医学生,研修医,開業医を対象とした漢方医学の啓発入門書として好評の『“治せる”医師をめざす』シリーズ第1弾の改訂版. 改訂版では漢方のエビデンスの追加と漢方医学の特色,コラム「漢方豆知識」,姉妹篇への参照ページリンクを新たに追加し,さらに使いやすく読みやすくなって登場!
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目次
改訂第2版 序文
初版 序文
凡 例
はじめに
1 西洋医学を学んで医学部を卒業しても漢方に関しては小学生レベル
2 漢方理論は科学的に解明されていない部分が95%
3 一流の臨床医になるための最低限の必要条件は漢方医療を知っていること
第Ⅰ部 知っておきたい漢方医学の威力
1 医療の目的と実情からみた漢方医学
1 “治せる”医療と漢方医学
2 “治療学”としての漢方医学
3 日本が漢方医学を捨てた理由
4 いま漢方医学を学ぶ意義
5 東洋医学と日本医療の歴史の概要
2 西洋医療のなかでの漢方の姿
1 東西医学の歴史的背景
2 西洋医学と漢方医学の共通点と大きな違い
3 漢方医療とは何か
1 いま求められる漢方医療
2 現代の最新高度医療に漢方医学は必要か
3 漢方医学からみた病気の姿
4 未病と漢方
5 血の道症とは何か
第Ⅱ部 耳学問としての漢方医学理論
1 証を少し知ろう
1 証の理解
2 八 綱
3 陰陽論
4 陰陽と複雑系
2 証がわからなくても漢方医療はできる
3 気血水,五臓六腑
1 気血水病態を読めば漢方は楽々できる
2 五臓六腑は移植医療に応用できるか
第Ⅲ部 漢方医学は科学か
1 漢方医学は科学時代を生き抜けるのか
1 血清薬理学的な漢方医学の研究
2 複雑系とブラックボックス
3 筆者が張仲景だったら
2 漢方医療はこれから進化するのか
1 漢方の証や所見における東西の整合性
2 新しい漢方薬の方向性
3 漢方医学の薬理学
1 漢方薬理とEBM
2 ヒトの医療としての漢方医学
4 絶対知っておきたい17生薬の物語?道草と生薬
1 生薬の上手な使い方 ? 加味
2 覚えておきたい生薬の姿
第Ⅳ部 すぐに漢方医療を実行するには
1 いま漢方薬を処方したい
1 症状と身体特徴をしっかり聴取する
2 舌を診る
3 腹部の触診をする
2 西洋医学を学んで漢方の処方をしよう
1 まず覚える20種類の漢方薬
2 症状+αの漢方治療
3 東西融合療法を実践しよう
1 西洋医学をやりながら,ほんの少しの漢方医学の実践
2 東西両方の医学体系をMixした現代風漢蘭折衷医療をやろう
第Ⅴ部 これから漢方医学を学ぶには
1 漢方はむずかしい.漢方は効かないと感じたら身の周りを見渡してみる
2 これから漢方医学を学ぶには
1 漢方習得が困難な二つの理由
2 打率 3 割を目指す
3 これから漢方医学,漢方医療をはじめるための四つの鉄則
4 存在だけは知っておきたい漢方の歴史的教科書
5 いまどうなっているのか日本の漢方
第Ⅵ部 よくある症状,症候への漢方医療の挑戦
1 いつも風邪気味
2 面皰,?瘡(にきび,吹き出物)
3 めまい
1 漢方からみためまい
2 めまいに漢方薬を処方する
4 頑固な便秘
1 漢方からみた便秘
2 便秘に漢方薬を処方する
5 肥 満
1 漢方からみた肥満
2 肥満に漢方薬を処方する
3 肥満に対するその他の漢方医療
6 西洋医学ではどうにもできない“冷え症”
1 “冷え症”に対する漢方薬の機序
2 多種にわたる“冷え症”
7 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の効果がいま一つの頭痛,頭重感
1 漢方薬が効く頭痛
2 頭痛に漢方薬を処方する
8 くり返す下痢(過敏性腸症候群)
1 漢方からみた下痢
2 下痢に漢方薬を処方する
9 睡眠薬に抵抗する不眠症
1 漢方医学からみた不眠症
2 不眠症に漢方薬を処方する
10 抗不安薬を使うほどでもない不安,イライラ
1 漢方からみた不安,イライラ
2 不安,イライラに漢方薬を処方する
11 貧血気味の元気のなさ
1 漢方からみた貧血
2 貧血に漢方薬を処方する
参考文献
漢方方剤索引
用語索引
著者紹介
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序文
改訂第2版 序文
2007年の夏に拙書の初版が上梓された.存外に多くの皆さんが手にとっていただき,そのことに深く感謝しながら著者はこの6年で少なくとも10回通読した.自分の執筆ながら,時に頷き,時ににんまり,時に唸りながらも,面白いと感じる箇所がいくつかあった.著者がへりくだることなく自慢してどうなるかとお怒りの読者もおられると察するが,よくこんなこと書いたなと著者自身が面白がって読める部分が確かにある.初版発売後すぐに読んでくれた知り合いに聞くと,次から次にどんどん読めて2時間で読み終えてしまったという.構想と資料集めに1年半,執筆に4か月を要し,出版社は校正とか印刷とかに半年かけてくれてやっと出版したにも関わらず,それを2時間で読み終えるとは何ぞや! と感じたが,反面,一気に読んでくれたことに大きな感謝の気持ちと喜びを覚えた.
