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TIA(一過性脳虚血発作)急性期医療の実際診断と治療社 | 書籍詳細:TIA(一過性脳虚血発作)急性期医療の実際

国立循環器病研究センター副院長

峰松 一夫(みねまつ かずお) 編集

国立循環器病研究センター脳血管内科医長

上原 敏志(うえはら としゆき) 編集

初版 B5判 並製 136頁 2013年03月21日発行

ISBN9784787820129

定価:本体3,200円+税
  

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TIAは,短時間で症状が消失するため,患者や家族に軽視されやすく,医療機関を受診しないことも多いが,脳梗塞の「前触れ発作」であることからTIAや軽症脳卒中に特化した専門クリニックで診断・治療を行う必要がある.本書はTIAを早期に診断し,脳梗塞の発症を防止するために重要となる,市民への啓発,開業医と専門医との医療連携,専門医療機関での受入れとその対応までを一般医向けにわかりやすく解説したはじめての書.

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目次

Ⅰ 一過性脳虚血発作(TIA)とは 
 
1 TIAの概念および定義…上原敏志,峰松一夫 
はじめに 
 1 TIAの定義の変遷 
 2 わが国の脳卒中専門施設で用いているTIAの定義の実態 
 3 TIA研究峰松班によるTIAの定義とその解説 
 4 急性脳血管症候群の概念 
おわりに 
2 疫 学…小久保喜弘 
はじめに 
 1 TIAの有病率 
 2 TIAの発症率・死亡率 
 3 わが国のTIA発症率 
 4 TIA発症の危険因子 
 5 TIA発症後の脳卒中発症率 
 6 家族歴 
 7 TIA発症の時間差・季節差 
3 病 態…青木志郎,細見直永,松本昌泰 
 1 TIAの発症機序 
 2 TIAの原因 
まとめ
4 症 候…長谷川康博 
はじめに 
 1 TIAの症候 
 2 症候からみた鑑別 
 3 診断精度 
おわりに
5 一過性黒内障(amaurosis fugax, retinal TIA)…中川原譲二,麓 健太朗 
 1 眼虚血症候群と一過性黒内障 
 2 一過性黒内障の症状と急性期の対応 
 3 一過性黒内障の臨床的特徴 
 4 代表症例の画像所見と治療経過 
6 早期診断・治療の重要性―EXPRESS試験,SOS-TIA試験を通じて―…植村順一,木村和美 
 1 EXPRESS試験について 
 2 SOS-TIA試験について 
まとめ 
7 わが国におけるTIAの特徴…尾原知行 
はじめに 
 1 J-MUSIC研究 
 2 TIA研究峰松班 
 3 TIA発症機序,脳梗塞発症におけるわが国のTIAの特徴 
8 国内外の動向…内山真一郎 
はじめに 
 1 国際共同観察研究(TIAregistry.org) 
 2 国内で進行中の厚生労働省科学研究費による前向き研究 
おわりに 
Ⅱ TIA診療の実際 
 
1 診察のポイント…長尾毅彦 
 1 TIAでは,病歴聴取の良否が患者さんの予後を左右する!
 2 一般検査
 3 TIAのリスク評価
おわりに
2 頭部CT,MRI検査…里見淳一郎,永廣信治 
 1 TIA診断における画像検査の意義 
 2 TIAにおけるMRI拡散強調画像の出現時期についての検討
 3 代表症例
3 頭頸部血管の評価…長束一行
はじめに
 1 超音波検査
 2 MR検査 
 3 CT angiography(CTA) 
 4 脳血管撮影 
おわりに 
4 脳循環の評価…小笠原邦昭 
 1 脳循環測定の意義 
 2 方法 
5 TIA診療における心臓と全身血管の評価の意義…小林潤平,豊田一則
 1 塞栓源検索としての心臓,大血管の評価 
 2 全身血管,特に冠動脈疾患,末梢動脈疾患の検索の必要性 
6 脳卒中発症リスクの評価と入院の適応…岡田 靖 
はじめに
 1 TIAの急性期早期再発
 2 ABCD2スコア 
 3 TIAの病態と検査
 4 TIAの入院適応と入院基準
 5 入院適応にみるMRIの位置づけ
 6 一般施設と専門医療施設との医療連携と診療方針の共有 
7 内科的治療…棚橋紀夫
はじめに
 1 抗血栓療法
 2 危険因子の管理
 3 生活習慣の改善 
おわりに
8 外科的治療…石井大造,飯原弘二 
はじめに 
 1 頸動脈内膜剝離術(carotid endarterectomy:CEA)/頸動脈ステント留置術(carotid artery stenting:CAS)
 2 経皮的血管形成術/ステント留置術(頸部頸動脈以外)
 3 EC-ICバイパス
Ⅲ TIA診療における医療連携 
 
