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基礎から学ぶ女性医学診断と治療社 | 書籍詳細:基礎から学ぶ女性医学

福島県立医科大学ふくしま子ども・女性医療支援センターセンター長/弘前大学名誉教授

水沼 英樹(みずぬま ひでき) 著

初版 B5判 並製 204頁 2020年09月10日発行

ISBN9784787824479

定価:本体5,200円+税
  

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女性医学に必要な基礎内分泌学と生理学,診断学と治療学を日本女性医学学会初代理事長がわかりやすく解説.ホルモンの基本やホルモン療法の情報も充実.第2部では症例の具体的な対応法を問診から治療法の選択まで箇条書きで示しポイントをまとめた.女性医学の基礎から実践までがよくわかる1冊.

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目次

【第1部 女性医学の基礎知識】
Ⅰ 女性医学とは 

Ⅱ 現代社会における女性医学の意義
 1.わが国の少子化,高齢化の実情 
 2.女性のライフステージの特徴と好発疾患 
  1)乳・幼児期
  2)思春期
  3)性成熟期
  4)更年期
 3.現代社会における生活習慣病の問題 
 4.女性医学が目指す生活習慣病予防対策 
 5.現代女性のメンタルヘルス 

Ⅲ 産婦人科学の今日的課題と女性医学
 1.妊婦健診から始まる生活習慣病対策 
 2.予防的卵巣摘出とがんサバイバーの健康管理 
 3.月経異常と生活習慣病 
 4.高齢女性の下部尿路障害 

Ⅳ 女性医学の理解に必要な基礎内分泌学
 1.ゴナドトロピン放出ホルモンとゴナドトロピン放出抑制ホルモン
 2.キスペプチン
 3.ゴナドトロピン 
 4.プロラクチン 
 5.性ステロイドホルモン 
  1)エストロゲン
  2)プロゲステロン
  3)ステロイドホルモン受容体と受容体作動物質
  4)アンドロゲン
 6.インヒビン・アクチビン 
 7.抗ミュラー管ホルモン

Ⅴ 女性の各ライフステージにおける生理と病理
 1.新生児期から思春期発来まで 
 2.思春期 
  1)思春期の身体変化
  2)思春期早発症・遅発思春期
  3)思春期発来のメカニズム
 3.性成熟期 3
  1)正常月経周期
  2)妊娠・分娩・産褥期
  3)無月経の病型と内分泌環境
   (1)視床下部性無月経
   (2)下垂体性無月経
   (3)卵巣性無月経
   (4)多囊胞性卵巣症候群
   (5)高プロラクチン血症
 4.エストロゲン依存性疾患
  1)子宮筋腫
  2)子宮内膜症
  3)子宮腺筋症
 5.更年期・老年期
  1)周閉経期のホルモン環境
  2)更年期障害・老年期障害

Ⅵ 女性医学の診断学:その要点
 1.問診 
 2.内診 
 3.超音波断層検査 
 4.腫瘍マーカー 
 5.乳房検査 
 6.婦人科がん検査 
 7.内分泌検査 
 8.性感染症検査 
 9.下部尿路症状検査 
 10.骨粗鬆症検査 
 11.糖・脂質異常症検査 
 12.(参考)特定健康診査 

Ⅶ 女性医学の治療学
 1.性ホルモン療法
 1-1 性ホルモン療法
 1-2 おもな性ホルモン療法
  1)Holmstrom療法
  2)Kaufmann療法
  3)偽妊娠療法(OC/LEPと中用量ピル)
  4)緊急避妊法
  5)月経の人工移動法
  6)偽閉経療法(GnRHアナログ療法)
  7)ホルモン補充療法
  8)エストロゲン・アンドロゲン混合剤療法
  9)その他
 1-3 エストロゲンの種類とその特徴 
  1)天然型エストロゲン製剤
   (1)結合型エストロゲン
   (2)17βエストラジオール
   (3)エストリオール
  2)合成エストロゲン
   (1)エチニルエストラジオール,メストラノール
   (2)エストラジオールプロピオン酸エステル,エストラジオール吉草酸エステル
 1-4 プロゲストーゲン製剤
 1-5 治療薬としてのホルモン補充療法の対象疾患と基本事項
  1)若年女子の卵巣機能不全
  2)体重減少性無月経,神経性食欲不振症
  3)早発卵巣不全・早発閉経
  4)更年期障害
 1-6 健康維持・増進薬としてのホルモン補充療法
  1)骨粗鬆症
  2)動脈硬化性疾患・高血圧
  3)糖尿病
  4)認知症,アルツハイマー病
 2.女性の精神症状とエストロゲン
 2-1 女性の精神症状とエストロゲン 
 2-2 月経前症候群・月経前不快気分障害 
 2-3 産後うつ病 
 2-4 更年期のうつとうつ病 
 3.高齢女性の泌尿生殖器疾患とエストロゲン 
 4.女性医学と悪性腫瘍
 4-1 婦人科がんの疫学
  1)罹患率の動向
  2)死亡率の動向
  3)婦人科がんサバイバーのヘルスケア
 4-2 ホルモン補充療法と悪性腫瘍 
  1)子宮内膜がん
  2)乳がん
  3)上皮性卵巣がん
  4)遺伝性乳がん卵巣がん症候群
  5)大腸がん
 5.女性医学で求められる薬物療法の必要知識
 5-1 漢方療法 
 5-2 向精神薬 
  1)抗うつ薬
  2)抗不安薬
  3)睡眠薬
 5-3 降圧薬
  1)高血圧の初期病態と初期対応
  2)薬物療法
 5-4 脂質代謝改善薬
 5-5 糖代謝改善薬 
 5-6 骨粗鬆症治療薬
  1)骨粗鬆症治療薬の種類
  2)骨粗鬆症治療薬の選択基準
  3)骨粗鬆症治療の治療目標と治療期間
 5-7 過活動膀胱治療薬
 6.下部尿路機能障害に対する非薬物療法
  1)行動療法
  2)電気・磁気刺激療法
  3)ペッサリーリング
  4)外科的療法
 7.カウンセリング・心理療法など

