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小児の検尿マニュアル 改訂第2版 電子版 診断と治療社 | 電子メディア | 電子書籍 | 電子書籍詳細:小児の検尿マニュアル 改訂第2版 電子版

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日本小児腎臓病学会   編集

2022年05月09日リリース

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3,520円(税込)

※価格は書店により異なる場合がございます.

2015年初版発行から7年ぶりの改訂.初版の学校検尿,3歳児検尿に幼稚園検尿を新たに加え,また先天性腎尿路異常(CAKUT)を見逃さない,早期発見のための精密検診の方法やフォローの方針などの変更点を反映し,内容をアップデート.学校医やかかりつけ医だけでなく,養護教諭や各市区町村の保健センターの保健師,行政の学校保健・母子保健の担当者など,検尿にかかわるすべての人に役立てていただきたい1冊です.

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目次

学校検尿(腎臓)フローチャート
幼稚園検尿(腎臓)フローチャート
3歳児検尿(腎臓)フローチャート

刊行に寄せて/中西浩一
はじめに/本田雅敬

用語解説
略語一覧
編集委員一覧


Chapter 1 フローチャート解説
Q1 1次,2次検尿異常の基準はどのように決められましたか?
Q2 3次精密検診の目的と最低限行うべき検査項目は何ですか?
Q3 3次精密検診の問診・診察・身体所見(身長・体重・血圧)で注意することは何ですか?
Q4 3次精密検診での検査値はどのように判断しますか?
Q5 3次精密検診はどこが行っていますか?また,A方式・B方式とは何ですか?
Q6 暫定診断とは何ですか?
Q7 学校生活管理指導表はどのようにつけますか?
Q8 小児腎臓病専門施設,小児腎臓病診療施設とは何ですか?
Q9 小児腎臓病専門施設への紹介基準は何ですか?
Q10 小児腎臓病診療施設への紹介基準は何ですか?
Q11 小児腎臓病専門施設受診の紹介基準に満たない場合,どのように定期受診すればよいですか?
Q12 緊急受診が必要な基準は何ですか?

Chapter 2 検診の意義
Q13 慢性腎臓病とは何ですか?
Q14 学校検尿は何のために行い,どのような疾患がみつかっていますか? また,その成果は何ですか?
Q15 幼稚園・3歳児検尿は何のために行っていますか? また,どのような疾患がみつかりますか?
Q16 3歳児検尿システムの現状と展望はどうなっていますか?
Q17 都道府県代表小児CKD対策委員とは何ですか?

Chapter 3 検尿方法
Q18 採尿する場合,注意することは何ですか?
Q19 学校検尿で当日尿を忘れた場合,どのように対応しますか?
Q20 月経と重なる場合,どのように対応しますか?
Q21 オムツの場合,どのように尿を採りますか?

Chapter 4 検尿異常
Q22 検査偽陽性,偽陰性の原因と防止法は何ですか?
Q23 見落としやすい重い疾患は何ですか?
Q24 腎生検の適応基準は何ですか?
Q25 血尿単独の異常があった場合,どのように診断をすすめ管理を行いますか?
Q26 蛋白尿単独の異常があった場合,どのように診断をすすめ管理を行いますか?
Q27 血尿・蛋白尿合併の異常があった場合,どのように診断をすすめ管理を行いますか?
Q28 体位性(起立性)蛋白尿とは何ですか?また,どのように診断しますか?

Chapter 5 各種検査の基準値
Q29 日本人小児の血清クレアチニン,血清シスタチンC,血清β2ミクログロブリンの基準値を教えてください
Q30 日本人小児の糸球体濾過量の基準値と推算糸球体濾過量の算出方法を教えてください
Q31 小児の血圧の基準値を教えてください
Q32 小児の血圧計に使うカフ(マンシェット)のサイズを教えてください
Q33 日本人小児の尿蛋白/尿クレアチニン比の基準値,評価法を教えてください
Q34 超音波検査の必要性,判断基準を教えてください
Q35 日本人小児の尿β2ミクログロブリン/尿クレアチニン比の基準値,評価法を教えてください

Chapter 6 管理
Q36 検尿有所見者の食事管理はどのようにしますか?
Q37 検尿有所見者の運動制限はどのようにしますか?

