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書籍詳細

日常診療で遭遇する原因不明の消化管障害
消化管の機能性疾患診療マニュアル診断と治療社 | 書籍詳細:消化管の機能性疾患診療マニュアル

横浜市立大学医学部附属病院臨床研修センター 准教授

稲森 正彦(いなもり まさひこ) 編集

横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室 主任教授

中島 淳(なかじま あつし) 編集

東北大学病院心療内科・東北大学大学院医学系研究科行動医学分野 教授

福土 審(ふくど しん) 編集

兵庫医科大学内科学講座消化管科 主任教授

三輪 洋人(みわ ひろと) 編集

初版 B5判 並製ソフトカバー,2色刷(一部4色) 176頁 2015年04月01日発行

ISBN9784787821393

定価:本体4,500円+税
  

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機能性疾患は「目でみえる異常がないのに症状を訴える疾患」の総称であり,症状によって疾患が規定される比較的新しい概念に基づく疾患である.医師は「症状」という曖昧かつ漠然としたものから診療を行わなくてはならない.本書では,日常診療でよく遭遇する胸やけ,胃痛,胃もたれ,腹痛,下痢,便秘といった症状の最大の原因となる消化管の機能性疾患について,多数の図表,診断・治療フローチャートを用いてやさしく解説した.

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目次

執筆者一覧  
序文 三輪洋人 
目次 

第1章
総説―消化管の機能性疾患とは!?
1 機能性疾患の歴史的変遷 松枝 啓 
2 Rome III 松枝 啓 
3 実臨床における診療スタンス 稲森正彦 

第2章
食道の機能性疾患―胸やけ,呑酸,胸痛,嚥下障害など
1 胃食道逆流症(GERD) 川見典之,岩切勝彦,坂本長逸 
コラム① 好酸球性食道炎(EoE)とFGIDの鑑別 大原秀一,楠瀬寛顕 
2 機能性胸やけ 眞部紀明 
3 食道運動障害 栗林志行,河村 修,草野元康 
4 機能性嚥下障害 折舘伸彦 
5 球症状(運動障害性嚥下障害) 折舘伸彦 

第3章
胃・十二指腸の機能性疾患―胃痛,胃もたれなど
1 機能性ディスペプシア(FD) 三輪洋人 
コラム② 機能性腹痛症候群 松橋信行
2 げっぷ障害 瓜田純久,渡辺利泰 
3 悪心・嘔吐障害 木下和久,浅川明弘,乾 明夫 
4 Gastroparesis(GP) 神谷 武 

第4章
小腸・大腸の機能性疾患―腹部膨満感,腹痛,下痢,便秘など
1 過敏性腸症候群(IBS) 金子 宏 
コラム③ 顕微鏡的大腸炎(MC)とIBSの鑑別 千葉俊美,松本主之 
コラム④ 脳腸相関―脳と消化管を一体化した調節機構 屋嘉比康治 
コラム⑤ IBSの腸内細菌 福土 審
2 機能性腹部膨満症 稲生優海,稲森正彦,中島 淳 
3 機能性下痢 佐藤 研
4 機能性便秘 尾髙健夫 
5 巨大結腸症 冬木晶子,中島 淳 
6 慢性偽性腸閉塞(CIPO) 大久保秀則,中島 淳

和文索引 
欧文-数字索引

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序文

 臨床医学において,消化管疾患は極めて大きな診療分野である.そして,この分野はわが国では形態学を中心に発達してきた.消化管に発生する病気をできるだけ早期に発見することの重要性は自明であり,特に人の生命に直結する癌をいち早くみつけることは「命を救う」という医師の最大の使命を果たすことにつながる.こうして,形態学,すなわち消化管造影検査や内視鏡検査の技術は日々進歩してきた.この分野は今日でもわが国の独壇場であるが,これには「胃癌が多い」というわが国の実情や,あるいは形態学そのものが「器用で几帳面な日本人に馴染みやすい」という背景があるのかもしれない.
 しかし,時代は変わってきた.形態学の重要性は以前と変わらないものの,医学の分野は広がりをみせ,多様化してきている.形態学だけで消化器分野を語れるほど単純ではなくなってきたのである.すなわち,「機能性消化管疾患の増加」である.機能性消化管疾患は「目でみえる異常がないのに症状を訴える疾患」の総称であり,「症状によって疾患が規定される」という比較的新しい概念に基づく.本書では巻緒の松枝論文にその歴史がわかりやすく記述されているが,医師は「症状」という非常に漠然かつ曖昧なものから診断と治療を行わなくてはならない.生命予後は一般に良好で,また患者の訴えが多岐にわたる傾向にあることから,これまでは心気的傾向の強い患者というイメージが先行し,一般臨床医からは敬遠される向きがあったように思われる.
 機能性消化管疾患では,患者数が非常に多いことに加えて,患者のQOLが大きく低下することや,社会の労働生産性に影響を及ぼすことが示されている.わが国で注目されるようになったのは比較的最近のことであり,消化管機能の診療や研究といった面で欧米に大きな遅れをとっている.しかし最近では,わが国でも多くの研究者がこの分野に参入するようになり,一般臨床医の興味も膨らんできている.2014年には日本消化器病学会から2つの機能性消化管疾患の診療ガイドライン(過敏性腸症候群,機能性ディスペプシア)が上梓され,また近年では新規治療薬の開発・上梓が相次いでおり,注目を集めている.
 しかしながら,機能性消化管疾患に対する一般臨床医の理解は未だ十分でない.その大きな理由の1つとして,これまで機能性消化管疾患を網羅的,系統的に学ぶ機会や刊行物が少なかったことがあげられる.本書では,機能性消化管疾患の総論から各論までを網羅している.食道運動障害や慢性偽性腸閉塞症といった厳密には機能性消化管疾患に分類されない疾患も含んでいるが,これは形態学的異常に対比して機能異常を理解するうえで重要と考えたことによる.そして,本書の執筆陣はいずれもこの分野のトップランナーであり,論文はどれも力作揃いとなった.そのうえ非常にわかりやすく書かれており,機能性消化管疾患の全体像を捉えるのにうってつけである.日常診療では,診療マニュアルとして十分に役立つであろう.たとえば下痢や便秘といったありふれた症状でさえ,本書を読む前と後では診療姿勢が変わる可能性すらある.コラムでは最新のトピックスを取り上げており,専門家が読んでも勉強になる.
 本書の出来栄えは秀逸で,企画した編集者の1人として非常に満足している.読者の先生方の日常診療にぜひ役立てていただきたい.

 2015年3月吉日
編集者を代表して
三輪洋人