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書籍詳細

認定審査事例でよくわかる
介護保険主治医意見書記載のポイント診断と治療社 | 書籍詳細:介護保険主治医意見書記載のポイント

一般社団法人

日本臨床内科医会 編集

初版 B5判 並製 224頁 2011年04月08日発行

ISBN9784787818201

定価:本体3,800円+税
  

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実際の介護保険主治医意見書25事例を,運動器疾患,脳血管疾患,認知症・精神・神経疾患,呼吸器・循環器疾患,がん・がん末期,その他疾患の6つのカテゴリーにて掲載.申請者の状態像を伝える有用な表現のポイントが,理想的な主治医意見書,また不備の多い意見書の検討で具体的にわかる.また,認定審査資料からは,たとえば,認知症のような認定調査では要介護認定等基準時間に反映されない事例で主治医意見書がどのような役割を果たしているかを理解することができる.

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目次

目  次
発刊にあたって
はじめに
編集・執筆者一覧

第1章 要介護認定システム
第1節 要介護認定システム
   1  要介護認定の流れ
   2  要介護認定の基本設計
   3  要介護認定調査
   4  要介護認定調査内容
   5  申請者の状態像
   6  要介護認定等基準時間
   7  認定調査票特記事項
   8  要介護認定審査
   9  介護保険審査会

第2節 主治医意見書の意義と目的
   1  主治医意見書
   2  具体的利用法
   3  主治医意見書と生活機能
   4  主治医意見書とADLならびにIADL

第3節 主治医意見書記入に際しての留意事項
   0  基本情報
    「申請者の氏名」等
    「医師氏名」等
    (1)最終診察日
    (2)意見書作成回数
    (3)他科受診の有無
   1  傷病に関する意見
    (1)診断名及び発症年月日
    (2)症状としての安定性
    (3)生活機能低下の直接の原因となっている傷病または特定疾病の経過及び投薬内容を含む治療内容
   2  特別な医療
   3  心身の状態に関する意見
    (1)日常生活の自立度等について
    (2)認知症の中核症状
    (3)認知症の周辺症状
    (4)その他の精神・神経症状
    (5)身体の状態
   4  生活機能とサービスに関する意見
    (1)移動
    (2)栄養・食生活
    (3)現在あるかまたは今後発生の可能性の高い状態とその対処方針
    (4)サービス利用による生活機能の維持・改善の見通し
    (5)医学的管理の必要性
    (6)サービス提供時における医学的観点からの留意事項
    (7)感染症の有無
   5  特記すべき事項
   6  情報提供としての主治医意見書

第4節 主治医意見書記載にあたって
第5節 介護現場と主治医意見書

第2章 事例検討
第1節 事例の読み方
   1  事例プロフィール
   2  主治医意見書
   3  介護認定審査会資料の見方
   4  認定調査票(特記事項)
   5  介護認定審査会の審査判定

第2節 事例
   収載事例一覧表
   運動器疾患
   事例1 変形性股関節症 88歳 男性
   事例2 第3腰椎圧迫骨折 77歳 女性
   事例3 変形性膝関節症 69歳 女性
   事例4 変形性脊椎症 85歳 女性
   事例5 頚椎症性脊髄症 78歳 男性
   事例6 腰痛 86歳 女性
   事例7 頚部脊椎症 89歳 女性
   脳血管疾患
   事例8 脳出血後遺症 59歳 女性
   事例9 脳梗塞後遺症 65歳 男性
   事例10小脳出血後遺症 80歳 男性
   事例11右脳梗塞 71歳 女性
   認知・精神・神経疾患
   事例12統合失調症 90歳 女性
   事例13認知症(アルツハイマー型)80歳 女性
   事例14パーキンソン病 56歳 女性
   事例15ピック病 58歳 男性
   呼吸器・循環器疾患
   事例16肺炎 76歳 女性
   事例17気管支喘息 68歳 女性
   事例18 大動脈弁狭窄症 82歳 女性
   事例19閉塞性動脈硬化症 84歳 男性
   がん・がん末期
   事例20卵巣がん 80歳 女性
   事例21 肝がん 85歳 女性
   事例22 左腎がん 74歳 男性
  その他疾患
   事例23過敏性腸症候群 83歳 男性
   事例24 糖尿病 67歳 女性
   事例25四肢失調性麻痺 71歳 女性

