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症例から考える針筋電図診断と治療社 | 書籍詳細:症例から考える針筋電図
神経筋疾患の診断にどう活用するか 動画

神戸大学大学院医学研究科神経内科准教授

関口 兼司(せきぐち けんじ) 著

神戸市立医療センター中央市民病院神経内科部長

幸原 伸夫(こうはら のぶお) 著

初版 B5判 並製 192頁 2017年12月10日発行

ISBN9784787822642

定価:本体5,200円+税

  

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本書は若い神経内科医向けの勉強会「筋電図塾」の症例をもとにまとめた実践的な針筋電図の教本です.診断に活かすためのノウハウが充実した,臨床で多く遭遇する17症例を厳選し,針筋電図の基本と臨床例での筋電図解釈の実際を徹底解説.19のコラムでは検査の理解を深めるための基本原理や知識をあますところなく紹介しました.
また,QRコードやWebサイトからスマホやPCで,いつでもどこでもテキストを読みながら筋電図の動画を見られるという,これまでなかった学習体験を可能にしています.ぜひお試しください.

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目次

執筆者紹介
序文
CONTENTS
診断名一覧
「筋電図塾」とは
略語一覧
動画再生方法

Ⅰ 総論:針筋電図の基本・・・・・幸原伸夫

  針筋電図の原理
  運動単位(motor unit )を理解する
  針筋電図の目的
  針筋電図の記録方法
  自発放電
  運動単位電位の形態,動員様式,数,安定性をみる
  針筋電図の解釈で大切なこと
  確認問題

Ⅱ 基本症例編・・・・・・・・・・関口兼司

症例1 High amplitude MUP/大腿前面筋萎縮
症例2 Early recruitment/高CK血症の統合失調症例
症例3 Small hand muscle atrophy/左握力低下とふるえを訴える若年男性
症例4 Giant MUP/両手指振戦と歩行困難
症例5 Fasciculation potential/上腕の筋のぴくつきと脱力
症例6 Myogenic change/緩徐進行性の大腿筋萎縮

Ⅲ 発展症例編・・・・・・・・・関口兼司

症例7 Shoulder weakness/両上肢挙上困難
症例8 Myopathic MUP/指屈曲困難
症例9 Endplate spike/微熱,皮疹,口内炎,関節痛をきたした症例
症例10 Low amplitude MUP/歩行障害をきたした強皮症の高齢女性
症例11 Myotonic discharge/大腿の張りを訴える大酒家例
症例12 Distal myopathy/つま先立ち困難
症例13 Complex repetitive discharge/大腿四頭筋筋力低下
症例14 Satellite potential/CK高値の頸椎症
症例15 Positive sharp waves/眼瞼下垂・嚥下困難
症例16 Myokymic discharge/大腿筋の不随意運動
症例17 Central weakness/右手指筋萎縮

索引

Column
 1 Fibrillation potentialとPSWの臨床的重要性
 2 力と運動単位
 3 針電極刺入時のコツ
 4 可聴域と筋電図信号
 5 随意収縮時の針筋電図評価のtips
 6 針筋電図と超音波検査
 7 A-D変換と記録
 8 Fasciculation potentialの待機時間
 9 サイズの原理
10 サンプリング周波数
11 運動終板
12 針の直径とMUPの大きさ
13 定量的評価と定性的評価
14 量子化
15 頸椎症性脊髄症/神経根障害の針筋電図
16 感度
17 検査結果報告書の作成
18 外部スピーカー接続
19 モノポーラー(単極)針とsingle fiber (単線維)針


◆診断名一覧

○神経原性疾患
運動ニューロン疾患/筋萎縮性側索硬化症(MND/ALS)・・・症例5
脊髄性筋萎縮症(SMA)・・・症例1
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)・・・症例4
平山病・・・症例3

