1909不随意運動の診断と治療 改訂第2版
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67第4章 振 戦での分類を基に議論を進める(表1).振戦は大きくは,安静時振戦,動作時振戦に区別される.振戦の性状による区別は重要であり,たとえば,3~6 Hz前後の規則的な安静時振戦であれば,それだけでParkinson病の可能性が濃厚である.安静時振戦(resting tremor)a 安静時振戦は,罹患肢の安静時(随意収縮がまったくない状態)にみられ,動作によって一般に減弱する.Parkinson病で最もよくみられるが,薬剤性パーキンソニズムや進行性核上性麻痺や線条体黒質変性症といった他のParkinson症候群でも出現しうる.振戦の周期は3~6 Hzで,規則的である(図1).振幅は微細なものから大きいものまで様々である. 本態性振戦でもまれに安静時に振戦がみられることがあるが,この場合は動作開始時にいったん振戦が減弱したのち,姿勢時でのほうが振戦がさらに高度になる. 四肢以外に起こる安静時振戦として,やはり2~5 Hzと遅い振戦で軟口蓋にみられる口蓋振戦(ミオクローヌス)がある.動作時振戦(action tremor)b1) 姿勢時振戦(postural tremor) 罹患肢を安静にしているときには振戦はなく,ある姿勢を保つときに出現する.上肢を前方に挙上した姿勢や両肘を外転させ,両手指の先端を離して保持した姿勢(決闘者姿勢)で観察できる.周期は4~12 Hzと幅がある. 姿勢時振戦を呈するものとして本態性振戦のほか,甲状腺機能亢進症,バルプロ酸中毒,生理的振戦などがある.2) 運動時振戦(kinetic tremor) 随意運動を行うときに運動の開始直後から生じるやや不規則な振戦で,動作が止むと消失する.指鼻試験を行うと,軌道を修正するようにゆらゆら動揺するが,指が鼻に到達すると揺れは止まる.小脳遠心路(小脳深部核・上小脳脚)の障害によると考えられている.測定障害でみられる終末時の揺れ(dysmetria)とは区別するべきであるという意見もある. なお,企図振戦(intention tremor)とは安静時には出現せず,動作を起こすときにその肢に生じる3~6 Hzの振戦である.目的に向かうに従って増強し,目的物に達したのちもその姿勢を保つ限り振戦が続く.振幅はやや不規則,粗大で突発性にもみえる運動が混じる(詳細は後述する).近年,企図振戦という言葉を,運動時振戦(kinetic tremor)という言葉に置き換えるべきであるとする意見があることを合わせて記しておく1).3.Parkinson病および類縁疾患でみられる振戦症候,鑑別a Parkinson病にみられる3~6 Hzの安静時振戦は,初期には四肢,特に上肢に限局し,歩行時に明瞭化する.次第に同側の下肢にも現れ,その後rt ECRrt FCR1 sec安静時振戦の筋電図所見図1Parkinson病患者で安静時に記録された表面筋電図所見.橈側手根伸筋(ECR)と橈側手根屈筋(FCR)で律動的な群化放電を示す.周波数は3~4 Hzである.
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