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新生児・小児医療にかかわる人のための
看取りの医療 改訂第2版診断と治療社 | 書籍詳細:看取りの医療 改訂第2版

大阪発達総合療育センター 副センター長

船戸 正久(ふなと まさひさ) 編集

淀川キリスト教病院ホスピス・こどもホスピス病院院長

鍋谷 まこと(なべたに まこと) 編集

改訂第2版 B5判  236頁 2016年05月20日発行

ISBN9784787822048

定価:3,960円(本体価格3,600円+税)
  

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新生児・小児医療に直接関わる医師,看護師,臨床心理士,倫理学者,法学者,神学者など,それぞれの専門の立場から執筆された前版に,家族のグリーフケア,援助者のメンタルヘルスケアについて内容を追加して出版.自宅,小児ホスピス,医療型障がい児者入所施設など,異なる医療選択をした患者家族による“看取りの実際”は家族の思いがストレートに伝わる内容で,小児の看取りの医療にかかわるすべての人にぜひ読んでもらいたい.

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目次

推薦の言葉 竹内  徹  
推薦の言葉 柏木 哲夫
序 文(初版) 船戸 正久
序 文(改訂第2版) 船戸 正久/鍋谷まこと

執筆者一覧
 
Ⅰ 総論 
1 医療現場の臨床倫理学と看取りの医療 船戸 正久  
2 新生児・小児医療において子どもの権利と尊厳をどのように守るか 田中 恭子  

Ⅱ 総説 
1 周産期医療における臨床倫理学の軌跡 仁志田博司  
2 新生児医療の倫理とナラティヴ・ベースド・メディシン(NBM) 堀内  勁  
3 侵襲的治療介入の選択・非選択の権利と法的根拠 甲斐 克則
4 小児におけるエンド・オブ・ライフケアの臨床倫理 清水 哲郎

Ⅲ 話し合いのガイドライン 
1 重篤な疾患を持った新生児の話し合いのガイドライン 福原 里恵  
 重篤な疾患を持つ新生児の家族と医療スタッフの話し合いのガイドライン 
2 重篤な疾患を持った“子ども”の治療をめぐる話し合いのガイドライン 加部 一彦  
 重篤な疾患を持つ子どもの医療をめぐる話し合いのガイドライン 

Ⅳ 緩和ケアと看取りの医療 
1 胎児緩和ケア(fetal palliative care) 和田  浩  
2 新生児緩和ケア 関  和男  
3 小児緩和ケア 鍋谷まこと  
4 在宅緩和ケア 前田 浩利
5 小児緩和ケア教育プログラム(CLICプログラム) 多田羅竜平
6 英国の小児ホスピス 馬場  恵

Ⅴ 家族のグリーフケア 
1 医師の立場からできるグリーフケア 和田 和子
2 看護師の立場からできるグリーフケア 羽鳥 裕子
3 臨床心理士の立場からできるグリーフケア 橋本 洋子
4 宗教家の立場からできるグリーフケア 藤井 理恵

Ⅵ 家族が望む看取りのケア 
1 家族が望む看取りのケア 坂下 裕子
2 看取りケアの基本スキル 諏訪免典子
3 子どものアドバンス・ケア・プランニング 井上みゆき

Ⅶ 医療・ケアチームで安らかな看取りを支援した心に残る天使たち 
1 胎児緩和ケアを行ったEちゃん(無脳症) 宮田  郁
2 NICU・GCUにおいて看取りの育児を行ったMちゃん(低酸素性虚血性脳症)
   榎本 真宏
3 医療型障がい児者入所施設で看取ったHさん(重症心身障がい) 井ノ上智世
4 在宅で看取ったTくん(神経芽腫) 宮田 章子
5 小児ホスピスで看取ったTくん(脳腫瘍) 福本 留美
6 赤ちゃんと家族の幸せを支える医療(18トリソミー) 五十嵐桃子