○筋原性疾患
多発筋炎(PM)・・・症例2
封入体筋炎(IBM)・・・症例8
皮膚筋炎<無筋症性>(CADM)・・・症例9
アルコール性ミオパチー・・・症例11
強皮症関連ミオパチー(SSc)・・・症例10
Becker型筋ジストロフィー(BMD)・・・症例6
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)・・・症例7
ネマリンミオパチー・・・症例12
抗SRP抗体陽性免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)・・・症例14
眼咽頭型筋ジストロフィー(OPMD)・・・症例15
Rimmed vacuoleを伴う慢性ミオパチー・・・症例13

○その他
Cramp-fasciculation症候群(抗VGKC抗体陽性)・・・症例16
頭頂葉性筋萎縮症・・・症例17

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序文

 筋電図や脳波といった臨床神経生理検査は神経内科専門研修の中で必ず習得すべき技術とされている.特に神経筋疾患の診断に用いる針筋電図検査は,検査を行う技術と結果を解釈する能力の両方を習得しなければならず,紙面からの情報だけでは不十分で,指導者について実践で学ぶ必要がある.実際には適切な指導者が身近にいない場合のほうが多く,本を片手に悩みながら検査に取り組む人が多いであろう.筆者もレジデントのころに手にした日本語の教科書を何度も読み返し針電極を患者さんに刺入していたが,そこに記載されている文章は何を意味しているのか,そこに載っている波形と目の前の患者さんの波形が同じものなのか違うものなのか,判然とせぬことも多かった.せっかく患者さんに痛みを我慢してもらって検査に取り組んだものの,解釈に困る結果しか得られず,もやもやとした説明しかできなかったこともあった.針筋電図には,時間とともに画面上で姿を変える「波形」とその音声表現である「音」をリアルタイムに検者が認識して,そこから連続的に得られる主観的な“印象”を,客観的な“所見”に頭の中で自動翻訳するという特有の難しさがあり,職人芸と言われても仕方のない側面もある.残念ながら職人は師匠の元でしか育たない.
 本書はそんな指導者不足を改善するために共著者の幸原先生が関西で定期開催している若い神経内科医向けの筋電図勉強会「筋電図塾」の中で,筆者が受け持たせてもらった“Neurogenic or Myopathic?”というコーナーで提示した症例を中心にまとめた,実践的な針筋電図の教本である.このコーナーは,臨床像と針筋電図を提示し,神経原性か筋原性のどちらだと思うかを参加者に問い,幸原先生も参加者と一緒に考え,コメントをしながら答えを出し,最後に筋生検や遺伝子解析の結果で診断を提示するといった形式で始まった.これが比較的評判がよかったためシリーズ化し,徐々に症例が増え本書執筆時点で40例を越えた.それぞれ神戸大学病院で経験した印象深い症例ばかりである.レジデントが検査したために記録の質が今一つのものも含まれているが,それも実態に即したものなので,理想的な記録を出すよりもかえってよいと考えている.この7年間で得られた所見を集めると,臨床の現場で針筋電図検査を行うときに必要になる知識や技術がほぼ網羅されたと考えられ,より多くの人に役立ててもらうために纏めて出版したいと考えた.実際には発案から出版までは2年間が費やされた.この時間の多くは「どうしたらテキストを読みながら実際の波形を見られるか」を試行錯誤する時間であった.DVDやUSBを添付しても紛失したり十分な時間がないことを理由にあまり活用されないことは自らが経験していた.最終的にはスマートフォン、タブレット、PCを用いweb上に置いた波形データにアクセスしながら解説を読むという形式でこの問題を解決することができた.技術の進歩によりこれまで得られなかった学習体験が可能になり,筋電図塾に参加しなくても入塾体験ができるようになったと自負している.スマートフォンでも見る(聴く)ことができるが,できれば大きな画面と大きな音で再生しながら本書を活用していただき,針筋電図の面白さを感じていただければ筆者としてはこの上ない喜びである.
 総論となる針筋電図の基本は塾長である幸原先生が執筆し,症例は筋電図塾の際の資料をもとに関口が執筆後,塾長と波形を含めてdiscussionし練り上げて最終的な形とした.症例は基本症例編と発展症例編に分けているので,総論と基本症例編を読んでいただくだけでも筋電図に対する認識と理解が大きく拡がると思う.
 最後に,症例の筋病理に関して適切なご助言をいただいた国立精神・神経医療研究センター 西野一三先生,いつもわがままな要求に応えてくださる日本光電工業株式会社 枝健吾氏,一緒に患者さんを診てくれた神戸大学神経内科の過去のレジデント諸君,臨床神経学をご指導いただいた苅田典生先生,戸田達史先生(神戸大学元教授),ともに学んだ筋電図塾の塾生の皆さん,痛い検査に耐えてくださり,筋病理写真の提示に快く同意いただいた患者さんたちに感謝の意を表したい.また本書の出版に際して無理を聞き入れ尽力いただいた診断と治療社の堀江康弘編集部長,荻上文夫氏に深謝申し上げる.
2017年10月
関口兼司