Ⅷ 未来への提言

【第2部 診療の実際】
Ⅰ 思春期
【症例1】 腟外陰炎で来院した5歳の女児
【症例2】 腹痛を主訴に来院した14歳の中学生
【症例3】 腟および子宮頸部無形成と診断され,頸管開通と腟形成を行った17歳の高校生
【症例4】 低身長で発見され,GH治療後ホルモン補充療法のコンサルトを目的に紹介となったTurner症候群
【症例5】 思春期早発症の診断でGnRHアナログ療法を開始し,半年前まで同療法を行っていた13歳の中学生
【症例6】 体重減少性無月経を主訴に来院した17歳の高校生
【症例7】 OC/LEP服用で肺塞栓症をきたした高校3年生

Ⅱ 性成熟期
【症例8】 月経痛を主訴に来院した26歳の未婚女性
【症例9】 漢方薬が奏効したPMDD 
【症例10】 月経随伴性気胸を起こした33歳の女性
【症例11】 発熱,下腹部痛を主訴に来院した29歳
【症例12】 無月経を主訴に来院した22歳の大学生
【症例13】 原発性無月経を主訴に来院した多囊胞性卵巣症候群の34歳の女性
【症例14】 続発性無月経を主訴に来院した37歳の不妊女性
【症例15】 低骨密度のために紹介された32歳の女性
【症例16】 産褥期骨粗鬆症の1例 
【症例17】 産後うつ
【症例18】 陰部掻痒感で来院した外陰皮膚カンジダ症

Ⅲ 更年期・老年期
【症例19】 多彩な症状をもって更年期障害を主訴に来院した52歳の女性
【症例20】 更年期障害の主訴で来院し,低骨密度を指摘された53歳の女性 
【症例21】 子宮下垂と尿漏れをきたしていた63歳の女性
【症例22】 外陰痛のため救急車で搬送された62歳
【症例23】 不正出血があり,がん検診目的で来院したが,骨粗鬆症の疑いをもたれ精査を受けた78歳の女性
【症例24】 ホルモン補充療法が奏効した83.9歳の更年期様症状

【コラム】
Japan Nurses’ Health study
SHBGの多彩な生理機能
子宮内膜症と心血管障害 
米国における無月経の分類と呼称
女性アスリートの3主徴 
更年期障害と甲状腺ホルモン
メドロキシプロゲステロン酢酸エステルデポー剤による避妊法
Nurse’s Health Study
Women’s Health Initiative(WHI)試験の真実
更年期障害と不定愁訴 
閉経関連泌尿生殖器症候群
もう1つの骨強度低下因子:骨質
月経前症候群と月経前不快気分障害
AYA世代と小児期のがん治療後の問題点 
BRCA遺伝子
メトホルミンの多彩な薬理作用

