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子どものPTSD診断と治療社 | 書籍詳細:子どものPTSD
診断と治療

福井大学子どものこころの発達研究センター教授

友田 明美 (ともだ あけみ) 編集

浜松医科大学児童青年期精神医学講座特任教授

杉山 登志郎 (すぎやま としろう) 編集

大阪大学大学院連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センター長・教授

谷池 雅子(たにいけ まさこ) 編集

初版 B5判 アジロ 並製 2色刷り 304頁 2014年05月29日発行

ISBN9784787821027

定価:本体5,500円+税
  

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様々なケースの子どものPTSDについて,各分野のエキスパートが診断や治療など臨床での経験とともに最新の知見をわかりやすく解説.PTSDの概念から薬の使用についてなど,症例とともに詳述している.子どものこころの問題に関わるすべての方々に役立つ一冊.

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目次

序文

執筆者一覧

巻頭 DSM—IV—TR からDSM—5 への変化


第I 章 子どものPTSD とは

A PTSD とは
1 子どものPTSD が近年注目される理由  友田明美
2 トラウマとPTSD との違い  髙貝 就
3 PTSD の病態と診断 ―DSM—5 における児童期PTSD 診断―  田中 究
4 表情刺激課題で読み取れる子どものトラウマ 小泉径子

B 子どものPTSD
1 いじめによる子どものトラウマ  和久田学
2 虐待による子どものトラウマ  西澤 哲
3 事故による子どものトラウマ  川端康雄,元村直靖
4 性犯罪被害による子どものPTSD  齋藤 梓,新井陽子,鶴田信子,飛鳥井望
5 犯罪による子どものトラウマ  野坂祐子
6 災害によって引き起こされる子どものトラウマ  酒井佐枝子
7 家族・身近な人の死による子どものトラウマ  亀岡智美
8 乳幼児のPTSD  青木 豊


第II 章 子どものトラウマ反応

A 身体への影響
1 脳科学から見たPTSD  友田明美
2 自閉症とトラウマ
 1 )幼少期~思春期前  山本知加
 2 )思春期以降  小坂浩隆
3 子どものトラウマと多動性障害  滝口慎一郎,八ツ賀千穂
4 子どものPTSD と睡眠障害  谷池雅子
5 子どものトラウマと摂食障害  中里道子
6 子どものトラウマがその後の発達に及ぼす影響 ―内分泌の視点から―  藤澤隆史
7 子どものトラウマに関連する抑うつ症状と精神病症状  棟居俊夫

B 社会的な影響
1 不登校  中谷英夫
2 子どものトラウマと反社会的行動・犯罪  松浦直己


第III 章 子どものPTSD の発症予防,治療に向けて

A PTSD の発症予防のために
1 子どものトラウマに対するアウトリーチと多機関連携  髙岡昂太
2 子どもの性虐待に対する司法面接  髙岡昂太
3 子どものトラウマとレジリエンスについて  藤原千惠子
4 子どもとその親への治療
 1 )薬物療法とトラウマ処理  杉山登志郎
 2 )自然災害を体験した子どもの学校における支援方法とプログラム  松本有貴
5 子どものトラウマの予防と治療としてのペアレント・トレーニング  中井昭夫

B PTSD の治療
◇総論
1 応急処置―長期的支援,発生要因による子どもの心のケア  田中 哲
2 年齢・性別における子どものトラウマ反応と心のケア  熊崎博一

◇各論
1 子どものトラウマに対する遊戯療法について  水島 栄
2 子どものトラウマ(PTSD)に対する薬物療法について  山村淳一
3 子どものトラウマフォーカスト認知行動療法について  亀岡智美
4 子どものトラウマに対する認知行動療法について:虐待との関連から  髙岡昂太
5 子どものトラウマについてどのように対応していけばよいのか,家族・保護者を含めたサポート  髙柳伸哉

Column
体罰による子どものトラウマ―“ 被害の再現化” という形式で噴出するトラウマ―  松浦直己
トラウマは耕せるのか  宮地尚子,菊池美名子
マイノリティ・グループの子どもたちとPTSD  紀平省悟
玩具療法;キワニスドールとヒブッキー  神山 潤,草深純一,香西ひろみ
海外におけるトラウマ経験をもつ子どものこころへの対応  鈴木華子

和文索引
欧文索引
数字索引

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序文

 この本は,「子どものPTSD」を巡る日本語で書かれた最初のテキストである.病因,診断,病態生理,経過,後遺症,治療の手技,その世代を超えた影響まで,この本においては現時点で明らかになっている最新の知見を集積し,非専門家にも理解できるように平易な解説を加えた.
 PTSDという病態はDSM―III(1980)ではじめて登場した新しい疾患であり,ヒポクラテスの時代から知られていたうつ病などとは全く歴史が異なる.文明がこの病態と向かい合わざるを得なくなったのは,一つは戦争体験であり,もう一つは性被害の問題であった.わが国では,阪神淡路大震災によってようやくこの名前が広く知られるようになった.その後,PTSDを巡る様々な研究は著しく進んだ.その背後には同時多発テロ(2001)など,大規模なトラウマを生む事件が続いたという事情がある.
 しかしわが国においてはPTSDの名前だけは敷衍したが,その病態や治療に関する正確な知識は行き渡らなかった.「子どものPTSD」においてその傾向はさらに著しい.過去20年間に,子ども虐待の通告件数が50倍以上というとんでもない増加を示したのにも関わらず,である.東日本大震災において,われわれは再び子どもと大人のPTSDに向かい合うことになった.だが不幸にして,正しい知識を備えた専門家は本当に未だ少数であった.
 われわれは今,次のような経験をしている.大人,子どもを含め,PTSDの病態を知り,その治療を学び,対応ができるようになる.すると,1人2人と,子ども,大人を問わず深刻なPTSDを抱える症例が訪れるようになる.徐々にその数は増え,やがて治療を求める人々の長大な待機リストを抱えるようになる.彼らはこれまでに様々な診断を受けてきており,その大半は誤診である.「いったいこの人たちは今までどこにいたのだろう.実は自分も過去に既に出会っていたのではないか」と,待機リストを前に,われわれは苦い思いで振り返るのである.たとえ十年以上の経験があっても,誤った知識に基づく誤った対応を繰り返していれば悪化を招くのみである.わが国の子ども虐待への対応のめちゃくちゃな状態を見れば,そこに実例がいくらでもある.わが国はいつになったら科学的な思考ができるようになるのであろうか.このテキストは恐らく何年か毎に書き換えが必要になるだろう.それほど,PTSDを巡る知見は日々更新を重ねている.だが今という時点においてこの本は最新である.
 子どもを守る最前線にいる方々に,この本をどうぞ手にとって欲しい.新しい知識は正しい対応法を生み出す唯一の,そして強力な道具になるのであるから.

2014年5月
浜松医科大学児童青年期精神医学講座特任教授
杉山登志郎