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産婦人科漢方研究のあゆみ 32診断と治療社 | 書籍詳細:産婦人科漢方研究のあゆみ 32

産婦人科漢方研究会(さんふじんかかんぽうけんきゅうかい) 編集

初版 B5判 並製 176頁 2015年04月30日発行

ISBN9784787821706

定価:本体2,000円+税

第34回産婦人科漢方研究会学術集会の講演内容を収載.優秀演題賞の「月経前症候群に対し,漢方薬とLEP の治療効果についての検討」「漢方製剤のエストロゲン様作用の検討」のほか,2本の総説と.20本の原著,11本の症例報告をまとめた.

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目次

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序文

平成26年9月7日,青森市において,第34回産婦人科漢方研究会学術集会を開催させていただきました.本州最北端での開催となりましたが,38題もの一般演題の申し込みをいただき,また沢山の会員にお集まりいただきました.当番世話人として篤く御礼申し上げます.
38題の演題を眺め返してみますと,改めて漢方薬の作用の多彩性とその奥深さに驚かされます.西洋医学的発想では薬剤の効果判定は前方視無作為二重盲検試験が必要とされ,この方法で対照薬に対して統計学的な有意性が証明されなければ効果ありとは判定されませんでした.しかしながら,漢方薬の対象とする疾患や症状(症候)は疾病とは言わないもの(例えば冷えなど)をも治療対象としているので,その有用性の判定は従来の統計学的手法でのみ行うことが正しいことなのかどうか悩ましく感じてしまいました.論理の展開には統計学を基本におく帰納法に対峙した演繹法が,すなわち論理を積み重ねる推論法がありますが,少なくとも「○○が奏効したXXの一例」と言う内容の発表において,演繹的解釈が加われば漢方薬の有用性の理解に多いに役立つのではないかなどと勝手な想いを巡らせています.
今回の集会では特別講演として「抗がん剤による末梢神経障害」を取り上げました.抗がん剤,特にタキサン系の薬剤の使用時にはしびれ感とかピリピリ感と言った症状の出現が治療の継続に支障となることは先生方もよく経験されていることと思います.治療の第一歩は,そのような症状の発生機序を明らかにすることから始まりますが,演者の京都大学薬剤部の中川貴之先生からはTRPチャンネルの関与について極めて解り易いお話をいただきました.また,ランチョンセミナーの演者として東京理科大学薬学部の礒濱洋一郎先生から利水作用とアクアポリンについての話をいただきましたが,こちらも極めて明快かつ示唆に富むお話で,「水を制するもの病を制する」との感がありました.お二人の話に共通することは,漢方の薬理効果をいわゆる科学的に検証していることで,漢方の演繹的思考を展開する上で核となる理論を明示してくださったと言うことです.このような理論を蓄積されれば,漢方は間違いなく西洋医学を凌ぐ治療として受け入れられると思います.そのような日の来ることを心より待ち望んでおります.


弘前大学大学院医学研究科産科婦人科教授
水沼 英樹