産科と婦人科
精選された情報満載読者各位にとって欠かすことができない情報をタイムリーに提供. 「生殖おもしろ話」・「外界事情」・「青い血のカルテ」・「産婦人科診療 私のコツ」など連載も充実.
抜群の読みやすさオール2色刷り.一目でキーポイントがわかるレイアウト.
充実したラインナップ日常診療の場で即役立つ「増刊号」を年各1冊発行.日進月歩で激変する医学界のキーワードを読み解き,読者各位の壮大な負託に応えるべく「産科と婦人科」は微力を注ぎます.
2018年 Vol.85 No.4 2018-03-16
女性アスリートのヘルスケア

定価:本体2,800円+税
企画 髙松 潔
1.日本における女性アスリートの現状と課題 / 久保田俊郎
2.女性アスリートの三主徴(FAT)とは / 土肥美智子
3.女性アスリートにおける初経遅延 / 甲村弘子
4.女性アスリートにおける続発性無月経 / 百枝幹雄
5.女性アスリートにおける月経困難症 / 北出真理
6.女性アスリートにおける過多月経 / 尾林 聡
7.女性アスリートにおける月経前症候群 / 武田 卓
8.月経周期を考慮したコンディショニングサポートの実際 / 須永美歌子・他
9.女性アスリートの骨マネージメント / 柳下和慶
10.女性アスリートにおける食事の注意点 / 小清水孝子
11.女性アスリートのメンタルケア / 待鳥浩司・他
12.女性アスリートにおけるホルモン療法とその注意点 / 篠原康一
13.女性アスリートの妊娠に関する諸問題 / 能瀬さやか・他
14.妊娠中・産褥期の適切なトレーニングとは / 難波 聡
15.アンチ・ドーピングの基礎知識 / 上東悦子
若手の最新研究紹介コーナー
医原性卵巣機能不全に対する妊孕性温存を目的とした
卵巣組織凍結・再移植の基礎的研究 / 村上直子
光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)を用いた
原始卵胞の非侵襲的検出による最適卵巣組織選択の試み / 高江正道
来たれ!私たちの産婦人科 第16回
武蔵野赤十字病院 産婦人科 / 梅澤 聡
Essay外界事情
Detroit / 矢沢珪二郎
Essay青い血のカルテ
共著者は愛猫 / 早川 智
原著
全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)の導入
単一術者が施行した80例についての検討から / 佐々木高綱・他
症例
癌性腹膜炎で発症した子宮頸部腺様囊胞癌(adenoid cystic carcinoma)の1例 / 宮下昭太・他
妊娠初期の子宮頸部細胞診が契機となり発見された子宮頸部浸潤癌の3症例 / 宮原周子・他
妊娠後期のルーチンの腟内細菌培養検査でG群β溶連菌が検出された1例 / 佐藤賢一郎・他
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次号予告
東京オリンピックまであと2年となり,スポーツへの関心はますます高まりつつあります.日本のアスリートは中学生からオリンピック選手に代表されるトップアスリートまで幅広く,世界的にも活躍しています.アスリートのパフォーマンスに魅了され,メダル獲得などの結果に一喜一憂するのは私だけではないと思います.さらに近年,女性が参加する競技種目の拡大やスポーツへの積極的な参加姿勢から,スポーツ界でも女性の活躍が目立っており,実際,リオオリンピックで日本がメダルを獲得した41種目のうち,18種目が女子選手によるものでした.
一方で,成績向上へのたゆまぬ努力は見落とされがちです.継続的な激しいトレーニングやメンタル面の強化などの心身への負担は想像以上と考えられ,これらのトレーニングは時として多くの健康問題につながることも知られています.従来から女性アスリートの三主徴として,「利用可能エネルギー不足」「無月経」「骨粗鬆症」がいわれていますが,このうち無月経と骨粗鬆症はとくに婦人科が中心的に対応するべきものです.また,パフォーマンス向上のために,海外では8割以上の選手がOC(低用量経口避妊薬)による月経コントロールを行っているといわれていますが,日本ではまだまだ普及していないようです.さらに,女性である以上,将来の妊孕能へも配慮が必要です.つまり,成績向上に加えて,長期的視野に基づいた対応が重要であり,女性アスリートの現在と未来のために産婦人科医の関与が欠かせません.
これらの現状を鑑み,日本産科婦人科学会では,日本における女性アスリートの健康問題の実態解明,対応方法の統一化,その認知と普及のために,平成25年度から女性ヘルスケア委員会に「女性アスリートのヘルスケア小委員会」を設置し,この問題に取り組んできました.アンケート調査からは,無月経や疲労骨折が想像以上に多いこと,競技による差異があること,BMI(体格指数)の低下が大きく影響していることなどの現状が明らかになり,その対応のために,2017年には日本女性医学学会と共同して,わが国初の「女性アスリートのヘルスケアに関する治療指針」が作成されました.このように産婦人科医を中心にアスリートをサポートする体制づくりが始まっています.
そこで本特集では,女性アスリートのヘルスケアの基礎から臨床までを理解するために,管理指針の作成委員を中心に,そのエッセンスをわかりやすく解説いただきました.産婦人科医も本分野に積極的に参画することにより,東京オリンピックでの女性アスリートの活躍,さらには次世代のアスリートの育成につながることを期待しています.
(東京歯科大学市川総合病院産婦人科 髙松 潔)