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乳幼児健診ハンドブック 改訂第4版診断と治療社 | 書籍詳細:乳幼児健診ハンドブック 改訂第4版

医学博士,Rabbit Developmental Research代表

平岩 幹男(ひらいわ みきお) 著者

改訂第4版 A5判 並製 192頁 2015年11月09日発行

ISBN9784787822154

定価:本体2,800円+税
  

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乳幼児健診にあたっての心構えから診察の手順,見落としがちな症状,発達の診かた,母親の心の問題や事後フォローまで,著者の豊富な経験をふまえて詳細に解説.小児科医や保健師,栄養士,計画と設計を行う行政担当を含め,健診に携わるすべての人の必携の一冊である.今回の改訂では,診察の写真の一部を一新し,発達の診かたのポイントをさらに整理した.

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目次

はじめに

■第1章 乳幼児健診の考え方と設計
乳幼児健診の法的根拠
乳幼児健診を行う側と受ける側の論理的根拠
乳幼児健診の限界
医療と健診の違い
自治体で行う集団での乳幼児健診のメリットとデメリット
自治体の健診における住民のニーズとその対応
乳幼児健診の設計
子育て支援としての健診
健診での個人情報の管理


■第2章 1か月頃の健診
1か月児のイメージ
1か月児の身体測定値
健診で実施すること
問診
見落としたくない症状
診察手順の1例
1か月児健診でよくある訴えと対応
母乳育児をめぐって
事後指導


■第3章 4か月頃の健診
4か月児のイメージ
4か月児の身体測定値
健診で実施すること
問診
見落としたくない症状
診察手順の1例
4か月児健診でよくある訴えと対応
カンファレンス


■第4章 10か月~1歳頃の健診
1歳児のイメージ
10か月~1歳頃の身体測定値
健診で実施すること
問診
見落としたくない症状
診察手順の1例
1歳児健診でよくある訴えと対応
カンファレンス


■第5章 1歳6か月頃の健診
1歳6か月児のイメージ
1歳6か月児の身体測定値
健診で実施すること
問診
問診チェックリストの例
見落としたくない症状
診察手順の1例
歯科健診
言語発達をめぐる問題
自閉症をめぐって
熱性けいれんをめぐって
アレルギー健診
1歳6か月児健診でよくある訴えと対応
カンファレンス
参考:DSM-IV-TRによる知的障害および自閉性障害(自閉症)の診断基準


■第6章 3歳児健診
3歳児のイメージ
3歳児の身体測定値
健診で実施すること
問診
尿検査
視聴覚健診
歯科健診
診察手順の1例
見落としたくない症状
3歳児健診でよくある訴えと対応
発達検査
知的障害
自閉症療育
カンファレンス


■第7章 5歳頃の健診
5歳児のイメージ
5歳児の身体測定値
健診で実施すること
問診
診察手順の1例
発達障害
5歳児健診と発達障害
見落としたくない症状
5歳児健診でよくある訴えと対応
カンファレンスと事後対応
参考:DSM-IV-TRによるアスペルガー障害,ADHDの診断基準


■第8章 乳幼児健診の事後フォローと周辺事業,予防接種
母子健康手帳の活用
育児をめぐる情報の周知
発達のフォロー
離乳食教室と栄養のフォロー
育児不安のフォロー
子育て相談,子育て学級(教室)
グループ・ミーティング,子育てグループ支援
父親の健診参加
医療機関への受診に関する教育
予防接種をめぐって


■第9章 健診における母親の問題:抑うつと接近感情・回避感情
母子相互作用について
エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)
自己記載式抑うつ評価(SDS)
乳児を持つ母親の抑うつへの対応と治療
接近感情と回避感情
自分の子どもに対する「扱いにくさ」の調査
扱いにくさへの対応
ハイリスクの母親
携帯電話時代の母親
「話を聴く」


■第10章 児童虐待をめぐる問題
児童虐待防止法
児童虐待の現状
その他の児童虐待
加害者と被害者の危険因子
乳幼児健診の場での虐待の発見
乳幼児健診の未受診による虐待の発見


■第11章 障害や疾患の受容と対応
障害が発見される時期
障害の受容とは何か
障害の可能性を健診でどのように伝えるか
受容の難易度
乳幼児健診の限界
これまでの経験から

コラム
・ブックスタート
・乳幼児健診における指導と相談
・ピア・サポート
・ドアノブコメント
・ペットについて
・母子健康手帳を宝箱に
・母親は職業ではない
・超音波検査の思い出
・「様子をみましょう」は犯罪になりうる
・時代とともに乳幼児の発達は変化したか
・お腹が出ている
・山が歩く
・5歳児と指の発達
・チャイルドシート
・インターネットをはじめとする情報の氾濫
・母親役割
・しつけか虐待か
・長い目,温かい目

参考文献
・書籍・雑誌(特集号)
・論文・総説
・役立つウェブサイト

索引

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序文

 2006年に本書の初版を上梓し,2010年,2014年に全面改訂をいたしました.それから1年半が過ぎ,この間に色々と考えたことや皆様からのご意見,ご指摘を取り入れて,再び改訂をすることになりました.多くのご意見やご指摘をいただいた皆様にまず感謝したいと思います.

