脳血管内治療の普及とレベルアップを目的に開催される「脳血管内治療ブラッシュアップセミナー」の演題をまとめたイヤーブックの第7号.エキスパートの基本技術から応用テクニック満載のセミナー演題に加え,実臨床に山積する課題をテーマにとりあげ,症例呈示とエキスパートのディベートや質問回答コーナーも掲載した充実の内容.最新のデバイスと治療技術を知るための定番書籍.
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
序 文/坂井信幸・他
執筆者一覧
脳血管内治療ブラッシュアップセミナー2016
I 基礎から最新知見まで
①リモデリング用バルーンレビュー-その応用テクニック-/榎本由貴子
1 シングルルーメン構造とダブルルーメン構造の利点・欠点
2 10ワイヤー適合バルーンと14ワイヤー適合バルーンの利点・欠点
3 バルーンアシストテクニック
4 バルーンの応用テクニック
②脳動脈塞栓術支援用ブレイデッドステント-LVIS Stent-/大石英則
1 はじめに
2 適応
3 構造
4 視認性
5 Radial expansion force
6 サイズ選択
7 金属ネック被覆率
8 留置テクニック
9 Sliding Cells Phenomenon
10 おわりに
③脳動脈瘤ネックブリッジステントの応用テクニック/長谷川 仁
1 はじめに
2 応用テクニック
3 自施設の治療成績
4 おわりに
④困った時にどう対処するか-脳動脈瘤塞栓術-/川西正彦
1 はじめに
2 ガイディングカテーテル
3 動脈瘤へのカテーテルの誘導
4 治療中の動脈瘤破裂
5 まとめ
⑤未破裂脳動脈瘤の疫学に基づいた治療戦略/石橋敏寛,村山雄一
1 はじめに
2 健常成人での保有率・発見率
3 経過観察中の破裂-自験例からの考察
4 観察中の増大
5 高齢者の未破裂脳動脈瘤
6 今後の課題-高齢者未破裂脳動脈瘤の観察中増大をどう捉えるか?
7 まとめ
⑥急性期血行再建術における種々のtips/津本智幸
1 はじめに
2 バルーン付きガイディングカテーテルの誘導におけるtips
3 各種ステントリトリーバーの違い
4 ステントリトリーバーが不得意な場面でのtips
5 Penumbla systemが不得意な場面でのtips
6 動脈硬化性閉塞であった場合のtips
7 慢性期の血管狭窄
⑦急性期脳梗塞の再開通治療に伴う頭蓋内出血-その病態と予防・治療-/早川幹人
1 はじめに
2 再開通治療に伴うICHの病態生理
3 再開通治療に伴うICHの予防
4 再開通治療に伴うICHの治療
5 おわりに
⑧急性期脳梗塞に対する抗血栓療法 up to date/山上 宏
1 はじめに
2 ENCHANTED:アルテプラーゼ投与量に関する比較試験
3 SOCRATES:急性期脳梗塞・TIAにおけるチカグレロルとアスピリンの比較試験
⑨ハイブリッド治療における脳血管内治療/飯原弘二,西村 中
1 はじめに
2 ハイブリッド治療の適応疾患
3 ハイブリッド治療の術前準備
4 ハイブリッド治療の問題点
5 おわりに
⑩血管内治療医に役立つVasoCTを用いた穿通枝解剖/小林英一,足立明彦,吉田陽一
1 はじめに
2 Vaso CTの原理と特性
3 Vaso CTを用いた穿通枝解剖
4 Vaso CTを用いた術前シミュレーション
5 おわりに
II 特別企画「臨床医のニーズを製品に」
①医療ニーズに基づく医療機器開発の道筋-日本医工ものづくりコモンズの活動からの考察-/谷下一夫
1 はじめに
2 医療ニーズに基づく医療機器開発の道筋
3 医療ニーズが発掘される状況とは
4 医療ニーズと技術シーズとのマッチング
5 まとめ
②日本での取り組み/松本康史,冨永悌二
1 夢と現実
2 試作品完成
3 CELLOTMの有用性を世界に問う
4 感謝の気持ち
5 現在
③世界を視野に入れたものづくり/立嶋 智
1 はじめに
2 米国における,世界を視野に入れたものづくり
3 臨床医としてデバイス開発にかかわる
4 最後に
④新規医療機器の開発と導入/坂井千秋,方 眞美,半田宣弘,鈴木由香
1 はじめに
2 医療機器とは
3 医療機器の承認申請と審査,承認
4 医薬品医療機器総合機構の支援と取り組み
5 製造販売後の評価の重要性
6 まとめ
III 硬膜動静脈瘻update 2016
A.血管内治療を行う前に知っておくべき知識