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序文

巻頭言

 女性医学は「女性に特有な心身にまつわる疾患を,女性の一生をとおして,主として予防医学の観点から取り扱う」ことを目的とする産婦人科の新しい診療領域である.2014年,日本産科婦人科学会は女性ヘルスケアを産婦人科のsubspecialty領域の1つとして認定し,女性医学は周産期医学,婦人科腫瘍学,生殖・内分泌医学と並んで,産婦人科の新しい診療領域を担うこととなった.
 日本女性医学学会の前身は日本更年期医学会であり,日本更年期医学会から日本女性医学学会へ名称変更となった背景にはわれわれの予防医療に対する考え方の進化があった.更年期医学では更年期を節目として更年期以降の女性の健康管理に努めてきたが,健全な老化を得るためには,より早い段階からの介入が求められてきたからである.私は2005年に日本更年期医学会の理事長に就任し,2016年に日本女性医学学会の理事長を退任するまでの12年間に亘り両学会の責任者を務めることとなった.更年期医学から女性医学への橋渡しを先頭に立って推進してきたわけであるが,女性医学の黎明期を安定させ,成長期へと発展させていくためには,何よりも女性医学の外形を整えその公知を図ることが重要であった.このため,認定制度や専門医制度の整備を優先的に進めてきたが,これらは学会の役員一人一人の献身的な尽力によって予定どおりに進行し,その結果は冒頭でふれたようにsubspecialtyとして承認を受けるという最高の形でもって結実した.
 一方,女性医学が産婦人科のsubspecialtyとして本来の目的を果たしていくためには,女性医学のもつ専門性とは何であるかをより具体的な形でもって示す必要があった.これに関しても学会の英知が結集され,どのような疾患をどのように診ていくかを「女性医学ガイドブック」として発行できたことは大きな成果であった.そこでは思春期から老年期に至るまでの女性の長いライフステージと各時期における疾患とその取扱いが解説されたが,特に強調したいのは,更年期医学では関心外におかれていた月経異常や月経困難症といった女性の生理機能の本質に関連する疾患が,女性医学の重要な関心疾患であることが記載されてきたことである.女性に備わる生理機能の本質を意識しながら,目の前の症例と向き合うことこそが女性医学の専門性を会得するうえで最も重要であると考えられるからである.こうして女性医学はその外形,内形ともに整備が進み,女性医学学会の会員数も設立当時に比べ2倍以上に膨らんできた.産婦人科領域におけるその意義は間違いなく認知され,黎明期から成長期へと歩みを進めたことは予想を超えた出来事であった.
 このような中にあって,今回本書の上梓に思い至った背景にはいくつかの理由がある.その第一は,更年期医学から女性医学への橋渡しを行った者として女性医学をどう考えているかを世に残すことは先導を務めた者の最後の責任であると考えたからである.あまた専門家が存在する中であえて単著にこだわったのもこのためである.
 第二は女性医学を学び習得するうえでこれだけは知っておいてほしいと思う知識を伝えたいとの想いからである.日本女性医学学会のガイドブックをはじめとして,これまで女性のヘルスケアを扱った特集号が少なからず発行されているが,これらはいずれも分担執筆されたもので,それぞれの執筆者が女性医学で取り扱う疾患のポイントについて極めて要領よくまとめている.しかしながら,従来の刊行物では女性の生理学や内分泌学など基礎的な項目が十分とはいえず,(例えは悪いが)これでは解剖学や病理学を知らずしてがんの専門医を名乗るに等しい.女性医学の基本は生理学と内分泌学であり,本書では臨床内分泌学としてこの部分に多くの紙面を割いている.また,がんの専門医にとって手術学は治療の中核を担う治療法であるように,女性医学ではホルモン療法が最も重要な治療手段となる.そのため,これにも多くのページを割いて概説した.
 本書のタイトルを当初は「女性医学概論」とすることを考えていたが,「概論」を執筆するにはあまりにも力不足でそのタイトルに見合うだけの記載はできないと考え,結局,「基礎から学ぶ女性医学」とした.このため,網羅的に細部に至るまでの記載には至らなかったが,逆に最も伝えたい事柄―症状と病態の因果―を記すことができ,初めて女性医学を学ぼうとする者にとって教育的な内容に仕上げることができたと自負している.編集上の工夫の1つとして,女性医学の領域では常識的に使われている用語や新しい概念に対し,用語解説やコラムとして解説を加えたので,こちらは気楽に読んでいただければ幸いである.
 本書は2部構成とした.第1部は「女性医学の基礎知識」として,上で述べた執筆方針に沿って記載を進めた.第2部は新たに女性医学を学ぼうとする医師を念頭に執筆した.これらの疾患に遭遇した医師に具体的な症例を提示し,そこから学ぶポイントと具体的な対応法を箇条書きで示し,問診から治療法の選択までの流れが理解できるよう工夫した.第1部では記載できなかった情報も含んでいるので,是非こちらにも目を通していただきたい.症例は実際に存在した症例を参考に擬似症例として作成した.貴重な症例を提供くださった弘前大学医学部保健学科教授の樋口 毅先生,ならびに福島県立医科大学性差医療センター教授の小宮ひろみ先生,および症例提供と校正を行ってくださった福島県立医科大学子ども・女性医療支援センター教授の髙橋俊文先生にこの場を借りて御礼申し上げる.

2020年7月
福島県立医科大学ふくしま子ども・女性医療支援センター センター長
弘前大学名誉教授
水沼 英樹