Ⅷ コラム:援助者のメンタルヘルスケア 
1 子どもの看取りにかかわる援助者のストレスケア
  〜ストレスの理解と具体的な対処方法〜 瀬藤乃理子

Ⅸ 資料 
資料1 厚生労働省・学会の決定プロセス・話し合いのガイドライン 
資料2 グリーフケア・全国のケアグループ,相談機関 
資料3 ご家族への確認に際して(参考資料)終末期の迎え方についての確認
    (大阪発達総合療育センター例) 
資料4 事前ケアプラン(advance care planning:ACP)の具体例①
   船戸 正久
資料4 事前ケアプラン(advance care planning:ACP)の具体例②
  船戸 正久
一般社団法人京都グリーフケア協会の活動 

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序文

推薦の言葉

 本書は,私の敬愛する旧友 船戸正久博士編集による「新生児・小児医療にかかわる人のための看取りの医療」(2010年)の改訂版になります.
 小児における「看取りの医療」については,この数年間,日本周産期・新生児医学会や日本新生児成育医学会(旧日本未熟児新生児学会)・小児保健学会などにおいて,シンポジウムや特別講演・教育講演の形で,学際的にまた積極的に討論される時代になってきました.
 振り返ってみますと,小児の緩和ケアの問題は,1970年頃までは,わが国同様,諸外国においても,学会員のみに出席が許される閉鎖的な会場で討議されるという非常にsensitiveな話題でした.しかし現在では,学会のみならず,研究会や研修会の形でオープンに議論される時代になりました.しかも参加者には,医師・看護師など医療従事者だけではなく,臨床心理学・倫理学・法律学の専門家さらには宗教家も含まれるようになってきました.また特記すべきことは,これら学会や検討会の場に,実際に子どもを亡くされた家族の方々も参加されるようになったことです.
 本書の特徴は,総説部分において,医療の現場で長い間苦闘されてきた先生方が,西欧諸外国の倫理的対応を参照にしながら,わが国独自の倫理的立場を強調されている点であります.臨床倫理学の課題は,急速に進歩していく医療内容に対応して,たえず熟慮・再考していく努力を怠ってはなりません.その課題の一つとして,今回の改訂版には,胎児に対する緩和ケアや子どものホスピスの現状と問題点が取り上げられています.
 また本書には,従来の成人における緩和ケアでは,あまり強調されなかった「家族」の悲しみに対するケアも含まれています.子どもを亡くした家族のケアは,成人の場合とは異なり,その両親はなお生殖年齢にあること,また亡くなった子どもの「きょうだい」がいることを考慮しても,非常に重要な課題になってまいります.さらに印象的なことは,実際わが子を亡くしたご家族の立場から「家族の望む看取りのケア・悲しみのケア」が含まれており,実例を通して感動的な物語が述べられていることです.
 現在諸外国では,緩和ケア・看取りのケアは,医学教育のカリキュラムに欠かせない一分野になり,すでに分厚い教科書まで出版されております.
 願わくば,本書が医学教育の現場でも精読され,問題点が明確にされるよう,また臨床に望む新しい医師・看護師の意識改革の糸口になることを切望します.また本書を,個人として,また医療従事者の読書会・検討会においても,問題点を明確にするための重要な資料として利用されるよう推薦します.

