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書籍詳細

対話・コミュニケーションから学ぶスピリチュアルケア診断と治療社 | 書籍詳細:対話・コミュニケーションから学ぶスピリチュアルケア
―ことばと物語からの実践―

山口大学大学院医学系研究科医療環境学教授

谷田 憲俊(たにだ のりとし) 編集

飛騨千光寺住職,京都大学大学院医学研究科講師

大下 大圓(おおした だいえん) 編集

桃山学院大学大学院社会学研究科教授

伊藤 高章(いとう たかあき) 編集

初版 A5判 並製 248頁 2011年07月15日発行

ISBN9784787818263

定価:本体2,800円+税
  

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様々な分野の第一線でスピリチュアルケアに携わる医師,看護師,スピリチュアルケア・ワーカー,心理士,宗教家ら多彩な執筆陣が具体的事例を中心に執筆した.ほぼ全部の事例について,スピリチュアルケアの実践者と患者・家族との対話を傍注付きで示した.医師等の各種資格を有する専門職が,相互にスピリチュアルケアを参照することについて有益であり,スピリチュアルケアの実践に役に立つ.

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目次

対話・コミュニケーションから学ぶスピリチュアルケア
─ことばと物語からの実践─
Contents
口絵カラー

まえがき

スピリチュアルケアの概説

1. スピリチュアルケア
─コミュニケーションからの展開  谷田憲俊
2. 宗教とスピリチュアルケア
─仏教からスピリチュアリティの階梯を紐解く  大下大圓
3. 臨床スピリチュアルケアの実践  伊藤高章

スピリチュアルケアの実践

1. ホスピスにおけるスピリチュアルケア  小西達也
2. 緩和ケアにおけるスピリチュアルケア  瀬良信勝
3. スピリチュアルケア・カウンセラーによるスピリチュアルケア
─高齢がん末期患者のスピリチュアルケアと予後告知  安田裕子
4. 看護師によるスピリチュアルケア  川瀬洋子
5. ビハーラ病棟におけるスピリチュアルケア  村瀬正光
6. 緩和ケア医師によるスピリチュアルケア  進藤喜予
7. がん治療におけるスピリチュアルケア  岸本寛史
8. 歯科医師によるスピリチュアルケア  当真 隆
9. 悲嘆のスピリチュアルケア  辻 由美
10. トラウマ的死別とスピリチュアルケア  鈴木剛子
11. 薬剤師によるスピリチュアルケア  鉄穴口麻里子
12. 言語聴覚療法によるスピリチュアルケア  松谷寛元
13. 作業療法によるスピリチュアルケア  野尻明子
14. 芸術療法によるスピリチュアルケア  北本福美
15. 瞑想療法によるスピリチュアルケア  大下大圓
16. 内観療法によるスピリチュアルケア  千石真理
17. セラピューティック・ケアによるスピリチュアルケア
─治療力のある介護  秋吉美千代
18. 認知症患者へのスピリチュアルケア  春本幸子
19. 家族療法とスピリチュアルケア  西川みち子
20. ボランティアによるスピリチュアルケア  梅津禮司
21. 子どものスピリチュアルケア
「仲間とつながりあって ハッピーに生きようぜ!」  金森俊朗
22. 災害時のスピリチュアルケア
─災害現場に「人間」と「地域」と「暮らし」を一体化したケアを  黒田裕子