①発生学からみた硬膜動静脈瘻/田中美千裕
1 はじめに
2 硬膜の解剖
3 結果
4 考察
5 結語
②頭蓋内硬膜動静脈瘻のMRI/野口 京
1 Congnard Type I
2 Congnard Type IIa
3 Congnard Type IIb,IIa+b
4 Congnard Type III,IV
5 外来での治療後評価
③硬膜動静脈瘻に対するガンマナイフ治療-放射線治療の役割-/長谷川俊典
1 治療適応
2 ガンマナイフの方法と至適線量
3 治療成績
4 血管内塞栓術と定位放射線治療を併用する場合
5 まとめ
④硬膜動静脈瘻における外科治療の役割/冨永悌二
1 硬膜動静脈瘻の治療戦略
2 外科治療の長所・短所
3 外科治療の手技
4 補完治療としての外科治療
B.部位別の治療戦略と血管内治療
●CSdAVF
①流入動脈からみたシャントポイント診断/鶴田和太郎
1 CSdAVFの塞栓術
2 流入動脈とシャントポイント評価の重要性
3 流入動脈とシャントポイント評価の実際
4 おわりに
②静脈解剖/下錐体静脈洞のアプローチ/キッティポン スイーワッタナクン
1 海綿静脈洞の解剖
2 治療の実際(特にIPSからのアプローチについて)
●TSS dAVF
③横・S状静脈洞部硬膜動静脈瘻/近藤竜史,松本康史
1 疫学
2 症状
3 脳血管造影の読影
4 治療適応
5 治療
6 おわりに
●SSS dAVF
④上矢状静脈洞部硬膜動静脈瘻/泉 孝嗣
1 特徴
2 治療
3 血管撮影
●tentorial dAVF
⑤テント部硬膜動静脈瘻/松本康史,佐藤健一
1 はじめに
2 疫学
3 症状とdAVF全般での分類
4 血管内治療
5 外科治療
6 定位放射線治療(Stereotactic radiosurgery:SRS)
7 症例:56歳,女性.くも膜下出血で発症
8 まとめ
●前頭蓋底部dAVF
⑥前頭蓋底部硬膜動静脈瘻/吉村紳一,白川 学,内田和孝,立林洸太朗
1 はじめに
2 治療選択
3 考察
●ACC dAVF
⑦ACC部硬膜動静脈瘻/桑山直也
1 名称
2 頻度(著者らが行った2002年の全国調査)
3 分類と症状/症候
4 流出静脈の解剖学的側面
5 流入動脈
6 診断
7 治療
●CCJ dAVF
⑧頭蓋頚椎移行部硬膜動静脈瘻/杉生憲志
1 はじめに
2 わが国での全国調査の結果
3 CCJ dAVFの特徴
4 CCJ dAVFの治療
5 自験例の分析
6 まとめ
C.液体塞栓物質を使いこなす
①NBCAを用いたTAE-超低濃度NBCAによる硬膜動静脈瘻の塞栓術-/東 登志夫,竹本光一郎
1 dAVFに対する経動脈的塞栓術
2 NBCAの重合速度を調節する方法
3 超低濃度NBCAを用いた塞栓術
4 症例:70歳男性
5 どうして低濃度NBCAで塞栓術を行うのか
6 NBCA/リピオドール混合液の加温
7 超低濃度NBCAによる経動脈的塞栓術の要点
8 まとめ
②Onyxを用いたTAE/今村博敏,船津尭之,坂井信幸
1 Onyxとは
2 硬膜動静脈瘻に対するOnyx治験
3 Onyxの注入方法
4 Onyxの利点と欠点
5 おわりに
③Onyxを用いたTVE/立嶋 智
1 はじめに
2 当院におけるOnyx TVEの役割
3 Onyx TVEの利点と欠点
4 症例提示1:Anterior Condylar Confluence dAVFの症例
5 症例提示2:Cognard Type 5 Rt Sigmoid Sinus dAVFの症例
6 症例提示3:Cavenous Sinus dAVFの症例
7 Onyx TVEと脳神経障害
8 おわりに
●徹底討論
症例呈示とエキスパートのディベートから学ぶ
モデレータ:江面正幸,桑山直也,宮地 茂
パネリスト:石井 暁,キッティポン スイーワッタナクン,佐藤 徹,里見淳一郎,立嶋 智,津本智幸,寺田友昭,松丸祐司
●誌上回答コーナー
エキスパートがズバリ!あなたの疑問に答えます
監修:坂井信幸,吉村紳一
回答者:榎本由貴子,佐藤 徹,立嶋 智,津本智幸,長谷川 仁,早川幹人
Q1 dAVFの塞栓の際,ハイドロフィルなら同等のコイルの中で一番体積を稼げると思うのですが,先生方のご意見はいかがでしょうか
Q2 治療後にMOMAを抜去する際に外頚用のバルーンがステントストラットに引っかかったことはないでしょうか?
