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脳卒中上下肢痙縮 Expertボツリヌス治療 ―私はこう治療している―診断と治療社 | 書籍詳細:脳卒中上下肢痙縮 Expertボツリヌス治療 ―私はこう治療している―

慶應義塾大学教授,リハビリテーション医学・医工連携担当

木村 彰男(きむら あきお) 監修

東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学教授

正門 由久(まさかど よしひさ) 編集

旭川医科大学病院リハビリテーション科教授

大田 哲生(おおた てつお) 編集

初版 並製 B5判 184頁 2013年08月30日発行

ISBN9784787820365

定価:本体4,500円+税
  

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脳卒中患者のリハビリテーションで重要な上下肢痙縮治療におけるボツリヌス治療は,脳卒中治療ガイドラインでもグレードAに推奨されており,2010年秋に本療法が保険適用となった.しかし標準的な治療方法がなく投与部位,投与量などは医師によって異なり,各自が創意工夫して診療にあたっている現状がある.本書は,多くの症例にボツリヌス治療を施行している第一線の医師の投与方法や工夫やコツなど診療の実際を紹介し,日常診療の参考とするための書籍.

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目次

総 論
ボツリヌス治療の現状と課題  /正門由久
はじめに 
1.ボツリヌス治療 -わが国の治療成績- 
  1)上肢痙縮の治療 
  2)下肢痙縮の治療 
  3)上下肢痙縮の同時治療 
  4)欧米での投与量 
2.ボツリヌス治療 ―現在の問題点― 
  1)注射方法など 
  2)治療時期 
  3)目的の達成度 
  4)経済的問題 
3.リハビリテーションをどのように行っていくべきか? 


各 論
Ⅰ.上肢の治療
 1.手関節・手指関節屈筋群への治療(標準的な投与量)を中心に   /向野雅彦,大田哲生
  はじめに
  ボツリヌス治療の対象となる上肢痙縮の症例
  症例 症例:手関節・手指関節屈筋群の緊張を軽減し,疼痛や衛生状態を改善したケース
 2.施注筋・投与量を工夫した治療   /川手信行
  はじめに
  症例 症例1:手指が拳状に屈曲し開くことができない状態を改善したケース
     症例2:上肢と下肢に同時投与したケース
     症例3:前腕回外が困難なケース
     症例4:手指屈筋の痙縮が強く,手指伸展随意性が障害されたケース
  おわりに
 3.上肢近位部へのボツリヌス治療とリハビリテーションの実際   /竹川 徹,安保雅博
  症例 症例1:上肢全般に,特に末梢に強い痙縮の軽減を図り,動作上の障害の軽減を目指したケース
     症例2:麻痺側上肢に分離運動を認め,近位部の動作の向上と末梢の随意性改善を目指したケース
     症例3:麻痺および痙縮は軽度で,上肢近位部のスムーズさの獲得と疼痛の軽減を目指したケース
 4.随意性のある手指に対して施注筋・投与量を工夫した治療   /兵頭昌樹,正門由久
  はじめに
  上肢筋の活動
  投与量の決定
  施注の実際
  症例 症例:小量から投与を開始し,患者が希望する動作を改善したケース

Ⅱ.下肢の治療
 1.標準的投与量によるボツリヌス治療   /松尾雄一郎,生駒一憲
  症例 症例:内反尖足の改善を試みたケース 
 2.足関節底屈筋群の投与方法の工夫   /都丸哲也
  はじめに
  症例 症例:比較的低用量のボツリヌス治療で足部の疼痛が改善したケース
 3.下肢近位筋への投与について   /菊地尚久
  症例 症例:歩容の改善を目指したケース
 4.装具なしで歩行している患者への投与の工夫  /中馬孝容
  はじめに
  ボツリヌス治療による痙縮のコントロールの進め方
  実際に経験した症例について
  症例 症例1:claw toeの痛みが歩行に影響していたケース
     症例2:頸髄損傷による不全四肢麻痺の足部内反を改善させたケース
     症例3:内反をコントロールすることにより,
     下肢装具なしで屋外歩行も可能になったケース
  おわりに
  
Ⅲ.上下肢同時治療の工夫
 1.上下肢複数筋の治療の工夫・考え方①  /殷 祥洙
  症例 症例:内反尖足,槌趾が改善したケース
 2.上下肢複数筋の治療の工夫・考え方②   /吉田直樹,大田哲生
  症例 症例:右上肢と右下肢の同時治療で薬の配分を工夫したケース
 3.上下肢複数筋の治療の工夫・考え方③   /川上途行 ,木村彰男
  症例 症例:上下肢へのボツリヌス治療により,機能の改善を認めたケース
  
