HOME > 書籍詳細

書籍詳細

抗原量に基づいて「食べること」を目指す
食物アレルギー児のための食事と治療用レシピ診断と治療社 | 書籍詳細:食物アレルギー児のための食事と治療用レシピ

同志社女子大学生活科学部食物栄養科学科教授

伊藤 節子(いとう せつこ) 著

初版 B5判 並製 152頁 2014年11月12日発行

ISBN9784787820501

定価:本体4,200円+税
  

ご覧になるためにはAdobe Flash Player® が必要です  


食物アレルギー児のための安全安心なふだんの食事と治療用レシピを,抗原量に基づいて科学的に具体的に解き明かします.卵,牛乳,小麦を使わなくても作ることができるレシピは,実は和食のなかにたくさんあることに気付き,無理なく楽しく安全にふだんの食事を摂ることができるようになります.また,実際に診察室で行われている抗原量に基づいた食事療法と治療用レシピについても具体的に解説します.好評書『乳幼児の食物アレルギー』の姉妹編.

関連書籍

ページの先頭へ戻る

目次

はじめに
著者紹介

第1章 食物アレルギーの基礎知識
A 食物アレルギーが起こるしくみと治るしくみ
1 食物アレルギーとは
2 免疫反応を介した食物アレルギーの起こるしくみ
(a)抗原特異的IgE抗体の産生:アトピー素因があるかどうかがキーポイント
(b)IgE依存性反応の起こるしくみ
(c)症状の起こり方を規定する抗原特異的IgE抗体のレベルと食品中の抗原タンパク質量
3 乳幼児の食物アレルギーが治るしくみと治療の必要性
4 アレルギー性疾患の初発症状として重要な乳児の食物アレルギー
(a)乳児期発症の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎
(b)即時型反応・アナフィラキシー
(c)新生児・乳児消化管アレルギー
5 食物がアレルゲンとなるための条件
(a)日常的に摂取する食物が原因となりやすい
(b)食物抗原が感作源となるルートは消化管以外にもあります
(c)アレルゲンとなりやすい食物の共通の性質
(d)調理により抗原性が大きく変化する食物とあまり変化しない食物
6 食物アレルギーの症状と観察のポイント
(a)食物アレルギーのおもな症状
B 食物アレルギーの治療管理
1 食物アレルギーの治療管理における食事療法の重要性
2 原因療法としてのアレルゲン除去食の適応と食事療法の基本
3 加工食品を使うときに知っておくべきこと
(a)特定原材料のアレルギー表示の見方
4 乳幼児食物アレルギーのおもな原因食物と食事療法の実際
(a)鶏 卵
(b)牛 乳
(c)小 麦
(d)大 豆
(e)米
(f)魚 類
(g)甲殻類
(h)肉 類
(i)野菜・果物
(j)そ ば
(k)ピーナッツ
(l)木の実

第2章 食物アレルギー児のための食事作りを容易にするコツ
A 特定原材料を使用しないレシピが多いことに気付くことが基本
1 旬の魚と野菜類を取り入れるとバラエティーに富んだ家庭料理が作れます
2 乳幼児期の食事療法における栄養面への配慮
(a)必要なアレルギー用食品は牛乳アレルギー児用の牛乳アレルゲン除去調製粉乳だけ
3 家庭料理は卵,牛乳,小麦を使わないレシピの宝庫
(a)主菜(魚料理,肉料理)
(b)副菜,汁物,サラダ
B 家庭料理における低アレルゲン化と健康への配慮
1 調理により抗原性が大きく低下する食品とほとんど変わらない食品
(a)加熱調理により抗原性が大きく変わる食品
(b)調理によっても抗原性が卵ほど大きくは変わらない食品,加水分解や発酵により抗原性が変わる食品
(c)その他の食品の抗原性
2 食物アレルギー児のための食事への配慮は,生活習慣病の予防にもつながる
(a)昆布とかつお節などの出汁で家族も健康に
(b)脂質の上手な摂り方
C 卵,牛乳,小麦を含まない食事作り
1 必要最小限の食品除去をうまく行うコツ=原材料として用いないレシピ作りのコツ
2 基本的な出汁の取り方をマスターしましょう
(a)和風出汁の取り方
3 調味料の使い方
(a)離乳食
(b)幼児期以降
4 よく使う加工食品の選び方
5 旬の食材を活用しましょう
6 親子の取り分け料理

