初版 B6判 並製 176頁 2013年12月24日発行

ISBN9784787820280

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定価:本体1,600円+税
  

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松本サリン事件・地下鉄サリン事件といったテロ事案や,化学工場プラント火災など日常生活で起きる類似の事案に対応する消防職員・警察官・自衛官といった初動対応関係者のために,自身の安全を担保しながら救援・救護を行うための事前準備や行動指針など,必須の知識を集成し,現場に出向く場面で素早く復習できるポケットブック.消防職員・自衛官・警察官・救急医療従事者,そして自治体および企業の安全管理担当者に贈る必携の書である.

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目次

CONTENTS

CBRN事態の一般的概念   前見返し

編著者一覧

1 現場でのNBCテロ・災害対処の基本
 A NBCテロ・災害とは
 B NBCテロ・災害の蓋然性
 C NBCテロ・災害の曝露形式
 D 活動要領
1)事象の把握(通報からの情報収集,出動,現場到着)  
2)事前計画に基づく活動(目標設定から策定,見直し)  
3)現場到着時の活動,ゾーニングの設定  
4)自己防御:個人防護装備(PPE)の選定  
5)物質の推定から特定・検知  
6)ホットゾーンからの傷病者の誘導・救助  
7)初動対応要員の安全管理  
8)トリアージ  
9)除染(全般)
 E 現地連携モデル 
付録A 各ゾーンとラインの名称(消防の一例)
付録B 原因物質が特定された場合のホットゾーン内での身体防護措置選択例
付録C 危険物質のサンプル保存方法(冷蔵または冷凍)
付録D 消防機関における活動体系の一例
付録E NBCテロ・災害時における基本的除染要領

2 化学剤
 A 主な化学剤 
 B 化学剤の物理的特性 
 C 化学剤の気象条件などによる効果 
 D 化学剤の曝露経路 
 E 化学剤の毒性の強さを表す指標 
 F 化学剤の検知 
1)現場での検知器材(携帯型と可搬型)  
2)臭いでの検知  
3)症状からの化学剤の特定
 G 化学剤に対する防護 
 H 化学剤の除染 
1)人の除染  
2)除染の優先順位  
3)地域の除染
 I 医療機関での除染 
1)病院前除染  
2)基本的な活動要領  
3)汚染区域(救急外来の前)での活動  
4)非汚染区域(救急外来)での活動  
5)化学剤傷病者における治療の優先順位(MARCH)  
J 化学剤各論 
1)神経剤(タブン,サリン,ソマン,VX)  
2)びらん剤(マスタード,ルイサイト,ホスゲンオキシム)  
3)窒息剤(ホスゲン,塩素等)
4)血液剤(シアン化合物:青酸ガス等)  
5)無傷害(低致死性)化学剤 
K 意図的な化学災害 
1)過去の大規模な化学災害  
2)テロリストによるICDの特1
付録A 化学剤の要点
付録B 化学剤曝露 自己チェックリスト

3 生物剤
 A 生物剤とは 
 B 生物剤テロの特性 
1)生物剤テロに使用される微生物や毒素の条件  
2)散布システム 
3)生物剤テロの曝露形  
4)アウトブレイクの原因の鑑別(自然発生か,生物剤テロか)
 C 生物剤の侵入経路と防護策 
1)生物剤の散布経路別の防護策  
2)初動対応要員の防護・管理
3)生物剤の検知  
4)生物剤の予防  
5)標準的感染制御法(standard precautions for infection control)
 D 生物剤の除染 
1)除染の実施要領(研究施設等での発生)  
2)物品・建物の生物学的除
 E 生物剤テロ発生時の対応 
1)生物剤テロ発生の想定  
2)生物剤テロの対応活動の注意点
3)生物剤曝露(公然テロ)時の対応の活動要領  
4)病原体取扱施設での生物剤災害発生時の活動要領(白い粉などの散布時も含む)
 F 生物剤曝露の患者の医療対応 
1)症候からの生物剤の推定  
2)生物剤曝露者の搬送  
3)生物剤曝露者への治療  
4)生物剤テロに対する心理的影響
 G 生物剤各論 
1)天然痘(smallpox)  
2)炭疽菌(anthrax)  
3)ペスト(plague)
4)野兎病(ツラレミア)  
5)ウイルス性出血熱
 H 生物毒 
1)ボツリヌス毒素  
2)ブドウ球菌内毒素B  
3)リシン 
4)トリコセシン真菌毒素(T2)
付録A 主な生物剤関連疾患の治療・予防
付録B 炭疽菌等の汚染の恐れのある郵便物への対応
付録C バイオセーフティーレベル(BSL)
付録D 食中毒の要点