学校検尿,3歳児検尿の課題/本田雅敬
編集後記/後藤芳充
索引

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序文

刊行に寄せて

 このたび『小児の検尿マニュアル 改訂第2版』が,初版に引き続き日本小児腎臓病学会編により発刊されました.本マニュアルは,本田雅敬先生が編集委員長をお務めになられ,日本小児腎臓病学会から選出されたメンバーにより改訂されました.
 本マニュアルでは,3歳児検尿,幼稚園検尿,学校検尿が取り扱われています.学校検尿は,慢性に経過する種々の腎尿路系疾患を早期発見し,早期治療を行うことで治癒もしくは予後を改善することを目的として1974年より学校保健法(2009年より学校保健安全法に改題)により開始されました.学校検尿が開始されて以降,慢性糸球体腎炎による透析導入者は減少しています.これは,学校検尿が慢性糸球体腎炎の早期発見,早期治療に貢献し,適切な治療開発が促進されたことによるところが大きいと考えられています.このような学校検尿の有用性が認められ,台湾,韓国,フィリピン,シンガポールでも同様のスクリーニングが行われています.一方,欧米では費用対効果の面から,小児すべてを対象としたスクリーニング検査を実施することに対する異論もあります.学校検尿が実施され約50年経過するわが国においても,今なお実施主体間によるばらつきは存在し課題となっています.また,小児腎不全の最多原因である先天性腎尿路異常(CAKUT)の発見が主目的である3歳児検尿においては,システムの構築が不十分で,実施主体間での検査項目の違いや,精密検診の方法が不明瞭であるといった問題が存在します.このような状況の中で可能な限りこれらの事業の精度を高め,効率よく機能させることが重要です.そのような観点から本マニュアルはその目的に添い,有用な資材であることを確信いたします.具体的に申し上げますと,それぞれのスクリーニングの微妙に異なる基準がその根拠とともに明示されていることや,所見陽性者の管理などにおいて一定の方針を明確に示すことにより,治療の必要な小児が見逃される一方,過剰な検査や管理を強いられることなどを防止し,医療の均てん化に資することがあげられます.何よりも具体的でわかりやすく,実際の現場で使いやすいものであることに徹して記載されていることは,大変有意義なことだと思われます.
 最後に,本マニュアルの改訂に携わられたすべての皆様に改めて感謝申し上げます.本マニュアルが皆様のお役に立ち,世界に誇るわが国の検診システムがさらに洗練されることを期待しております.

 2022年3月

日本小児腎臓病学会理事長
中西浩一


はじめに

 学校検尿は1974年にはじまり,小児期や成人の検尿受診世代の,特に糸球体腎炎による末期腎不全を著しく減少させるなど大きな成果を上げてきました.これは,慢性糸球体腎炎の治療の進歩によるところが大きいといえるでしょう.一方,3歳児健診における検尿は1961年にモデル的に開始され,こちらも先天性腎尿路異常(CAKUT)や腎炎の発見,治療に役立っています.
 学校検尿の方法は,1次検尿,2次検尿,精密検診,暫定診断など,ある程度システム化されています.しかし,はじまって約50年を経過した今でも,各市区町村や学校でのシステムは様々です.学校検尿のマニュアルを作成している県や市では,検尿有所見者への対応が優れていますが,マニュアル自体がないところも多くあります.また,3歳児検尿では学校検尿のようなシステムも存在せず,各市区町村での検尿後の精密検診の方法も明確でないまま行われています.さらに,腎不全による原因疾患の変化により,現在,小児腎不全では最大の頻度を占めるCAKUTが見逃されている,という問題も生じています.治療が必要な子どもが見逃されている,あるいは過剰な検査や管理を強いられている可能性もあることから,各都道府県,市区町村,学校での一定のシステムの確立が必要です.
 そこで,日本小児腎臓病学会では全国共通で使用できるマニュアルを作成し,それを各地のシステム確立に役立てたい,と考え2015年に『小児の検尿マニュアル』を出版いたしました.それまで検尿に特化し,スクリーニングに必要な項目やその意義を,わかりやすい方法で示したものはありませんでした.このたび日本学校保健会の『学校検尿のすべて』の改訂に当たり,特にCAKUTの早期発見のために精密検診の方法やフォローの方針が変更されましたので,新たに改訂版を出版しました.
 本書は,全国都道府県および市区町村の医師会,教育委員会の学校保健担当者,行政の学校保健・母子保健担当者,保健所・保健センターの関係者,各かかりつけ医などの医療機関の方に役立てていただくために作成したものです.ガイドラインとは異なりますので,難しい説明はできるだけ避け,実際の現場で使いやすいものを意識して,最初にフローチャートを掲載し,その後に各解説を記載しました.関係者の皆様には,少しでも検尿有所見者を見逃さない,あるいは過剰診療をしないために,各地域で参考にしていただければ幸いです.
 なお,本書は腎疾患の早期発見についてのマニュアルのため,尿糖には触れていないことをあらかじめ申し上げておきます.尿糖については,『学校検尿のすべて 令和2年度改訂』を参考にしてください.
 現在,母子保健,学校保健の現場では,食物アレルギーや発達障害,不登校,予防接種,感染症など様々な課題が山積です.しかし,成人での腎不全による透析患者は2011年に30万人を超え,さらに年々増加しています.小児期に発見して治療できれば,成人になってからの生活は改善し,医療経済的にも相当に役立ちます.ぜひ腎疾患の早期発見の大切さもご考慮いただけるよう,本書がその一助になることを祈念しております.

 2022年3月

編集委員長
日本小児腎臓病学会元理事長
本田雅敬