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食物アレルギー外来診療のポイント63 改訂第2版診断と治療社 | 書籍詳細:食物アレルギー外来診療のポイント63 改訂第2版

大阪総合保育大学児童保育学部 教授

小林 陽之助 (こばやし ようのすけ) 監修

関西医科大学小児科学講座 主任教授

金子 一成(かねこ かずなり) 監修

兵庫食物アレルギー研究会 編集

改訂第2版 B5判 並製 208頁 2013年12月27日発行

ISBN9784787820723

定価:5,280円(本体価格4,800円+税)
  

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食物アレルギーの外来診療で求められる知識を63のポイント別に簡潔に記した改訂版.特に食物アレルギーによる事故(食物アナフィラキシー)への対処法,保護者・教育関係者への具体的な指導・説明の仕方についても詳述した.食物アレルギーの最新情報(注目されてきている抗原食物,経口免疫療法〈緩徐法・急速法・層別化による方法〉,成人の食物アレルギーなど)や周辺情報(皮膚のバリア機能と汗の関係など)も盛り込んだ.

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目次

監修の序  小林陽之助
編集の序  木村彰宏
初版はじめに  小林陽之助
執筆者一覧

A 概説
 1 食物アレルギーとは  福田典子
 2 即時型食物アレルギーと非即時型食物アレルギーの違い  笹井みさ
 3 食物アレルギーの悪化因子  森岡芳雄
 4 食物アレルギーとアトピー性皮膚炎との関係―小児科医の立場から  黒田英造
 5 食物アレルギーとアトピー性皮膚炎との関係―皮膚科医の立場から  片岡葉子
 6 肌を守る汗の働き  室田浩之
 7 食物アレルギーと気管支喘息との関係  黒坂文武
 8 食物アレルギーが一般の人に理解されにくい理由  木村彰宏
 9 食物アレルギーの予後  谷内昇一郎

B 検査・治療
 10 アレルギー検査の実際とその評価方法  佐守友仁
 11 食物アレルギーの診断方法  西野昌光
 12 除去食療法の進め方  木村彰宏
 13 除去食療法中の栄養と注意点  新田和美
 14 除去食療法におけるアレルギー対応食品の上手な使い方とその落とし穴  田村京子
 15 除去食解除の時期の決め方  小島崇嗣,木村彰宏
 16 外来での緩徐経口免疫療法  木村彰宏
 17 入院による急速経口免疫療法  谷内昇一郎
 18 母乳栄養時の除去食療法の注意点  畑埜泰子

C 学校・園・家庭生活における指導
 19 医師が学校の先生にお願いする(説明する)こと  田中由起子
 20 学校現場のアナフィラキシー実例  赤城智美,木村彰宏
 21 学校給食への対応と給食連絡ノート  黒坂文武
 22 園・学校への具体的な診断書の書き方  佐守友仁
 23 学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)の作成とその運用についての注意点  田原義和
 24 学校の先生の役割  木村彰宏
 25 食物アレルギーがある子どもの家庭生活における注意点  畑埜泰子
 26 少量食べられる場合の献立の選び方  亀田野花
 27 外出時の注意点  河原信吾
 28 調理や発酵による抗原性の変化  谷内昇一郎
 29 災害時の食物アレルギー  赤城智美,木村彰宏

D 抗原食物別対処法
 30 鶏卵アレルギー  伊藤節子
 31 牛乳アレルギー  森岡芳雄
 32 牛乳アレルギー治療用ミルクの選び方  安藤 淳
 33 ペプチドミルクはどんなときに使うのか  矢橋良嗣
 34 小麦アレルギー  谷内昇一郎
 35 大豆アレルギー  足立厚子,森山達哉
 36 ピーナッツ・ナッツアレルギー  森岡芳雄
 37 ソバアレルギー  小野 厚,黒坂文武
 38 魚アレルギー  田村京子
 39 魚卵アレルギー  山本明美
 40 エビ・カニ・軟体動物アレルギー  森岡芳雄
 41 果物アレルギー  石丸敏博
 42 口腔アレルギー症候群  西野昌光
 43 肉アレルギー  森岡芳雄
 44 卵殻カルシウム,乳酸カルシウム,乳糖,乳化剤の抗原性  山本明美
 45 油とアレルギーの関係および油の再使用とコンタミネーション  森岡芳雄
 46 ダニ抗原と食物アレルギー  黒坂文武
 47 意外と見落としがちな食物アレルギー  亀田野花
 48 学会発表されたまれなアレルギー  中尾雅子
 49 抗原食物別の耐性獲得難易度  黒坂文武
 50 食物抗原となりうる成分が含まれる医薬品(ワクチン)  黒田英造
 51 仮性アレルゲン  田原義和
 52 食品表示制度とその注意点  山本千尋