Q3 Sinus内のコイルパッキングは結局のところoutlet occlusionでのAVF治療ですが,長さと太ささえサイズが合えば,ラディアルフォースのあるステントでsinus脇のシャントのあるスペースを圧迫して治癒させる,こんなことをやった先生はいらっしゃいますか?
Q4 Wallstentは屈曲病変で浮いてしまうことが多いと思いますが,浮いていても問題ないという意見もあると思います.先生方は密着についてはどうお考えでしょうか?
Q5 ペナンブラコイルを使用する際の注意点を教えてください.
Q6 TVEで液体塞栓物質を使うのは最後の勝負の時ですか?マイクロカテーテルは入れるのに苦労したようなときは,インジェクションして抜かなければならない液体塞栓物質は相当勝算がないと使いづらいのではないでしょうか?
Q7 パイプラインの先端の仕組みと,いったん先端を開いた後,リキャプチャーするのが通常だと聞いていますが,しなくてもいいのかどうかに関して詳しく教えてください.
Q8 パイプラインをPcomにかけたとき,その温存のために,術後にアルガトロバンの静注など,何か治療は追加しますか?
Q9 Pcomを温存する方法として,P1からPcomを通り,ICAまでマイクロカテーテルを誘導して,Pcomを確保する方法を試されたことはありますか?
Q10 dAVFにOnyxは使えるようになるのですか?現在はどうなのでしょうか?
Q11 TVEで液体塞栓物質を使うのは海外では一般的な治療法なのですか?また,fiberd coilはbare coilより詰まりやすいですか?
Q12 患者さんは全身麻酔ですか?ワイヤー操作で疼痛などはきたさないのでしょうか.また,TVEの際のヘパリン化はどうされてますか?
Q13 dAVFのTVEですが,ダブルカテーテルにして奥にカテーテルを残しておいて,あとから奥に塞栓物質を追加という選択肢はありますか?
Q14 Pcomにバルーンを通すのはネックプラスティーには有用だと思うのですがPcomの走行がだいぶ変わるので穿通枝が気になってしまいます.合併症が起こることはないのでしょうか?またP1から逆に通すと危険な場合などの見極めなどはあるのでしょうか?
Q15 CASの際,硫酸アトロピンのIVはどのタイミングで行っているのか教えていただけますか?
ページの先頭へ戻る
序文
脳血管内治療ブラッシュアップセミナー(Brushup Seminar of Neuroendovascular Therapy:BSNET)は,脳血管内治療技術と機器研究会が運営する脳血管内治療の最新情報の提供と教育を目的としたセミナーで,2010年にそれまで代表幹事(発足当時)が運営してきた3つのセミナーをまとめて発足しました.2016年は,日中韓の3カ国持ち回りで開催しているEACoN(East Asian Conference of Neurointervention)を併催し,多くの参会者を得て盛会裏に終えることが出来ました.これまで同様,BSNETで行われたレクチャーの内容に加筆訂正した原稿を中心として「脳血管内治療の進歩2017」としてお届けすることになりました.まず,執筆者各位に厚く御礼申し上げます.
この「脳血管内治療の進歩2017」には,BSNET2016で取り上げたテーマ「基礎から最新知見まで」を中心にセミナーで行われた講演が収められています.リモデリング用バルーン,Braided stentステントアシストコイル塞栓術の応用テクニック脳動脈瘤塞栓術のトラブルシューティング,未破裂脳動脈瘤の治療戦略,急性期血行再建術におけるtechnical tips,急性期脳梗塞の再開通治療に伴う頭蓋内出血対策,抗血栓療法,ハイブリッド手術,VasoCTを用いた穿通枝解剖など,臨床のノウハウを満載しました.
また,今回,セミナーとして硬膜動静脈瘻をとりあげ,血管内治療を行う前に知っておくべき知識,部位別の治療戦略と血管内治療,液体塞栓物質の使い方など最新情報を解説,症例呈示とエキスパートのディベートの一部も取り上げました.また,今回特別企画として,「臨床医のニーズを製品に」と題して,デバイス開発への道も提示しました.
ライブ会場で寄せられた質問に対する回答コーナーもお役立てください.
これから脳血管内治療に積極的に取り組もうとされる先生はもちろんのこと,すでに経験を積んだ先生方にも大いに参考になる企画となったと思います.このイヤーブックが脳血管内治療の発展に少しでも貢献できることを願っています.すべての関係各位に厚く御礼を申し上げます.
2016年11月
脳血管内治療ブラッシュアップセミナー 代表幹事
坂井信幸,江面正幸,宮地 茂
同編集幹事
松丸祐司,吉村紳一