産科超音波検査について,習得すべき優先順位の高い知識をわかりやすく解説.助産師と研修医を対象とした,産科超音波検査の実用的な知識を提供する必読の1冊.今版では、全般的によりわかりやすいよう画像と解説を見直し,目次に,読者対象である,研修医,助産師向けのマークを示した.また,妊婦さんとのコミュニケーションツールとしても活用できるよう,説明方法について1項目を加えた.
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目次
助知:助産師が知識として持っていることが望ましいもの
助実:助産師が実践できることが望ましいもの
研知:研修医が知識として持っていることが望ましいもの
研実:研修医が実践できることが望ましいもの
はじめに
1.超音波検査の基礎(助知・研知)
1-1 超音波とは
1-2 超音波検査法の原理
1.反射法
2.パルス波
3.スキャン
4.Bモード画像
1-3 超音波の安全性
1.加熱作用
2.キャビテーション作用
3.安全性についての現状
1-4 経腹法と経腟法
1-5 超音波検査の実用的な知識
1.原理的な事項
2.実践的な事項
2.妊娠初期の超音波検査
2-1 妊娠初期の超音波検査を理解するために(助知・研知)
1.経腟法の実際
2.経腟法の画像の特徴
3.非妊娠時子宮の経腟法による超音波像
2-2 妊娠初期の正常所見(助知・研実)
1.妊娠4〜5週の超音波所見
2.妊娠5〜6週の超音波所見
3.妊娠7週以降の超音波所見
2-3 胎児の大きさと妊娠週数(助知・研実)
1.胎児の大きさで妊娠週数を修正する場合
2.胎児の頭殿長(crown rump length:CRL)による妊娠週数の推定
3.胎児の児頭大横径(biparietal diameter:BPD)による妊娠週数の修正
2-4 稽留流産(missed abortion)(助知・研実)
2-5 異所性妊娠(子宮外妊娠)(研知)
1.早すぎるために見えない正常妊娠
2.子宮内に妊娠しているが,育っていないので小さくて見えない流産
3.異所性妊娠(子宮外妊娠)
2-6 胞状奇胎(研知)
2-7 双胎妊娠:膜性診断を中心として(研知)
1.卵性と膜性の関係
2.膜性と産科リスク
2-8 胎児の後頸部浮腫(nuchal translucency:NT) (助知・研知)
3.妊娠中・後期の超音波検査
3-1 腹部超音波法の実際(助実・研実)
3-2 胎児の数(助実・研実)
3-3 胎児の心拍(助実・研実)
3-4 胎位と胎勢(助実・研実)
3-5 胎児の大きさ(助実・研実)
1.頭部の計測法
2.腹部の計測法
3.大腿骨の計測法
4.胎児の推定体重
5.測定値の解釈について
3-6 羊水量(助実・研実)
1.羊水ポケット法
2.AFI(amniotic fluid index)
3.羊水量の異常についての考え方
3-7 胎盤,臍帯(助知・研実)
1.胎盤
2.胎盤と血腫
3.臍帯
3-8 頸管周辺部(助知・研実)
1.頸管長
2.内子宮口の開大(funneling)
3.前置胎盤,低位胎盤
3-9 血流評価(助知・研知)
1.ドプラ法
2.パルスドプラ法
3.なぜ血流の速度でなく波形を用いるか
4.動脈血流波形
5.臍帯動脈血流波形
6.胎児中大脳動脈の血流波形と最高血流速度
7.妊婦の子宮動脈血流波形
8.パルスドプラ法による血流計測の役割
3-10 胎児の健常性(well-being)の評価:Biophysical profiling score(助知・研知)
1.NST
2.呼吸様運動
3.大きい胎動
4.筋緊張
5.羊水量
6.胎児well-beingの判断
3-11 3次元超音波(助知)
4.コミュニケーションツールとしての産科超音波検査(助実)
4-1 留意すべき点
4-2 妊娠12週頃から20週頃まで
4-3 妊娠20週頃以降
1.顔の見方
2.性別の見方
3.その他
4.3D,4Dの見方
参考文献
練習問題
索引
おわりに
著者紹介
Column●① 超音波の反射法に対するエックス線の透過法
Column●② 楽しむための超音波検査
Column●③ ドプラ効果
Column●④ 倫理の問題
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序文
はじめに(第2版刊行にあたって)
本書の初版が発行されて5年がたちました。この間,いろいろな方からいただいた感想のほとんどは「わかりやすい本ですね」ということでした。これは私にとって,嬉しい反応であり,今回,第2版の出版を迎えることができたのは,大変有難いことです。
初版の「はじめに」に以下のようなことを書きました。「現在,超音波検査ができるようになりたいという助産師が増加し,教えてほしいと依頼されます。しかし,実際に教えてみると,不安になることがあります。機器の操作法,胎児発育の測定法など技術的なことだけに関心を示すからです。超音波検査には,技術だけでなく,知識が必要です。知識なく超音波検査をする者は,自動車の運転方法のみ練習し,交通ルールなどの知識を軽視する初心者と同じで,有害である場合さえあります。」
この状況は研修医も同じです。一見,そつなく産科の超音波検査をしているのですが,少し質問してみると,重要で基礎的なことをほとんど知らないことに驚かされます。しかし,これは無理からぬことです。彼らは医学の進歩,臨床研修制度の変化により広い範囲の膨大な知識を要求されながら,座学より実習を重視する教育を受けてきました。また,その時その時に必要な細切れの知識をインターネットで得るという習慣を持っている世代です。しかしそれでも,最低限の系統だった知識は習得しなくてはなりません。
第2版では,知識として持っていることが望ましいものと,実践できることが望ましいものを,助産師向け,研修医向けでそれぞれに分けて,目次に示しました。本書をすみからすみまで読む余裕をもたない人は参考にして下さい。また,妊婦や家族は産科超音波検査を楽しみにしている場合が多く,特に助産外来で,その期待に応えたいという声があったため,別に「コミュニケーションツールとしての産科超音波検査」という項目を新たに設けました。
助産師や,研修医にとって分厚い難解な本は役にたちません。実用的な知識をわかりやすくコンパクトにまとめたものが必要で,本書はそれを目指しています。
2015年8月
帝京大学医学部産婦人科 梁 栄治