2110小児栄養消化器肝臓病学
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2424総 論定 義 腹痛は,腹部領域に疼痛として知覚される自覚症状である.しかし,腹痛を言葉で表現できない乳児期では「不機嫌」という表現で苦痛を訴える.個人差もあるが,腹痛の訴えができるのは2歳半~3歳以降で,さらに痛みの性状,部位などを比較的正確に説明できるのは6歳以降である.病態生理 腹痛は,発生機序から内臓痛(visceral pain),体性痛(somatic pain),関連痛(referred pain)の3つに分けられる. 内臓痛は,腹腔内臓器を形成する平滑筋層と個々の臓器を覆う臓側腹膜に分布する知覚神経末端受容器の興奮によって生じ,求心性内臓神経線維を介して脊髄後根神経節,反対側の脊髄視床路,視床,大脳皮質へと伝達される.消化管など管腔臓器のれん縮や急激な伸展,拡張,実質臓器の牽引,腫脹,虚血,臓側腹膜の炎症などから内臓痛は発生する.腹部の中心線上,対称性に鈍く,うずくような疼痛であり,一般的に局在が不明瞭である. 体性痛は,体表面や体腔内部組織の体性痛覚線維が刺激を受けたときに生じる痛みであり,脳脊髄神経求心線維を介して脊髄後根神経節に伝わる.皮膚や体表粘膜の侵害受容器が刺激を受けて生じる表在痛と,関節,靭帯,骨膜などの受容器からの深部痛に分けられる.壁側腹膜,腸間膜,横隔膜などの炎症,物理的・化学的刺激などが発生原因となる.突き刺すような鋭い痛みを特徴とし,持続的かつ限局性で,明瞭な圧痛点があるが,深部痛では鈍痛のこともある.鎮けい薬に無効のことが多く,しばしば腹腔内の重篤な病変を示唆する. 関連痛は,原因となる臓器以外の部位に出現する疼痛である.内臓痛が強いと,自律神経知覚線維に伝わる内臓痛のインパルスが脊髄後根で隣接する脳脊髄神経側に興奮が伝わり,その神経分節に属する皮膚領域に痛みとして感じるために生じる.急性虫垂炎の心窩部痛,精巣捻転の下腹部痛,また,小児ではまれだが急性膵炎の左肩甲部放散痛や胆囊炎の右肩甲部痛などは関連痛の代表的なものである. ただ,実際の腹部の疼痛感覚は内臓痛,体性痛,関連痛が複雑に絡んで生じており,さらに疾患によっては内臓知覚が自律神経系や中枢神経系とも相互に連動している(腸脳相関:brain—gut inter-action).たとえば過敏性腸症候群では,種々の心理社会的ストレスにより視床下部・下垂体から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(corticotropin—releasing hormone:CRH)—副腎皮質刺激ホルモン(adrenocorticotropic hormone:ACTH)系が刺激され,さらにCRHにより腸管のセロトニン分泌が亢進して平滑筋の運動異常,腸管炎症,大腸粘膜刺激が生じる.これらの消化管障害が腹痛や腹部不快感を起こす.また本患者では内臓知覚過敏が亢進していることが知られており,この内臓知覚過敏により求心性知覚神経系が持続的に興奮し,その刺激が大脳辺縁系を賦活させ,さらに心理的ストレスが増していく,という本症候群の慢性化の悪循環が注目されている1).臨床所見1.全身状態の把握 まず,患児の全身状態,苦痛の程度を把握する.B 症 候腹 痛6総 論
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