 2016年5月
元大阪府立母子保健総合医療センター 院長
竹内 徹


推薦の言葉

 本書は2010年に「診断と治療社」から発行された「新生児・小児医療にかかわる人のための看取りの医療」の改訂版である.この6年間にこの分野に起こった大きな変化,発展は目を見張るものがある.このことは,この改訂版の執筆者の専門分野の広がりに如実に表れている.医師や看護師はもちろんのこと,ソーシャルワーカー,チャプレン,臨床心理士,教育者,理学療法士,哲学者など,実に多彩な専門分野の著者が名を連ねている.これは「看取りの医療」がいかに広い領域の協力を必要とするかを如実に物語るものである.
 私は本書の初版の推薦文も書かせていただいた.これは編集者の一人である船戸正久先生からの依頼によるものであった.私は淀川キリスト教病院で初めてのホスピスプログラムを1973年にスタートさせた.ホスピスケアを実践する中で,新生児や小児医療の分野でも,看取りの医療が大切なのではないかと思い始めた.そのきっかけを作って下さったのが,当時淀川キリスト教病院の小児科部長であった船戸正久先生であった.新生児医療の専門家であった先生から,重度の障害や致死的疾患を持った新生児や小児のケアや看取りについて相談を受けることがあり,ホスピスのスタッフと小児科のスタッフがカンファレンスを持ったこともあり,私自身が病児の母親のケアに参加したこともあった.
 淀川キリスト教病院では,2012年にアジアでは初めての「こどもホスピス」をスタートさせた.その中心的な働きをして下さっているのが,本書のもう一人の編集者である鍋谷まこと先生である.日本の各地で「こどもホスピス」の働きは広がりつつある.その名称はともかく,目指すところは「ホスピスのこころ」を持った「看取りの医療」である.
 本書は船戸,鍋谷両先生と,お二人がこれまでに築き上げて来られた専門家の方々が執筆された,誠にユニークな好著である.この分野の最新の知見が紹介されており,内容が充実している.執筆者が比較的若く,それぞれの臨床経験に基づく内容になっているというのも本書の魅力である.新生児・小児医療にかかわる,医師,看護師,ソーシャルワーカーや他のコメディカルスタッフのみならず,「看取り」に関心を持っておられる方々の一読をお進めしたい.

 2016年 5月
淀川キリスト教病院 理事長
柏木哲夫


序 文(初版)

