診断と治療
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2019年 Vol.107 No.11 2019-11-07
大人の発達障害

定価:本体2,600円+税
ねらい 岩波 明
◆発達障害の基礎知識
発達障害とは何か 市川宏伸
成人における発達障害の疫学と有病率 岩渕俊樹,他
発達障害に対する行政的サポート 大村美保,他
内科一般外来における対応法 宮尾益知
◆大人の発達障害の診療
ASD(自閉症スペクトラム障害)の臨床症状と診断 岡田 俊
ASD(自閉症スペクトラム障害)と併存疾患 横山富士男
ASD(自閉症スペクトラム障害)の治療 中西葉子,他
ADHD(注意欠如多動性障害)の臨床症状と診断 中村和彦,他
ADHD(注意欠如多動性障害)の併存障害 小野和哉
ADHD(注意欠如多動性障害)の薬物療法 松本英夫
ADHD(注意欠如多動性障害)の非薬物治療:専門プログラム・デイケアにおける実践 水野 健,他
ASDとADHDとの関連:症状の鑑別,重複について 樋端佑樹,他
顕在化しにくい発達障害の診断と対応:LD,発達性協調運動障害,吃音を中心に 古荘純一
発達障害と愛着障害 山下 洋
◆大人の発達障害のトピックス
発達障害の生物学的知見 小坂浩隆
発達障害と学生教育 佐々木 司
発達障害に関する就労援助 鈴木慶太
発達障害のセルフヘルプグループ(SHG) 広野ゆい
連 載
◎症例を俯瞰する総合診療医の眼
4週続く発熱と胸部異常陰影を認めた48歳女性 鈴木康倫
◎注目の新薬
テリルジー®(フルチカゾンフランカルボン酸エステル・ウメクリジニウム臭化物・ビランテロールトリフェニル酢酸塩) 伊藤玲子,他
◎医療裁判の現場から
腰背部痛を訴える患者に対する腹部大動脈瘤破裂の鑑別診断をめぐって 太田善大
近年,児童思春期に加えて成人期における発達障害は,精神医学の領域においても,さらには社会的にも大きな注目を集めている.いじめ,不登校,引きこもりなど教育現場におけるさまざまな問題や,職場における不適応などと発達障害が関連しているケースは多いが,医療的にも,行政的にも,現状では発達障害に対する対応は十分とは言えないと思われる.発達障害における主要な疾患はASD(自閉症スペクトラム障害),ADHD(注意欠如多動性障害),LD(学習障害)である.本号においては,成人期の発達障害について概略とトピックを特集する.
現在,発達障害に関しては,インターネット上などに多くの記事がみられ,数多くの情報が提供されている.当事者や家族の経験談などに加えて,医療者に向けた専門的なサイト,あるいは診断チェックリストが付いている便利な記事も多くみられる.また,ニュースやテレビでもよく発達障害の特集が行われている.特にNHKでは,この分野の番組がひんぱんに放送され,著名人が自ら発達障害であることを告白し注目を集めることも,よく目にするようになった.
このように,今でこそ注目を集めている「発達障害」であるが,20年ほど前までは発達障害に関する認知度,注目度は低く,小児科医や児童精神科医の間で報告や研究がされている程度であった.その当時,発達障害の診療は小児が中心であり,それに従事する医師や研究者もわずかしか存在していなかった.また,発達障害の主要な疾患であるASDやADHDという疾患の概念が確立したのはごく最近のことであり,
現在の診断基準の基本的な枠組みが出来あがったのは1980年代に入ってからのことになる.
もっとも,研究が進むにつれて,最近でも診断基準は繰り返し見直されており,少しずつ変更が行われている.さらに診療の対象が,児童から成人期まで広がりつつある.欧米では1990年代,我が国においては今世紀になって,成人期の発達障害が大きな注目を集めているが,いまだに発達障害の診療経験が乏しい医師が多いのが現状である.
このような状況をふまえて,本特集においては,発達障害の概念から臨床的な様々なテーマまで,この分野の専門家に執筆を担当していただいた.本特集は必ず諸先生方のお役に立つものと考えている.
昭和大学医学部精神医学講座
岩波 明