「筋電図塾」とは
 筋電図塾は2005年に幸原先生の呼びかけで始まった関西の若手医師のための筋電図をはじめとした神経電気診断の自主的な勉強会の名称です.参加者は“塾長”の幸原先生以外は基本的に若いレジデントで,日常臨床で困った症例や検査結果を持ち寄って,波形を提示しながら指導を受けて皆で一緒に学んでいくイベントです.関西一円の色々な病院で働いている人が集いやすいように,新大阪駅前の貸会議室を利用して年に3回ほど開催しています.参加資格も費用も何もないので口コミで広まって,これまで多くの人が参加してくださり,2017年現在までずっと途切れることなく続いています.2008年に作成したホームページに載っている「塾長あいさつ」をみるとどんな雰囲気かわかると思います.
関口兼司

塾長あいさつ
 今から20年近く前のことですが,私は京都のある病院で働いていました.そのまえ東京の病院にいたころに先輩医師に少しだけ筋電図の手ほどきを受けましたが,ほとんど独学で患者さんの検査をしていました.どうしてこんなふうに波形が記録されるのだろうか,とかわからないことだらけで,まわりに聞ける人もいない環境での唯一の指標はそのころ初版が出版された木村淳先生の有名な英語の教科書だけでした(てっきり日系2世の先生だと思っていました).その木村先生が,突然京大に教授としてやってきて電気生理のカンファレンスが始まりました.これはオープンで京大だけでなく,京都近郊からいろいろな人が参加していました.当時木村先生とも面識のないアマチュア筋電図愛好家の私は,プロの前で自分が批判に耐えるだけの検査ができているのかということにまったく自信がなかったのですが,このようなカンファレンスがあることを聞きつけともかくも出かけてゆき,症例を毎回必ず発表しました.なにしろ聞いている人は2世かと思っていた米国筋電図電気診断学会の理事長ですから最初は相当に緊張して症例を持っていったものです.今から考えると間違ったこともたくさんしゃべりましたが,でもこのときの経験は自分の方向性が間違っていないことを知ることになりその後の自信にもなりました.木村先生が多忙なためにカンファレンスは間遠になり数年で消滅しましたが,その頃の思いが数年前にこの筋電図塾を始めた最大の理由です.
 当時と比べて筋電図ができる人はかなり増えましたが,まだまだ指導者に恵まれない場所で働いている人も多いと思います.自己流に陥っていないか不安に思っている先生もたくさんいるでしょう.この不安はまさに20年前の僕の気持なのです.筋電図は趣味の検査ではありません.実際に患者の診断や治療に直結するきわめて大切な検査だから,必要最低限のことは自分で判断できなければなりません.これは腱反射の意義が理解できない医者が許されないのと等価です.そんな思いを込めてこの会をおこなっています.
 「筋電図塾」とは最近の何でも懇切丁寧に教えてくれる進学塾の「塾」ではなく,「適塾」「松下村塾」など志のあふれた人々が集った時代の塾と同じようにありたいとの思いで命名したものです.何よりも意欲のある医師の参加を求めます.どのような病院につとめていようとどのような大学に属していようと関係ありません.筋電図を通じて神経臨床診断をより確かなものとしたいとのパッションを持つ人が切磋琢磨できる場所を提供するのが目的です.
 では筋電図塾であいましょう.
塾長:幸原伸夫