 1979年,竹内徹・柏木哲夫訳の名著「母と子のきずな―母子関係の原点を探る」(Klaus & Kennel,医学書院)が発刊されました.その後2001年には竹内徹訳の「親と子のきずなはどうつくられるのか」(Klaus & Kennel & Klaus,医学書院)が続いて発刊され,NICU(Neonatal Intensive Care Unit)を含む周産期医療の分野に大きな影響を与えました.これらの本は,今まで医療技術中心であった新生児医療の分野に,母子関係,親子関係の重要さ,愛着行動への研究の大切さを喚起する大きな誘因となりました.1970年代に発刊されたこの「母と子のきずな」の本の中に下記のような記述があります.
 「この言葉は面接をした者にとって驚きであった.幾人かの親が,子どもが死ぬ前の最後の数分なり数時間,子どもの世話に加わりたかったという気持ちを表現した.……エール大学ニューヘブン病院のダフ博士は,子どもの死が免れないことが明らかになった時,子どもが死んでいく間,親が抱くことができるようにすべてのチューブや器具を子どもから取り去ることを望むかどうか,両親に聞いているという」
 1970年代以前の日本では,新生児の死は忌むべき出来事としてタブー化し,戸籍が汚れるといって死産扱いにされ,写真一枚もなく,お葬式も出さない状態で赤ちゃんの死が闇に葬られる時代でした.とくに母親に対しては心理的負担を避けるためという理由で一目会うことさえ許されず,父親と相談の上秘密裏にこうした手続きが行われることも多かったといわれています.まさに家族の一員として亡くなった新生児の人権や尊厳に対する配慮などは皆無といってよい時代でした.この記述は,米国においてさえ赤ちゃんの亡くなる前に「子どもの世話に加わりたかった」という当然の要望を家族,とくに母親がもっていたということは驚くべきこととして捉えられていたことを示しています.
 この本が竹内・柏木両氏により翻訳されてから「闇の谷」におかれていた日本の新生児医療にも光が当てられ,家族の一員としての胎児・新生児という視点で徐々に大きな変化が起こってきます.同時に患者として人間(人格)としての「赤ちゃんの人権と尊厳をどのように守るか」という視点も導入されるようになってきました.たとえ終末期においても子どもの死をタブー化せず,「こどもの最善の利益」を中心に何が赤ちゃんにとって一番大切かという視点でFamily—centered careの臨床や研究を積極的に進められるようになってきました.
 海外では欧米を中心に新生児や小児のEthical Medical Decision—Making,End—of—Life Care,Palliative Care in NIC and PICU,さらにHome Hospis CareやFetal Palliative Careの研究が進められ,学術論文やガイドラインとして多く公表されています(資料編参照).一方日本の個々の施設レベルにおいても「東京女子医科大学病院NICUにおける倫理的観点からの医療方針決定のポリシー」ならびに「東京女子医科大学病院NICUにおける治療方針決定のクラス分け」(1985/1987),「近畿大学医学部分娩育児部における新生児の倫理的方針決定のガイドライン」(1997),さらに「淀川キリスト教病院における倫理的・医学的意思決定(倫理的許容範囲)のためのガイドライン」(1998,2001一部改訂)などが公表されました.さらに成育医療研究班田村正徳(主任研究者)班の「重篤な疾患を持った新生児の医療をめぐる話し合いのガイドライン」報告書や同じ班で船戸正久(分担研究者)班の「NICUにおける緩和的ケア―赤ちゃんとご家族に対する医療従事者の配慮」報告書などが作成され,新生児の終末期医療の分野が非常に大切な医療分野の1つとして認識されるようになってきました.このように学会や研究班のレベルでも新生児・小児医療における倫理の問題は医学的にも学問的にも非常に大切なテーマの1つになりつつあります.
 2009年10月29~31日に行われた第56回日本小児保健学会(大阪大学教授大薗恵一会長)で私が「新生児医療の進歩と生命倫理」のテーマ招待講演をさせていただきました.この講演がきっかけとなりこの本の出版の話が現実になりました.また2010年11月5~7日,神戸国際会議場において第55回日本未熟児新生児学会学術集会(会長:船戸正久)が開催されることになりました.そのテーマは「いのちの輝きを支える―Baby—first,child—firstの社会を目指して」です.その大切な招待講演の1つとして,オーストラリア・Monash大学名誉教授で現在聖公会の牧師になったVictor Yu教授に「Ethical and Medical Decision—making and Compassionate Care in NICU」(NICUにおける倫理的・医学的意思決定と慈しみのケア)で講演していただくことになりました.また私が会長講演として「臨床倫理学の基本的考え方―胎児・新生児の人権と尊厳をどのように守るか?」というテーマでやはり臨床倫理に関する講演をさせていただきます.
 この学会開催の機会に「新生児・小児医療にかかわる人のための看取りの医療」が診断と治療社から新たに出版されることになりました.この本の目的は,子どもの死をタブー化し忌むべき出来事として闇の中に葬るのではなく,「事実を直視して子どもと家族を中心とした最善の医療を,家族と医療チームで多面的に考え,子どもを慈しみ意味ある存在として尊ぶ光の医療にしたい」との願いのもとに各著者に原稿をお願いし編集させていただきました.今回多面的に光を当てていただくために新生児・小児医療に直接関わる医師,看護師,臨床心理士さらにご家族の立場だけでなく,こうした末期医療に造詣が深い倫理学者,法学者,神学者などにもそれぞれの専門の立場から非常に大切な原稿を頂きました.また新生児や小児悪性腫瘍の末期医療や緩和ケアに加え,同じように今後大切になるであろうトピックス(コラム)として胎児緩和ケアの紹介,PICU(小児集中治療)における侵襲的治療の選択と緩和ケアの今後,重症心身障害医療おける侵襲的治療の選択と緩和ケアの今後,英国の小児ホスピス(ヘレンハウス)の活動紹介などの文章も掲載させていただきました.
 明治時代のキリスト教思想家内村鑑三は,「真理とは二つの中心をもった楕円である」との有名な言葉を残しています.「やりすぎの医療」「やらなすぎの医療」ともに非倫理的といわねばなりません.この本の出版がきっかけとなり,「こどもの最善の利益」を中心に医療技術の発展による救命の努力と同時に,終末期における人間らしい尊厳をもった医療が多面的に研究され,子どもと家族のために「いのちの輝き」と「安らかな看取り」を支える最善の医療が開発されることを心から願います.今回この本の出版のために貴重な原稿を寄せていただいた各著者の方々,推薦文を書いていただいた元大阪府立母子保健総合医療センター院長 竹内徹先生,金城大学学長 柏木哲先生に心から感謝いたします.そして今回の発刊を担当していただいた診断と治療社編集部寺町多恵子氏に深謝いたします.

