2110小児栄養消化器肝臓病学
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244244各 論概 念 小児の感染性腸炎は,おもにウイルス感染と細菌感染に分かれる.細菌性腸炎は飲食物などを介して経口感染して発症する.細菌性腸炎が特定の集団に発生した場合を細菌性食中毒としている.細菌性食中毒には感染型(サルモネラ属菌,病原性大腸菌,カンピロバクター属菌,赤痢菌属など)と毒素型(ボツリヌス菌,セレウス菌など)がある.疫 学 厚生労働省から発表されるわが国の食中毒統計には,細菌とウイルスが集計されている1).食中毒の起因菌として頻度が高いのは,カンピロバクター属菌,サルモネラ属菌,ブドウ球菌などである.サルモネラ属菌では,1事件当たりの患者報告数が多い.病 因 感染型食中毒では,食品に混入した菌が摂取されて腸管内で増殖して炎症を起こすか,腸管内で毒素を産生して腸管上皮細胞を障害する.毒素型食中毒は食品内で増殖した菌によって産生された毒素によって発症する.毒素の作用は,腸粘膜細胞の水電解質吸収低下あるいは分泌亢進,致死的細胞障害,神経障害,などがある. 重篤な細菌性腸炎として腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic E. coli:EHEC)感染症がある.EHECは,志賀毒素(Stx,別名ベロ毒素Vero-toxin)を産生する(Shiga toxin—producing E. coli:STEC).Stx1とStx2の2種類の毒素があるが,臨床分離株の約8割は両毒素産生株である.血管内皮細胞や尿細管細胞はStxに感受性が高く,強い細胞毒性によって細胞死を起こす.国内ではEHECの血清型はO157が8~9割を占めているが,O26,O111など50種類以上の血清型が分離されている.診断・検査1.細菌性腸炎の起因菌診断 健常な人に急性の胃腸症状,神経症状,肝腎機能低下がみられた場合には,食中毒を疑うべきである.生ものなどの非加熱食品や生水の摂取歴,および患児周囲の類似発症者の有無を確認する.海外滞在歴があれば,その期間の喫食内容を聴取する. 細菌性腸炎の確定診断は起因菌の検出による.便検体の採取は,発症後早期かつ抗菌薬の使用前に行う.特にEHECは,病日とともに検出率が低下する.すぐ培養できない場合は,検体や疑わしい食材・食品を冷蔵あるいは凍結する.ただし,有症状期であっても,抗菌薬内服中は糞便内の薬剤濃度が高いので起因菌の検出は困難である.EHECのStxはPCR検査がもっとも特異性,感度,迅速性に優れている.O157については,便中O157抗原を迅速に検出するイムノクロマトグラフィー試験紙や血清O157抗体の簡易検査キットが市販されている.カンピロバクター腸炎では急性期の糞便の膿粘液状部分を採取し,塗抹グラム染色によってらせん状の特異な形態を示すグラム陰性桿菌を認めることが多く,迅速診断が可能である.カンピロバクター(至適酸素濃度5%前後),腸炎ビブリオ(塩分2~5%),エルシニア(CIN寒天培地)の培養には,それぞれの至適条件や特殊な培地が必要である.細菌性腸炎9D 腸・肛門Ⅱ.消化管感染症各 論
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