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書籍詳細

災害対処・医療救護ポケットブック診断と治療社 | 書籍詳細:災害対処・医療救護ポケットブック

国立病院機構災害医療センター臨床研究部・厚生労働省DMAT事務局

小井土 雄一 (こいど ゆういち) 編集

元自衛隊中央病院内科

箱崎 幸也 (はこざき ゆきや) 編集

日本赤十字社医療センター救命救急センター・救急科

林 宗博 (はやし むねひろ) 編集

帝京大学医療技術学部スポーツ医療学科救急救命士コース

横山 正巳(よこやま まさみ) 編集

初版 B6判 並製 200頁 2015年03月06日発行

ISBN9784787820976

定価:2,090円(本体価格1,900円+税)
  

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災害発生時の出動から,災害現場での指揮命令系統・活動の実際,被災者の救護・搬送まで,消防・自衛隊・警察・医療の連携による救命活動に必須の知識を集成したポケットブック.災害時に連携が求められる職種である消防士・自衛官・警察官・DMAT(医師・看護師など)それぞれの視点から解説することで,各職種の役割を俯瞰でき,災害対処の知識・技術を多面的に理解できる.本文は読みやすい箇条書きとし,図表・写真・コラムを多用した.

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目次


執筆者一覧
キーワード索引

A 災害対処の考え方
1 災害とは
2 自助・共助・公助とは
3 災害対処
4 医療対処
5 米国Incident Command Systemの概要
6 病院の対処計画
7 災害対処に関係する法令
8 災害対処において各組織が担う役割
 a.消防機関
 b.自衛隊
 c.警察組織
 d.DMAT
 e.日本赤十字社
 f.その他の組織・職種
9 災害時の看護活動

B 災害対処の基本
1 活動要領
 a.指揮命令系統の樹立
 b.安全確保・装備
 c.通信・情報伝達
 d.状況・規模の評価
 e.ゾーニング
 f.トリアージ
 g.治療
 h.搬送
2 連携

C 災害の実際
1 自然災害の概要
2 地震
3 津波
4 台風・風水害
5 竜巻
6 火山噴火
7 大規模火災
8 群集事故
9 海難事故
10 列車事故
11 工場/危険物質災害

D 災害特有の医療(プレホスピタル)
1 医療装備
2 救急手技
3 がれきの下の医療
4 災害に特有の疾患
a.クラッシュ症候群
b.熱傷
c.現場四肢切断
d.創処置
e.体温異常症(低体温症・熱中症)
f.溺水症(津波肺)
g.開放性骨折
5 死亡と法医学
6 こころのケア
7 災害時要援護者への対応

災害関連用語集
索引

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序文

 日本列島は中緯度でユーラシア大陸東側に位置し,環太平洋地震帯に属する世界でも有数の地震国である.南北に長く分布し,かつ狭い地域に人口が密集しているため,四季の変化による様々な自然災害によって甚大な被害が発生してきた.最近では地球温暖化によると考えられる“降れば洪水や豪雪,照れば干ばつ,吹けば竜巻”の異常気象が,地球規模で顕著になっている.2013(平成25)年10月,東京都大島町では台風26号による大規模土砂災害にて死者・行方不明者49名の被害が発生,“平成26年8月豪雨”で広島市安佐地域では多発土石流で死者・行方不明者が約90人の大規模災害が発生した.2014(平成26)年9月,御嶽山の水蒸気噴火にて死者・行方不明者63名の戦後最悪の火山災害が発生した.小雨温暖な瀬戸内地方での豪雨災害や,危険な観測データがなく突然の水蒸気噴火など,従来の知識や概念では対応できない災害が続発し,柔軟な災害対処がより一層求められている.

 1995(平成7)年1月17日,阪神・淡路大震災では6,300人を超える死者,約4万3,000人の負傷者および21万棟もの建物被害が生じ,それ以降も2004(平成16)年の新潟県中越地震,2008(平成20)年の岩手・宮城内陸地震などの地震災害が後を絶たなかった.阪神・淡路大震災以降,災害医療の普及・日本版DMAT創設,地域防災力の強化,情報ネットワークの整備や広域連携体制の充実などの多くの災害対処の強化努力が続けられてきた.
 しかし,2011(平成23)年3月11日,国内観測史上最大規模のマグニチュード9.0の東日本大震災では,遡上高40 m以上の津波にて死者・行方不明者約2万人の未曾有の大災害となった.さらに,福島第一原子力発電所事故なども重なり,広域・複合の大規模災害で,阪神・淡路大震災以降の16年間に積み上げてきた災害対処が十分に機能しなかった.救出・救助活動の各実働機関間の連携,発災初期の避難所での迅速な救援活動,入院患者などへの継続的な医療サービス,被災自治体への支援調整,海外からの支援受け入れなど,多くの課題が浮き彫りになった.

 今後,首都直下地震や東南海・南海地震などが近い将来に発生することが危惧されており,上記課題を政府・地方公共団体だけでなく,医療者を含む災害対処の初動対応要員の積極的な参画が求められている.そのためには,災害対処の基本から専門的な幅広い知識や技術が必要である.本書は,災害対処の専門知識を多面的にわかりやすく解説し,最新知見も反映させ,初動対応要員が保持すべき最低限かつ十分な知識と実用的な技術までを網羅している.さらに,工場爆発といった人為的災害・事故対応や,2020年東京オリンピックを控えマスギャザリング医学の知見も紹介している.災害現場に携行できるようB6判のポケットブックとし,現場で手早く知識や技術を見直し確認するためにも最適な災害対処の書籍である.
 本書は災害対処にかかわる医師・看護師・病院事務官・保健所職員・その他の医療関係者のみならず,救急救命士をはじめとする消防・警察・自衛隊・行政関係者にとって必携の書籍となることを願っている.さらに,医学生や看護学生にとっても最適の入門書であると同時に,一般の方々が自分自身を守る知識習得にも大いに有益な書籍であると自負している.本書をもとに,あらゆる大規模災害・事故に対して関係機関の密な連携が図られ,実践的かつ効果的な救援活動が可能になることを切望してやまない.

 
2015年2月

箱崎幸也
 


・謝辞・
 本書の作成にあたっては,災害医療の専門家の立場から貴重なご意見を頂戴した勝見 敦先生(武蔵野赤十字病院)や石井美恵子先生(東京医療保健大学),その他の多くの災害医療専門の方々に,この場をお借りして深く感謝申し上げる.また,本書のような災害医療・対処の入門書を企画され出版の夢を抱いていらっしゃった故石井 昇先生(元神戸大学災害・救急医学教授)に,本書を捧げたい.
 本書の社会的必要性を賢察され,出版にご尽力いただいた株式会社診断と治療社の堀江康弘氏,日野秀規氏,大野弘嗣氏のご支援と励ましに深謝申し上げる.本書がまがりなりにも一応の体裁を整え,上梓にこぎ着けたのは全て各氏のご助言・ご指導が不可欠であった.