Ⅳ.装具の併用
 1.上肢の治療  /浅見豊子
  はじめに
  痙縮に対する上肢装具の目的
  痙縮に対する上肢装具の種類
  症例 症例1:個人用タウメル継手式手指関節装具を使用したケース
     症例2:外来用タウメル継手式手指関節装具を使用したケース
     症例3:3点つまみワイヤー式手指装具(長対立型)を使用したケース
  考察とまとめ
 2.下肢の治療  /勝谷将史,道免和久
  症例 症例:ボツリヌス治療と装具によるリハビリテーションの併用で改善したケース
 3.痙縮改善のためのボツリヌス治療と装具併用療法の実例  /伊藤大起,豊倉 穣
  はじめに
  症例 症例1:右片麻痺の上下肢痙縮治療で改善したケース
     症例2:ボツリヌス治療とリハビリテーションの
     組み合わせで改善したケース
  考察
  
Ⅴ.リハビリテーション
 1.施注後のリハビリテーションの注意点・工夫について(上肢)   /補永 薫,木村彰男
  はじめに
  症例 症例1:手指随意性の向上を目的とした施注後のリハビリテーション
     症例2:容姿や動作の阻害軽減を目的に
     ボツリヌス治療を施行したケース
  考察
  おわりに
 2.施注後のリハビリテーションの注意点・工夫について(下肢)  /青柳陽一郎,粥川知子
  はじめに
  症例 症例1:ボツリヌス治療に装具療法と理学療法を施行し,歩行能力が改善したケース
     症例2:ボツリヌス治療と理学・作業療法の施行で上下肢機能が改善したケース
  おわりに
 3.治療を成功させるために―施注後における私の取り組み  /八幡徹太郎
  はじめに
  施注後の一般的対応
  施注後のROM改善策
  症例 症例:ボツリヌス治療とリハビリテーション治療を
     組み合わせることで歩行自立の可能性が見えてきたケース
  考察
  おわりに
  
Ⅵ.在宅患者の治療
 1.在宅における治療の実際と地域連携  /沖井 明
症例 症例1:痛みと上肢痙縮による介護の負担軽減を目的としたケース
    症例2:下肢のボツリヌス治療による陰部保清の介護負担の軽減を目標にしたケース
    症例3:娘の結婚式に向けて具体的な目標を立て,改善を目指したケース
 2.在宅における治療の実際と工夫①  /伊藤 守
 はじめに
 症例 症例1:手掌の褥瘡を改善したケース
    症例2:呼吸器機能を改善したケース
 3.在宅における治療の実際と工夫②  /西田篤司
 症例 症例1:通院治療が困難なケース 
    症例2:重度四肢麻痺をきたし,往診管理しているケース
 考察 

付録
 主な評価スケール   
 略語一覧   

索引

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序文

本書を推薦する

 わが国でのボツリヌス毒素治療は,1980年代後半から臨床試験が開始され,1996年に眼瞼痙攣への保険適用が認められて以来,片側顔面痙攣,痙性斜頸,小児脳性麻痺患者の下肢痙縮に伴う尖足が承認され,2010年に上下肢痙縮が認可された.
 わが国の死因の第3位に位置する脳卒中は,137万人が発症しており,治療技術の向上によって死亡率が低くなってきている一方,麻痺や痙縮の後遺症が残る患者が増えて,介護が必要となる患者の原因疾患で第一位となっている.
 こうした機能回復や介護療養のための治療やリハビリテーションの必要性が高まってきているなか,多くの患者にボツリヌス治療が行えるようになったことは,長年,神経内科の立場から臨床応用への研究に携わってきた一人として大変喜ばしい限りである.
 現在,臨床で多くの医師がボツリヌス治療に取り組み,その成果を上げてきており,治療法がますます向上していくものと思われる.
 本書は,そうした第一線で実践されている医師によるボツリヌス治療の珠玉の症例を解説し,ボツリヌス治療に携わる医師にとって大いに役立つ書籍となっている.また,今後,蓄積されていく症例に基づいたボツリヌス治療の標準化へのステップとして本書の持つ意義は大きい.
 読者の皆様に本書を活用いただくことで,ボツリヌス治療がさらに普及・向上していくことを願ってやまない.

2013年7月

徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部感覚情報医学講座
臨床神経科学分野(神経内科)
教授 梶 龍兒


