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これでわかる! 臨床電気神経生理学ファーストステップ診断と治療社 | 書籍詳細:これでわかる! 臨床電気神経生理学ファーストステップ
静止膜電位・活動電位・EPSPはどのように発生するのか?

天理よろづ相談所病院白川分院

橋本 修治(はしもと しゅうじ) 著

初版 B5判 並製 128頁 2015年10月26日発行

ISBN9784787822079

定価:3,300円(本体価格3,000円+税)
  

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静止膜電位,活動電位,EPSPの発生機序の基本を,多くの電気回路図や模式図を用いてわかりやすく解説し,初学者が抱く多くの誤解を丁寧に解いていきます.物理学が苦手だった方でも通読できるよう工夫されています.今までの「説明」に納得できなかった方にこそ読んでほしい,生体電気現象を理解するための第一歩となるテキストです.

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目次

執筆者紹介
はじめに

序 章 本書の目的

第1章 本書を理解するための予備知識
1.本書で扱う生体電気現象
2.電気部品と電気回路
3.生体の構造物と電気素子(電気部品)との関係
4.細胞膜の電気回路モデル
5.用語のまとめ
セルフアセスメント

第2章 生体電気現象を電気的等価回路で考えるために
1.静電気学と動電気学
2.抵抗を流れる電流
3.オームの法則と電圧降下の原理
4.抵抗の並列回路と合成抵抗
5.同じ起電力を持つ電池の並列回路
6.合成イオンチャネル
セルフアセスメント

第3章 コンパートメントモデルによる膜電池の発生機序
─膜が1種類のイオンのみを通過させる場合─
1.カリウム膜電池におけるイオンの動き
2.コンパートメント内におけるイオン分布
3.コンパートメント内の電位分布
4.電気二重層に参加するイオン数
5.ナトリウム膜電池
6.合成イオンチャネル
7.本章のまとめ
セルフアセスメント

第4章 静止膜電位と活動膜電位の発生機序
1.1種類のイオンチャネルだけが存在する場合の膜電位
2.活動膜電位
3.2種類のイオンチャネルが存在する場合の膜電位
4.回路K-Nの簡略化
5.本章の結論─膜電位を変化させる要因には2種類ある
セルフアセスメント

第5章 活動電位の発生機序
1.細胞膜の一部が活動膜になった場合の電気的等価回路
2.活動電位発生時の電位分布
3.活動電位発生時の各部位の電位変化
4.活動電位の伝導
5.活動電位発生機序のまとめ
セルフアセスメント

第6章 興奮性シナプス後電位(EPSP)発生機序
1.興奮性シナプスの構成とシナプス下膜の膜電池
2.電気的等価回路によるシナプス電流の解析
3.大脳皮質錐体細胞による電流双極子
4.錐体細胞による双極子発生機序に関する誤解
5.脳磁図と電流双極子
6.EPSPと脳波発生機序に関する不適切な表現
セルフアセスメント

第7章 電気的等価回路におけるコンデンサーの位置づけ
1.抵抗からなる回路と,抵抗とコンデンサーからなる回路の比較
2.静止膜電位の脱分極に対するコンデンサーの影響
セルフアセスメント


おわりに
索 引


column
1-1 コンデンサー
1-2 コンデンサーと電池の相違点
1-3 透過係数と膜抵抗値の関係
2-1 電気信号が伝わる速度
4-1 神経線維の電気刺激
4-2 ‌回路K-Nの溶液論による静電気学的検討
-なぜカリウムイオンは流出しナトリウムイオンは流入するのか
4-3 能動輸送
4-4 活動電位の発生と終息

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序文

はじめに
─ 本書出版の意図と目的 ─

本書の主題は,①静止膜電位,②活動電位,③興奮性シナプス後電位(excitatory post-synaptic potential:EPSP)の発生機序です.これらは電気神経生理学において,一番基本となるものです.この基本部分だけを書き出し,通読できる比較的短いテキストを作成できないかと考えました.それが本書執筆の動機です.これら電位の発生機序さえ理解できれば,生体電気現象を理論的に考える力は大幅にアップするでしょう.

本書は,幸原伸夫先生と私の共著『臨床電気神経生理学の基本』(診断と治療社刊,2013年)の姉妹編でもあります.上記の本では,誰にでも理解できる内容を目指したつもりでしたが,「やはり難しい」という評価が聞こえてきました.そこで本書では,前著の内容のうち,最も基本となる上記3つの主題に絞って,より易しく,よりわかりやすく書くことを心がけました.前著で無意識のうちに説明不要と考え解説をスキップした事柄にも踏み込んだつもりです.

本書を執筆していて,生体電気現象を説明する際に一般的に行われている解説方法に,いくつかの改善点があることに気づきました.本書では,そういった問題点にも,私が気づいた範囲内で言及しました.これは自分自身の自省の念を込めての話です.

物理の授業が苦手だった読者も,ぜひ本文と図を対応させながらじっくりお読みいただきたいと思います.生体がいかにシステマティックな存在であるかをご理解いただけるでしょう.そして,願わくば,本書を通じて電気神経生理学の魅力の一端を感じていただければ幸いです.



2015年9月
天理よろづ相談所病院白川分院

橋本修治