1909不随意運動の診断と治療 改訂第2版
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198第1部 不随意運動3.発症機序 筋痙攣(けいれん)の起こるメカニズムは不明であり,いくつかの仮説があるが,現在では下記の「c 神経終末由来説」が優勢である.血管説a 1920年代から提出されていた仮説として,筋収縮時に筋内毛細血管が収縮圧により圧迫され筋虚血に陥ること,また下腿筋に神経筋を刺激する物質が産生されること,下肢静脈瘤で筋痙攣(けいれん)が比較的多くみられることからうっ血が起こること,などがあった. しかしながら,筋痙攣(けいれん)に効果を有するキニーネが静脈瘤には関与しないこと,末梢血管障害で間欠性跛行をきたしても筋痙攣(けいれん)が起きえないことなどから,血管説は下火となった.血中ナトリウム濃度低下説b 血液透析患者で筋痙攣(けいれん)が頻発することの説明として,透析で血液浸透圧やナトリウム濃度が低下することが考えられた.しかしながら,正常人では高ナトリウム食は筋痙攣(けいれん)の予防効果はなく,主たる原因とは考えにくい.神経終末由来説c 1969年Lambertは正常人に神経ブロックをした後,その遠位部の神経上に10~40 Hzの電気刺激を1~4秒間与えたところ筋痙攣(けいれん)を起こしえ,結論として筋痙攣(けいれん)は末梢神経系で起こりうることが示された. 1995年のRossらの研究では,筋痙攣(けいれん)と正常の最大随意収縮の筋電図所見に違いがみられなかったことを理由として,筋痙攣(けいれん)は運動ニューロン単位の活動性の亢進による,運動ニューロン由来であるという説を唱えた2)が,彼らの用いた筋電図針が受信範囲の非常に狭いものであったために,神経終末由来説を完全に否定することはできなかった. それを踏まえて,Roeleveldらは64チャネル表面筋電図を用いて解析を行ったところ,筋痙攣(けいれん)では筋放電が局所発生し,緩やかに周囲に伝播し,筋放電自体は最大随意収縮のそれと比べて持続時間が短いものだった3).その説明として,神経終末または筋線維自体が筋痙攣(けいれん)の責任部であるとしている. 筋内の神経終末は無髄神経であり,筋外の神経とは生理学的活性が異なることが知られており,下位運動ニューロンの障害(運動ニューロン病,ポリニューロパチー,神経根疾患),神経周囲環境の変化(脱水,血液透析),筋の短縮による機械的刺激などが神経終末の興奮性を高め,筋痙攣(けいれん)を引き起こすものと考えられる. 筋が伸展して筋痙攣(けいれん)が止まる理由としてはGolgi受容体を通じIb型の求心線維を刺激し脊髄の抑制系経路に働くものと思われる.4.検 査 上記で述べた疾患による二次性の筋痙攣(けいれん)か,特発性かを鑑別することがまず重要であり,諸血液検査が望まれる. 神経系の疾患には神経伝導検査,筋電図,画像診断が有用である. 最後に筋痙攣(けいれん)と類似疾患との鑑別については次項で述べるが,筋痙攣(けいれん)放電(cramp discharge)を認めることが重要であり,特徴としては周波数が約150 Hzで短時間かつ周期的な運動単位放電である(図1).筋の伸展でこの放電は速やかに停止する.5.類似疾患との鑑別 筋痙攣(けいれん)と紛らわしい状態としては,①スパズム,②拘縮(contracture),③ミオトニア
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