 乳幼児健康診査(以下,健診)は,わが国では母子保健法によって実施が定められていますが,このように法律で乳幼児健診を定めている国は稀です.しかし,すべての子どもたちを対象として実施することが市区町村に義務づけられているこの乳幼児健診には,たくさんの小児科医や内科医が関わってきたにもかかわらず,不思議なことに乳幼児健診を仕事の中心にしている“専門医”はいません.ということは,医師にとっては乳幼児健診は日常診療や行政事務の合間に行っていることがほとんどだと思います.また,乳幼児健診を行うための卒前・卒後の教育のシステムも乏しく,自分自身もなかなか系統的に学習する機会が少ないまま従事していた日々もあります.ですからそのコツも,いわば口伝のように伝えられてきたように感じています.

 初めて私が乳幼児健診に携わったのは今から40年前になりますが,それ以来,手探りを続けながら,多くの先人や同僚たちからも学んできました.実際に,乳幼児健診のやり方を拝見しに出かけたことも何回もありました.また,ヘラブナを釣る名人と呼ばれていた方とお話をさせていただく機会があったときに,「釣りの初心者が最初にするのがヘラブナ釣り,60年釣りをしてきて最後にたどり着くのもヘラブナ釣り」という話を伺ったことがあります.要するに,ヘラブナは初心者でも釣ることはできますが,熟練の技があればまた違った奥行きがあるということなのでしょう.ちなみに私は釣りを2度ばかり経験して1匹も釣れませんでしたが,記憶に残っている話ですし,乳幼児健診はまさにヘラブナ釣りのようなものだと感じています.

 こうしたなかで,おそらく何万人もの子どもたちと乳幼児健診の場で触れ合ってきました.後で思い出すと冷や汗の出るような失敗の数々もあります.毎週のように集団での公的機関の乳幼児健診に関わってきた行政職の時代とは違いますが,現在でも頼まれて集団健診をお手伝いしたり,若い先生と一緒に勉強したり,下の子が生まれたので心配だからみてほしいというリクエストに応じるなど,さまざまな形で乳幼児を拝見する機会があり,乳幼児健診を続けています.こうして過ぎてきた日々ですが,自分では乳幼児健診はまだまだ上手になれるのではないかと思っていますし,そうなるための努力もしていきたいと考えています.

 乳幼児健診は基本的にスクリーニングです.スクリーニングでは理論的にも一定の確率で見落としが発生します.もちろん,それを少なくするための努力をする必要がありますが,限られた時間と資源のなかでのチェックでは十分とは限りません.また,乳幼児健診は子どもが対象ですが,子どもは1人では生きていけません.子どもを支えている家族への配慮も必要ですし,家族内での問題が発生すれば,子どもの心身の健康は保証できない場合もあります.こうしたこともあって,乳幼児健診を極めるゴールにはなかなか届かないと日々感じています.

 本書では,乳幼児健診の実際,および健診の周辺領域に関わることについても可能な限り言及しました.例えば,最近話題になっている発達障害についても触れましたが,発達障害の子どもたちへの関わり方や診断,保護者への対応などは年齢によっても異なり,多岐にわたります.したがって,本書では乳幼児期に絞って簡単にまとめました.発達障害全体については,拙著「自閉症スペクトラム障害 療育と対応を考える」(岩波新書)などを参照していただければと思います.

 本書の編集の基本は,通読される場合と,項目を選んで参照される場合の両方に対応できるようにしようということで,索引からも項目を引きやすいようにしました.参考文献については,今までに接してきた書籍や文献の数が厖大であるため,基本的には入手しやすい成書などに絞っています.

 本書の初版の上梓にあたっては,診断と治療社の土井陽子さんに遅筆への励ましも含めて大変お世話になり,改訂版では土橋幸代さん,石川知左子さんにお世話になりました.心よりお礼を申し述べたいと思います.

2015年10月
平岩幹男