さて,今回の改訂だが,漢方医学に関する著作は改訂に関しては比較的たやすい部分がある.それは,2000年も変化がなかった(日本伝統医療としての漢方としては1400年ほどの歴史)漢方医学理論や診断,治療法について,初版が出てからたったの6年間で何も変える必要がないからだ.今回の改訂に当たっては,日進月歩している漢方のエビデンスの追加と,漢方医学の特色である「未病」とか「血の道症」について,そして現代医療として実際行われており,特に若い医師にはぜひ知っておいていただきたい「東西融合療法」の私なりの考え方を加筆するにとどめた.このくらいが今回の改訂としては適当であろうと判断している.そしてさまざまな雑学からの漢方への入門という道もあることから,「漢方豆知識」を増補して入門本としての体裁をバージョンアップした.
文体は漢方入門本としての初版の際の私の哲学を押し通して,できるだけ平易になるように努めた.漢方の本は,最初の10行が読みやすいかどうかで決まるからだ.今回の増補部分から読み始めても,11行目に突入していただくために文体は熟考して執筆したつもりである.
2013年6月に“治せる医師をめざす”シリーズ第二弾としての「疾患・症状別 はじめての漢方治療」が著者の編集として発刊され,12月に「方剤別 はじめての漢方100」がやはり著者編集として発刊された.この改訂版に登場する漢方薬や漢方が奏効する疾患名などがこれらの著者編集のシリーズ本の何ページに掲載されているか,その参照ページが適時組み込んであり,3冊を手元に置いていただければ日常診療にも便利に使える様式となっている.活用していただければ幸いである.
これから漢方を学ぼうとする読者にとってこの本が漢方入門のThe first bookとなることを著者は心から願っている.
改訂第二版の出版に際して,多大な尽力をいただいた診断と治療社編集部の川口晃太朗さまと道西絵美さまに深謝いたします.
芽吹きの風を感じる高槻にて
2014年3月
大阪医科大学健康科学クリニック 所長
寄附講座(未病科学・健康生成医学) 教授
後山尚久
初版 序文
本書を手にしている読者は迷っていることであろう.漢方医学を勉強し,修得し,医療で実践してみたいが,難しそうだと考えている.医学生の頃,講義で少し習ったが異質の医療のようであった.医師になって1度だけ漢方医学の講演会を覗いたが,聞いたこともない専門用語が乱れ飛び,さっぱり内容がわからなかった.そんなものをこれから学ぶには相当にエネルギーを消費しそうだし,今,自分が臨床現場で行なっている医療をこのまま続けていれば,医師としては恥ずかしくない程度に一生を過ごせるではないか.多くの読者はそう考えているのかもしれない.
しかし考えてほしい.自分は“一流の医師”,“プロの医師”になりたいのではないか.そんな気持ちが少しでもあれば,本書に目を通してみてほしい.本書は,漢方医学の真の姿を紹介する啓発書としての漢方入門書である.
日本伝統医療は,約1500年もの歴史を持ち,一定の標準的治療体系が完成してから約300年が経過した.“漢方”という用語を用いるようになってからは,わずか130年しか経過していない.現在の医師が医学部で教育される西洋医学は,かつては蘭方医学と呼ばれたもので,漢方医学に比して,その歴史は浅い.
しかし,両医学の理念は当然のことながら同じである.われわれが日本漢方と呼ぶ,わが国伝統医学の先駆けの1人である後藤艮山は,医療は“空理空論を排す”とし,幕末の蘭方医である緒方洪庵は,“学術卓絶するとも,言行厳格なりとも,斉民の信を得ざれば,その徳を施すによしなし”としている.すなわち,いかに人格者で研究業績が立派で,生命科学の研究成果や医学理論などを熱く論じても,目の前の苦しむ病人に安らぎと幸福を授けることができない者は医師ではない,と公言しているのである.かつての日本医療はこのような精神が貫かれていたが,いつの頃からか色褪せてしまったようである.現在では,斉民の信を得なくとも,堂々と胸を張って医療を論じている輩が横行している.
漢方医学は,治療医学として発展してきたのであり,実験医学でも診断医学でもない.その理念からわかるように,古臭いこともなく,時代遅れの医療でもない.ヒトの最も必要とする医療の形を備えた医学体系である.西洋医学をしっかりと身につけた上で,漢方医学を学び,習得し,実践することは,“病者に求められる医療”を行うことであり,“一流の医師”たる条件を備えることにほかならない.
本書は,医学部生や研修医のための漢方入門書として執筆したものであるが,臨床経験豊かな年輩医師,西洋医学の素晴らしい資格を取得された医師の方々においても,漢方医学を覗き見る機会としてご一読いただければこれに優る幸せはない.最後に本書の制作に尽力いただいた 診断と治療社 編集部 相浦健一氏に感謝の意を表す.
夏本番の高槻にて
2007年7月
藍野学院短期大学
教授 後山尚久