HOME > 書籍詳細

書籍詳細

腸内微生物叢最前線診断と治療社 | 書籍詳細:腸内微生物叢最前線
健康・疾病の制御システムを理解する

京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学

内藤 裕二(ないとう ゆうじ) 編集

初版 B5判 並製 152頁 2021年01月10日発行

ISBN9784787824592

定価:本体5,000円+税
  

ご覧になるためにはAdobe Flash Player® が必要です  


さまざまな疾患が細菌を始めとする微生物の影響を強く受け,ヒトは腸内微生物を中心にした生命共同体であるということが明らかになってきた.
本書は,基礎医学の先生方が,臨床医がどのような考えで腸内微生物叢研究を推進しているかを知り,またさまざまな疾患を研究する初学者が研究の現状を知るための,最前線で臨床応用に取り組むエキスパートの執筆陣による渾身の一冊.総論・23関連疾患をカラーイラストでわかりやすく解説.

ページの先頭へ戻る

目次

序   文
目   次
執筆者一覧

総   論:腸内微生物叢に関する基礎医学研究の現在
  1.腸管粘膜バリアと腸内微生物叢/奥村   龍,竹田   潔
  2.腸内微生物叢と免疫システム/木梨祐輔,山田恭央,長谷耕二
  3.腸内微生物叢と代謝制御システム/北野 (大植) 隆司,清水秀憲,木村郁夫
  4.腸内微生物叢のメタゲノム解析─現状と展望─/須田   亙,高安伶奈

各   論
Ⅰ   炎症性疾患・免疫関連疾患と腸内微生物叢の関連
  1.炎症性腸疾患と粘膜関連微生物叢/髙木智久,柏木里織,内藤裕二
  2.アレルギー疾患と腸内微生物叢/下条直樹
  3.原発性硬化性胆管炎と腸内微生物叢/中本伸宏
  4.関節リウマチと腸内微生物叢/岸川敏博,岡田随象
  5.非ステロイド性抗炎症薬による小腸粘膜傷害と腸内微生物叢/渡辺俊雄,藤原靖弘
  6.Clostridioides difficile感染症と糞便移植法/馬場重樹,安藤   朗

Ⅱ   代謝性疾患と腸内微生物叢の関連
  1.2型糖尿病と腸内微生物叢/藤田真隆,入江潤一郎
  2.メタボリックシンドロームと腸内微生物叢/松田やよい
  3.NASH/NAFLDと腸内微生物叢/結束貴臣,小林   貴,中島   淳

Ⅲ   腫瘍免疫と腸内微生物叢の関連
  1.食道がんと腸内微生物叢/馬場祥史,野元大地,馬場秀夫
  2.胃がんと非H. pylori細菌/津川   仁
  3.大腸がんと腸内微生物叢/奥村慎太郎,長山   聡,原   英二
  4.肝がんと腸内微生物叢/飯田宗穂
  5.膵臓がんと腸内微生物叢/池永直樹,中村雅史

Ⅳ   精神・神経系疾患と腸内微生物叢の関連
  1.過敏性腸症候群と腸内微生物叢/福土   審
  2.パーキンソン病と腸内微生物叢/斉木臣二
  3.多発性硬化症と腸内微生物叢/竹脇大貴,山村   隆
  4.自閉症関連疾患と腸内微生物叢/栃谷史郞
  5.脳腸相関と腸内微生物叢/須藤信行

Ⅴ   心・腎・血管系疾患と腸内微生物叢の関連
  1.心疾患と腸内微生物叢/山下智也,平田健一
  2.腸内微生物叢の代謝産物と動脈硬化/松本光晴
  3.脳卒中と口腔内細菌叢/殿村修一,猪原匡史
  4.腸腎連関と腸内微生物叢/阿部高明

付   録:Q&Aコーナー/内藤裕二
Q1   新型コロナウイルス感染症と腸内環境との関連は?
Q2   日本人の健康長寿と腸内細菌叢の関連は?
Q3   腸内細菌叢は食に影響される?
Q4   食物繊維の種類とその機能性は?
Q5   ビフィズス菌製剤の種類とその機能に違いはあるのですか?

索引


Column/内藤裕二
Column 1   川崎病と腸内細菌
Column 2   砂糖と腸内細菌叢
Column 3   IgAと腸内細菌叢
Column 4   コリバクチン産生大腸菌検出キットの開発
Column 5   抗菌薬による食物連鎖への影響
Column 6   母乳と小児アレルギー
Column 7   パーキンソン病と腸内細菌叢分布
Column 8   日本人のBifidobacterium属分布動向

ページの先頭へ戻る

序文


 『腸内微生物叢最前線─健康・疾病の制御システムを理解する』が完成した.本書の企画の提案は数年前からあったが,類似の書籍も多く,その中でどのような特徴が必要か随分と考えた.医学部教育において腸内細菌に関する授業はそんなに時間をさいていないし,学生は病気の診断や治療には興味を示すが,細菌学の講義は私自身も気に入った授業の記憶がない.ところが,新型コロナウイルスが世界中に感染拡大すると,全世界の科学者がこのウイルスを撲滅するために立ち上がることになった.研究の方向が急速に変化している時代を過ごす貴重な経験となっている.
 思い返すと,Helicobacter pylori菌が胃から分離培養されても,胃潰瘍の原因とはなかなか信じてもらえなかった.ましてや,胃がんの原因と確定するのに20年近くを必要としたのに対し,新型コロナウイルスに対しては1年以内にワクチンが開発されようとしている.急速に変化する科学の時代ともいえる.
 さて,ミレニアム以降,腸内細菌叢をメタゲノム解析する手法が確立,普及し,最近では毎週のように画期的成果が報告されている.これまで腸内細菌の関与を軽視して,病態を解析してきた当該疾患の研究者はさまざまな疾患が細菌を始めとする微生物の影響を強く受けるという仮説を受け入れることはできなかった.胃がんの原因はpylori菌であるとの発表に胃がんの研究者の多くが否定的であったのと同じように.しかし,無菌マウスを使用したノトバイオート実験,質量分析計を中心にした代謝物分析,糞便移植による成果などは,着実に,ヒトは腸内微生物を中心にした生命共同体であることを明らかにしてきた.
 本書は基礎科学者のための書ではなく,細菌学者のための書でもない.基礎医学の先生方に臨床医がどのようなことを考え,腸内微生物叢研究を推進しているかを知っていただく書であり,さまざまな疾患の研究を開始した初学の研究者に腸内微生物叢研究の現状を知っていただき,日本にこの領域のサポーターを増やすための書である.それぞれの疾患の予防,治療のための最終ゴールには依然として到達できていないことは一読いただければすぐに理解できる.貴重な患者さんの検体を有効に利用しながら,臨床研究を進めている現状を垣間見ていただければ幸いである.
 最後になりますが,極めて多忙な臨床,教育,研究の中,ご執筆頂いた先生方に厚く御礼申し上げます.また,私の強い希望を聞き入れていただき,美しい本書を仕上げていただいた診断と治療社のスタッフの皆様にも深謝申し上げます.

2020年11月吉日
京都府立医科大学消化器内科学
内藤 裕二