2120気になる子どもの保育の基本 あい・あい保育向上プログラム
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71-Bあい・あい保育向上プログラムの効果とエビデンス国際的に幅広く利用されている行動的・情緒的問題を把握する心理尺度を使いました。情緒不安定,問題行動,多動・不注意,友人関係問題,向社会的行動の5領域全25項目があり,特に支援効果の判定に活用されているものです。KIDSと同様に対象児の担当保育士に記入してもらいました。2)保育士の不安感やセルフ・エフィカシー(自己効力感)を追う 本プログラムを活用した保育を保育士に指導する保育所長,対象児の担当保育士の不安状態を新版 STAI(State-Trait Anxiety Inventory)を使って調べました。新版STAIは特性不安と状態不安を評価することができます。特性不安とは不安に対するいつもの自分の性格傾向を表し,状態不安とは “今まさにどのように感じているか”というような不安を惹起する事象に対する反応です。これら2種類の不安がどのように変化するかを追ってみました。 もう1つは,GSES〔General Self-Efficacy Scale;一般性セルフ・エフィカシー(自己効力感)尺度〕を用いて個人の一般的なセルフ・エフィカシー認知を測定しました。セルフ・エフィカシーとは,行動変容の先行要因で認知的変数といわれています。セルフ・エフィカシーがあがると行動変容が確実に生じることを意味していて,何らかの行動をきちんと遂行できるかという予測の一般的な傾向を測定できます。b 結果 指導者養成研修を受けた保育所長10名,所長が指導する保育士21名,これらの保育士が本プログラムを用いて担当する子ども21名がこの研究に参加しました。対象児の平均年齢は4歳2か月で,診断はされていないけれども気になる子どもが10名,自閉症スペクトラム障がい7名,ダウン症候群2名,身体障がいおよび知的障がいの重複障がい2名でした。1)子どもの変化 本プログラムの導入により,KIDSの点数が統計学的に有意にあがりました。つまり,発達が伸びたことがわかりました。KIDSは月齢を考慮した発達年齢を評価します。介入後,6か月が経っている分,6か月を通したその子なりの発達がありますが,これを考慮しても以前より発達が伸びたということになります。では,どのようなところが伸びたのか,KIDSの下位項目で変化を見てみました。対成人社会性だけ,統計学的に有意ではありませんでしたが,どの項目も伸びていました。気になる子どもと自閉症スペクトラム障がいの子ども17名に限って変化を見ると,対成人社会性も含めてすべての項目で統計学的に有意に伸びていました。(図1)。 子どもの行動の特徴は,介入前から大きく異なっていました。つまり,子どもは

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