 2010年 10月
淀川キリスト教病院前副院長
船戸正久


序 文(改訂第2版)

 2010年,第55回日本未熟児新生児学会(現,日本新生児成育医学会)学術集会(会長:船戸正久)を神戸国際会議場で開催しました.その際,医療現場の臨床倫理の問題について16名の執筆者の協力を得て,「新生児・小児医療に関わる人のための看取りの医療」を編集し,発刊しました.これは,2009年の第40回小児保健学会学術集会(会長:大薗修三)において「新生児医療の進歩と生命倫理」という教育講演の機会が与えられ,会場でたまたま聴講していただいた診断と治療社から発刊依頼を受けたことが切っ掛けでした.当初新生児・小児医療において死はタブーであり,本の題名をどのようにしようか,色々迷っていましたが,最終的に出版社の了解を得て「看取りの医療」という言葉を使うことにしました.それは,推薦文を書いていただいた柏木哲夫氏(現淀川キリスト教病院理事長)の本に「愛する人の死を看取るとき」(PHP研究所,1995年)という著書があり,その言葉が大変気に入っていたこと,そして竹内徹氏(元大阪府立母子保健総合医療センター院長)らが訳された有名な「母と子のきずな」(Klaus & Kennell著,竹内 徹・柏木哲夫訳,医学書院,1979年)や「周産期の死*死別された両親へのケア*流産・死産・新生児死亡」(SANDS,竹内徹訳,メディカ出版,1993年)など様々な著作から,医療現場において「看取りの医療」が大切な学問分野として多面的な研究が必要であると考えたからです.
 筆者が,こうした臨床倫理学の問題にかかわるようになった切っ掛けは,1987年朝日新聞に掲載された「仮死のまま新生児2年半:安らかに逝かして(両親)‐外せぬ人工呼吸器(病院)」という記事でした.1980年代に開発された新生児用人工呼吸器の流用により,本来救命不可能であった脳死状態に近い重度脳損傷児の半永続的な延命が可能になり,日本のNICU(新生児集中治療室)において大きな問題になった時代です.しかし日本では,未だにこうした臨床倫理学や緩和ケアの教育が医学部で基礎教育としてなされておらず,子どもの最善の利益を中心に法的代理人である家族と医療チームの倫理的な話し合いが十分されていません.そのため25年以上経っても未だにこの問題は解決されず,NICUや小児病棟の長期入院とも関係し,臨床現場における大きな倫理的ジレンマになっています.臨床的脳死などを含んだ重篤な疾患を持った子どもに,「どこまで傷害行為にあたる侵襲的治療介入をendlessに継続するのか」,今なお医療現場で続く臨床倫理学の大きな課題です.
 現在学会レベルでも,今までタブーであった臨床倫理学の課題が公に議論できるようになってきました.また胎児緩和ケアなど新しい倫理問題に関する新知見やガイドラインも国内外から発表されるようになってきました.それらをすべて網羅することはできませんが,今回新たな執筆者を含め28名の方々から多面的な執筆をいただきました.また編集者として淀川キリスト教病院ホスピス・小児ホスピス鍋谷まこと氏にも加わっていただきました.今後この本が,新生児・小児医療の現場で倫理的ジレンマを抱えて,子どものより良い医療・より良い看取りを研究または追求する関係者の方々に少しでもお役に立てば幸いです.