索引
あとがき

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序文

まえがき

 医療や福祉,介護の領域でスピリチュアリティやスピリチュアルケアへの関心が高まり,また「こころのケア」もしきりに叫ばれる。特に,ホスピス・緩和ケア領域で致死的疾患を抱えた患者や家族へのスピリチュアルケアは必須とされ,保健医療従事者向け講習会の機会も増えている。すでに人材育成に取り組み,臨床に専門職を送り出している機関も複数ある。そんななか,日本スピリチュアルケア学会が2007年に発足して,スピリチュアルケア専門職の社会的機能を促進する方向性を打ち出した。そこでは,医学,看護学,哲学,心理学,宗教学,社会学,経済学等あらゆる分野から集まって学際的な学会を構成し,専門職の認定制度を準備している。
 一方,大学教育では2007年に高野山大学にスピリチュアルケア学科が新設され,多くの話題と関心が寄せられた。医療関係では,日本ホスピス・在宅ケア研究会,日本死の臨床研究会,日本緩和医療学会等にスピリチュアルケア分野から多くの発表と論文が寄せられている。文献検索PubMedで“spiritual”を検索すると,6,622件もの論文がヒットし(2011年3月18日),その数は実に2010年10月の1.5倍にのぼる。地域での看取りは国をあげた施策となり,今やスピリチュアルケアへの必要性はかつてないほど高まっている。
 他方,スピリチュアリティの理解とスピリチュアルケアはいまだ不十分といわざるを得ないのが実状であろう。かかわる分野の多様さからわかるように,スピリチュアルケアには様々な取り組みが求められる。しかし,その割には相互に参照できる実践者向けの指南書に乏しいことも,スピリチュアルケアが不十分である理由と思われる。そういった課題への対応として本書が企画された。すなわち,スピリチュアリティとスピリチュアルケアについて,1)理解を深めること,2)その実践に有用であること,3)各専門職間の相互参照に有益であること,4)さらなる深化と発展を得るのに役立つこと,等を本書の目的とした。
 その目的に応えるために,様々な分野の第一線で直接的・間接的にスピリチュアルケアに携わる方々に具体的事例を中心とする執筆を依頼した。多彩な執筆陣には,臨床や研究でスピリチュアルケアに活躍する豊富な経歴と背景を有する医師・歯科医師,看護師およびコメディカル,宗教家,臨床心理士等の各種資格を有する専門職,補完療法の実践者等,そして異色の分野から教師がいる。
 構成は保健医療分野におけるスピリチュアルケアの概説にはじまり,仏教やキリスト教という数千年ものスピリチュアリティに関する膨大な思惟の一端に触れることから入っている。そして,スピリチュアルケア専門職による真正スピリチュアルケアから実践自体がスピリチュアルケアとして機能する取り組みまで幅広い臨床の姿が事例の下に描かれる。それら執筆陣には欧米でスピリチュアルケアの専門教育を受けた執筆者も多く,最新の研究成果に基づくスピリチュアルケアの姿は,実践に相互参照に役に立つ。そして,子どもたちの姿から,人には「強い力」があることを再認識できる。描かれたことそれぞれが縦糸・横糸となり織りなして,望ましいスピリチュアルケアの姿を浮かび上がらせている。
 こうして各執筆者に脱稿していただいた後に3月11日を迎えた。死者15,148人,行方不明者は8,881人,109,456人が避難生活(5月20日時点)という未曾有の東日本大震災である。人々は激震と津波,原子力発電所事故という多重災害に遭い,自分自身と愛する家族・知人への被害,喪失に伴う悲嘆と多重の苦痛に見舞われている。それらの悲惨さに,支援者の多くも急性ストレス障害と心的外傷後ストレス障害に打ちひしがれる。膨大な数のこうした被災者と支援者にスピリチュアルケアを提供することが差し迫って求められる。
 人間の脆弱性を考えると,保健医療分野において,自他の区別をすることはできない。人間は脆弱であるがゆえに,全人性を重要視する。そして,悲嘆ケアをはじめスピリチュアルケアには支援者もいずれ被支援者になるという免れられない原点がある。東日本大震災はそのことを再確認させる出来事であり,スピリチュアルケアの真価が問われている。個人のスピリチュアリティに焦点をあわせる対応は患者と家族に対するスピリチュアルケアのみならず,一般社会においても互いを尊重しあう実り豊かな人間関係の形成に有用である。本書によってスピリチュアリティへの理解が深まり,スピリチュアルケアの発展につながることを編集者・執筆者一同願っている。

2011年7月
谷田憲俊
大下大圓
伊藤高章