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低形成・異形成腎を中心とした
先天性腎尿路異常(CAKUT)の腎機能障害進行抑制のためのガイドライン診断と治療社 | 書籍詳細:先天性腎尿路異常(CAKUT)の腎機能障害進行抑制のためのガイドライン

厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業))「腎・泌尿器系の希少・難治性疾患群に関する診断基準・ガイドラインの確立」研究班 

初版 B5判 並製 72頁 2016年10月07日発行

ISBN9784787822567

定価:3,520円(本体価格3,200円+税)
  

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先天性腎尿路異常(CAKUT)は小児CKDあるいは末期腎不全の最大の原因疾患であり,その早期診断と適切な管理が極めて重要である.本ガイドラインは,CAKUTの各疾患・病態の定義を明確にし,特に低形成・異形成腎による腎機能障害の適切な管理方法の明示を目標とした.また,腎機能障害の進行抑制という観点から,泌尿器科的随伴病態の管理についても記述した.さらに近年解明が進みつつあるCAKUTの遺伝子診断についても取り上げている.

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目次

刊行にあたって
はじめに

作成組織・査読委員 一覧
本ガイドラインの作成について
CQ・推奨一覧

Ⅰ CAKUTの疫学
Ⅱ 低形成・異形成腎
1 総論
 1 腎尿路の発生
 2 腎尿路の発生の分子メカニズム
 3 CAKUTの病因
 4 腎形成異常
2 症状
 1 低形成・異形成腎の症状
 2 他臓器随伴病態
3 診断
 1 血液・尿検査
 2 画像検査
 3 経過
4 CAKUT(特に低形成・異形成腎)の原因遺伝子と解析指針
 1 CAKUTの原因遺伝子
 2 CAKUTの遺伝子解析
 3 実際の遺伝子解析対象者の選定と解析手順
 4 遺伝子解析の手順
 5 CAKUT遺伝子解析における問題点
Ⅲ 低形成・異形成腎の腎機能障害を進行させうる泌尿器科的随伴病態
1 総論
2 後部尿道弁
 1 定義
 2 概要
 3 診断・検査
 4 管理・治療方針
 5 腎機能の予後
3 尿管瘤
 1 定義
 2 概要
 3 診断・検査
 4 管理・治療方針
 5 腎機能の予後
4 尿管異所開口
 1 定義
 2 概要
 3 診断・検査
 4 管理・治療方針
 5 腎機能の予後
5 巨大尿管
 1 定義
 2 概要
 3 診断・検査
 4 管理・治療方針
 5 腎機能の予後
6 腎瘢痕
 1 定義
 2 診断
 3 治療・管理
Ⅳ 低形成・異形成腎の管理法
CQ1 CAKUTの腎機能障害・成長障害進行抑制に水分・Na補充は必要か?
CQ2 低形成・異形成腎に対して薬物療法は腎機能障害進行抑制に有用か?

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序文

刊行にあたって

 日本では,平成26年度より“「希少性」,「原因不明」,「効果的な治療方法未確立」,「生活面への長期にわたる支障」の4要素を満たす難治性疾患に対して,患者データベースも活用し,難治性疾患患者の疫学調査に基づいた実態把握を行って,科学的根拠を集積・分析することにより,診断基準・重症度分類の確立,エビデンスに基づいた診療ガイドライン等の確立,診断基準・重症度分類・診療ガイドライン等の普及および改正等を行い,難治性疾患の医療水準の向上を図ること”を目的として,厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業(難治性疾患等政策研究事業)が開始されました.
 本ガイドラインは,厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業))「腎・泌尿器系の希少・難治性疾患群に関する診断基準・診療ガイドラインの確立」研究班の一事業として,日本小児腎臓病学会の全面的なサポートのもとに作成されたものです.
 先天性腎尿路異常(congenital anomalies of the kidney and urinary tract:CAKUT)は,上記の4要素を満たす難治性疾患ですが,小児期の慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)や末期腎不全(end-stage kidney disease:ESKD)の最大の原因疾患であるにもかかわらず,その診療ガイドラインは世界的にもほとんど作成されていませんでした.その最大の原因は,CAKUTが希少疾患であり,その診断や治療・管理に関する質の高いエビデンスがほとんどなかったことではないかと思われます.
 しかし,上記のような日本の政策の方向性が示されたことに加え,次世代シークエンサー等を用いた遺伝子解析の進歩によりCAKUTの診断技術が向上したことや,欧米や日本でCAKUTを中心としたCKDコホート研究が行われ,いくつかの重要な知見が得られるようになったことなどから,CAKUTを対象とした診療ガイドラインを作成するに至りました.
 言うまでもありませんが,ガイドラインはあくまで診療を支援するためのものであり,診療を拘束するものではありません.このガイドラインを実際に臨床の現場でどのように用いるかは,医師の専門的知識と経験をもとに患者さんの意向や価値観を考慮して総合的に判断する必要があります.また,このガイドラインは恒久的なものではなく,今後,国内外の臨床研究で得られる新たなエビデンスをもとに順次改訂していく方針です.

厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業
(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業))
「腎・泌尿器系の希少・難治性疾患群に関する診断基準・診療ガイドラインの確立」研究班

研究代表者
飯島一誠



はじめに

 本ガイドラインが対象とする疾患は,先天性腎尿路異常(congenital anomalies of the kidney and urinary tract:CAKUT)である.CAKUTは,低形成腎,異形成腎,腎無形成,後部尿道弁や様々な下部尿路障害による閉塞性尿路疾患などを含む概念で,小児慢性腎臓病〔小児CKD(chronic kidney disease)〕あるいは末期腎不全(end-stage kidney disease:ESKD)の最大の原因疾患であり,その早期診断と適切な管理が極めて重要である(なおCAKUTの訳語として従来「先天性腎尿路奇形」が一般的に用いられてきたが,臨床現場の用語として「奇形」の使用には議論があり,本ガイドラインでは「先天性腎尿路異常」の用語の使用を提唱する.ただし医学的な記述に「奇形」の使用を完全に排除することは現状では困難であり,本文中には一部使用した.用語の問題は,今後も検討を要すると思われる).
 本ガイドラインは,CAKUTの各疾患・病態の定義を明確にすることと,CAKUTのなかでも特に低形成・異形成腎による腎機能障害の適切な管理方法の明示を目標とした.これまでCAKUTに分類される各病態の用語やその定義は必ずしも統一されておらず,しばしば混乱が生じてきた.本ガイドラインでは,それらの病態に対し一定の用語,定義の確立を試みた.また低形成・異形成腎による腎機能障害は乳幼児期からの発症,多尿・塩類喪失傾向等々,特有の問題点がある.さらにしばしば泌尿器科的随伴病態を認め,その管理が腎機能予後を左右することがある.本ガイドラインでは,低形成・異形成腎による腎機能障害の進行をいかに抑制するかという観点から,それらの随伴病態の管理に関しても記載した.なおCKDの一般的な管理については,日本腎臓学会から発行されている「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013」をはじめとしてすでに該当するガイドラインがあるため,本ガイドラインでは取り上げていない.
 さらに近年解明が進みつつあるCAKUTの遺伝子診断についても取り上げている.特に様々な症候群に伴うCAKUT(いわゆるsyndromic CAKUT)に関しては遺伝子異常の解明が進み,遺伝子診断の意義が高くなっている.
 最後に,CAKUTはいわゆる希少疾患であり,レベルの高いエビデンスは限られている.「本ガイドラインの作成について」でも述べるが,本ガイドライン作成にあたっては「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」に最大限準拠しつつも,narrativeな記載も多くなっている.むしろ本ガイドラインが一助となり,日本からCAKUTに関する質の高いエビデンスが発表されることを期待している.

厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業
(難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業))
「腎・泌尿器系の希少・難治性疾患群に関する診断基準・診療ガイドラインの確立」研究班
先天性腎尿路異常(CAKUT)グループ

研究分担者
石倉健司