【謝辞】
 この本の発刊のために協力いただいた各執筆者の方々,推薦文を書いていただいた竹内 徹氏,柏木哲夫氏に心から感謝いたします.発刊のために実務に携わっていただいた診断と治療社の寺町多恵子氏に感謝いたします.
 またこれらの研究過程で教示いただきました下記の共同研究者,厚生労働省・成育医療研究班,精神神経疾患研究班,その他協力者の先生方にも深謝いたします.
・共同研究者:玉井 普,鍋谷まこと,和田 浩,西原正人,池上 等,川野克子,高尾恭子,宮田亜紀(淀川キリスト教病院),島田誠一(日本バプテスト病院),竹本 潔,飯島禎貴,塩川智司,杉浦みき,井ノ上智世,香月みよ子,土井知栄子,近藤正子(大阪発達総合療育センター)
・成育医療研究班(2002−2004):主任研究者:田村正徳(埼玉医科大学);仁志田博司(東京女子医大),池田一成(慶応大学),玉井真理子(信州大学)
・分担研究班(2002−2004):分担研究者:船戸正久(淀川キリスト教病院);竹内 徹,北島博之,平野慎也(大阪府立母子保健総合医療センター),和田和子(大阪大学),竹中まりな(聖隷三方原病院),千代豪昭(大阪府立看護大学),窪寺俊之(関西学院大学),橋本洋子(聖マリアンナ大学),岡田由美子(加古川市民病院),大和田摂子(神戸松蔭女子大学),坂下裕子(小さないのち)
・厚生労働省精神・神経疾患研究班(2007−2008):主任研究者:佐々木征行(国立精神・神経センター);山田美智子(神奈川県立こども医療センター),宮坂道夫(新潟大学),松田一郎(北海道医療大学),多田羅竜平(大阪市立総合医療センター)
・成育医療研究班(2009−2010):主任研究者:阪井裕一(国立成育医療研究センター);西畠 信(総合鹿児島生協病院),会田薫子(東京大学),伊藤龍子(国立看護大学),白石裕子(日本看護協会),甲斐克則(早稲田大学),河原直人(早稲田大学)
・その他協力者:堀内 勁(聖マリアンナ医科大学,細谷亮太(聖路加国際病院),掛江直子(国立成育医療研究センター)(敬称略)
 
 2016年 5月
大阪発達総合療育センター小児科
船戸正久


序 文(改訂第2版)

 今回船戸先生から,「新版新生児・小児医療に関わる人のための看取りの医療」について編集を一緒にやるようにお声かけをいただき,気軽な気持ちでお引き受けした.ところがその執筆陣を拝見すると各界の著名な先駆者ばかりで,私が編集など大変なことと重責に押し潰されそうになった.ただ,私自身が限られた時間の中にあっても輝く生命と,そしてその生命の旅立ちを看取ることを真っ向から取り組んでいる,日本で最初のこどもホスピス病棟で働く唯一の存在として,このお話をいただいたと理解した.そうであるならば,船戸先生も述べられているが,今まではタブー視されてきた子どもの死という問題に取り組み,新たな道筋を示す貴重なこの本の編集者として加わることも,私の一つの責務としてお引き受けすることとした.甚だ若輩者ではあるが,限られた時間の中にある子どもの生命という深い悲しみと葛藤の中から再生していくこどもと家族の物語を支える援助者として,読者がこの本を通して様々な気づきを得ることができるならば幸いである.

 2016年 5月
淀川キリスト教病院 ホスピス・こどもホスピス病院 院長
鍋谷まこと