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書籍詳細

糖尿病学2017診断と治療社 | 書籍詳細:糖尿病学2017

東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授

門脇 孝(かどわき たかし) 編集

初版 B5判 1色(口絵カラーあり) 184頁 2017年05月31日発行

ISBN9784787823014

定価:本体9,500円+税
  

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日進月歩の進歩を遂げる糖尿病学のなかでも特にわが国発の研究に重点を置いて重要な課題を取り上げ,専門的に解説したイヤーブック.今年もこの 1 年の基礎的研究,展開・臨床研究の成果が 20編の論文に凝集されている.糖尿病研究者のみならず,一般臨床医にとっても必読の書.

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目次

口絵 
序文 
執筆者一覧 

基礎研究
1.腸管上皮とマクロファージの相互作用による全身のインスリン感受性制御
[中江 淳,川野義長,伊藤 裕]
■はじめに 
■高脂肪食負荷による各種臓器の慢性炎症の推移:高脂肪食負荷による大腸の慢性炎症 
■マクロファージ特異的Ccr2ノックアウトマウス 
■腸管上皮特異的タモキシフェン誘導Ccl2ノックアウトマウス 
■腸管上皮Ccl2による脂肪組織の慢性炎症のコントロール 
■大腸炎症性マクロファージによる腸管バリア機能の破綻 
■大腸炎症性マクロファージによるインフラマソームの活性化 
■おわりに 

2.GCN5-CITED2-PKAモジュールを介した血糖調節機構
[松本道宏,酒井真志人]
■はじめに 
■遺伝子転写を介した肝糖新生調節と糖尿病 
■転写コレギュレーターCITED2によるPGC-1αの活性化機構 
■GCN5の発現阻害により肝糖新生が抑制される 
■GCN5はCITED2と協調してヒストンアセチル化酵素として糖新生を誘導する 
■GCN5はcAMPの存在下でCITED2と協調してアセチル化の基質をPGC-1αからヒストンH3にスイッチさせる 
■GCN5は絶食時に形成されるGCN5-CITED2-PKA複合体内でPKAによりリン酸化され,基質スイッチを起こす 
■GCN5 Ser275のリン酸化の抑制は糖尿病の治療となる 
■おわりに 

3.肝臓における「選択的インスリン抵抗性」の分子機構
[窪田直人,窪田哲也,門脇 孝]
■はじめに 
■肥満・2型糖尿病の肝臓ではインスリンシグナルは亢進している 
■持続するIRS-1の発現とIRS-2の発現低下が「選択的インスリン抵抗性」には重要である 
■高脂肪食下では,門脈領域ではインスリンシグナルは障害される一方,中心静脈領域ではインスリンシグナルは
亢進する 
■IRS-1のzonationはWnt-βカテニン経路によって調節されている 
■肝臓における「選択的インスリン抵抗性」の分子機構 

4.カロリー制限と腸幹細胞制御
[五十嵐正樹]
■はじめに 
■NAD+代謝とサーチュイン 
■SIRT1と,カロリー制限における腸幹細胞自己複製の増加 
■腸幹細胞ニッチおよび腸幹細胞におけるSIRT1 
■腸幹細胞におけるAMPK/Nampt/SIRT1経路 
■S6K1脱アセチル化による腸幹細胞制御 
■mTORC1阻害薬と腸幹細胞の増殖 
■老化において減少する腸幹細胞機能の回復への期待 

5.脂肪組織マクロファージのHIF-1αとインスリン抵抗性
[戸邉一之,瀧川章子,アラーナワズ,角 朝信,藤坂志帆,薄井 勲]
■はじめに 
■HIF-1αとは? 
■脂肪組織にはM1とM2マクロファージが存在 
■M1マクロファージが低酸素領域に存在しているのではないかと考えた理由 
■肥満初期の低酸素領域は脂肪細胞 
■高脂肪食10週以降の低酸素領域はM1マクロファージが集積をしたCLS領域である 
■マクロファージ特異的HIF-1α欠損マウスの解析 
■高脂肪食下においてKOマウスの耐糖能は野生型に比べて悪化しにくい 
■CLSの数および炎症惹起分子の発現がKOマウスの脂肪組織では低下をしていた 
■KOマウスの脂肪組織では,VEGFの発現低下にもかかわらず,血管は発達をしていた 
■KOマウスの脂肪組織でVEGF以外の血管新生因子が増加していた 
■マクロファージは,HIF-1α依存性に前駆脂肪細胞での血管新生因子の遺伝子発現を抑制するか? 
■結果のまとめ 
■結論 