E アナフィラキシー対処法
 53 アナフィラキシーとは  笠原道雄,小島崇嗣
 54 食物依存性運動誘発アナフィラキシー  谷内昇一郎
 55 誤食時の初期評価―アナフィラキシーのみつけ方  笹井みさ
 56 外来での食物経口負荷試験中のアナフィラキシー対処法  木村彰宏
 57 アナフィラキシーの対応  黒坂文武
 58 アナフィラキシー治療の注意点  森岡芳雄
 59 アナフィラキシーにおけるエピペン®の位置付け  森岡芳雄
 60 エピペン®の適正利用と周囲のサポート体制の必要性  黒坂文武
 61 エピペン®は誰に処方するか  木村彰宏
 62 エピペン®を所持する子どもの心のケア  赤城智美,木村彰宏
 63 海外渡航時のエピペン®処方にあたっての注意  伊藤節子

おわりに  金子一成
索引

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序文

監修の序

 『食物アレルギー外来診療のポイント57』初版が上梓されてから4年半経過した.この間の斯界の進歩には目覚ましいものがみられる.一方,食物アレルギーがある児童の痛ましい誤食事故の報道が社会の耳目を集め,その対応策が喫緊の課題となっている.このため文部科学省でも,食物アレルギーに関する対応の充実を図り,再発防止策の検討を行っているところである.今回の改訂版では,学校現場で食物アレルギー反応やアナフィラキシーが発生した場合のエピペン®使用等の対応方法,事故防止に必要な項目について,様々な角度からその対処策を検討した.特にアナフィラキシーについては大幅に内容の充実を試みたので,不幸な事例の発生防止に役立つものと期待している.
 本書初版の記述は小児科医の立場からの見方が主であったが,今回の改訂版では皮膚科医の視座から本症とアトピー性皮膚炎との関連を紹介していただいた.アトピー性皮膚炎では,生後早期からの取り組みで皮膚のリンパ球機能が改善し,腸管,呼吸器のリンパ球によい影響を及ぼす可能性が指摘され,その後の食物アレルギー症状の軽減に結びつくという希望も生まれている.両科からみたアトピー性皮膚炎の取り組みも解説いただいたので,アトピー性皮膚炎に対する理解をより深めていただきたい.立場の相違からくるそれぞれの見方は病像の理解に役立つものと期待している.
 食物アレルギーの治療に関しては,経口免疫療法が最近のトピックである.入院療法のみならず,外来で実施している緩徐経口免疫療法の取り組みと最近報告例が増した急速経口免疫療法のことを取り上げ,実際的な内容を紹介した.急速経口免疫療法は研究的な治療法であり安全性が確立された治療法ではないが,緩徐経口免疫療法はすでに熟練した医師により日常診療のなかで行われている治療である.多くの臨床医が食物アレルギーの免疫療法を身近に感じ,さらに実際に行うことができるように配慮した.
 執筆陣にも,患児の指導・治療に日夜従事している経験豊かな医師に多数加わっていただいた.食物アレルギーに対する社会的関心が一段と高まった今,本改訂版を世に問うのは正に時宜を得たものといえよう.本書が,家庭,医療・学校現場をはじめ,幅広く役立つこと,ひいては洛陽の紙価を高めるよう念じている.機会が得られればさらに改訂を重ねたい.大方のご叱声,ご指導をお願いする次第である.