監修の序

 上下肢痙縮に対するボツリヌス治療が2010年に保険適用されてから3年が経とうとしている.これまで海外ではすでに承認されている多くの効能が,関係者の努力によって国内でも順次承認されるようになってきていたが,ようやく上下肢痙縮に対する治療が承認されたことにより,脳卒中後の後遺症である上下肢痙縮患者へは大きな福音となった.それまでにもボツリヌス治療とリハビリテーションを組み合わせることで長期予後に改善がもたらされることは実証されており,「脳卒中ガイドライン2009」でもグレードAに位置づけられていたが,保険適応となって以来,本治療がより第一線の臨床で用いられるようになってきている.
 脳卒中では,麻痺側上下肢にしばしば生じる痙縮を改善することにより歩行・日常生活動作(ADL)の改善を図ることができ,また,痙縮のために生じる不良肢位による拘縮の改善により,介護・清潔面での効果も期待できる.ボツリヌス治療の導入によりリハビリテーションの分野では,より大きな治療効果,ADLの拡大,社会的不利の改善を図ることが可能となったが,患者個々の病態が異なるため,臨床の現場では,ボツリヌス治療の施注筋,投与量や投与回数などを様々に工夫しながら,症例を積み重ねているのが現状である.
 一方,脳卒中急性期治療の進歩により生命的予後の改善が得られるようになった反面,後遺症をもつ片麻痺患者が増え,医療現場のみならず介護現場でも痙縮に対する対応の必要性が増大している.しかしながら訪問リハビリテーション,介護に携わっている医師の間では,専門的な知識・技術が要求されるボツリヌス治療を実施するハードルは高いようで,必ずしも一般に普及するまでには至っていない.
 このような状況のなかで,患者および家族により良い治療を受けていただくために,ボツリヌス治療導入後の治療効果の検証をしつつ,治療の標準化,介護現場などでの普及などを目的に,本書の発行を企画した次第である.国内でボツリヌス治療を牽引している正門由久,大田哲生の両先生に編集を担当していただき,上下肢痙縮治療の際の工夫やコツなどを,ボツリヌス治療の第一線の現場で活躍されている先生方に,代表的な症例を挙げながら解説していただいた.各先生方には,この場を借りて感謝の意を表したい.各先生方の熱心な執筆により,ボツリヌス治療の現状を適切に把握することができ,その課題について将来的な展望を本書で提示することができたと考えている.
 本書を,脳卒中痙縮患者の医療・介護現場での日々の臨床に役立てていただくことはもちろん,本書が上下肢痙縮に対するボツリヌス治療の普及・標準化に向けていくらかの貢献が出来れば,監修者として望外の喜びである.

2013年7月
慶應義塾大学教授
リハビリテーション医学・医工連携
木村 彰男


編集の序

 ボツリヌス治療が上下肢の痙縮治療の一方法として保険適応になってから約3年が経過する.この間,ボツリヌス治療を実際に施行された先生や治療を受けられた患者の方々からさまざまな意見を聞くことができた.とても効果のある治療方法であるという意見が多い中,期待していたほどの効果が得られなかったという意見も聞こえてきた.期待していたほどの効果が得られなかったと感じたのはなぜだろうか.そもそもこの治療の適応ではなかったのか.あるいは治療の適応であるものの,治療対象とする筋が違っていたのだろうか.それとも投与した薬剤の量が適当ではなかったのだろうか.薬剤の濃度に問題があったのか.対象筋に正確に針先が届いていなかったのか.などいろいろ考えることがあると思われる.
 また,ボツリヌス治療の効果に満足したとしても,対象筋や投与量を変えることで,よりよい効果が得られる方法が他になかったのかと考える先生方も少なくないと思われる.ボツリヌス治療は一般的な薬物療法と異なり,薬剤を投与すればそれで終わりではなく,どの筋にどれだけ薬剤を投与するかが重要であるとともに,薬剤投与後にリハビリテーションを如何に行うかがその治療効果を分けることになる.
 本書では,これからボツリヌス治療を始めたいと考えている先生方に,具体的な治療方法を知っていただくとともに,すでに治療を始められている先生方の疑問を解消すべく,ボツリヌス治療に精通した先生方に,痙縮治療のために何を治療の目的とし,どの筋を治療対象として選択したのか.また,それぞれの筋にどれくらいの薬剤を投与したのかといった基本的な考え方を症例を通して解説を加えていただいた.
 標準的な上肢および下肢痙縮の治療方法から始まり,随意性のある上肢および下肢の機能改善を目指した治療の注意点,上肢と下肢を同時に治療する際にどのように薬剤を配分すればいいのかといった具体的な治療方法などにつき,わかりやすく記載していただくようにお願いした.また,効果を最大限にするために,施注後にリハビリテーションとしてなにをすればいいのかといった点についても,装具療法併用を含めて詳しく説明を加えていただいた.さらに,在宅患者に治療を行う際の適応の考え方や治療の工夫についても,在宅症例の経験豊富な先生方に自験例をもとに解説をお願いしている.
 痙縮の症状は患者ごとに異なるため,本書で紹介した方法が,すべての患者に適応可能な具体的治療方法というわけではないが,ボツリヌス治療の経験豊富な医師が,このような症状にはこのような治療を行っているということを知ることが,本治療方法が一般的に広まっていくために必要と思われる.本治療方法の恩恵をなるべく多くの患者に受けていただくために,本書が活用されることを期待したい.

2013年7月
東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学教授 正門 由久
旭川医科大学病院リハビリテーション科教授 大田 哲生