医療系のためのやさしい統計学入門
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*1  メモ 国勢調査は日本の全国民が対象となりますが,厚生労働省が実施している国民健康・栄養調査は,無作為に標本を抽出し,その結果から日本国民の実態を推定しています.*2  補足 標本を抽出する際にこれらの条件が整わないと,偏った標本になってしまい,判断を誤ることがあるので注意が必要です.*3  補足 抽出する際には,その標本が母集団の「縮図」のようなものでなければ,標本と母集団の間でずれ(偏り)が生じてしまいます.偏りのない標本の抽出方法を,ランダムサンプリング(random sampling),または無作為抽出とよびます.Ⅱ章 統計手法の基礎について勉強しよう3434 母集団(population)とは統計調査において標本抽出の母体となる集団であり,標本(sample)とは母集団をすべて調査することができないときに,母集団の一部について統計調査が行われ,この時調査された一部の測定値の集まりと定義されます.一般に,私たちが用いるデータは標本,つまり,母集団の一部であることがほとんどです.標本から母集団について推測しようとするのが統計学推論とよばれるもので,実際の調査でよく用いられている手段です. 具体的に,母集団と標本との関係とその意義を具体的に考えてみましょう.ある母集団の特徴などを評価する場合,母集団に属する対象すべてを調査すればその集団の特徴を明らかにできます.しかし,母集団がそれほど大きくなければ全数調査も可能ですが,非常に大きい場合ではすべての対象を調査することは困難です.そこで,母集団から実際に調査する標本を抽出(sampling)し,標本から得られた情報から母集団の状況を推測しようとします*1.つまり,標本を観察して得られた結果から母集団の実際の特徴を確率論的に推し量ることを統計学的推定(statistical estimation),特定の特徴が,標本と母集団とで異なる可能性が高いか否かを判断することを統計学的検定(statistical test)とよびます. 統計学推論では,次の 3 つが重要な要件になります.❶標本は母集団全体をよく代表していること,❷調査が正しく行われていること,❸母集団を推測する場合,妥当な推測方法を用いること*2,3. 全数調査ができないほどサイズが大きな集団の一部分を取り出して調べて,その調べたデータから全体を推測するにはどのようにすればよいのでしょうか. 統計学的に推測する方法には「推定」と「検定」という 2 つの方法があります.推定は「観察したい集団の値を推し量ること」で,検定は「 2 つの集団に差があるかないかを判断すること」です. ここでは,推定,検定にはどのような方法があるのか,どのように行えばよいかを勉強しましょう.3.統計学的推論(推定と検定)A推定と検定

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