付録
主治医意見書作成のための参考資料
   1 主治医意見書予診票
   2 主治医意見書作成依頼書(介護支援専門員から主治医へ)
   3 審査結果通知願い
   4 居宅療養管理指導箋
   5 介護サービス利用状況票

参考文献
おわりに

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序文

発刊にあたって
 医学の進歩によって医療は高度に専門分化するとともに,人口の高齢化に伴い介護を必要とする人たちも多くなり,介護保険制度も重要な問題となって,各部署に提出する書類も多くなっている.ところが医師の教育では書類の書き方の基本的な事項などを教えられることはないので,主治医意見書の記載が不十分な例が少なくないという苦情が寄せられる.
 このようなことから,このたび日本臨床内科医会の田中章慈氏(医療・介護保険委員会副委員長,和歌山県),安達秀樹氏(医療・介護保険委員会委員長,京都府),江頭芳樹氏(医療・介護保険委員会担当常任理事,福岡県),清水惠一郎氏(医療・介護保険委員会担当常任理事,東京都)らが中心となって本書をまとめられた.
 本書には要介護認定がどのような段取りで進められ,それに必要とされる主治医の意見書の種類と解説とともに,その記入の仕方などについて丁寧に説明されている.とくに医師が記入を忘れやすい事項,誤解しやすい事項,広く一般に通用する用語などについて述べられている.最も参考になるのは25症例の事例の解説で,各症例の申請,主治医の意見書が示され,それぞれの不備の箇所,記述不足の部分,介護認定審査会の資料,認定調査票(特記事項),介護認定審査会合議体検討内容などの,どの部分に問題があったかがわかるように示されている.
 以上のように臨床の第一線にある医師,とくに今までそのような書類を書く機会がなかった医師にはぜひ参考にすることをおすすめしたい.
2011年3月
一般社団法人 日本臨床内科医会 会長
東北大学名誉教授
後藤 由夫