4 核・放射線
 A 核・放射線テロ・災害の基礎知識の重要性 
1)放射線事故の場所・種類  
2)放射性物質と放射線  
3)被曝(外部・内部)と汚染  
4)放射線の種類  
5)放射線の単位
 B 被曝防護 
1)外部被曝防護の3原則  
2)3原則に沿った被曝防護の原則
3)汚染防護の原則(主に内部被曝対策)  
4)初動対応要員の被曝限度基  
5)放射線被曝管理(測定器の活用)
 C 初動対応(要員)の活動フロー 
1)基本方針  
2)初動対応(要員)の活動フローの留意事項 
3)テロ時の放射線学的な境界線設定指標  
4)ゾーニングと空間線量率測定の実践(ダーティ爆弾例)  
5)初動対応要員の被曝時の措置 
6)トリアージ(大量に被曝した者が多数発生した場合の対応)
 D 放射性物質の除染 
1)除染の基本的な考え方  
2)放射性物質の除染要領  
3)汚染された皮膚除染の基本  
4)傷病者除染所の概要  
5)初動対応要員の除染所  
6)建造物の放射性物質汚染の除染  
7)除染の証明・目標  
8)活動終了時の確認事項
 E 被曝の人体への影響 
1)被曝した初動対応要員への留意点  
2)慢性および間欠的な被曝症候群  
3)血液検査所見から全身被曝線量を推定  
4)生物学的線量測定と放射線災害管理
 F 体内(内部)被曝の除染 
1)体内汚染の薬物療法  
2)甲状腺,消化管の内部汚染の防止
3)甲状腺への取り込み防止  
4)消化管からの除去(主にセシウム)
 G 医療機関での被爆医療 
1)診断のポイント  
2)治療に関する考慮点  
3)医療機関での除染(創傷の除染)  
4)放射線災害傷病者処置時の勤務員の装備
5)医療機関での除染室の望ましい条件
付録A 体内汚染物質の放射性核種
付録B 放射性同位元素運搬車両の事故時の被曝・汚染管理のフローチャート
付録C 放射線被曝傷病者の医学的アッセイ
付録D 放射線障害(特に核災害)の医学的留意点①
付録E 放射線障害の医学的留意点②
付録F 放射性物質の汚染を受けた初動対応要員への除染手順
付録G 放射能汚染者のチェックリスト

5 爆弾テロ
 A 爆弾テロの特性 
1)爆発および影響因子 
2)徴候・検知  
3)情報収集のポイント  
4)自己防御のポイント  
5)ゾーニング  
6)トリアージ
 B 爆発による傷害 
1)複合損傷  
2)熱傷  
3)中毒
 C 爆弾テロ現場での救援上の留意点 
6 中毒
 A 対応の基本 
 B 診察・救急処置 
 C 治療 
1)除去  
2)解毒薬・拮抗薬  
3)対症療法
 D 薬毒物迅速検査法 
1)分析が有用な中毒起因物質15品目 
 E テロが疑われる場合 
付録A (公)日本中毒情報センター