第3章 離乳食の進め方
A 離乳食の進め方の基本
1 離乳食の進め方への配慮が望ましい理由
2 食物アレルギーにも配慮した離乳食
(a)離乳食を進めるときの注意
(b)調味料の使い方
(c)離乳食を進めていくときの目標
(d)離乳食〜幼児食へ
3 食物アレルギーに配慮した離乳食の進め方のポイント
(a)米飯を主食にした和食が基本
(b)出汁をしっかり取り,調味料は離乳食に飽きてきたときに使用開始
(c)インスタント食品やベビーフードは常用せず,新鮮な食材を用いて手作りすることが基本
(d)大人の食事からの取り分け料理を活用
(e)白身だけでなく青背の魚も積極的に与える
(f)肉類のアレルギーはまれ
(g)大豆製品は魚,肉類を摂取できるようになってから開始する
(h)鶏卵は卵白タンパク質の混入を極力減らした卵黄から開始
B 卵,牛乳,小麦の除去が必要な場合の離乳食の進め方と授乳中の母親の食事
1 離乳食は積極的に進めます
2 栄養面に配慮した離乳食の進め方
(a)鶏 卵
(b)牛 乳
(c)小 麦
3 授乳中の母親の食事
(a)乳児期発症の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎の場合
(b)即時型反応の場合

第4章 ‌診察室で行っている卵,牛乳,小麦アレルギー児のための食事療法
A 抗原量に基づいて食事療法を行うための基礎知識
1 食品中の抗原量の減らし方にはいろいろな方法があります
(a)原材料として用いない
(b)原材料として用いる量を減らす
2 調理により抗原性が大きく変わる食品があることをよく理解しましょう
(a)加熱調理による抗原性の変化の法則
(b)副材料の影響
(c)加水分解による低アレルゲン化
B 「食べること」を目指して安全に行う食物経口負荷試験と食事療法の実際
1 原因食物の確定のための食物経口負荷試験を安全に行う方法
(a)食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎における除去試験に引き続き行う確定診断としての経母乳負荷試験
(b)即時型反応が主症状である場合の原因抗原の診断における負荷試験
(c)抗原特異的IgE抗体陽性を根拠に除去中の食品の負荷試験
2 「安全に食べる」ことができる量を決定して行う食事療法
(a)耐性獲得の診断のための負荷試験とその結果の治療への応用
(b)摂取可能量の確認のための負荷試験とその結果の治療への応用
3 負荷試験結果を食事指導に活かすための負荷食品の選び方
C 「安全に食べる」ことを目指した抗原量に基づく食事療法の進め方
≪卵≫
1 卵の抗原量に基づいて「安全に食べる」ことを目指した食事療法の進め方
(a)食品中の卵白アルブミン(OVA)とオボムコイド(OM)の「食べる」側から見た抗原性の評価の原則
(b)抗原性に基づいて安全に卵タンパク質摂取量を増やしていく漸増法の実際
2 耐性の獲得を目指した卵の抗原量漸増法
(a)まずⅠ群でOMの耐性の獲得をはかります
(b)第2段階としてⅡ群の食品を用いてOVAの耐性をはかります
≪牛乳≫
1 牛乳の抗原量に基づいて「安全に食べる」ことを目指した食事療法の進め方
(a)食品中のβ-ラクトグロブリンとカゼインの「食べる」側から見た抗原性
(b)抗原性に基づいて安全に牛乳タンパク質摂取量を増やしていく漸増法の実際
≪小麦≫
1 小麦の抗原量に基づいて「安全に食べる」ことを目指した食事療法の進め方
(a)グリアジン定量結果から明らかになった小麦タンパク質の抗原性
(b)抗原量に基づいて安全に小麦タンパク質摂取量を増やしていく漸増法の実際

第5章 ‌卵,牛乳,小麦アレルギー児のための「食べること」を目指した食事の実際と治療用レシピ
A 「食べること」を目指した食事療法の実際と治療用レシピ
1 卵,牛乳,小麦アレルギー児における卵抗原漸増法とレシピ
(a)つなぎの卵の漸増法:OMの耐性獲得を図る
(b)衣の卵の漸増法
2 牛乳アレルギー児における牛乳抗原漸増法
3 小麦アレルギー児における小麦の漸増法
B 園・学校給食における安全性の確保のための献立作成
1 園・学校の給食におけるアレルギー対応食の考え方
2 給食献立作成時に配慮すること
(a)ヒューマンエラーが起こることを前提とした献立作成
(b)卵,牛乳,小麦への対応を基本とします
(c)代替食は見た目にもわかるようにします
(d)つなぎや衣に少量使用する卵や小麦は使用しないか他の粉類を用います
(e)給食で摂取しなくてもよい食材もあります
(f)1日の給食では普通食とアレルギー対応食それぞれ1種類とします
3 調理時の注意
(a)原材料の確認
(b)調理施設・器具
(c)アレルギー対応食を区別するための工夫と,園・学校の実情に応じた取り組み

