2110小児栄養消化器肝臓病学
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123123総 論目 的 小児は,その小さい体格や体内総水量に対する体表面積の比が大きいこと,ホメオスターシスの調整機構の未熟性により,容易に電解質平衡異常に陥る.近年では,低張液輸液に伴う医原性低ナトリウム血症やそれによる脳神経障害の報告も散見され,従来の輸液の概念は大きく変化している.本項では急性期の管理を中心に,一般的な輸液療法について概説する.適 応 輸液療法の目的は大きく3つに大別される.1つは循環血漿量増加を目的とするもの,2つめは特定の電解質異常の補正,3つめに経口摂取ができない状態における必要水分量や電解質の補充を目的とした維持輸液である. 小児の輸液療法として,1957年にHolliday(およびSegar)ら1)によって報告され考案された計算式が50年以上にわたり使用されている(表1).しかし,健康小児に対して算定された計算式を病的小児に適用してよいのかについて疑問視する声もあがっている.また,嘔吐や疼痛,肺炎,腸炎,髄膜炎などの高ストレス環境による抗利尿ホルモン不適合分泌(syndrome of inappropriate secre-tion of ADH:SIADH)や,低張電解質輸液による維持輸液療法が原因と考えられる低ナトリウム血症の症例も数多く報告2)されている.そのため,高ストレス状態の児においては,Holliday—Segarの計算式で算出した維持輸液量の1/3~1/2程度にとどめることも提唱されている3).実際の輸液療法は,患児の状態により初期輸液を選択し,その後は維持輸液へと移行する.方 法 以下に,日常診療で遭遇する病態における一般的な輸液療法について,解説を行う.1.ショック ショックは末梢組織が好気性代謝を行うために必要な酸素や栄養素(ブドウ糖など)を供給できない状態と定義され,血圧のみで論じることはできない.臨床的には末梢循環不全を伴っていることが多い.救急蘇生時と同様,低張液や糖を含む輸液は用いず,等張液(生理食塩水や乳酸・酢酸リンゲル液など)20 mL/kgを5~20分かけてボーラス投与する.心音,呼吸音,心拍数,毛細血管再充満時間(capillary refilling time:CRT),皮膚色などを総合的に評価し,必要に応じて同量の再投与を検討する.2.脱水症 日常診療で遭遇する小児の脱水症の原因は,ウイルス性胃腸炎などの消化管感染症であることが多い.脱水症は3つの病態に分類され(表2),それぞれに異なる輸液の計画を立てなくてはならない.また,輸液開始時に血清ナトリウム濃度を測定することが重要である.また,下痢便には多量の電解質が含まれるため(表3)4),同じ胃腸炎であっても臨床症状により病態が異なる場合があり,注意が必要である.嘔吐下痢症などでは代謝性アシドーシスを呈していることが多く,維持輸E 治療手技小児の輸液療法1E 治療手技表1 小児の必要水分・電解質量10 kg以下体重(kg)×100(mL)10~20 kg1,000+体重-10(kg)×50(mL)20 kg以上1,500+体重-20(kg)×20(mL)Na+:3 mEq/dL/日,K-:2 mEq/dL/日
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