高次脳機能障害にかかわるすべての医師,関連職に向けて,実際の問診,検査(画像,神経心理),リハビリ評価,薬物処方,手帳交付等を含めた社会的支援についてコンパクトにまとまっており,すぐにでも高次脳機能障害の診断・治療・支援に役立つ1冊.実際のケース別介入法や,様々なコラムは,著者自身の臨床実践から生まれた様々な示唆に富む内容となっている.
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目次
A 高次脳機能障害の問診
1 高次脳機能という用語
2 高次脳機能障害という用語
3 初回面接
4 高次脳機能障害のチェックリスト
5 病識の欠如への対応
6 急性期の意識障害の存在の確認
7 高次脳機能障害の診断基準
8 高次脳機能障害の問診のコツ
B 画像診断
1 CT
2 MRI
3 拡散テンソルMRI
4 脳血流シンチグラフィ
5 脳受容体シンチグラフィ
6 画像診断のコツ
C 診断に必要な評価
1 高次脳機能障害のスクリーニング検査
2 一般的な神経心理学的検査
3 小児に用いられる神経心理学的検査
4 発達障害と高次脳機能障害
5 認知症との鑑別
6 診断に必要な評価のコツ
D リハビリテーションに必要な評価
1 意識・覚醒
2 運動・姿勢
3 摂食・嚥下
4 知能低下
5 前頭葉機能検査(遂行機能検査)
6 注意機能検査
7 視空間認知検査
8 失 語
9 記憶障害
10 リハビリテーションに必要な評価のコツ
E ポジティブな行動支援
1 ポジティブな行動支援の基本
2 急性期におけるポジティブな行動支援
3 家族への適切な情報提供
4 職場への適切な情報提供
5 認知訓練の実際
6 グループ認知リハビリテーション
7 家族へのサポート
8 ポジティブな行動支援のコツ
F 薬物療法
1 高次脳機能ピラミッド
2 易疲労性への対応
3 薬物療法の考え方
4 回復のメカニズム
5 薬物処方の実際
6 薬物療法のコツ
G 社会的支援
1 高次脳機能障害者の手帳取得状況
2 精神障害者保健福祉手帳
3 身体障害者手帳(言語障害)
4 高次脳機能障害者の長期経過
5 社会的支援のコツ
H ケース別介入法の実際
1 リハビリテーション処方の実際
2 理学療法
3 作業療法
4 言語聴覚療法
5 心理療法
6 グループ認知リハビリテーション「羅心版」の実例
7 ケース別介入法のコツ
I おわりに──心を育てる
1 人の心がわかる心
2 心の絆
Column
どこまでがもともとのキャラクターで,どこからが高次脳機能障害か
軽症脳外傷
IT技術を用いた高次脳機能評価
オレンジクラブ
よくなったから社会に戻るのではなく,社会に戻ったからよくなる
注意欠陥多動性障害患者にみられる遂行機能障害
小児の高次脳機能障害
映画「ガチ☆ボーイ」
索 引
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序文
2001年から5年間,国(厚生労働省)の施策として高次脳機能障害支援モデル事業が行われ,高次脳機能障害の認知度は飛躍的に高まり,成人の脳損傷患者に対する高次脳機能障害のリハビリテーションが積極的に行われるようになった.そして,その後の5年間で,全国各地域において,地域特性に合わせた支援体制が少しずつではあるが芽生え始めている.
しかしながら,脳神経外科,神経内科,リハビリテーション科といった脳損傷を多く扱う診療科における認知度の高まりとは裏腹に,その他の一般内科,小児科,精神神経科などにおける高次脳機能障害の診断・治療・支援の広がりはいまだ不十分である.
それらの輪をどのようにしたら広げていくことができるだろうか.
その一つの答えは,現時点では脳損傷のリハビリテーションにかかわる一部の人々の願いである高次脳機能障害者支援について,それ以外の医療・福祉・行政にかかわる専門職の一人でも多くが理解し,それを自分の願いとしてとらえていただけるようにすることであろう.やがて,一部の願いがみんなの願いに変わる日が来るかもしれない.
本書は,日常的に脳損傷による高次脳機能障害の診断・治療・支援にかかわる専門の医師やコメディカルの方々のみならず,広く臨床の現場で様々な疾患に対する診断・治療・支援を行っている一般医家や専門職の方々に向けて書いたものである.
昨日までは人ごとと思っていた高次脳機能障害の診断・治療・支援が,この本を通じて読者自身によって今日明日から実践できる診断・治療・支援へと変わることを願っている.
2011年10月
国立成育医療研究センター
発達評価センター長/リハビリテーション科医長
橋本圭司