アレルギー疾患を総合的に捉え,患者教育を担うことができる専任のスタッフとして需要が高まっている,小児アレルギーエデュケーターの資格取得を目指す看護師,薬剤師,管理栄養士に向けた,学会編集による2分冊のテキストの第3版.『実践篇』では各アレルギー疾患別に効果的な患者教育を,具体例とともに紹介している.第3版では最新ガイドラインの内容を反映し,新たにアナフィラキシーの章を設けている.
関連書籍
ページの先頭へ戻る
目次
改訂第3 版 刊行によせて
執筆者一覧
第Ⅰ章 患者教育総論 益子 育代
1 アレルギー疾患における患者教育の位置付け
A 患者教育の重要性
2 患者教育の基本的理解
A アドヒアランスとその阻害要因
B 患者教育を行うための基礎的理論
C 患者教育に役立つコミュニケーションスキルと指導技術
3 患者教育の目的
A 小児アレルギーエデュケーターに求められる能力
B 患者教育の対象
C 患者・家族とのパートナーシップの確立
D 治療目標の共有化
E アドヒアランスの向上
4 アドヒアランスのアセスメントと対応
A 認識不足により実行できないノンアドヒアランス
B 治療に対する心理的抵抗によるノンアドヒアランス
C 治療に対する負担が強いためのノンアドヒアランス
D 治療スキル不足
E 悪化因子の探索と対策
F 治療行動に対する自己効力感の強化
G 支援体制の調整
H 治療中断の防止
第Ⅱ章 気管支喘息の患者教育 益子 育代
1 治療の変遷と患者教育
A 1980 年代まで
B 1990 年代以降
C ガイドラインの普及と小児アレルギーエデュケーター
2 教育内容
A 病態生理の理解
B 薬物療法
C 吸入指導
D 悪化因子の対策
E セルフモニタリング
F 発作時の対応 4)のみ 堀江 淳
G 発達段階に応じた指導内容
3 コントロール状態の評価
A 喘息コントロール状態の評価
B コントロール状態を判定する指標
4 患者教育の展開
A 救急外来での指導
B 初 診
C 2 回目の受診
D その後の受診
E 外来指導の留意点
F 短期目標の設定
第Ⅲ章 アトピー性皮膚炎の患者教育 金子 恵美
1 アトピー性皮膚炎と患者教育
A ステロイド外用薬とアトピービジネス
B アトピー性皮膚炎の患者教育
2 患者教育の内容
A 病態生理
B 症状のコントロール
C 悪化因子の対策
3 コントロール状態の評価
A 症状評価
B QOL の評価
C 成長発達,栄養状態の評価
4 アドヒアランスの評価と支援
A ノンアドヒアランスとなる要因
B アドヒアランスの向上と維持を目指した対策
C 治療の中断を起こさないために
第Ⅳ章 食物アレルギーの患者教育 今井 孝成,長谷川 実穂
1 治療の変遷
A 食物アレルギーの診療の変遷
B 診断の変遷
C 治療の変遷
2 社会生活上のポイント
A アレルゲン食品表示制度
B 日常生活における誤食事故の防止
C 園・学校での食物アレルギー対応
D 行事・外食・旅行などでの対応
3 食生活の評価と対応
A 必要最小限の原因食物の除去
B 食物経口負荷試験結果に基づく食事指導
C 原因食物別の特徴
4 QOL 向上を目指した生活指導
A 妊娠・授乳中の母親の食事
B 離乳食の進め方
C 成長発達・栄養管理
D 患児・家族のQOL
E 不安の強い保護者へのメンタルケア
第V 章 アナフィラキシー 古川 真弓
1 アナフィラキシーにおける救急蘇生法(プレホスピタルケア)
A アドレナリン
B エピペンⓇ
C 安静を保つ姿勢
D 心肺蘇生とAED
E 対応の手順が記載されたマニュアル
2 家族や患児への指導のポイント
A 子どもの発達段階を考慮した指導
B 予期せぬ注射への注意点
3 学校や保育施設の教職員への指導のポイント
A 教職員が知っておくべき知識と事前の準備
B ロールプレイ
第Ⅵ章 社会的対応 飯野(赤澤) 晃
1 アレルギー医療のサポート
A 法的整備
B 情報発信
C 治療・管理ガイドライン
D 医療費
E 災害に備えた対策 三浦 克志
2 生活管理指導表
索 引
ページの先頭へ戻る
序文
改訂第3 版 刊行によせて
小児アレルギーエデュケーター認定制度は,2009 年に発足して,まもなく10 年になります.この間にも,アレルギー医療は,大きく変わりました.その中でこれからの大きな足がかりとなるのが,2014 年に「アレルギー疾患対策基本法」が議員立法として成立し,2015 年12 月に施行されたことです.この法律は,多くの国民がアレルギー疾患を有すること,アナフィラキシーや喘息発作など急激な症状の増悪を繰り返すことがあること,国民生活に多大な影響を及ぼしていることなどから,アレルギー疾患対策の一層の充実を図るため,国,地方公共団体,医療保険者,国民,医師,医療関係者,学校関係者がその責務を明らかにし,総合的に推進することを目的としています.
具体的には,アレルギーに関する知識を患者だけでなく広く国民にも普及させること,アレルゲン物質の低減やアレルギー物質の食品表示の充実,アレルギーに関する専門的な知識や技術を有する医師,看護師,薬剤師,栄養士を育成すること,国民が全国どこにいても適切なアレルギー医療を受けられる体制を整備すること(アレルギー医療の均てん化),アレルギー疾患の病態解明,治療法の開発のための疫学研究,臨床研究を推進することになっています.
日本小児臨床アレルギー学会が実施している小児アレルギーエデュケーター制度は,アレルギーを専門とするメディカルスタッフを養成し,学会として認定することでアレルギー医療レベルの改善と全国でのアレルギー医療の均てん化に貢献していきます.
今回の本書の改訂は,一般社団法人日本アレルギー学会,日本小児アレルギー学会の刊行する各種アレルギー疾患治療・管理ガイドラインの改訂に合わせて行いました.日進月歩の医療の進歩に,これから小児アレルギーエデケターの取得を目指す人は,最新の情報で学習を行っていただきたいと思います.またすでに取得している人も最新の情報にアップデートするために見直しを行っていただきたいと思います.本書は,広く医療者向けにできる限りわかりやすく記載していますので,医師向け医学書と違い読みやすくなるように心がけています.多くの皆様のお役に立てることを期待しています.
最後に,本書を制作・改訂するにあたり,多くの専門家のみなさまにご監修いただきました.さらに,初版,第2 版に引き続き,皮膚科領域の執筆協力をいただきました京都府立医科大学大学院医学研究科 皮膚科学教授加藤則人先生に厚く御礼申し上げます.
平成30 年11 月
日本小児臨床アレルギー学会
理事長 飯野(赤澤) 晃