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SHOX異常症診断と治療社 | 書籍詳細:SHOX異常症
基礎から最新知見まで

浜松医科大学小児科 教授

緒方 勤 (おがた つとむ) 監修

鳥取大学医学部周産期・小児医学分野 教授

神﨑 晋 (かんざき すすむ) 編集

国立成育医療研究センター研究所分子内分泌研究部 部長

深見 真紀(ふかみ まき) 編集

初版 B5判 並製 52頁 2017年09月27日発行

ISBN9784787823175

定価:本体3,000円+税
  

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主要成長遺伝子のひとつであるSHOX.その異常症は,低身長の原因として臨床的に重要で,新しい治療法の導入と効果が期待される疾患だ.本書は,発見から20年が経ち,飛躍的な進展を遂げたSHOX異常症研究の基礎から最新知見までを網羅した初の書籍である.

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目次

序 文  (緒方 勤)
執筆者一覧

Ⅰ.SHOX研究の背景と歴史  (緒方 勤)
 1.ヒト性染色体の進化と構造
 2.擬常染色体領域の進化
 3.PAR1上の成長決定遺伝子
 4.SHOXのクローニング
 5.その後の展開
 6.SHOX異常症研究会
Ⅱ.SHOX遺伝子とSHOXタンパク  (深見真紀)
 1.SHOX遺伝子
 2.SHOXタンパク
Ⅲ.臨床的特徴
1.自然歴・成長パターン  (室谷浩二)
 1.SHOX異常症の病態
 2.SHOX異常症の臨床症状
 3.SHOX異常症の予後
2.骨X線所見  (西村 玄)
 1.LWDの骨所見
 2.Madelung 変形の早期所見と年齢による変容
 3.ホモ接合型(複合ヘテロ接合型)SHOX異常症の骨所見
 4.鑑別診断
Ⅳ.遺伝学的診断  (島 彦仁,深見真紀)
 1.CNVの検出法
 2.遺伝子内塩基置換の検出法
 3.SHOX異常症の効率的遺伝子診断プロトコール
Ⅴ.治 療
1.内分泌学的治療  (神﨑 晋)
 1.GH単独治療
 2.GHとGnRH誘導体の併用療法
 3.アロマターゼ阻害薬
2.外科的治療  (関 敦仁)
 1.形態的特徴
 2.患者の愁訴
 3.手術法各種
Ⅵ.今後の課題  (深見真紀)
 1.SHOX遺伝子とSHOXタンパク
 2.SHOX異常症の分子基盤
 3.SHOX異常症の臨床像
 4.SHOX異常症の遺伝子診断
 5.SHOX異常症の治療

索 引

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序文

 SHOXは,Turner症候群患者が低身長を示し,Klinefelter症候群患者が高身長を呈することから,X染色体・性染色体に想定されていた成長決定遺伝子です.1990年代に,ドイツ・日本の共同研究により擬常染色体領域遠位部に限局化され,1997年にドイツ・ハイデルベルグ大学人類遺伝学Gudrun Rappold教授のもとでクローニングされました.その後,SHOXは,特発性低身長,Turner骨格徴候,Leri-Weill軟骨骨異形成症(Leri-Weill dyschondrosteosis;LWD),Langer型中間肢骨異形成症の責任遺伝子であることが判明し,小児内分泌の中で極めて重要な位置を占めるようになっております.特に,SHOX異常症が,LWDを呈する患者のほとんどで見出されるのみならず,報告により差異はあるものの,いわゆる特発性低身長を有するとされた小児の数%という高頻度で同定されることから,SHOXは,成長障害において重要な分子であると認識されるようになりました.
 このSHOX異常症は,Turner症候群における成長障害の約60%を説明し(残りは,染色体不均衡による成長抑制効果です),Turner症候群において成長ホルモンが有効であることから,初期から成長ホルモン治療の対象と見なされていました.そして,現在までに成長ホルモン治療が多数のSHOX異常症患者に行われ,SHOX異常症における成長ホルモン効果は,Turner症候群におけるそれに匹敵することが判明してきました.さらに,性腺エストロゲンの骨成熟効果が骨変形や成長障害を増悪する因子であり,したがって,性腺抑制療法の有用性や,成長ホルモンと性腺抑制療法の併用療法の有効性も報告されております.このように,SHOX異常症は,現在使用しうる治療法が適応できる疾患という側面をもっており,これもSHOX異常症が注目される点であると考えられます.
 さらに,SHOXの生理作用が次第に明らかとなりつつあり,これに伴い,骨成長のメカニズム解明が進展しており,成長というヒトにおける根源的な生命現象の解明が期待されます.また,SHOX過剰症と性腺異形成の合併が思春期から明瞭となる高身長を招くことから,SHOX遺伝子導入と性腺抑制療法の併用療法が成長障害の患者の新規治療法として提供される可能性が期待されます.
 なお,余談ですが,私がこの分野に興味を持ったきっかけは,1986年,群馬県の総合太田病院(現・太田記念病院)で高度の低身長(-4.5 SD)と環状X染色体を持つ男児を経験したことです.この男児の低身長は,現在では環状染色体の有糸分裂時の不安定性とSHOX欠失で説明されますが,当時は男児におけるX染色体異常症ということで,これが成長障害に関係するか否かということに興味を抱き,Gudrun Rappold教授との共同研究に繋がりました.ちなみに,この男児の染色体検査は,同じ日に低身長女児に染色体検査をしたついでにやったもので,普通のTurner女性を経験したのは,それよりずっと後の1992年です.男性における環状X染色体はその後アメリカから1例報告されたに過ぎず,大変貴重な症例に巡り会えたことに感謝しております.また,SHOXがNature Geneticsに発表された1997年には,現在,国立成育医療研究センター研究所分子内分泌研究部部長を務める深見真紀先生が,Gudrun Rappold教授のもとで研究活動に従事していたことが思い出されます.今後,深見部長が,この領域を牽引してゆくと確信しております.そして,Gudrun Rappold教授との長い親交に感謝しております.SHOX共同研究を始めたころに,彼女に産まれた女児が成人になり,長い時間を感じます.
 本書が,physician scientistを目指す医師・研究者の好奇心をかき立てることができれば,望外の喜びです.ご一読頂ければ幸いです.

 2017年5月
浜松医科大学小児科教授
緒方 勤