はじめに
 2000年4月より施行された介護保険制度は,発足後10年の経過のなかで今や国民に広く定着するところとなり,高齢者の療養生活を支える意義は大きいといえる.
 医師は,主治医意見書作成や介護認定審査会への審査委員としての参加,ならびに要支援・要介護者への医療提供と療養指導を通じて,介護保険制度に深くかかわりをもってきた.しかし介護サービスという事業内容からみれば,要支援・要介護者と介護支援専門員や介護サービス提供事業者との結びつきはより強固なものとなり,一方医師とのかかわりは,徐々に希薄化されてきたような印象がある.
 介護保険を利用して介護サービス給付を受けようと希望する申請者は,必ず要介護認定審査を受けなければならない.要介護認定審査は,認定調査員の作成する①基本調査,調査結果をコンピュータに入力して算出された要介護認定等基準時間に基づく②一次判定と,調査員の記載する③認定調査票特記事項に加えて,医師の診察に基づいて作成された④主治医意見書を判断材料として二次判定が行われる仕組みとなっている.申請者の状態像からどの程度の介護量が必要であるかを決定する要介護認定は,介護給付総額を定め制度の根幹をなす重要な作業と位置づけられている.
 近年,利用者の増加とサービス量の拡大は財政基盤を圧迫するところとなり,制度存続,維持・拡大が大きな課題となってきた.介護保険制度は3年ごとに見直しがなされ,この要介護認定調査基準や一次判定コンピュータロジックの変更が行われてきたが,2009年4月の認定調査基準の大幅な変更により要介護認定に混乱が生じ,要介護度の引き下げに連動する介護給付費の恣意的な抑制が懸念されるところとなり,認定結果に不満であれば申請従前の認定結果に戻るという経過措置(2009年10月認定基準の再改訂に伴い廃止)が発動されたことはまだまだ記憶に新しいところである.
 このような要介護認定作業の重要な資料である主治医意見書は,臨床医師としての能力を発揮して作成しなければならない公文書であるが,以前から介護認定審査の場で,主治医意見書記載の不備が,一部ではあるが指摘されていた.審査会へは医師以外の職種が構成員数として多数参画しており,主治医意見書記載不備は医師への不信感を助長しかねないものでもあった.平成22年1月15日に開催された厚生労働省主催の「介護認定の見直しに係わる検証・検討委員会」において,「主治医意見書記載は不十分」という見解が明らとなった.日本医師会三上常任理事は,「日医として,意見書の記載事項である『特記すべき事項』の記載方法について,何らかの対応策を図らなければならない」と,主治医意見書特記事項の記載法などを検討する意向を示されたばかりである.
 介護支援専門員や認定調査員に対して介護保険法を基盤とした国家的かつ系統的研修プログラムが整い質的向上が図られ,調査員の調査能力や表現力は,調査基準の変更に伴う判断の揺れは考察外としても,年々上達してきたように感じられる.一方,主治医意見書については,要介護認定調査に比較して不備が目立つといわれながらも系統的な記載向上策が現れないまま放置されてきた.
 各都道府県では医師会員を対象として主治医意見書記載講習会が毎年開催され,最近は認知症対応力向上研修と合わせて実施されている.さらに大規模病院の医師を対象とした研修会も行われてきた.しかしその研修内容は保険者から依頼された地域の介護認定審査会に任され,要介護認定審査委員現任研修テキストのような国家レベルの系統的なプログラムはなかったのである.
 考えてみると,わが国の医師研修システムにおいて,診断書,証明書や意見書の作成について学ぶ機会はほとんどなかったといえる.診断書といっても様々な目的があり,診断根拠あるいは予後見通しなど用途に応じた記載が求められる.一方,意見書は法的根拠に基づいて診断や療養についての意見を問われるもので,診断書とは質的に差異がある.意見書の目的や診断書との区別がついていない主治医意見書が,実は数多く見受けられ,基本的なところから対処し直さなければならないと思われたのである.
 これまでも各地で主治医意見書記載の講習会等は実施されてきた.講習会では主治医の介護保険制度への理解を促すため,要介護認定件数やサービス量の推移など統計的な介護保険情報の提供とともに,主治医意見書事例を提示し解説が行われている.しかし事例を提示しても個人情報の秘匿が課題となり,講習会終了後に即刻回収され,受講者の印象は薄いようである.
 介護認定審査委員を経験したことがない主治医にとって,調査員が作成する基本調査や認定調査票特記事項などを目の当たりにする機会は皆無と思われるが,基本調査結果や調査員特記事項を通じて調査員がどのような判断を行い,認定調査票特記事項でその判断をどのように補っているかを理解することは重要で,介護の立場からの見方が修得できるのである.
 本書では,主治医意見書記載良好例だけでなく記載不備例も収録している.記載不備例を反面教師として考察することも重要と考えたからである.
 なお,事例集の発行にあたり調査結果や主治医意見書の公表について,和歌山市介護保険課を通して厚生労働省に問い合わせを行い,「個人が特定されることのなきよう配慮のもとに公表してもよい」との見解をいただいている.このため少し表現の変更を行っている箇所もあるが,大部分は原文のままに(明らかな誤字は訂正)活字として打ち変えただけのものである.
事例を参考として,主治医ご自身の診断やご意見あるいは療養指導について,より明確で説得力のある記載法を見い出していただきたいと願うものである.

2011年3月
一般社団法人 日本臨床内科医会 社会保険部 医療・介護保険委員会副委員長
和歌山市介護認定審査会会長,和歌山市医師会会長
田中 章慈