6.膵β細胞のインスリン分泌におけるオートファジーの果たす役割
[青柳共太,永松信哉]
■はじめに 
■膵β細胞におけるオートファジーと糖尿病 
■VAMP7 KO膵β細胞ではオートファゴソーム形成と第2相インスリン分泌が減弱する 
■VAMP7はミトコンドリア品質の管理にかかわる 
■VAMP7 KOマウスは高脂肪食(HFD)飼育によって耐糖能異常を示す 
■おわりに 

7.グルカゴン・ルネッサンス
[北村忠弘]
■はじめに 
■グルカゴン・ルネッサンスの理由 
■グルカゴン測定系の問題 
■糖負荷と食事負荷時の血中グルカゴン濃度の変動 
■2型糖尿病におけるグルカゴンの異常 
■グルカゴン受容体中和抗体とグルカゴン受容体拮抗薬の開発状況 
■おわりに 

8.内皮細胞DPP-4が演じる病理学的意義の解明
[金崎啓造]
■はじめに 
■内皮細胞間葉細胞分化転換(EndMT) 
■EndMTの分子機構と腎線維化における意義 
■Dipeptidyl peptidase-4,integrin β1とEndMT 
■最後に 

9.SGLT2阻害薬の心保護・腎保護作用
[佐野元昭]
■はじめに 
■心不全パンデミックの脅威 
■循環器内科医による糖尿病治療 
■EMPA-REG outcome試験 
■利尿効果 
■血行動態に対する多彩な効果 
■圧受容器反射の感受性の改善と交感神経活動の抑制 
■ヘマトクリット値の上昇に隠されている秘密 
■β-blocker for the kidney 
■腎臓アウトカムを大幅に改善 
■結語 

展開研究・臨床研究
10.インクレチン関連薬と心血管疾患
[綿田裕孝]
■はじめに 
■GLP-1受容体作動薬と動脈硬化 
■DPP-4阻害薬と動脈硬化 
■DPP-4阻害薬を用いた大規模臨床研究 
■DPP-4阻害薬による抗動脈硬化作用 
■GLP-1受容体作動薬を用いた大規模臨床研究 
■さいごに 

11.ケトン体の臓器作用
[植木浩二郎]
■はじめに 
■ケトン体の産生調節 
■ケトン体の多面的作用 
■ケトン体による臓器保護作用 
■おわりに:生理的ケトン体上昇と糖尿病ケトアシドーシスの違いは何か? 

12.出生時体重の全ゲノム関連解析と2型糖尿病との相関
[堀越桃子]
■はじめに 
■低出生時体重と2型糖尿病との関連にかかわる非遺伝的要因 
■低出生時体重と2型糖尿病との関連にかかわる遺伝的要因 
■全ゲノム関連解析を用いて出生時体重と2型糖尿病の遺伝的なつながりを探る 
■高出生時体重と2型糖尿病との関連にかかわる非遺伝的要因 
■高出生時体重と2型糖尿病との関連にかかわる遺伝的要因 
■出生時体重と2型糖尿病の両者に関連する遺伝素因が生理学的効果を発揮するタイミングについて 
■むすびに 

13.近赤外時間分解分光法を用いたヒト褐色脂肪組織の計測
[浜岡隆文,二連木晋輔,坂根直樹,米代武司,斉藤昌之]
■はじめに 
■近赤外時間分解分光法(NIRTRS)を用いた組織血液・酸素動態の測定 
■ヒト褐色脂肪組織密度の評価の妥当性検証 
■ヒト褐色脂肪組織密度に対する介入例 
■まとめ 