2013年11月
大阪総合保育大学児童保育学部 教授
小林陽之助



編集の序

 本書初版を上梓させていただいてから,4年半の月日を数えることとなった.
 この間,食物アレルギーへの関心は,医療関係者の間だけではなく社会的にもますます広がってきている.
 食物アレルギーの成立過程の分野では,経皮感作の可能性が論議され,食物アレルギーの重症化を防ぐ治療戦略が見直されている.
 食物アレルギーの診断と治療の分野では,食物経口負荷試験が必須のものとなりつつある.しかし,初回負荷量やその後の増量法など,未解決の問題が山積している.食物アレルギーがある子どもの圧倒的な数の前に,外来での簡易負荷方法も試行されているが,安全面での定式化には程遠いのが現状である.
 食物アレルギーがある子どものおもな生活の場は家庭や学校である.生活の場での危機管理を考えるうえで,エピペン®を常時携帯させることも,急速に広がりつつある.
 診察室という半ば閉じられた場で行われていた医療から,学校や地域全体で食物アレルギーがある子どもを守る取り組みのなかでの医療の役割が模索されている.
 食物アレルギーを取り巻く医学的,社会的な環境が大きく変化を遂げている時期ゆえに,医師が保護者や教育関係者,行政から,適切な助言を求められる機会も増えてきている.本書を改訂するにあたり,医師に求められている社会的な要請に応えることができるよう,項目内容を今日的に大幅に見直すことにした.
 本書が,医師と保護者,子どもを支える大勢の大人たちの間で,“食物アレルギーがある子どもを守り育てる指針”となることを念じている.

2013年11月
兵庫食物アレルギー研究会代表世話人
木村彰宏



初版はじめに

 前著『食物アレルギーの治療と管理』と同じく,今回刊行された本書も「兵庫食物アレルギー研究会」の会員が中心となって企画したものであるが,幾つかの点で大きな相違がある.執筆陣は,前著が臨床医から関連基礎分野の研究者に至るまで幅広く構成されているのに対し,本書は執筆者も半数以下で,しかも全員が第一線で日夜食物アレルギー患児に接している人たちである.従って内容も前著が教科書的であるのに比べ,本書はポイントレッスン形式で具体的にわかりやすくなっている.さらに読者対象を医療従事者のみならず,保護者,学校の教師にまで広げ,身近で活用して欲しいと考えている.
 食物アレルギーの診断と治療に際しては,まず診断のための負荷試験とその後の除去の方法,解除のための負荷試験が必要であるが,それぞれにはまだ定まった方法はない.本書では複数の執筆者に少しずつ重複した表題で執筆を依頼することで,読者にとって内容が理解しやすいように工夫した.山の頂を目指すのに一つの登山路だけでなく様々なルートが想定されるのと同じように考えていただければよいのではないかと思う.
 また卵アレルギーは食物アレルギーの基本であり,これが理解できれば他の食物アレルギーの理解が容易になるので,卵アレルギー研究の第一人者である同志社女子大学生活科学部食物栄養科学科 伊藤節子教授に解説をお願いした.食物アレルギーはなかなか理解されにくい現象で,そのためいじめなど心ない行為がみられることがある.前著に続きアトピッ子地球の子ネットワーク事務局長の赤城智美氏には,子どもや親の思いをどのように受け止めればよいか,家族の支援について述べていただいた.
 患児が多くの時間を過ごす家庭,学校は当然のこと,さらには外食の場で遭遇するであろう様々な場面まで想定した記述を心がけた.恐らく毎日どこかで食物アレルギーの誤食による事故が起こっているものと思われるが,本書で紹介している食物アレルギーの危機管理情報サイトではこのような情報を一元的に管理発信していくことにより食物アレルギーの子を持つ親にとって大いに役立つものと期待している.
 最後に筆者らが経験した食物アレルギー症例を呈示することにより具体的な注意事項が理解してもらえるものと思う.
 本書が医療従事者のみならず,患児,保護者,教員等食物アレルギーに関わっている全ての人たちに,学校や給食の現場で,また家庭で役立つことを念じている.

2009年4月
監修代表 大阪総合保育大学児童保育学部 教授
小林陽之助