1 一般開業医と脳卒中専門病院との連携…鈴木理恵子
はじめに
 1 TIA診療の難しさと医療連携の必要性 
 2 大阪北摂地区開業医のTIAに関する認識と,脳卒中専門病院との連携の現状 
 3 TIA診療における開業医と脳卒中病院との医療連携に関する海外の報告 
 4 わが国におけるTIAクリニックの試み 
2 脳卒中に関する一般市民への啓発…中山博文 
はじめに 
 1 TIAの認知度
 2 市民への啓発方法 
 3 ブレイン・アタック キャンペーン
 4 今後の啓発活動
索 引

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序文

 脳血管障害は,脳卒中とも呼ばれる.これは,「脳が卒然として(突然に),悪い病気に中る(あたる)」ことを語源としている.英語でstroke,すなわち「一撃」と表記されるのも,本疾患が,突然に「死」または「重篤な後遺症」をもたらすからである.本疾患は,世界各国の国民死因の上位を,また要介護疾患の首位を占める.ある意味,最も悲惨な病気の一つである.本疾患の制圧には,危険因子(高血圧,糖尿病,心房細動,脂質代謝異常,喫煙,肥満など)を有する人々への予防介入,発症時の迅速かつ適切な治療(超急性期血栓溶解療法など)が必要である.
 脳卒中は,脳の血管の病気である.血管が詰まって起こる虚血性(閉塞性)脳血管障害と出血性脳血管障害とに大別される.前者は脳卒中の約7割を占め,脳梗塞と一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)とに分けられる.TIAは,以前から脳梗塞の「前触れ発作」として知られていた.脳卒中死亡率上位の続く秋田県では,脳卒中で倒れることを「あたる」と言い,症状がすぐよくなって,軽症で済む場合を「かする」と表現する.まさに,TIAがこれに該当する.「かする」という表現には安堵感が感じられるが,果たして安心してよいのだろうか? TIAは,短時間で症状が消失してしまうため,患者や家族に軽視されやすく,医療機関を受診しないことも稀ではない.また,医療機関を受診したとしても,医師が単に“軽症の脳卒中”と判断して,診断・治療が後回しにされがちである.
 最近の研究により,TIAは,① 発症後短期間に完成型脳梗塞を発症するリスクが極めて高く,一方で,② TIAや軽症脳卒中に特化した専門クリニックで,24時間体制で診断・治療を行えば,重篤な脳梗塞の発症を8割も低減できることが報告されている.TIAへの対応は,「瀬戸際予防」,「崖っぷち予防」なのである.
 国内でも,厚生労働省TIA研究班が組織され,われわれが主任研究者や事務局を担当させてもらっている.そこでの研究活動を通して,TIAに関する市民啓発,開業医と専門医との医療連携,専門医療機関での受入態勢などの重要性が明らかとなってきた.医療システムそのものの改革,再構築が必要なのである.
 以前よりお付き合いのある,診断と治療社編集部長の堀江氏と意見交換する機会があり,上記のような議論をしたところ,「TIAに関する医家向け,医療従事者向けの書籍を編集しないか」とのお誘いを受けた.少しでも多くの医師,医療従事者の皆さんに,本疾患に関する正しい知識を提供する必要性が高いと考え,喜んで承った次第である.何よりも,多忙にもかかわらず執筆陣に加わって頂いた脳血管内科,神経内科,脳神経外科等の専門家の諸先生方に,深く感謝したい.この本を通して,少しでも多くのTIA患者さんが,「かする」だけで済んで,安堵されることが増えればと願っている.
2013年2月15日
 国立循環器病研究センター
 峰松一夫,上原敏志