1825Dr.森の腹部超音波診断パーフェクト
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72  臓器別解剖と走査法I肝は腹部領域のなかでもっとも大きな臓器であり,全体を1断面で描出することはできないため,プローブの平行移動や扇動走査を行い,もれなく観察する必要がある.肝の超音波検査を行う上で大切なことは,仰臥位のみならず左側臥位へ体位を変換して観察すること,被検者に適切な呼吸の調節をさせることである.呼吸は必ずしも深吸気の状態が見やすいとは限らないため,観察部位をモニタ画面で見ながらもっともよく描出される状態で呼吸を停止させ,観察する.特に横隔膜直下の右葉,右葉下縁,左葉外側区域の辺縁は病変を見落としやすい部位であり,検査を行う上で注意する必要がある(図8).横隔膜直下の右葉の観察の際は見落としを防ぐため,被検者を左側臥位にした右肋骨弓下の扇動走査や,セクタ式プローブを用いた右肋間走査が有用である.右葉下縁の観察には被検者を左側臥位にした右肋骨弓下の扇動走査や,右肋間走査が有用である. 肝左葉外側区の見落としを防ぐためには,プローブを心窩部縦走査の位置から左肋骨弓下に向かって傾けていき,肝が見えなくなるまで走査する必要がある.3) 肝の基本走査通常,Bモード表示では肝内肝動脈は描出されないが,カラードプラ表示では肝内門脈と併走する肝内肝動脈枝が描出される.one point肝静脈は呼吸により径の太さが変化するのが特徴で,呼気時に太く,吸気時に細くなる.one point門脈と肝静脈の測定値1)・ 健常者の門脈本幹径は10mm前後であり,13~15mm以上は拡張,6~7mm以下は狭小化が考えられる.また健常者の門脈血流速度は10~20cm/秒であり,肝硬変などの門脈圧亢進症では病期の進行に伴い門脈血流速度は低下することが多い.8cm/秒以下を低下と考える.・ 肝静脈は右肝静脈の起始部から2~3cm付近で,自然呼吸下での径を観察すると,健常者で6~7mm前後であり,径が9~10mm以上の場合は拡張,3~4mm以下の場合は狭小化と考えられる.one point死角になりやすい部位肝右葉下縁肝左葉外側区域横隔膜直下の肝右葉   肝臓の死角になりやすい部位図8

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