14.日本人糖尿病の死因の変遷
[中村二郎,神谷英紀]
■はじめに 
■糖尿病患者の死因 
■血糖コントロール状況と死因および死亡時年齢 
■糖尿病の治療内容と血管障害死との関連 
■過去の調査結果との比較 
■おわりに 

15.糖尿病腎症重症化予防プログラム
[津下一代]
■透析導入と糖尿病腎症の現況 
■糖尿病腎症対策の根拠 
■国をあげての取り組み推進:日本健康会議宣言2 
■糖尿病性腎症重症化予防プログラムの概 
■重症化予防プログラムの進捗状況と今後の取り組み 

16.免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病
[馬殿 恵,今川彰久,花房俊昭]
■はじめに 
■免疫チェックポイント阻害薬について 
■免疫チェックポイント阻害薬と1型糖尿病 

17.妊婦の糖代謝異常の診断と管理
[平松祐司]
■はじめに 
■妊娠中に取り扱う糖代謝異常と管理目標 
■妊娠前管理 
■妊娠糖尿病の診断 
■妊娠中の母児管理 
■分娩時の管理 
■産後の管理 

18.新しいGAD抗体の測定法の現状と問題点
[小林哲郎]
■はじめに 
■測定法の原理 
■1型糖尿病における測定値の現状 
■測定系の利点と問題点,今後の対応 

19.持続血糖モニター(CGM)の進歩と展望
[西村理明]153
■リアルタイムCGM 
■flash glucose monitoring(FGM) 
■Free Style Libre Pro 
■リアルタイムCGM機能を備えたCSII 
■closed loop system/artificial pancreasに向けて 
■低血糖時にインスリン注入が停止するSAP 
■低血糖をできるだけ減らせるSAP 
■低血糖/高血糖をできるだけ減らせるSAP 
■おわりに 

20.糖尿病の予防・療養行動を左右する社会的構造要因
[橋本英樹,加藤明日香]
■はじめに 
■生活習慣行動介入の効果;臨床現場と実社会のギャップ 
■糖尿病予防のための戦略;社会規範・地域ネットワーク・政策の役割 
■糖尿病の予防・受療行動を妨げる規範「スティグマ」の影響 
■おわりに 

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序文

 2017年も従来どおり日本糖尿病学会年次学術集会に合わせて,本書「糖尿病学」をお届けできる運びとなった.毎年この時期に刊行できることは非常に喜ばしいことである.

 さて,この一年も様々なテーマが話題となった.糖尿病におけるグルカゴンの病態生理的意義の解明や新たな糖尿病治療薬としてのグルカゴン抑制薬に関する研究,SGLT2阻害薬の心保護・腎保護作用,出生時体重と2型糖尿病との相関,膵β細胞におけるVAMP7の生理的役割やオートファジーと糖尿病発症の関連性など,新しい話題を含め,毎年のことながらそのテーマは多岐にわたる.本書ではおもに日本人による研究の成果を取りあげており,今年も20編の論文をこの一冊に収載することができた.

 「糖尿病学2017」では,上記の話題に加えて,GCN5?CITED2?PKAモジュールを介した血糖調節機構,カロリー制限と腸幹細胞制御,腸管上皮とマクロファージの相互作用による全身のインスリン感受性制御,インクレチン関連薬と心血管疾患,妊婦の糖代謝異常の診断と管理,免疫チェックポイント阻害薬に関連した1型糖尿病,等々非常に興味深いテーマではないだろうか.また,日本人糖尿病の死因の変遷や糖尿病腎症重症化予防プログラムについても収載した.20編のすべてが「基礎研究」から「展開研究・臨床研究」まで素晴らしい価値ある成果であり,いずれも研究者の熱意と英知がこめられた論文ばかりである.

 最後に,できるかぎり新しい情報を発信するため非常に短い期間でご執筆をいただいた著者の先生方に深謝申し上げる.

平成29年5月
門脇 孝