索 引

ページの先頭へ戻る

序文

 2012年9月に『乳幼児の食物アレルギー』(前著)を上梓してから2年がたちました.
 食物アレルギー児の診療に携わってから30年以上になるのですが,現在,話題になっていることはいずれもその当時から行われていたことばかりですが,今日ほど注目されることはなく,しばしば日本アレルギー学会のシンポジウムなどで食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の関係が取り上げられていた程度でした.
 1992年(平成4年)には食物アレルギーとアトピー性皮膚炎に関連した育児不安の実態を調査する目的で,当時の厚生省の要請で小児科医4名(三河春樹先生,飯倉洋治先生,有田昌彦先生と伊藤節子),皮膚科医3名,産婦人科医,日本保育園医協議会,公衆衛生学,行政,管理栄養士各1名からなるアトピー性疾患実態調査委員会(委員長:京都大学名誉教授 三河春樹先生)が立ち上げられ,医師の診察により診断するアトピー性皮膚炎の全国実態調査が行われました.これに先立ち,厚生省心身障害研究「小児期のアレルギー疾患に関する研究」研究班により,本邦初の「アトピー性皮膚炎の診断の手引き」が作成されました.その後まもなく日本皮膚科学会から「アトピー性皮膚炎の定義・診断基準」が発表されましたが,前者が乳児・幼児に焦点を当てている以外はほぼ同じ内容でした.
 前著では,この時代に第一線の病院の小児科部長として診療していたころのデータで,1980年代後半から2000年代前半に小児科関係の医学雑誌や学会誌に発表してきたデータを多く載せました.データは期間を区切ってその間に来院した食物アレルギー児の全データを解析するという手法をとっているので,現代求められているエビデンスとはなりませんが,おそらく食物アレルギー児の診療にあたられる小児科医には思い当たるところが多い現象ばかりと思います.この先,若い先生方にエビデンスとして通用するデータを出していただけることを期待しています.
 この当時から食物の抗原性に関しては農学部の先生方を中心に研究されており,私ども小児科医はそれらのデータを頼りに食事指導をせざるを得ませんでした.ところが固ゆで卵1個(50g)の負荷試験をパスしても卵ボーロ1個でじんま疹や呼吸器症状を起こすという現象に対する答えは得られませんでした.私自身が常に「食べること」を目指した食事指導をしてきたことから,小児科医の手で食品中に含まれるアレルゲンを「食べる」側から評価しなければ臨床には応用できないと考えていました.たまたま現在の大学で臨床栄養学の教員を公募していることを知り,応募して幸いにも採用していただいたのが2000年4月のことで,そこから第2の人生をスタートしたのです.
 前著においても抗原量に基づいて「食べること」を目指していますが,その続編の本書では,加熱調理や副材料との組合せにより低アレルゲン化を行う方法をデータを示しながら,より具体的に書いています.食物の抗原性は食物中の抗原コンポーネントタンパク質ごとに発揮され,原材料として用いた食物のタンパク質量だけからは評価できないことを理解することがまず大切です.
 現在は食物アレルギーに特化した外来を週4コマしています.重症例が多く,「安全性の確保」を第一にしていますので,食品の低アレルゲン化と,単に原材料としてではなく「食べる」側から見た抗原性の評価の必要性を日常診療の中で感じています.
 市販の加工食品の原材料は予告なしに変更されます.調理法については企業秘密のため情報入手困難です.そのため本書では,家庭で調理することを前提にしています.実際に私の患者さんたちに行っている,安全に抗原量に基づいて「食べること」を目指した食事療法の進め方について記しました.一見大変そうですが,お母様方と知恵を出し合いながら進めています.
 食物アレルギー児の食事作りを容易にするコツとして,卵,牛乳,小麦を含まないレシピはもともと多くあり,決して対応は難しくないこと,四季のある日本に暮らしている私たちは旬の素材を生かした和食を取り入れた食事をすることにより,食物アレルギー対応が容易になるばかりか,バランスのよい食事をとることでアレルギー炎症を抑える健康的な食生活を実現できることを,本書によりお伝えできれば幸いです.
 本書では一人ひとりの食物アレルギー児に対応して安全に「食べること」を目指して行う食事療法を中心に述べています.保育園・学校におけるアレルギー対応食については献立作成時における工夫が大切です.必ず起こるヒューマンエラーのチャンスをなくすための献立作成上の工夫と,園・学校全体で食物アレルギー児を支えるための体制作りがポイントです.
 日本の四季の中で旬の食材を取り入れつつ,耐性の獲得のためのレシピを取り入れて,一人でも多くの食物アレルギーのお子さんが1日も早く安全に「食べること」ができるようになることを祈念しております.

2014年10月
同志社女子大学 生活科学部 食物栄養科学科 教授
伊藤節子