参考文献 
索引

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序文



 わが国における松本(1994),東京地下鉄(1995)両サリン事件は,全世界に市民に対する化学剤テロの脅威が現実のものであることを証明した.各国がテロ対策の重要性を改めて認識する“ウェイクアップコール”(目覚まし)になった.21世紀の10年余でも,米国の同時多発テロ(2001)に続く炭疽菌テロ,2009年には新型インフルエンザ,2011年には東日本大震災後の福島原子力発電所事故など,矢継ぎ早の化学剤・生物剤・放射線(NBC)テロ・災害は全世界の人々を震撼させた.2013年だけでも4月ボストンマラソンの爆弾テロで3名が死亡し,285名が負傷した.8月にシリアの内戦で化学兵器が使用され,多数の傷病者が発生した.化学兵器が使用されたことを,国連事務総長は安保理加盟国に対し「国連調査団は,シリアで収集した環境的,化学的,医学的サンプルから,神経ガスのサリンを搭載した地対地ロケットが使用されたとの明確かつ確固たる証拠を示した.」と報告した.
 国際社会では現在,さまざまな形で化学剤・生物剤・放射線(NBC)テロ対策に取組んでいるが,テロ対策先進国の米国においてさえ課題は多く備えは万全でない.世界情勢は複雑化,不安定化の方向に進みつつあり,いつどこでもNBCテロ・災害など不測の事態が起こる可能性がある.またわが国では,2009年,2010年に化学工場プラント火災で塩素ガスの漏出などが続発しており,英国などでは同じく2009年にアヘン注射に伴う注射炭疽患者が集団発生するなど,テロ・災害だけでなく日常生活の中にもNBCに類似した事案は存在している.
 化学工場火災なども含めたNBCテロ・災害では,医師・看護師の医療従事者だけでなく,事案に最初に対応する消防職員・警察官・自衛官が,NBCテロ・災害への対応を可能とする必要最小限の知識・技量を有することが極めて重要である.著者もその一員であるCBRNEテロ対処研究会が,2008年5月に「必携 NBCテロ対処ハンドブック」(診断と治療社)を作成し,多くの方々に購読され,多少なりともわが国のテロ対処能力向上に貢献してきた.しかし,「必携 NBCテロ対処ハンドブック」は内容が多岐にわたり専門的な記述も多く,NBCテロ・災害の頻度は少ない中,初動対応関係者が多忙な日常業務の中でNBCテロ・災害に精通するのは困難である.つまり,初動対応関係者がNBCテロ・災害現場に出向く場面で,素早く復習でき的確な対応の基となるポケットブックが求められている.以前,著者らが2000年と2003年に作成した「特殊災害対処ハンドブック」(厚生労働省 科学研究費)は,この要求に沿った本であり,全国の関係者に配布し各方面から高い評価を頂いた.しかし,約3,000部の自主製作であったために,その後入手を希望した方々に応えることは困難であった.
 
 2020年の東京オリンピック開催が決定したことから,NBCテロ・災害対応は急務であり,各方面から前にも増して「特殊災害対処ハンドブック」の再出版の要望が寄せられた.このような要望に応えるために,今回「NBCテロ・災害対応ポケットブック」を作成するに至った.このテキストの目的は,消防職員・警察官・自衛官・医療従事者だけでなく行政機関の危機管理担当者などに対して,テロ・災害発生時の「これだけは知っていなければならない」という基本的な概念や知識を提供するものである.特に災害現場での対応要領や簡潔な診断・治療手順を記載した.

 NBCテロ・災害対応は事象が多様であり,現場では本書の基本的な知識や技量を基に,常によりよい対応方法を検討していくことが重要と考えられる.今後も,本書をたたき台としながら,新たな知見や情報を加えつつバージョンアップしていきたいと願っている.お気づきの点やご意見を出版社までお寄せいただけると幸いである.
 本書が,NBCテロ・災害対応に携わる関係者の方達にとって必携の参考書となることを願ってやまない.
 
 2013年12月
箱崎幸也
 

・謝辞・
 本書の作成にあたっては,放射線被曝医療の専門性のお立場から貴重なご意見を頂戴した鈴木元先生(国際医療福祉大学)や他の多くのNBCテロ・災害専門家の方々に,この場をお借りして深く感謝申し上げる.
 また,本書の社会的必要性を賢察され,出版にご尽力いただいた株式会社診断と治療社の堀江康弘氏,土橋幸代氏,日野秀規氏のご支援と励ましに深謝申し上げる.本書がまがりなりにも一応の体裁を整え,上梓にこぎ着けたのは全て各氏のご助言・ご指導が不可欠であった.