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原発性免疫不全症候群診療の手引き診断と治療社 | 書籍詳細:原発性免疫不全症候群診療の手引き

日本免疫不全症研究会 編集

初版 B5判 並製 150頁 2017年04月17日発行

ISBN9784787822956

定価:本体4,500円+税
  

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原発性免疫不全症候群の中から代表的かつ頻度の高い疾患を選び,診療の手引きとして各分野の専門医が図表やフローチャートを用いながらわかりやすく解説.疾患概要から診断基準,重症度分類,診療上注意すべき点など,各疾患において必要不可欠な最新の情報を掲載し,原発性免疫不全症候群の理解や診療の一助となる充実した一冊となっている.専門医が経験した症例も紹介されており,実用的な内容となっている.

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目次

口絵カラー
執筆者一覧
序文

総 論
序 章 原発性免疫不全症候群
原発性免疫不全症(PID):総論 野々山恵章

各 論
第1章 複合免疫不全症
A X連鎖重症複合免疫不全症(X―SCID) 岡野 翼,今井耕輔
B アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症 有賀 正
C その他の複合免疫不全症(CID) 岡本圭祐,今井耕輔

第2章 免疫不全を伴う特徴的な症候群
A ウィスコット・オルドリッチ(Wiskott―Aldrich)症候群(WAS) 笹原洋二
B 毛細血管拡張性運動失調症(A―T) 髙木正稔,森尾友宏
C ブルーム(Bloom)症候群 大西秀典,金子英雄
D 胸腺低形成(DiGeorge症候群,22q11.2欠失症候群) 小島大英,村松秀城
E 高IgE症候群 峯岸克行
F 先天性角化不全症(DC) 片岡伸介,村松秀城
G 免疫不全を伴う無汗性外胚葉形成異常症 高田英俊

第3章 液性免疫不全を主とする疾患
A X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA) 金兼弘和
B 分類不能型免疫不全症(CVID) 今井耕輔
C 高IgM症候群(HIGM) 関中佳奈子,今井耕輔
D IgGサブクラス欠損症 金兼弘和,森尾友宏

第4章 免疫調節障害
A チェディアック・東(Chédiak―Higashi)症候群(CHS) 谷内江昭宏,和田泰三
B X連鎖リンパ増殖症候群(XLP) 金兼弘和,和田泰三
C 自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS) 谷内江昭宏,和田泰三

第5章 原発性食細胞機能不全症および欠損症
A 重症先天性好中球減少症(SCN) 小林正夫,溝口洋子
B 周期性好中球減少症(CyN) 小林正夫,溝口洋子
C 慢性肉芽腫症(CGD) 布井博幸,西村豊樹

第6章 自然免疫異常
A メンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症(MSMD) 岡田 賢
B 慢性皮膚粘膜カンジダ症(CMCD) 岡田 賢
C IRAK4欠損症 高田英俊
D MyD88欠損症 高田英俊

第7章 先天性補体欠損症
A 先天性補体欠損症 堀内孝彦
B 遺伝性血管性浮腫(HAE) 堀内孝彦

索 引

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序文

 原発性免疫不全症候群は稀ではあるが見逃してはならない疾患である.適切な診断,適切な治療により,予後が改善されるからである.しかし日本には診断されていない患者が多数いると考えられる.例えば,欧米で行われている原発性免疫不全症の新生児スクリーニングの結果から,重症複合免疫不全症の発症頻度は,これまで20万人に1人から5万人に1人と,より高いことがわかってきた.逆にいうと,これまで見逃し症例が多く存在したことを示している.すなわち重症複合免疫不全症と診断されないまま,死亡した患者がいると思われる.
 こうした見逃し例を減らすためには,原発性免疫不全症候群の徴候を知っておく必要がある.原発性免疫不全症候群では,まず易感染性が疑うべき徴候である.例えば,中耳炎や肺炎を繰り返す,水痘が重症化する,肺炎球菌ワクチンを接種していても重症の肺炎球菌感染を起こす,感染症への抗菌薬,抗ウイルス薬,抗真菌薬への反応性が不良である,EBウイルス持続感染を起こした,ニューモシスチス肺炎を起こした,BCGの播種性感染症を起こしたなどの患者を診療したときは疑わなくてはならない.一方,免疫調節障害などでは,血球貪食症候群や自己免疫疾患を起こす.悪性腫瘍を合併しやすい原発性免疫不全症候群もある.このように易感染性が多くの原発性免疫不全症の主要徴候であるが,自己免疫疾患,悪性腫瘍も起こしうるため,診断にあたり注意が必要である.また,原発性免疫不全症候群には300程度の多岐にわたる疾患があるため,診断には専門医のアドバイスが必要である.本書では,各疾患の症状,身体所見,検査所見など,本症を疑い診断するために必要な知識を専門医が解説している.
 治療としては,免疫グロブリン定期補充療法,G—CSF定期投与,IFN—γ投与,感染症に対する予防的抗微生物薬(抗菌薬,抗ウイルス薬,抗真菌薬など)投与,造血細胞移植,遺伝子治療などがあり,診断後速やかに開始する必要がある疾患もある.また,感染症発症時は通常とは異なる抗微生物薬の投与法も考えなければならない.易感染性以外に免疫調節障害を起こすこともあり,ステロイドやシクロスポリンAなどの免疫抑制薬を投与する場合もある.
 原発性免疫不全症候群を疑った場合は,速やかに専門医に相談し確定診断と治療を進めるべきである.例えば,重症複合免疫不全症は可及的速やかに診断し,治療を開始する必要がある.未治療では2歳までにほぼ100%死亡するが,早期診断すれば造血細胞移植により90%以上の治癒が見込まれるようになってきた.X連鎖無ガンマグロブリン血症は,早期診断と免疫グロブリン定期補充による治療により予後が劇的に改善したが,免疫グロブリン定期補充療法が適切になされないために肺炎などの感染を繰り返し,慢性肺疾患などの臓器障害を起こしている症例がある.X連鎖高IgM症候群は,長期予後が不良で20歳で生存率が25%という報告がある一方,5歳までに造血細胞移植を行うことで100%の無病生存が得られるという報告もある.これらのことから,いかに早期診断,適切な治療が重要であるかがわかる.専門医への相談体制はPIDJ(原発性免疫不全症データベース)で確立しているが,本書にはPIDJの利用法の解説も記載されている.また,治療法の解説がなされていて,例えば専門医への相談後,かかりつけ医が診療し治療する場合も,本書を活用できる.
 本書では,国際免疫学会による分類(IUIS分類)に記載された多数の原発性免疫不全症から,代表的かつ頻度の高い疾患を選び,診療の手引きとして解説した.厚生労働省原発性免疫不全症候群の診断基準・重症度分類および診療ガイドラインの確立に関する研究班分担研究者の各分野の専門医による解説であり,Expert opinionといえる.専門医の先生方が経験した症例の紹介も含まれ,実用的な内容となっている.ぜひ専門外の先生方も,原発性免疫不全症を疑った場合や診療する際に本書を活用していただきたい.

 2017年4月
日本免疫不全症研究会代表幹事
野々山恵章