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書籍詳細

発達障害医学の進歩24診断と治療社 | 書籍詳細:発達障害医学の進歩24

名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター

本城 秀次(ほんじょう しゅうじ) 編集

名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター

野邑 健二(のむら けんじ) 編集

日本発達障害福祉連盟(日本発達福祉連盟) 編集

初版 B5判 並製 84頁 2012年04月15日発行

ISBN9784787819314

定価:3,850円(本体価格3,500円+税)

近年,発達障害児の母親にうつ状態の者が有意に多いことが指摘されている.本書では,発達障害児と相互に影響し合う存在としての家族へのアプローチを取り上げた.

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目次

■家族への支援の重要性―野邑健二
発達障害児への家族支援とは 
療育支援―家族が主たる支援者となるために  
家族自身への支援  
家族と本人(発達障害児)との関係性への支援  
支援を行うために  
■子育て支援の延長にある家族支援―永田雅子
発達障害児の家族への支援の必要性  
子どもがもって生まれた個性と親子関係 
親と子どもの関係性を支援する  
発達障害児の家族への支援の流れ 
家族支援を行っていくということ 
おわりに  
■診察と家族への支援
 ―障碍説明を中心に―髙橋 脩
診察の原則 
初診の診察過程 
問診と身体的診察 
診断結果の説明(障碍説明)の原則 
診断結果の説明の実際 
おわりに 
■注意欠陥/多動性障害(ADHD)への
 ペアレントトレーニング(PT)―岩坂英巳
ペアレントトレーニング(PT)の現状 
ペアレントトレーニング(PT)の目的
ペアレントトレーニング(PT)の内容
実施上の留意点 
ペアレントトレーニング(PT)を応用した支援について
おわりに 
■自閉症スペクトラム(ASD)への
 ペアレントトレーニング(PT)―井上雅彦
自閉症スペクトラム(ASD)におけるペアレントトレーニング(PT)の歴史 
自閉症スペクトラム(ASD)に対するペアレントトレーニング(PT)の特徴  
自閉症スペクトラム(ASD)に対するわが国のペアレントトレーニング(PT)の
 実践 
自閉症スペクトラム(ASD)におけるペアレントトレーニング(PT)の今後の
 課題  
■家族のメンタルヘルスに配慮した支援
 ―子ども支援は親支援から―原  仁
子どもの専門職がなぜ親のメンタルヘルス支援なのか? 
障害児の親のメンタルヘルスに関する研究が開始された経緯 
支援のために必要な情報と共有―関係者ミーティングのありかた 
3つの対応レベル―見守り,積極的介入,緊急対応  
おわりに 
■家族の特性に配慮した支援―野村和代,山村淳一,杉山登志郎
家族の特性の評価 
保護者に子どもへのかかわりかたを伝えるときのポイント
おわりに 
■発達障害児の家族(親)への診断告知
 ―HFPDD児の親への診断告知状況調査を
 ふまえて―宮地泰士
親への診断告知状況および親の意識調査結果 
診断告知を受けるまでの親の心理状況 
親の“気づき”や心の準備の支援 
親への診断告知(早期診断)の時期 
親への診断告知の導入 
親への診断告知の内容 
親への診断告知後のフォローについて 
おわりに  
■ペアレントメンター―吉川 徹
ペアレントメンターとは 
わが国のペアレントメンター活動 
ペアレントメンター養成プログラム 
ペアレントメンターによる支援の実際 
ペアレントメンター活動の継続支援  
ペアレントメンター活動のリスクとベネフィット 
事例の困難化の予防 
今後の課題  
■発達障害児・者のきょうだいへの支援―田倉さやか
障害児・者のきょうだいに関する研究
発達障害児・者のきょうだい 
きょうだい支援の実際
ライフステージごとの課題と必要な支援 
おわりに  

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序文

 近年,発達障害の問題が大きな関心を集めている.その要因として,従来,自閉症の発生頻度は1万人に4人程度の発生率といわれていたものが,最近の調査では広汎性発達障害(PDD)について1万人に170人程度の発生率と報告されたように,PDDの発生頻度の増加傾向をあげることができる.このようなPDDの発生頻度の増加傾向は,実際にPDDが増加していることを反映しているのか,診断精度が上昇したことによるのか,はたまた自閉症の概念が拡大したのか,様々な可能性が指摘されている.しかし,いずれにせよ,この現象を1つの要因に帰することは困難であろう.また,このようなPDDの増加傾向,とりわけ高機能広汎性発達障害(HFPDD)の増加傾向は,これまでの精神医学の診断分類に大きな変革を引き起こす可能性を有すると考えられる.
 自閉症の病因論については,これまでも多くの説が唱えられてきた.Kanner自身も1943年に自閉症を初めて報告して以来,その病因論に関しては揺れ続けている.自閉症を児童期精神病の最早期発症型であるとしたり,両親の性格傾向が理知的で情緒性の乏しいものであることに注目して,母子関係の障害を自閉症の病因として重視したりしている.しかし,その後,自閉症児の母親が定型発達児の母親と比べて精神的な問題を有しているという考えかたは一般的に否定され,自閉症の器質因説が受け入れられてきた.PDDの病因として遺伝が大きな役割を演じていることは一般に認められてきたが,遺伝がPDDのすべてを決定するわけではなく,心理社会的要因と遺伝因子が様々に影響し合ってPDDが析出してくると考えられる.
 PDDの治療に関しても,病因論の変遷につれて紆余曲折があったが,PDDの発達等について一定の理解が進み,ある程度の見解の一致がみられるようになってきた.それとともに,PDD児と相互に影響し合う存在としての家族へのアプローチが重視されるようになってきた.最近,PDD児の母親にうつ状態の者が有意に多いといったことが指摘されており,PDD児の治療者としての家族とともに,支援される者としての家族という視点も重視されてきている.
 『発達障害医学の進歩24集』では,このような発達障害をめぐる家族の問題を取り上げることにした.本書が少しでも発達障害医学の進歩に貢献することを期待している.
     2012年3月
 名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター 本城秀次
 野邑健二